表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
76/126

独立空軍部隊~4

ドラゴンは食いしん坊~~~(#^.^#)

「ただいま~~。」

今日も無事に仕事が終わった、トンスラに帰って来るとホッとする。


トンスラのドラゴン飛行学校の中には、冒険者ギルドが支店を出していて、魔獣などを討伐して持って行くと買い取ってくれるシステムになっている。

今日は持ち込みはルイ君の青熊だ、ニーゴさんが倒したから詩乃には報酬は無いが、素材の販売もしてくれているので顔を出したのだ。


『今日の青熊は綺麗な毛並みだったからね・・・。』


ギルドは買い取った後、素材を加工して販売している。

トンスラの関係者には、市価の2割安で売ってくれるのだ。ご親切な事である。

<春の女神の祭り>にトデリを訪ねてみようと画策している詩乃は、御土産を集めるのに余念がない。青熊の毛皮、木工部の偉いさんが好きそうだよね・・・それともヨイさんの(遅くなったけど)結婚祝いにでもしようかなぁ。


ギルドの受付で、この毛皮を買い取りたい事を告げる。

受け付けは勿論綺麗なお姉様だ、其処らへんはお約束である、


「はい、では買取は20万ガルで、お支払いはニーゴ様に。毛皮はシーノン様がご予約で、25万ガルで受付いたします。それで宜しいでしょうか?」


値段が上がっているが、皮を鞣したり、毛皮を綺麗に洗ったりする手間が有るからね、これでも市価より安いのだ。頷いていた詩乃を除けて、後ろからヌゥとニーゴさんが顔を出した。

「買取金額は要らない、肉はドラゴンの調理室に回してくれないか?」


解りましたと、苦笑いのお姉さま・・・そうこれこそが、ニーゴさんの様な自由人が、窮屈な軍などに居なければならない理由なのである。


    *****


バリッバキッ・・・ボリボリ・・・ガツガツガツガツ・・・・・。


今日もゴールディさんは、絶好調の食欲だ・・・空を飛ぶために、体重は軽い方が良いはずなのだが、そんな些細な事はゴールディさんは気にしない。

今日も目一杯詰め込むだけ詰め込んで、満腹になるまで食事を辞めないのだろう。


・・・エンゲル係数高過ぎるよ・・・


ドラゴンを個人で所有出来ない理由は、偏に暴飲・暴食のせいなのだ。3日の食費だけで破産しそうな勢いでお食いになられる、1日でモモウ一頭なんか食べすぎでしょうがよ。

トデリの<春の女神お祭り>では、モモウの半身をみんなで分けて食べていたんだぞ!年に1度のご馳走だったんだぞ!!


「ゴールディさん、モモウは飲み物ではありませんよ?口に入れたら30回は噛みましょうゃ。」


何の事だと、ゴールディさんは目だけギョロリっと此方に向ける。口は染色桶のような巨大な皿?桶?に突っ込んだままだ。


「よく噛みますとねぇ、満腹中枢が刺激されて、少ない量の食事でも満足できるそうですよ?」


目をそらして食事を続けるゴールディさん、聞く気は無いようですね、すいませんね、余計なお世話でしたね?そうですね?


トンスラでは、専用の牧場を完備していて、恙なくモモウやコッコ、プーク、メメイなどの食肉を供給してくれているのだが。


【たまには、何か野趣溢れる、変わった肉が食いたい。】


等と言い出すのがドラゴン様なのだ、青熊を売ってもらえると凄く助かる・・って言ったのはそんな訳だ。


大昔はドラゴンも野生で自由を謳歌し、自ら狩りをして食材を調達していた。

血抜きもせず、生肉をバリバリと、顔を血に染めてムサボり食らっていたわけだ。

それがいつ、どう言う訳かは知らないが、人間と接触する様になって・・・言葉などを交わしはじめた。そんな中、何かの折に人間が感謝の意味を込めて接待したわけだ・・・ドラゴンを。

勿論ドラゴン様への接待はお食事でしょう、酒池肉林とはいかなかった様だが、心を籠めて精一杯のご馳走をふるまったに違いない。ドラゴンも初めは警戒していたが、良い匂いがする事だし、人間もさかんに進めるから・・食べた訳だ・・・人間が作ったご馳走を・・・ウマウマと。

以来味を占め、離れる事なく人間と係り続け、終いにゃあ絆まで結ぶようになったと言う話だ。


・・・飯だよ・・飯・・・結局のところは。


その昔、高位の貴族しかドラゴンと絆を結べなかったのは、単に食費を賄えるのが高位の貴族しかいなかった為だと思うな・・・絶対。他に理由が考えられない。

若いドラゴン達が【ハイジャイに来るのは、嫌な奴ばかり。】とか貶しつつも、居座っているのは偏に美味い飯を食べたいからだ。

今はドラゴン達は国で管理されているから、食事も国から支給されるし、個人負担は無いので下位の貴族やニーゴさんや詩乃のような平民でも絆が結べるようになった。ドラゴン達は食事の質を気にすることなく、好みの人間をGetできる様になったと言うわけだ。


