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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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激闘~2

詩乃は海が見える方角に向かう為に、物見台の尖塔の周りをグルって回ると、薄く朝日が昇り始めた海を眺めた。遠眼鏡を使うと、船はすぐに確認できた・・確かに難民船ウイズ海賊船だね。


これ以上乗れないぐらいテンコ盛りに人が乗っている。あんなに乗っていたら喫水は浅いし、重くて船足も遅くなり逃げきれないだろう。海賊にとっては、美味しい獲物に他ならない。


「でも、こっちの方が先だし?」


詩乃はスリングショットを構えると、浜に向かって走って来る肉ギャースの集団に向かって、散弾を放った。肉ギャースまでは距離にして約2キロ、スリングショットだけでは届かないので風を操り弾を運ぶ。

王宮の庭師のお爺ちゃんに習った風の業だ、あの頃は風で落ち葉を吹き寄せるくらいの力しか無かったが。その後、青い森のチビ師匠に風の目潰しの技を習ったり、嬉しくも無いがあれやこれやと修羅場を潜り抜け、命がけのシーンが多かったせいか、自主鍛錬により風の力が以前より強力になっているような気がする。


この世界では、魔力は生まれつき備わった力(容量)以上は伸びないって聞いていたけれど、そんな事無いと思うな・・・現に詩乃は城砦の物見台から、遠く離れた海岸まで易々と球を運んでいる。



      バリバリバリバリバリ・・・・・

      ギャァオオオオオォォォォォ・・・・



散弾はこの後の事(商売)を考え、肉ギャースの足を狙って打ち込んだ筈なのだが、何故か全身に被弾したようだ・・これじゃぁ穴だらけだよ・・これは売れないねぇ。

やっちまったねぃ。


先頭集団がコケた為に、後続の集団が止まり切れずに突っ込んで、肉ギャース団子の様になって大騒ぎになっている。

海上の難民船も海岸線の騒ぎに気が付いたのか、裏帆を打って急ブレーキを掛けている。いいぞ!そのまま海に浮かんでステイだ。


さらに詩乃は胴巻から、大きめの岩を取り出すと、

「アらよっ、ときたもんだ。」とばかり、思い切りぶん投げた。

難民船と海賊船の間を狙ってほおり投げたのだ、魔力も添えられているからね、強力だよっ・・・思った通りに派手な水飛沫を上げて水柱が立った。


バッシャ~~~~ン・・・


水飛沫をモロに浴びて海賊も動揺している様だ、いいぞ!そのまま帰っちまえ!

こっち来んな、騎士団に引き渡したり書類を書いたりと、アレコレと面倒臭いんだよ!おまえら!


調子付いた詩乃は2弾・3弾と岩を投げる・・今日の私は、室〇広治さんだよ~。


「おい、嬢ちゃん不味いぞ。」


気持ち良く投げて居たら、オッサンの注意喚起が入った。


なんと!有ろう事か、パニックになった肉ギャースの生き残り達が、何をトチ狂ったのか海に入って行くではないか。・・・何で海に行くし?

そっちに行くなよ、難民船と鉢合わせしちゃうだろうが、どいつもこいつも言う事聞かないなぁ。

・・・まぁ、ガラパゴスのイグアナさんも海に潜るし?海草食うし?

ゴ〇ラさんも海を潜って、はるばる日本まで迷惑かけにやって来る事だし?

爬虫類が泳ぐなとは言わないけどさぁ、困ったね・・・どうしよう?海に潜られたら、散弾の威力は激減だし・・・攻撃の手段が限られちゃう。


・・・・・仕方が無いかぁ。


詩乃は城砦用に作っておいた簡易結界の弾を、スリングショットで難民船に向けて放った。

飛来する何かに驚き、狭い船の中で抱き合い縮み込む難民達・・・海に飛び込まないでね、其処まではカバーしきれないから。

詩乃の祈りが通じたのか、難民達は海に入る事も無く船上に居たままだった。


良かった・・そもそも海に飛び込む程の元気がもう無いのかな?


弾はポンッと軽い音を響かせて船上で展開し、簡易ながらも結界を張ることが出来た様だ。薄い虹色に包まれて、結界内に入り込んだのが確認される・・・船底は・・・よく解らないけど、多分大丈夫だろう。


