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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
小さな旅:藤沢、江ノ島・鎌倉
134/273

脳内再生134

 崎に抱かれた海岸の目の前を走る、江ノ電で最もメジャーであろうビュースポット。


 ドア脇に立つまどかさんが、首を微かに窓側へ向け、たそがれている。まどかさんと対面のドア脇に立つつぐみさんはスマホの無音カメラで景色を撮影中。


 線路と並行する国道134号線の葉山はやま方面は渋滞していて、電車はゆっくり走りながらも自動車を次々と追い抜いている。


 七里ヶ浜(しちりがはま)を中心としたオーシャンビュースポットの走行時間は駅や信号場での停車時間を除いて約3分。しかしこれを目当てに国内外からたくさんの人が江ノ電に乗りに来る。


 ここで聴きたいお気に入りの曲がある人もいるだろう。僕もいまその曲を脳内再生している。


 まもなくオーシャンビューのど真ん中、鎌倉高校前駅に到着した。


「達者でな鉄ちゃん坊や! 黄色い点字ブロックとか線路にはみ出るなよ!」


「それは鉄道ファンの基本でありまして一般の方々も守らなければならない基本中の基本であります故この僕も死守しておりますですはい。それでは良き旅を!」


「グッドラックレイルボーイ!」


 1面1線、海を目の前にした鎌倉高校前駅のホームには生徒と見られる何人もが電車を待っていた。観光客も多い。


 駅を出て歩道を辿るとすぐ、国民的バスケットボールアニメなど、数多くの作品に登場する踏切に着いた。沙希さんは「右ヨーシ! 左ヨーシ! 足元ヨーシ!」と、先ほどの鉄ちゃん坊やに吹き込まれたであろう指差確認喚呼しさかくにんかんこをして線路を渡り、僕らはそれにぞろぞろ続いた。線路を渡った先の坂道が、数多の作品に登場するアングルだ。きょうも撮影者が多い。ここにいるほとんどは撮り鉄ではなく聖地巡礼者だ。


 僕は普段自転車で通過するだけの場所で、初めて立ち止まった。


 坂の途中、踏切と陽光にきらめく相模湾を眼間まなかいに、電車が通過するタイミングを待つ。


 ほどなくして藤沢行きの電車が来たのでそれを撮影、しばらく待って鎌倉行きの電車も撮影し、つぐみさんの目的は達成された。電車が踏切に差しかかって1両目の半分ほどが踏み込んだ瞬間を撮影したかったそうだ。


 次の電車までは12分あるので、僕らは鎌倉方面へと歩くことにした。


「へイガール!」


  道路と線路の間に柵のない裏道を歩き、10メートルほど下の小川を跨ぐ橋を渡ったところで沙希さんが黒髪の白人3人組(男二人、女一人)に呼び止められた。


「ヘイフォーリンピーポー! アイアマフルーティーガール!」


「オー! フルーティーガール!」


 秒で外国人と打ち解けた沙希さんは、七里ヶ浜までの道を訊ねられた。


「ゴーストレイト! アフューアファイブミニッツ!」


 と日本語読みの英語で沙希さんが答えると、男の一人が英語で「こいつジャパニーズだから英語喋れないんだぜ!」と言い出すと「日本人ってほんとにバカなのね」と女が言い、もう一人の男は「ギムキョウイクノハイボク!」とクレイジーに笑った。


 てっきりまどかさんが怒って外国人たちに放送禁止用語を連発するかと思っていたら「義務教育の敗北は事実だから仕方ないな」と胸糞悪そうに言った。怒りの矛先は目の前の外国人ではなく日本の学校教育者だろう。日本人は難関大学に合格しても英語さえろくに話せない人が多い。なお、まどかさんは英語が堪能。彼女が案内すればバカにされず済んだだろう。


 一方沙希さんは僕らが来たほうへ歩き出した外国人たちに笑顔で手を振って、姿が見えなくなったところで


「あーあ、アイツら○ねばいいのに」


 と、爽やかな笑顔で言った。女の人って怖い。○ねを軽率に言わない人だから余計に怖い。


「沙希、アイツらが何言ってたかわかったんだ」


 と、まどかさん。


「言葉はわからなくてもニュアンスでわかるよ。はてはて、これからどこへ行きましょうかな」


「気の向くままでいいだろ」


「まどかちゃんソークール!」


 その後、僕らはしばらく歩き、鎌倉高校前駅の二つ先、稲村ヶ崎駅から江ノ電に乗って長谷はせで途中下車。大仏の内外を見学、再び江ノ電に乗って終点の鎌倉駅に着いた。

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