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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
高校3年3月 最後の潮風登校
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卒業式!

「なんだ我が愛しのスチューデンツ、最終日なのにカリカリしやがって。人間遅かれ早かれいずれ死ぬ。どうせいつか死ぬんなら、楽しく行こうぜエブリワン!」


「最後くらい教師らしくしろや!!」


「そうだぞそうだぞー!!」


 我らが最底辺クラス15組の担任、門沢まみ子はわたしたちの学級の最終日まで遅刻。教え子のヤンキーどもに説教される担任。お前らちょっとはまともになったなあと、わたしはしみじみ老婆心。


「るっせえ!! こっちはきのうパチンコで8万スッてんだよ!! 先月手取り7万なのによお!! 説教するならカネをくれ!!」


 先月手取り7万というのは、遅刻しまくって減給されたから。同情の余地もカネをやる理由もない。


「ったく、いくら預金させれば気が済むっつうんだよあのパチ屋はよお」


 以前わたしが、


「パチ屋だって店が儲かるように出来てるんだから常勝とか預金とか稀有な可能性に賭けてないでほどほどにしときなよ」と諭したら、


「銀行だってバンカーを食わせてるのに預金に利息付くだろ? だが銀行は利率が低い、一発逆転はできないんだ」と反論してきたので、


「じゃあ株でもやれば? 株価見張ってれば儲けられるかもだし、パチよりは儲かる確率高いんじゃないの?」と進言したところ、


「わたしがそんな根性あるように見えるか? 株価とか見えるものに囚われないで人事を尽くして天命を待つ、それがわたしの生き方だ」と偉くカッコつけてきた。


 結果ボロ負け大赤字。


 こんな感じでいつも通りのホームルームの後、卒業式に参加するため地下の講堂へ。


 白いリノリウムの廊下、コンクリートの無機質な壁、フローリングが張り巡らされ、丸みを帯びたフリースペース、外の見えない渡り廊下、この何気ない風景も見納め。また来るかもしれないけど、一区切り。


 1組から15組まで5百人程度の生徒が集い、後方壁際には一部生徒の保護者が立っている。


 校長が壇上に上がり、祝辞が始まった。


「皆さん、卒業おめでとうございます。これから皆さんは学院の外に出て、たくさんの人と出逢い、大人になってゆくでしょう。世の中にはいろんな大人がいます。茅ヶ崎だけを見ても紆余曲折ありながら国民的シンガー・ソングライターになった人、宇宙飛行士になった人、お給料を上回る額をギャンブルに注ぎ込んで火の車になっている人、実に様々です。まあ、そのですね、とりあえず、法律を守って、ゴミを正しく分別して、ポイ捨てしないで、できれば崇高な理念を持って社会がよりやさしくなるように、生きやすくなるように努めてください。以上です。それでは卒業証書授与に移ります」


 わたしら15組のメンバーに証書が授与されたのは、それから1時間後だった。待ってるのも疲れたけど、生徒一人ひとりの名前を読み上げた校長はもっと疲れただろう。事前に証書に名前を書く作業も含めお疲れさまでした。


 ところで、さりげなく校長に吊し上げられていたまみちゃんの姿がない。勤務態度が悪すぎていまさっきクビになった? いやいやそうじゃない。きょう一杯でクビになる可能性はあるけどいまのところ皮は繋がっている。


 壇上にはドラムセットやアンプスピーカーが鎮座している。


 そう、次は卒業生による合唱。まどかちゃんが作った曲をみんなで歌う。わたしもちょい手伝った。そのバンド演奏を、楽器演奏が得意な教職員が担当する。そのドラム担当がまみちゃんだ。

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