Getしたのは人間かはたまたドラゴンか?永遠の謎だ。


変わった肉が食いたいと言われれば狩りをし、獲物を捕らえ肉を調理させ提供する・・・主などとは聞こえはいいが、実のところドラゴン様の下僕と変わりない。

ゴールディさんはまだ若く、育ち盛りなのだろう、とにかく肉が好きで食べたくて仕方が無いようだ。ニーゴさんは期待に応えるべく、3日と開けず狩りをし、蛋白質の提供に余念がない。

そのうち近所の魔獣が居なくなったりして。魔獣逃げて、超逃げて~~。

それがギルドの受付のお姉さんに、苦笑いされる所以である。


そういえば・・・トデリで大きな海魔獣が討伐された時に、肉を求めて大挙して商船が訪れてきたが。確かその肉、ドラゴンに食べさせるって言っていたよねぇ・・・。


大変だね~~大食らいのドラゴン持ちは・・・。


その点モルちゃんは、そんなに食べないし、雑食のドラゴンの中でもサラダが好きなお洒落さんだ。ただ、果物が好きで・・・毎食、籠一杯はお食べあそばす。

それだけで普通の平民の勤め人、一月分の給料と同じ値段だ。


・・・無理・・・個人でドラゴンを養うなんて絶対無理!


パガイさんのタンザナイトさんは相応に働いている様だが、あのパガイさんがただ飯食わせる訳が無い。ゴールディさんのお食事風景を眺めながら、そんなことを考えていた詩乃は、モルちゃんの済まなそうな視線に気が付いた。


   *****


モルちゃんの視線が気になった詩乃は、御休み前のリラックスタイムに、モルちゃんのお部屋を訪ねた。モルちゃんのお部屋はいつも清潔に保たれていて、良い香りのするハーブなどが寝藁に混ぜられていて、何気に詩乃の部屋より女子力が高い。


「モルちゃん、何か言いたいことが有るでしょう?隠し事は無しだぇ、心は近いけどピッタンコって訳じゃ無い・・・話してくれれば嬉しいんだけど?」

【詩乃ちゃん・・・。】


詩乃はモルちゃんの隣に座り込むと、体を預けて寄りかかった。


「初めて会ったときは卵ちゃんで、アッシの懐にスッポリ入るほどに小さかったのに・・・今じゃぁ、立派なドラゴンで頼りになる相棒さんだ。おっきくなったねぃ。」

【詩乃ちゃん・・・。モルは毎日詩乃ちゃんと一緒で楽しくて、ご飯も美味しくて、何の不自由も無いけれど。詩乃ちゃんは、大嫌いな貴族にならなきゃいけなかったし・・・スルトゥでお店も開けなかったでしょう・・・。】

「いや、どっちにしても王妃様の言いつけで、ほかの街に行かされる羽目になっていたと思うよ?」

【虎さんや、ムースさん。豆ちゃん達の傍に居たかったんでしょう?】


あれ、豆ちゃんの頃、モルちゃんと出会っていたっけ?


【あの日ねぇ・・・世界中のドラゴンは、この世界のモノじゃ無い、異世界の何かを感じたと思うよ。大きな何かと、オマケの様な小さな何か・・・。モルは卵の殻の中で、ずっとオマケの何かを感じて、観察してみていたの。】


詩乃は驚いてマジマジと、モルちゃんを見つめた。


【詩乃ちゃんが大きな屋敷の小さな部屋で、一人寂しさと不安を抱えながら過ごしていた時間・・・勇気を出して外に出て行って、細工物を売ってお金を稼いで喜んだ気持ち・・・大事な誰かを助けるために引き返して、自分はまた閉じ込められてしまった・・あの無念さ。一人で旅をして、たどり着いた北の小さな港町で居場所を作り、友達や知り合いが出来て喜んだ歓喜の心。みんなみんな知っている・・・それでも、また旅を始めた詩乃ちゃんが、だんだんモルに近づいて来て・・・ついに谷に上がって傍まで来て、モルを抱き上げてくれた時の驚きと、嬉しさは今でも忘れられない・・・。】

「そういえば、初めから詩乃って名前まで知っていたよね~。」

【モルの我儘で、詩乃ちゃんを振り回してしまったの・・・ごめんなさい・・詩乃ちゃんは、元の世界に帰りたかったのに。貴族なんか嫌いで自由に生きたかったのに。】


詩乃はモルちゃんの腕をポンポンとした。


「謝る事はないよ、自分で決めた事だ。此処で生きると、あの朝日に誓ったんだ。それにね・・・確かに制約は多いし、軍なんか肌に合わないけど、その代りに手に入れたものが有るんだよ?

