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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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復興顧問のお仕事~1

案外好き嫌いがハッキリしている詩乃さん・・・一度怒るとしつこいよ(=_=)。

例の難民たちが城砦に居る間は、詩乃は居住区に近寄る事も無く、夜もモルちゃんの傍に結界を張ってテントを使って休んでいた。

普段は滅多に不満など漏らす事無く、穏やかに我慢強く相手を尊重するかの様に過ごしてはいるが、一度怒ったらトコトン嫌いになり2度と再び心を許すことなく、永遠に決別するのが・・・日本風と言うのか・・・大西家の家風と言うのか・・・単にA型でしつこいと言うべきなのか?それが詩乃と言う人間である。

兎にも角にも、詩乃の態度に関係者一同は驚き・・・シ~ノンだけは怒らすのはやめよう・・と部隊の隊員全員も心にそう誓っていた。


シ~ノンは昼の間は顧問の仕事だと言って単独で行動しているし、隊員のシャルワはシ~ノンの命令で、城砦の古い書庫を発掘しているしで・・・一体何を考えているのか・・・ポアフ隊長としては胃が痛い日々が続いていた。


そうして問題の難民とボコール商会のトップがこの地を去った日の夕食後、これからの事で顧問からの提案があるからと、この地に居る全員が食堂に呼び出されたのだった。



     *****



プレゼンなんて、中卒(それも途中で異世界行き)の身空でやった事など無かったからねぃ、初体験・・チョッとドキドキするよ。下準備は用意したけれど上手く行くかなぁ、あの女官長を納得させることが出来るのかぁ・・・ほんと緊張する。


詩乃は食堂の陰から領民達の様子を窺う、彼らは今<下準備その1の・・デザート、甘いお菓子。>を食べている。ターニーが持たせてくれた兵糧の中に、お菓子が入っていたのだ・・・。

『甘い物でも食べれば心も穏やかになるっていうものさぁ。』

経験からの発想である、詩乃はイライラしてムカついた時には、いつも甘い物を食べていたのだ・・・。

『チョコレートが食べたいよぉ、まだ砂糖も貴重品なこの世界では夢のまた夢だけれどね。」

皆が一通り食べて満足した頃、詩乃はおもむろに中央に進み出ると声を張った。




「お菓子は美味しかったかな?」


子供達が無邪気に<ハ~~イ>と答えて来た、素直で結構・結構毛だらけでぃ。


「アッシは復興顧問として、此処の人達が5年後には自分達の力で、お菓子を作り食べる事が出来る、そんな生活になる為の提案をしたいと思う。」


オオォォォ~~~子供らから期待の声が上がるが、大人たちは懐疑的である。

この土地を知り尽くした自分達が努力を重ねて来てこの有様なのだ、つい数日前に来たばかりの小娘に何が解る・・そう思っているはずだ・・御尤も様だね。


「この海にはお宝が眠っている、それは何だか解るかな?」


そう言うと詩乃はパワーポイントよろしく、食堂の薄汚い壁に映像を映し出した。領民の目の前に海が広がった、かつては漁をしていた懐かしい海・・・今は魔貝の大量発生の為に入る事が出来ない・・魔力の溢れる危険な海だ。


「この貝はなんでしょうか?はい、其処のお父さん。」


突然差された親父は、苦々しく答える。

「魔貝だ、コイツの吐き出す魔力の為に俺達は海から締め出された。」


「その通り、この貝は魔の森から流れ出た水や栄養素の中から、魔力を体内で濃縮させてこんなものを造り出します。」


壁に映し出されたのは、いびつな形をした・・・そう、淡水パールの様な乳白色でもあり虹色にも光る玉だった、その玉が海底一面に吐き出されて転がっている。


「おい!もしかしてそれは魔力の塊なのか?冬虫夏草の様な物なのか!!」


・・食いついて来たね、チベットスナギツネ~~良いリアクションだ。

パガイさんは興奮しすぎたのか、我を忘れてピョコンとケモ耳を生やし、慌てて次の瞬間引っ込めた・・・面白い・・・周りの領民は驚いて固まったいたが。


「その通り、コイツのせいで平民は海に近づけなくなったし、高潮とかで海水が上がって来ると気分が悪くなって居たのさ。でも、これは金になるし・・・売り払って海底が綺麗に片付けば、また海に出られるようにもなるてなものさぁ。」


領民達は息をつめて詩乃の話を聞いていたが。


「だめだ、それを回収したくても俺達には近寄る事も出来ない。」


チャラララッチャラ~~~~獣人さ~~ん~~~。


「幸運な事に今此処には獣人さん達が居る、魔力に強くしかも半数以上が水に強いカワウソ・・・っと此処ではカウワソ獣人さん達だ・・。海に潜って貝魔石を拾うなんて事は朝飯前なんだと。」


