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私たちは青春に飢えている ~茅ヶ崎ハッピーデイズ!~  作者: おじぃ
小さな旅:藤沢、江ノ島・鎌倉
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ふつうの江ノ電!

「さあさあやってまいりました! 湘南の名物電車、江ノ電のりば! こちらは鎌倉方面の電車が来るホームでございます! 江ノ電といえばあのレトロな車両が有名ですが、実は僅か10キロの短い路線にして現役の電車はなんと6種類! 割と新しめな感じの電車もあれば、運転台の窓が大きな展望席のある電車、ロイヤルミルクティーのパッケージみたいに青い電車もあって、どれが来るかなーって毎回楽しみ! さて、きょうはどの電車が来ますかな? もしや、稀にあるエモいラッピングの車両!?」


 ピコリーノに挨拶をした私たちは改札口を通過し、線路を渡って江ノ電のホームに上がった。沙希が動画撮影をするというので私たちは乗車口には並ばず、他の人の邪魔になりにくい鎌倉方の先端付近で撮影に付き合う。危ないから線路から離れたホームの内側で撮影。さすがの沙希もそういうところはわきまえているし、わきまえていなかったら私らの誰かが引き止める。


 ピコリーノの前にある踏切の警報器が鳴り始めた。そろそろ電車が来るみたい。


「さあ、まもなく電車がまいりまーす! カーブの向こうから現れたのは……! えーと、あれだ、ふつうの江ノ電! レトロな車両でも新型車両でも窓が大きな車両でも青くもない、1枚扉のふつうの江ノ電!」


 ほんとだ、ふつうの江ノ電だ。江ノ電の緑色の車両は何種類かあるけど、なんとも言い難いグリーンとクリーム色のふつうの江ノ電。


 ブウウウ! と、やたら大きな音をたてて電車が停まった。ブレーキの制輪子とトレッドが摩擦する音だ。ドアが開くと客がぞろぞろ降りてきて、終わると待っていた客が順に乗り込んでいった。江ノ電は単線。対向列車と待ち合わせるためここでしばらく停車するらしい。それを良いことに、沙希は電車の前でアド街に出てくる女子みたいなポーズを取って自由電子くんに撮影してもらっている。


 ふつうの江ノ電と呼ぶのもなんだか失礼な気がした私は江ノ電の公式サイトで車両のページを開いた。この車両は1000形といい、1979年製造(けっこう古い車両なんだな)、ブルーリボン賞を受賞した栄誉ある車両らしい。ふつうとか思ってごめん。でも、私が江ノ電に乗るときいちばん当たるのがこの1000形だ。


 よく考えてみれば私とつぐみは沙希の撮影を待つ必要がなく、先に乗車した。


 車内はオールロングシート。展望席ではないが運転台の後ろにも三人がけのシートがある。車内はほぼ満席で、私とつぐみは海側のドアの前に立った。こちら側のドアはこの先しばらく開かない。


 土日は乗り切れないほど混む日も多いけどきょうは平日。ちょっとゆったりした気分で江ノ電に乗れるのは、案外貴重かもしれない。


 対向の青い電車と似たような形状の緑の電車が併結した列車が来て、まもなく発車時間。自由電子くんが撮影を止めて電車に乗ってきた。急に撮影を止められ慌てた沙希が「おーとちょいちょいちょい!」と後に続いて来た。


 無言で撮影を止めたのは、男の声が入るのは良くないと自由電子くんなりに気を遣ったのだろう。

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