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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
高校3年3月 最後の潮風登校
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海で溺れている人を見たら118番に通報

 ヘッドランドの岩場に上がって、複雑に入り組んだテトラポットと、恐怖を覚える意外と深い海、どっかの映画会社みたいな激しい波しぶきを浴び、烏帽子岩を見つめる。


 きょうも風に吹かれてるぜ、フルーツの香りがする夢のような女子、白浜沙希。


 おや、パシフィックガーデンのほうでサーフィンをしているのは我が担任、まみちゃんではないか。こりゃきょうも遅刻確定だな。


 ここで豆知識、よーく覚えておくが良い。




 ヘッドランドビーチでサーフィンや海水浴をして溺れたときは、怖いかもだけど一度沖に出て、潮の流れに運んでもらって浜へ戻るんだ。いいな、わかったな?




 海で溺れている人を目撃したら電話で『118』に通報。海上保安庁につながるぞ。




 ヘッドランドビーチの潮流はテトラポットより沖合いに出て、大回りして東もしくは西の浜へ流れている。離岸流だ。沖に流されたとき、この流れに逆らうと体力を消耗して助かる命が助からなくなるリスクが跳ね上がる。




 ヘッドランドから少なくとも20メートル以上、水泳プールや電車1両分以上沖へ離れて、決して近付くな。岩やテトラポットに巻き込まれるぞ。




 岩のあるところは怪我の可能性大、見えない岩も潜んでいる。テトラポットは巻き込まれたらほぼ出てこれない。上陸するときは岩場から離れた砂浜へ。




 サメに喰われるかもとか、どんどん深いところに流されてるとか考えるとめっちゃ怖いと思うけど、助かる可能性は上がる。


 ちなみにこの私、白浜沙希は幼稚園児だったころ、一中通りの前辺りからパシフィックガーデンの前まで知らぬ間に流された。


 やはり潮は東へ流れていた。


 岩場を下って、西の浜に下り立った。投げ釣りをしたとき、竿に装着していたおもりを失くして、翌日また投げ釣りをしたらその錘が釣れた思い出のある西の浜。よく流されなかったな。


 西の浜からのそのそ上がってトイレの横から松をメインにした雑木林『なぎさの散歩道』に入った。砂防林だけど、サイクリングロードからちょっと逸れるだけで手軽に喧騒から逃れて森林浴できるのは、なかなか良き。これ、砂防林がない藤沢とか鎌倉ではできないやつ。この静けさも案外、茅ヶ崎の個性だったりする。


 木漏れ日と小鳥のさえずり、カラスの声。


 ここでカモメでもいればロマンチックだけど、だいたいカラスとドバト、あとトンビ。清月せいげつのタマゴサンドを奪われたのは生涯忘れんぞ。


 ほんの数百メートルの森林浴を終えて、一中烏帽子岩歩道橋に上がった。下は国道134号線、通称エボシライン。その向こうに雪をどっさり被った富士山。


 富士山が、かき氷の反対バージョンに見えるのはわたしだけ?


 一中通りの裏手、駐在所前のバス停近くにあった氷屋さんのかき氷はシロップを入れてから氷を盛るスタイルだったって、まみちゃんが言ってたけど、富士山みたいな感じだったのかな?


 私が知らない、ほんの十数年前の世代は知っている、昔の茅ヶ崎。


 東へ直進するスポーツカー、左折するバス。


 クルマの流れをぼんやり眺める。


 風に吹かれてさらり靡く髪と、ふわり揺れるスカート。


 なんでもない日常にある休息時間にハッピーを感じていると、左肩をぱふぱふ叩かれた。犯人はまどかちゃんだった。


「おやまどかちゃんと自由電子くん、おはよう茅ヶ崎朝の世界」


「おはよ」


「おはようございます」


「そろそろ行かないと遅刻するよ、若干一名波乗りしてたけど」


「まみちゃんね。岩場の上から見た」


 低い段差の階段を一つ抜かして下り、わたしたちは遅刻ギリギリで登校した。

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