驚いた様に獣人達を見つめる領民達、カウワソ獣人の彼達は壁際に誇らしげに立っている。


「貝達が作る魔石は魔力自体はそう強い物では無いが、冬虫夏草と違って美しいのがセールスポイントだ。アッシの知る工芸品に螺鈿細工ってのが有ってね、こんな光る玉を平らに削り出して寄せ集めて飾りを造り、アクセサリーや家具・・・槍の鞘なんかも作ったいたな。キラキラ光って大変に綺麗な物だ、どうだいパガイさん、狼族の冬の手仕事には丁度良いんじゃぁないかぃ?ああみえて手先は器用なんだから。女ばかりが機織りで稼いでいたら男衆も立つ瀬が無いだろう、良い考えだと思うが。

それにだ、此方をごらん・・・こんな風に魔貝に小さな丸い核を入れ込んで、時短魔法で時間を進めたものだが、出来上がりが全然違うだろぅ。」

映像の詩乃の手のひらには丸い、ご存じパールが転がったいた。


「これは・・・海の涙か・・・偶然にしか手に入らない貴重なものだが・・・それを人為的に作れるのか。大発見だな!・・・シ~ノン。」


大興奮のパガイさん・・尻尾見せてよ尻尾(笑)。


【別に詩乃が偉いわけでは無い・・・その昔、地元の老人会が三重県に旅行に行った時に、詩乃も爺婆に引っ付いて海女の里に観光に行っていたのだ・・・偉いのは真珠王様である。彼は真珠の養殖技術を惜しげもなく海外のあちらこちらに伝授して来た人だから、異世界で広めても喜びこそすれ(たぶん)怒りはすまい。異世界の不思議特典として、貝は玉が出来上がると自主的に吐き出すので死ぬ事が無くコスパが良いのが嬉しい所だ。彼方此方広がられると邪魔な貝だが、場所を決めて人為的に管理すれば、良い仕事と良い収入を生み出す優れ物になるだろう。


「獣人が働いて儲けられても、俺達には恩恵がない・・・。」


苦り切った親父が呻く、ザワザワと周囲もし始めた。詩乃はシャルワに目配せすると、その場を譲り引っ込んだ。


「コホン・・・そもそもこの領地の成り立ちは、南の国々を牽制する為の騎士団の駐屯地だった事にある。その名残りがこの城砦であり、物見台やら領主の館だ・・・領地の規模にしては大きすぎて不自然だろう?この地はもともと自給自足を考えて経営をされてはいなかったのだ。

騎士団を駐屯させる事で雑務や・・鍛冶屋や制服などの被服業、酒場などが発展し、それを仕事にして栄えて来たのだ。食糧等の必要な物は、他の土地から仕入れて来て生活面を支えていた様だ。ここの土地は赤土で栄養分に乏しく、小麦などの作物を作るには初めから向いていない。」


シャルワの言葉にガックリと項垂れる領民達、それはそうだよね・・・今までの努力を全否定だもの。


「嘆くことは無い・・・此処の土地に有った生き方をすれば良いのだ。」

「そんな都合の良い生き方があるのか?」

「我々は知る由も無い、しかし先人が知恵を残してくれている・・ヒントは領主の先祖が残した古文書の中に有る。」


シャルワが書庫の中から、埃でクシャミを連発しながら探し出して来た古文書である、復興の鍵は此処に合った。壁に絵図面が映し出される、この城砦の設計図だ・・・200年前、まだランケシ王国が魔力も豊富で、財政にも余裕があったバブリーな時のしろ物だ・・・しろだけに。


「此処の城砦は元はこのような造りだったのだ、200年の長い間に戦いや災害で破損したり失われた箇所がこれだけある。」


シャルワは絵図面の上に、現在の城砦の間取り図を重ね合わせた。

驚いた事に、城砦の3分の1は失われている。


「失った個所は重要な魔術具が設置されていた所だ、嵐から港を守る魔術具や治水の魔術具などが有ったらしい・・・他国に占領された時にでも略奪されたのだろう。まぁ今現在残っていても、これだけの大規模な魔術具を起動させる程の魔石は手に入らないが・・・。」


「しかし魔術具に代わるモノを用意できれば、災害を軽減できると言うものさぁ。こちらの地形図を見てくんねぃ、今は森に覆われている数か所に貯水池が作られていた様だ。水がいっぺんに川を下れば護岸が崩れて災害になるが、水の量を此調整出来ればそのような事も減るだろう、魔力が無いなら代わる知恵でやれば良いのさぁ。」


余りにスケールの大きな話で、領民達はピンと来ない様だ。


「この絵が200年前の城砦の全景だ、この絵の通りに領地を戻そうって訳さぁ。」


領主の書庫に厳重に梱包されていた、在りし日の城砦の風景画・・・堂々とした城砦に緑あふれる畑、海には小舟が浮かび漁をしている、城下町には店や人が行きかい賑やかな喧騒まで聞こえてきそうな絵だ。過去が余りに眩しくて、女官長のご先祖様は封印して隠してしまった様だ。


「城砦が戻っても、騎士団は来るわけでは無いでしょう?何を生業にするつもりなんです。」


元女官長・現伯爵・・・さすが良い質問ですね。


シャルワの説明は続く。

「この国の南には港町・王妃領ランパールが有る、良い港町なんだが海近くまで山が迫っていて狭いのが難点だ。国際港として人の出入りには良いが物流には向いていない、南方面の外国船は王都や北のボコール領スランまで遠回りして向かっているのが現状だ。」


