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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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出張です~1

また戻ってまいりました、よろしくお願いいたします。(*´▽`*)


詩乃とラチャ先生が同棲?!・・・同居を始めて3カ月たったところからのスタートです。

「出張だと?」

ラチャ先生は冊子(週刊魔術師タイムス)を読みながら食後のお茶を優雅に飲んでいたが、其処に居るのを突然思い出したかのように、声を掛けて来た正面に座る詩乃に視線を向けてきた。


『世の親父共は何だって気持ちの良い朝の、美味しい食事の時に無粋な字ズラを追うのかねぃ。』

詩乃は別段ラチャ先生の態度を気にをする事も無く、マイペースに朝食の焼きトマト・・・此処ではマトトだったっけ・・・を咀嚼しつつコックリと頷いた。


『ここって朝食は英国風なんだよね、何故かは知らねど。』

モグモグ美味いでしぃ。


    ******



「異世界人]と言うこの世界の異分子でありながら、なぜかドラゴンに気に入られ、絆まで結んでしまった<歩く非常識>との二つ名を持つ詩乃と、誰もが認める稀代の天才魔術師でありながら、世の理に激しく疎い<象牙の塔のラスボス>ことラチャターニー閣下が、何故か程よい大きさの屋敷に仲良く・・かどうかは知らないが・・・共に暮らし始めて・・・程なく3カ月が経とうとしている時の事だった。



    ****



詩乃としては・・・ラチャ先生が何を思って詩乃にスカウト?勧誘?プロポーズモドキをしてきたのかはサッパリ解らなかったし、その心の内のアレコレも、さほど知りたいとも思わなかったのだが(どうせ腹黒王妃が係わって、裏で糸を引いているに違いないしぃ。)。


その告白は・・・タイミング的には・・・。

詩乃としては軍隊的な脳筋共との団体生活に疲れ始め、かなりウンザリしていたところだったので・・・バッチリのクリーンヒットになったのだった。

(ほら自分、中身は文系・芸術系の自称自由人だったし、憧れの人物はスナ〇キンとかだったもんでさぁ・・。体育会系は合わないのよ、疲れるのよ。)

ラチャ先生驚きの申し出に、戸惑いつつも渡りに船で、兵舎よサラバとばかりに引っ越しした経緯があったのだ。



打算臭くて恐縮ですがねぃ・・・もう疲れていたんだよ・・ウララちゃん。


あっしはフツーの生活がしたかったんです!!

脳筋どもの熱い筋肉自慢や、貴族社会のドロドロとした話なんかはウンザリなんだよ、聞きたくも無いし!派閥とかいらないから、興味ないから、コッチ見んな!


思えば狼獣人も掟がどうとかで結構ウザかったのだけれど、クイニョンには可愛い子供達もいたし、心の支えの虎さんやムースさんもいたからねぇ。

今思うと、あの2人の護衛さんは上手に詩乃を転がして、日々のストレスを発散させてくれていたように思う。随分甘えてオンブに抱っこだったなぁ(遠い目)。


しかして、ここトンスラに居るメンバーは同僚なので、お互い同等な騎士であって、虎さんの様にツンデレながら甘えさせ保護してくれるような関係では無かったのだ。

部隊の奴らは遠慮はしないし、詩乃になら何を言っても、何をやって貰っても良いと思っている節がある(ハイジャイで無駄に甘やかしすぎたツケの様だ)・・・上位の貴族風を吹かせる気も無いけどさぁ・・・一応女の子なんですけど・・アッシはなぁ。そこは察してよ。


厳しい騎士の暮らしの中で、せめて自分の好きにしていい部屋、好みの家具やファブリック・・・安心できる心の巣を持つことは悪い事ではないだろう?

そうだ!脳筋の巣窟から逃げ出して何が悪い!部隊など通いで上等だ!

カヨワイ乙女が住む所じゃぁ無いんだよ兵舎なんか。

そんな気持ちでお屋敷に見学に行ったのだが。



王妃様の指示で整えられたと思われる、ラチャ先生のお屋敷が凄く良かったのだ。


なんと!屋敷のスタッフ(執事やメイド長とか)が、可愛い~~~そりゃあもう可愛い、懐かしい日本の柴ワンコ系の獣人家族と来たもんで!

立ち耳の麿眉のクルン尻尾だとぉ!!

しかも今なら豆ちゃんを思わせるような、可愛いおチビの娘ちゃんがオプションで付いている!!はぁはぁ。これじゃぁ断る理由など無いだろうさぁ!


