居場所になれたら
「ああ、幸せ……」
「湘南で暮らし始めたら、お家からすぐ観に行けるようになるよ」
どうも、フルーツの香りがする夢のような女子です。巡ちゃんとつぐピヨが意気投合しております。
私たちはいま、ショッピングモールの4階北端にある映画館でアニメ映画を観て、6番シアターから劇場出口へ続く通路を歩いているところ。ザッツジャパニメーション、ジャパニーズカルチャーオブアニメーション。
「そっか、猪苗代からだと、片道2時間かけて福島の映画館まで行かなきゃほとんど観られないから、それはすごく助かる!」
猪苗代から電車で30分の郡山にも映画館はあるけど、アニメファン向けのアニメ映画はほとんど福島駅近くの映画館まで行かないと観れないらしい。確かこの前の旅行のとき、猪苗代からは郡山から新幹線に乗っても乗り換え時間含めて1時間半くらいかかった。
「いやはや、いい映画でしたなあ。ヒーリングアニメーションっていうのですかな」
「荒んだ世界に生きてるから、心が洗われたよ」
私とまどかちゃんも満足の、イタリアのヴェネチアを舞台に描いた癒し系アニメ。
私は普段、ホーム・ア○ーンとかテ○ドみたいなコメディー洋画をよく観てるけど、癒し系の作品も良きかな善きかな。
映画館を出たら、隣接するレストランフロアの中にあるハワイアンレストランでロコモコなどをいただき、下のフロアで衣類や靴を見て回り、巡ちゃんに買ってあげるなどしてショッピングモールを後にした。
「巡ちゃん、帰りの時間は大丈夫?」
ショッピングモールと辻堂駅をつなぐ通路で、私は隣に並んで歩く彼女に訊いた。巡ちゃんはきょう、猪苗代に帰る予定。
「まだ、3時間くらいなら」
現在15時。つまり18時までは大丈夫ということか。
「じゃ、もうちょっと遊ぼっか!」
ということで、私たちはちょうど来ていた辻堂団地経由茅ヶ崎駅南口行きのバスに乗って、私の家の前にある東海岸北五丁目バス停で降りた。
こうして少しずつ私たちの輪に慣れていって、ここが巡ちゃんの湘南での居場所になったらうれしい。