茅ヶ崎エンターテインメントフェスティバル
「ふはー、バナナジュースおいしい……」
「おいしいね」
「うん、おいしいっ」
「ワシの分まですまんのう。最近はこういうのが流行っておるのか」
私、まどかちゃん、つぐピヨ、連絡先教えてないのになぜかスマホにいまから行くぞいとラインを入れてきた河童は、サザン通りに最近できたバナナジュース屋さんから買ってきた濃厚バナナジュースで一息。濃厚なだけじゃなくて、微細な氷の粒が入っているのがポイント。抹茶、ココア、ストロベリーなどのフレーバーもあり、街を歩いていて小腹が空いたなってときにもいいと思う。
ということで皆さんこんにちは。フルーツの香りがする夢のような女子です。高3の1月、受験シーズン真っ只中でございます。
なんと、いま私の部屋に集まっている私もまどかちゃんもつぐピヨも、まだ誰も進路が決まっていません。なお陸は陸上推薦、武道は進学か就職かすら決めてません。ひょっとしたら浪人生を飛び越えてニートになるかもしれません。
「色んな流行りの飲み物があるけど、バナナジュースは老若男女に飲みやすいからいいね」
「なるほどそうじゃな、ワシみたいな干からびた霊体でも飲みやすかったぞい」
「干からびた霊体はさすがにターゲット層じゃないと思うけど、まぁいっか」
バタン。
疲れた私は、テーブルに足を突っ込んだまま座布団を枕にして寝そべり、天井を仰いだ。
勉強をしていたわけじゃない。ゴールデンウィークに開催される『茅ヶ崎エンターテインメントフェスティバル』に向けた演劇脚本を書いていた。ずっと前にまみちゃんから頼まれた『ジャスティスワールドの神』ってやつ。みんな覚えてるかな?
まどかちゃんは卒業式で歌う曲の詩を書き上げ、つぐピヨは小説を書いている。誰も勉強なんかしちゃいない。河童にいたってはバナナジュースを飲もうとしていた私たちの行動を察知して乞食に来た。貧乏学生にたかりやがって、お前がカネ払えよクソジジイと思ったけど霊体だから払えない。払ったとしてもそれは偽造通貨だ。
さて話を戻そう。なんとなんとこの私、白浜沙希、茅ヶ崎エンターテインメントフェスティバルのイメージガールに就任することになりました!
なぜ私が選ばれたかというと、このエンタメフェス、主催者がまみちゃんで、とりあえず手近にいて扱いやすい私に頼んだという流れ。
まみちゃんいわく、茅ヶ崎は音楽をはじめ、イラスト、漫画、小説など多様な才能を持った人がたくさんいる。個々には活躍してるけど、なかなか日の目を浴びにくいのが現状。
眠ってる才能を眠ったままにしとくなんて、勿体ないだろ。なら私が場を用意する。ということだ。
展示対象は茅ヶ崎在住、在学、在勤者の作品。音楽や漫談などを披露する場合は事前予約でステージに立ってもらう。
なお、飲食物など、人を楽しませられるものならなんでもエンターテインメントとみなすため、当日は飲食店やコスメティックなどのお店も出店するかもしれない。
当日は、どんな茅ヶ崎の『楽しい!』や『ハッピー!』に巡り会えるのかな。私もいまから楽しみだ!
お読みいただき誠にありがとうございます。
2019年を舞台にした回ですが、実際のバナナジュース屋さんは2022年1月開店、茅ヶ崎エンターテインメントフェスティバルは『あったらいいな』という願望のもと描かせていただきましたこと、お断り申し上げます。