く~~っ、王妃様に詩乃の思考の仕方とか、趣味やらなにやらモロモロがしっかりばれていて、手のひらの上でコロコロコロッと良い様に転がされている様で・・・不愉快な気分はソコハカトナクするのだが・・・。

モフモフは正義だし?・・・こればかりは仕方が無いね?

と・・・言う訳でお引越しと相成った次第である。


因みに庭師の皆さまは、アナグマ的獣人さんご一家でした。

力持ちだよ!何でも掘り起こすよ!!詩乃はアナグマさんにリクエストして、庭の一等地にシャァクラーの花の苗木を植えて貰った。まだ細い若木だが、詩乃が御婆になる頃には大木に育って花見が出来るに違いないよ!楽しみだな!色は薄ピンクと白の2種類だ!ピンクは八重で白は五弁の桜の木。

記念植樹などの文化を知らないラチャ先生に不思議がられたが、二人の出会いのを記念する木だとか適当な事をぬかして説明したら、満更でもない様だったようなので何よりである。

異世界には花見の習慣が無いからねぇ、啓蒙普及に励もうと思うぞ?


腕利きのコックさんはウサ耳の大男なのだが・・・草系の最弱のウサさんの癖(詩乃のイメージによると)に、華麗に獲物を解体しておりやしたよ、スプラッターなウサさんなんてビックりぢょ・・・サブで働く奥様も兎さんなのですよこれが。

だからなのか、ホールや下働きのメイドは(ウサギは万年発情期?何だっけ?あちらの知識だが)可愛いバニーちゃん達(コック夫婦の娘さんだ、む・す・め)が担当で、これが子だくさんらしくてゴロゴロといるのだ(見分けが付かずに密かに困っているのだが)・・・まぁ可愛くて結構な事である。

流石に彼女達にバニーガールの恰好はさせられないから、オーソドックスなメイド服をお仕着せにしている。スカートは膝丈で頭のギョーザの様な飾りの・・ブリムだっけ?もちゃんと付けてある。可愛いんだぞ!えへん!


因みにこのメイド服は本人達にも周囲にも評判が宜しい、珍しい意匠なので魔術師の御屋敷のメイドと一目で解るようで、街でチンピラに絡まれたりもしないそうだ・・思わぬ効果に驚きだ・・。魔術師ラチャ先生のご威光は、街に住む一般の庶民達にも・・王妃領ランパール隅々まで届いているらしい。

大物なんだね・・・よく解んないけど。


何気に住みやすいよね王妃領って、王都よりナンボか良いと思うな。

活気も有るし、気候も温暖だし、人柄もおおらかな人が多いし?


・・・王妃様も良い土地を分捕ったモノである。



そう!肝心のモルちゃんのお世話係には蜥蜴系の獣人さんが付いた。


ツルピカ同士で心が通じ合うものでも有るのか、人見知りのモルちゃん相手に上手くやってくれて助かっている。

本当はねぇ・・・詩乃自らが相棒としてお世話したかったのだが、モルちゃんがますます成長著しくなって来て、物理的に難しくなってしまったのだ。

鱗が固くなってきて、詩乃のブラッシングでは物足りないそうだ。


『ちょっ・・詩乃ちゃん・・撫でている様でこそばゆいっ!・・・ひやぁうっ!』

だそうである。むぅ。


そう言われちゃったものだから仕方が無い。

かなり力を入れて擦っていたつもりだったんだけれどなぁ、・・・仕方が無いので蜥蜴さん(ラセンさん)にお任せする事にしたのだ。


ラセンさんの家族は代々スルトゥで、パガイさん達ザンボアンガ系の商人隊のドラゴンのお世話を生業にしていたそうだ、子供の頃からドラゴンには慣れ親しんでいるので扱いが上手だ。

何とパガイさんのタンザナイトさんも、ラセンさんが担当していたそうだ。

そう言えばタンザナイトさんの鱗って、手入れが良い感じで、いつもピカピカに光って綺麗だったよねぇ~~~。

この屋敷を整えるに当たり、ドラゴンの世話の腕を見込まれて、何とパガイさんに引き抜かれ、家族から独立して(のれん分け?支店の設立?)単身この屋敷に移り住んで来たのだと言う。

ここの屋敷の周囲はスルトゥと違い獣人も少ないし、故郷を離れるのにはさぞかし勇気が要ったと思うが・・・彼自身が広い世界を見てみたいと希望して、はるばるやって来てくれた。

仕事熱心な彼は、モルちゃんに付いてトンスラ飛行学校にも良く顔を出していて、世話係の職員や騎乗する隊員達と情報交換をしたり、仕事を手伝ったりと何かと出入りをして馴染んでいる。

そんなこんなだからドラゴン達とも顔見知りになり、目出度く御近づきになったりして、楽しそうに・イキイキと・日々忙しそうに働いている。

詩乃から見ると、ラセンさんはドラゴンと絆を結べる機会を、虎視眈々と狙っているんじゃぁ無いかなぁ?。

だってドラゴンを見つめる目が恋する瞳のようだもの!!


