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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
小さな旅:藤沢、江ノ島・鎌倉
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鎌倉旅のたった4人

 鎌倉駅。江ノ電と横須賀線が乗り入れる、鎌倉観光の拠点駅。


 昼間は観光客でごった返す鎌倉駅だが、同じく古都である京都きょうと駅のように大きくはない。横須賀線が1番線と2番線、江ノ電が3番ホームから5番ホーム。ごく一般的な規模の駅だ。


 駅前のロータリーもそんなに大きくなく、バスとタクシーが十台前後いる程度。


 雑貨店、土産店、ソフトクリームや漬物、煎餅の店、飲食店が密集する小町通りに入った。鎌倉駅から鶴岡八幡宮のそばまで繋がっている、鎌倉の代表的な商店街。


 昼間は観光客でごった返しているが、深夜は静まり返る。しかし一部の店は営業していて、

大人たちはそこで酒や茶を嗜む。


 その昔、小町通り辺りは農道で明治時代に横須賀線が開業してから街が形成されてきたという。


 昼間は子どもたちのはしゃぎ声が響き、夜は大人の社交場になる。小町通りと名が付いたのは戦後間もない昭和27年ころらしいが、今も昔もこの辺りの様相は、本質的には変わっていないようだ。


「はい、ということでやってまいりました鎌倉小町通り! えー、来てみたはいいけど、ぶっちゃけこのへん、出尽くしてるよね? 忘れたころにテレビで定期的に取り上げられるし、雑誌もわんさか出てるし、わたしなんぞが紹介したたところで視聴者の皆さんは、はいはい知ってますーといったところでしょう」


 小町通りの入り口、鳥居の前。世界的なハンバーガーチェーンやアイスクリームショップが連なる駅前。肩がぶつかりそうなほど観光客が行き交う小町通りを背に動画撮影を始めたものの、ネタに困っている沙希さん。


「ふつうに歩けばいいんじゃない?」


 まどかさんがクールに言い放った。動画にまどかさんの声が入り込んだと思われる。


「それでは活動資金を稼げん。はて困った。ここは一旦カットだ」


 一旦カットして、僕は小町通りについてのあれこれを沙希さんに教えた。


「ふむふむなるほどありがとう自由電子くん! 心のダークホースよ!」


 心のダークホースとはどのような意味かわかり兼ねたが、歴史解説をしながら歩き、鶴岡八幡宮を参拝、復路は若宮大路わかみやおおじを辿った。


 若宮大路は鶴岡八幡宮から鎌倉駅の手前まで、車道の中央に石段があり、土の参道が形成されている。両サイドは桜並木になっていて、現世に生ける者も、遥か昔に散った者にも、等しく春を彩る。


 もうじき鎌倉に、湘南に、春がやって来る。二年生の僕はひとり、寄る辺なき学舎に残る。


 もう一年度、たった数ヶ月、早く生まれていれば良かったのに。

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