「ふん、その点此処は土地に余裕があるな・・・此処を物資のストック場にするつもりか?確かに潮の流れの都合で他国からの受け入れには便利だろうが、此処から物資を移動するのはどうするんだ・・・街道の整備もままならぬ悪路だろう。」

「ザンボアンガ系の強みは何だぇ?」


・・・・・・ドラゴンでの空輸か・・・・トンスラも有るしな・・・。


「城砦を魔改造して、倉庫にするのさぁ。倉庫の場所代・維持管理代・注文の受付・発注・・・かなりの仕事になると思うが?それに魔貝石の収入・・・海が綺麗になれば漁にも行けるし、そうそう・・・それからこれ。森を調べていた時に見つけたものだが、何か解るかい・・・はぃ、其処のお母さん。」


「甘い棒です・・・齧ると甘い汁が出て来て美味しいの、あたしが小さな頃は森で採れたけれど、近頃は魔獣が危険で取りにも行けなかったわ。」


「そう、これも昔は此処の特産品として畑に植えられていた蜜草棒サトウキビだあね、この地にも特産品は有ったんだよ・・・魔獣やら災害やらが酷過ぎて忘れ去られていた様だけど。」


「この過去帳によると蜜草棒の収穫で、1年で1億ガルの収入を上げていたらしい。」


        ・・・・・・・・・・・・・。


「とにかく復興にはまずインフラ・・・領内の環境の整備が急務だね?幸いデカギャースを売った金も有るし、魔貝石も此処にいるザンボアンガ系の商人が高値で買い付けてくれるそうだから?・・・ねっ?パガイさん・・・やり方によっちゃぁ冬虫夏草なんかよりイケてる素材だから勉強して下さいよ?」


ザワザワザワ・・領民達が、こんなに美味い話が有るのかとさざめいている。


そんな時にカウワソ獣人のリーダー格の人が、手を上げ発言の許可を求めて来た。

勿論ザンボアンガ語だから何を話しているか解らないが・・・通訳のパガイさんによると、危ない所を助けてくれ奴隷から解放してくれた恩返しに、魔貝石を拾う仕事を喜んでやらせていただきます・・・との事だ。魔貝に核を入れるのも獣人じゃぁ無ければ出来ないから、この地と獣人(ザンボアンガ系)の人とは長い付き合いになると思うよ?まぁ、今まで獣人のいない土地柄だから、お互い慣れるまで時間は掛かるだろうが。


「アッシらは仕事でドラゴンと空を飛んでいるけどさぁ、空の上から見ると領地の違いは一目で解るモノなんだよ・・・畑が生き生きとしていて生産力の高い所は、ほとんどが獣人の移民を受け入れている領地だ、人手は多いほど良いからね。

まぁ、今後どうするかは、この地で暮らす皆が決める事だ・・・アッシ達は席を外すから皆で良く話あって決めれば良い、此方は領民の言い分を受け入れるだけだから。」




領民を残して退室した詩乃達を、女官長が呼び止めた・・具体的な話を聞きたいと言う。具体的と言われても、数字の方は滅法弱いんだけどな。


「女官長の身内で商売や数字に強いお人はいませんかぃ?魔貝石の売買で、パガイ商会との話し合いを任せられる様な切れるお人が?いれば初めから任せた方がよこざんしょう。」


チラッとオ~イを見る、この人脳筋だから数字には弱そう。


「そうですね・・・商家に嫁いだ妹の親戚の姪っ子が良いでしょう。頭が良い男勝りの娘ですが、此処の運営の見直しの時にも手伝って貰いましたし・・・。」


「うへぇ、あいつか・・・厳しいんだよなぁ細けぇし・・・。」


参謀役は厳格で細かく理論的な・・・ある意味憎まれ役的な人の方が良いのだろう、オ~イは人間的に問題もあるが、明るいし寛容で人に希望を持たせる事が出来るキャラをしている・・・でなければ、こんな現場に後払いで冒険者達が働いてはいないだろう。


「パガイさん、クイニョンの現場と比べれば此処の改築なんか朝飯前でしょう?」


「基礎は出来ているしな、騎士団跡だから広いスペースも多いし・・・倉庫にはもってこいだろう。此処が稼働すれば国の南半分の物流はいただきだ、空輸を使えば時短にもなるしな。・・しかし港の整備はどうする、壊れたままでは外洋を走る大型船は入れないぞ?」


昔は整備された港が有ったそうだが、数年前の大嵐の為に壊れたままだった。元の設計図は残っているし、重機の代わりにドラゴンもいるしな・・どうにかなるかもしれない。


「その補修は、アッシらドラゴン部隊が請け負いましょう。」


・・・やらかした罪滅ぼしにもなるしな・・・。


何処で切ったら良いか解らず、ダラダラと話が続いてしまいました・・・(´・ω・`)。


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