詩乃はそっち系の話は自覚の有る鈍チンなんだが、自分以外の事は結構鋭いと思うのだが・・・如何かな?

まぁとにかく、モルちゃんもラセンさんを信頼していて、痒い所に手が届く良いお世話係さんなのだそうだから結構な事だ・・別に・・寂しくなんかないからね!



    ******



「・・あぁ?・・人の話を聞いているか?

其方、食事を取りながら、朝っぱらから眠れるのか?器用なものだな。」


「ラチャ先生、そこは疲れが取れていないのか?大事無いかと・・・心配する方が好感度が上がりやすぜい?」


「そうか、ならば癒しの魔術を・・・」


「遠慮します。」


せっかくの申し出を断る詩乃に、不機嫌そうに眉間に皺を寄せるラチャ先生。

以前にはあり得ない好意だけど、申し訳ないが恩と攻撃を受けたら3倍返しが大西家の家訓だ、無駄に恩ポイントをUPしたくはないので仕方が無い。


「独立空軍部隊が派遣されるだろうとは噂には聞いていたが、其方まで駆り出されるとはな。行く土地はこの国の最南端・・・毎年の嵐の通り道で、難民の船が流れ着くと言う、恐ろしく経営が難しそうな領地だそうだな。土地付きの没落伯爵が孤軍奮闘頑張っているらしいが。魔獣の被害も多いと聞いている。」


「今回はその為の助太刀でやしょう、主な命令は治安の回復でさぁ。

海の向こうの帝国内が内乱で揺れていて、オマンマも碌に食べれないからと、平民の活きのよいのが海賊行為や略奪を引き起こして、ランケシ領地内にまで侵入してくるそうなんです。領内も貧しくて食うや食わずの状態で奪える物など少ないのに、ヘタしたら領民まで攫われて売られそうな勢いなんだとか。数が多くて抑えきれない助けてくれと、王妃様の所に直々に泣きが入って来たようです。まぁ、食いつめた人間を追い払っても、根本的な解決にはならないでしょうねぃ・・・。」


「ご苦労な事だ、精々気を付けて励むことだ。しかし長い出張になりそうだな・・・屋敷も寂しくなるな。」


そう呟くとラチャ先生は、わざわざテーブルを(無駄にデカイ一品だ)グルッと回り込んで、詩乃の前までテクテクと歩いて来ると、おもむろに跪き、詩乃の手をのそっと取ると軽くキスを落とした。


「・・・・・・・・・・・・・・・。」


何でだか、時々発作的に気障ったらしい事をしでかすんですよ、このダイヤモンド並みの硬度を誇る堅物魔術師様は。

どう言うつもりで何がしたいんだか、摩訶不思議過ぎてさっぱり解らん。

ここは頬の一つも赤く染めた方が良いシ~ンなのだろうが・・・。


何だろうね、このラチャ先生の『うむ、俺はやり切ったぞっ!感?』のドヤ顔は?



陰でこっそり「女を口説く100の方法」とかの攻略本でも読んでいて、項目のチェックシートにご満悦に〇とか付けているのが見えるようで・・・とてもじゃぁ無いがトキメク気分には成れない・・・。


実際・・・あんな気障ったらしい事をしでかしておいて、肝心の詩乃の反応には全然無関心なのだ。やることやったらサッサとその場を離れて、秒速で食堂から出て行くし?何なのさぁ?

ポツンとその場に残された、アッシの立場はどうなるん?


そうじゃないだろぅ!

と本の作者がこの場にいたら叫んでいる事だろうよ・・・ORZ.




『お互い離れたら一息つけて、ノビノビとするんだろうなぁ~。」


3カ月ともに暮らして、特に不満や窮屈な事も無かったが、旅の不仲間をしていた時も空気だったよね~~ラチャ先生。


今現在、この屋敷に甘い空気は微塵も無い。






独立空軍部隊に甘い命令が下されるはずが無かったのだが、そんな事も忘れて密かに旅を楽しみにしていた詩乃である・・・すぐさま激しく後悔する事に成るのだが。



ラチャ先生がサッサと部屋を出て行ったのは、顔が赤くなっていたからです。

屋敷のスタッフは生暖かく見守っております。

気が付かないのは詩乃だけだぁ(*´Д`)・・・不憫!


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