船は取り敢えず良いとして、此処の防衛に使う貴重な結界弾や散弾を使ってしまったからなぁ、昨晩の会議で決まった作戦に支障が出てしまうかも・・。

不味い事態だから、急いで簡易結界のコピーを作りたい所なのだが、此処では人目が多くてやりにくい。


『人前では作らないように、ラチャ先生と約束しているしなぁ・・・。』




「おい!オレウアイが手はず通りコッチに来るぞ。総員配置に着け!」


後継ぎさんの甥っ子が・・・長いんだよ呼び名が。


『オイはトデリにいるから、オ~イだ!今日から貴方はオ~イさんです。』


そのオ~イさんが叫んでいる、ドラゴンに追い立てられ逃げ場を失った肉ギャース達が、緩衝地帯の広い草地・・・つまりは城砦に向かって押し寄せて来たのだ。

大量のギャースの集団が起こす地響きが、頑健な城壁を揺らす、腹の底に響く様な重低音だ・・。


いよいよか!武者震いが、足先から脳天に向かって走り抜ける。

・・・正直、ちょっと怖いが。


詩乃も草地の方面に戻らなければならない、海は取り敢えず保留だ。

・・・海賊の分までは、結界が足り無かったんだよねぇ・・・彼らは丸裸だ。

まぁ、奴らは腕に覚えがありそうだから大丈夫か?肉ギャースが襲って来るとは限らないし?

貴殿らの健闘を祈ろう!!じゃっ!!



物見台を走り回り(結構と広い)森の方角、草地を望む方に駆け付ける。


見るとドラゴンに追われた、中ぐらいの大きさの肉ギャース達が、次々と森から飛び出して来ているところだ。彼らは中型で程よい大きさで、鱗も美しい美ギャース達だ。多分だけど・・・遠くて、まだ其処まで見えないし。

南に生息する肉ギャースは北のクイニョンとは違い、鱗の色が虹色では無く青のグラデーションだ。今それが草地中に溢れかえり、一面青い色に覆われている・・・何ちゅう数だ、押し寄せる波の様だ・・・。


しかし・・単色だと値を叩かれそうだなぁ、6男の慇懃無礼なモブ顔を思い出す。

魔獣が売れリャァ、領地の復興資金にもなるってモノなのにさぁ。


       やったろうじゃないの!


詩乃は胴巻から、特製注射弾を(鋭い針が刺されば、毒液が流れ込むようになっている優れものだ。自分、目を狙える自信は無いからね。)取り出すとスリングショットを構えて撃ち放った。


   ギャアァウゥ


「とったり~~~!」


やるな、オマケの嬢ちゃん!

オマケ言うな、確かに今はモルちゃんのオマケポジションだが。


「冒険者の仲間の、かたき討ちだ!」


冒険者のオッサンが弓を射る、残念!目は外したが口の中に射込まれて肉ギャースが昏倒する。結果オーライだ、やった!!


「まだまだ来るぞ、油断するな!森に引き返す奴は追うな、小さいのも見逃せ。」


オ~イが繰り返し叫んでいる。

単細胞の冒険者達は夢中になり過ぎると、我を忘れて暴走してしまうから、絶えず命令を聞かせる事が大事なんだと・・・五月蠅いよ。



城砦から釣瓶打ちに撃ってはいるが、何たって数が多い・・・そうこうしているうちに、何とか城壁までたどり着いて、石垣に爪をカケて登って来ようとする猛者が現れ始めた。まずいよね~~~。

でもまぁ、どうしてもギャースは上を見上げるから目は狙いやすい、何頭か射かけられて落ちていった。


「1頭、上がって来たぞ、注意しろ!」


オ~イが剣を抜いて肉ギャースと対峙している、何か余裕そうだし?

ほっておこう、頑張れ!


詩乃はパガイさんとお揃いに作ったクナイを、まとめて毒液に着けると


「目標、肉ギャース・目!」


と言って放った。・・・追尾システム完備の優れものである、後はよろしくだ。

ただ風の魔力を使うので、魔力の少ない詩乃には辛い・・・。


だんだんと城壁の上に登って来る肉ギャースが増えて来た、そろそろ此処に結界を張る潮時かな?


昨晩・・・オッサン達の風の魔術の練度を調べた結果、結界を張った中からの攻撃だと、極端に命中率が下がる事が解ったんだよねぇ。

だから・・なるべく結界は後に張りたい・・怪我をしたら元も子もないが。


「絶対零度」


登頂に成功したギャースを、3頭・4頭と粉微塵にする・・・あぁ、これじゃぁ銭にならない・・・でも焦って来ると、それどころじゃぁ無いんだよねぇ。


「こら!お嬢!売り物にならんじゃぁ無いか!」

「オッサン達、命中率悪すぎ。」


ぐっ、ぐはぁっ。

正論に悶えるオッサン達・・・キショいんだよ。


言い合っているうちにクナイが戻って来た、緑の血がベットリついていてグロイ・・・当分グリーンスムージーは飲みたくないなぁ。

再びクナイに毒液を塗布して放つ、行ってらっしゃい、これで6頭は倒せるから効率はいい。





そろそろ1時間は過ぎたのか、太陽が昇り切り明るくなった・・・ハッキリ周囲が見える様になって来ると、草原に死屍累々と肉ギャースが横たわっているのが確認できた。


それでもまだ半数程度か・・・まだまだ先は長そうだ、戦いは持久戦の様相を呈して来た。


・・・・疲れる・・・・。



基礎体力はどうしても劣る詩乃さん、長丁場は辛いです(*´Д`)。

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