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担任の先生

 お団子とお茶を美味しくいただいた後、茅ヶ崎といえばとりあえずサザンビーチにでもと思い、お茶屋さんを出発。左側の路側帯を東へ数歩進むと___。


 ピーッ!


 背後からクラクションを鳴らされた。海岸通りやサザン通り商店街には歩道がなく、歩行者のスペースは狭い路側帯。これはこれで問題だけど、私たちは自動車の邪魔にならないように一列で歩いている。


 ピンクの軽ワゴンが私たちの横にキュッと止まって助手席のパワーウインドウが開いた。


「おうおうおう! そこのフルーツの香りがする夢のような姉ちゃん! と、見かけない顔だなぁ。なんだ沙希、ママ活でもしてんのか?」


 うわ、茅ヶ崎の汚点(まみちゃん)が現れた。いるんだよなぁ、こういう観光客の視界には入れないほうがいい柄の悪いヤツ。それに引き換え私とつぐピヨはもはや観光大使並みの品の良さ。


「なんでそうなる。こんど福島の猪苗代からこっちに引っ越してくるっていう子を案内してんの」


「おお、猪苗代か! いつしかスキーしに行ったなあ! そうかそうか! そりゃちょうどいい! 乗ってけ! 私がこのクルマで茅ヶ崎を案内してやる!」


「な、な、なんですか!? 怖い人ですか!?」


「ほら怯えちゃってるじゃん」


「怯えるこたねぇ猪苗代の嬢ちゃん。私は門沢かどさわまみ子、沙希の担任の先生だ」


 ニッとはにかむまみちゃん。


「はぁ、担任の……」


「そうだ、担任の先生だ。はーあ、言ってみたかったんだよな、この台詞! とりま乗りな! 悪いようにはしないからさ!」


 ということで、後部の右側に巡ちゃん、左側に私が乗った。


 カーステレオからは私たちの中学校の先輩がつくったマンピーでGスポットな感じのあの曲が流れている。


「シートベルト締めたか? よし行くぞー! ひゃっほーい!」


 と、声は威勢がいいけど歩行者の多い狭い道なので、軽ワゴンはゆっくり走り出した。マジでヤバいヤツは法定速度の30キロをオーバーする。ここで法定速度超過はほぼ殺人行為。


「あれ? 海行かないの?」


「まずは腹ごしらえだ。登夢道とむどう行くぞ」


「いやいやまだ休憩時間」


 現在16時。登夢道の夜の部開店時刻は17時45分。


「そうか、じゃあちょっくらドライブだ」


 まみちゃんは線路の突き当たりを左折。跨線橋の『ツインウェイブ』に入った。茅ヶ崎の南口と北口を繋ぐ道で、歩道、自転車道が線路をくぐり、車道が線路を跨いでいる、2つの波のような形状であることからその名が付いている。


「ところでまみちゃん、クルマ持ってたんだ」


「よくぞ! よくぞ訊いてくれた!」


 うわめんどくさっ! めんどくさい予感しかしない!


「宝くじが当たったんだよ!」


「ほう、おいくら?」


 中古っぽいけどクルマが買えるんだから百万円くらい?


「3千円だ」


「は?」


 やっば、こいつやっば……。どうしたら3千円当たっただけでクルマ買おうってなるんだ? まさか訳アリで3千円のクルマ?


「は? じゃねぇ。いつも3千円分買って3百円しか当たらなかったのに、今回は1枚、3百円だけ買って3千円だ。10倍だぞ!」


「で、クルマはいくら?」


「3万円だ。10年以上前の年式だからな、安かったんだ」


「当せん金の10倍じゃんか」


「細かいこと気にすんな! こういうときはな、パアッと使うんだよ! パアッと!」

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