それはねぇ・・・モルちゃんとその《力》と《自由》だよ。

オイやルイ君が危なかった時に助ける事が出来たでしょう?アッシ1人ではとてもできない事だ。

あの2人を助ける事が出来て、アッシがどんなに嬉しかったのか、モルちゃんだったら判るだろう?」


オイもルイ君も、詩乃が一番苦しい時に笑わせてくれた、大切な恩人で友人だ・・・あの懐かしい日々は、詩乃の中でいつまでも輝いている。


「それにね、モルちゃんがいるから嫌な事から逃げられる。王都に呼び出されても行かないし、モルちゃんに乗ってサッサと飛んで逃げていっちゃう。

王妃様だってもうアッシに強く言えない、だってモルちゃんと(モルちゃんに甘いドラゴンズ)言う強い味方がいるからね。下手に怒らせて、へそを曲げられたら大変だ。」


クスクス笑うモルちゃん、そうそう・・・笑って、笑って。

何かを得たら、手放さなきゃならないモノも有るのだろう。詩乃の大事な人々は遠くなったが、彼らが幸せに暮らしていてくれればそれで良いのだ。


【ねぇ詩乃ちゃん、もっと冬になって仕事が暇になったら、スルトゥに行ってみようか?あそこならドラゴンの家もあるし、お泊りできるでしょう?クイニョンも近いから、詩乃ちゃん温泉に入れるよ?】

「いいね!トデリは春だから、その前にスルトゥでお土産買うのも良いかもね。」


遠出に許可が下りるかは定かでは無いが、2人はもう行く気満々だった。



    *****



「ヤッホ~~~来たよ~~~。」


いつでも戻って来いと言ったが、本当に戻って来るとは思っても居なかった。

長老はじめ狼族の男衆は、驚き慌ててパニック状態になっている。

喜んでいるのは子供と女衆ばかりである・・・感じ悪ぅ!


「狼に二言は有るまいね?名誉狼族なんでしょう、アッシは・・・この胸元の飾りが目に入らぬか!とくと見ねぃ!」


客間の用意が・・とかブツブツ言い訳こいている銀さん、あんたプチトンスラが増えていないかぇ?


「心配しないでも長居はしないよ、スルトゥに宿は取ってある。

温泉に入れればアッシは御の字なのさぁ、冬は温泉がいっち良いからね、綺麗にして有るかい?すぐに入れるかな?

ほらほら、子供達お土産があるよ~。お母さん達に渡しておくから、後で仲良く貰いな?それから女衆にはスルトゥの布を持って来たから分けると良い。」


王妃領で買うと生地が薄すぎるからね、寒い土地柄のスルトゥの方が良いと思って選んだんだ。男衆が尻尾をダラリと下げて詩乃を見ている、御土産が欲しかったようだ、仲間外れは寂しいものね。


「男衆には海の珍味だ、干した魚とマヨネーズ&醤油。干物を炙ってクルッと丸まった所を、醤油マヨで食べれば旨さにイチコロだぇ?酒も適当に選んで持って来た(ムウアのセレクトだ)長様に渡すから、仕事が終わったら楽しむと良い。

・・・・はいはい、長老様達には紙とペンとインクだ。狼族の誇り高い歴史を書き残すのに良いだろう?よく考えて話し合って書き込む事だ、紙はお高いからねぃ・・デキたら綴じて本にすれば良い。歴史書の完成だ。」


おおおおおぉぉぉぉ・・・・ジジイ共の琴線に触れた様だ、良かったね。




そうして詩乃が気持ち良く露天風呂を楽しんでいたら、

「クイニョンに来たなら染色をしていけ~~~。」

と、怒鳴りながらパガイさんが空から乱入して来た・・・エッチ。



   *****


休暇(自己決定)中はクイニョンとスルトゥを往復して過ごした。

クイニョンでは、染色しながら温泉を楽しみ、子供達と遊んで<お話>を語る、ドラゴンが海賊をやっつけるお話が大ウケだ。


スルトゥではお土産の買い物をしたり、虎さんを雇ってダンジョンに潜ったり、豆ちゃんと遊んだりして過ごしていた。そうそうクイニョンから移り住んで来た女の子は、豆ちゃんの家にホームステイしていて元気に働いていた。スルトゥで良い人も出来て、来春には所帯を持つという・・・振られ男は、ご丁寧にスルトゥまで来て撃沈したようだ・・・合掌!

モウちゃんの家に遊びに行って、お子ちゃまに会ったり・・・モウちゃんは次なるベビーを抱いていた、凄いねぃ。野牛さんはお父さんの貫禄で、子供を肩車しながら畑仕事をしていた。

ムースさんは少し遠い開拓団入った為、会う事が出来なかったが、元気で頑張っているそうだ、彼女もGETしたそうだし良かった良かった。

それから驚いたのはスルトゥにビューティーさんがいた事だ、なんでもハイジャイから出たのはパガイさんの助言があったせいらしい。

詩乃が大佐と結婚しないと、責任を問われる事になるからサッサと逃げろ、行く当てがないならスルトゥで働けとヘッドハンティングを掛けたそうだ。

今ではパガイ商会の秘書として、パガイさんの尻を蹴とばす勢いなんだとか・・・平民ながら文官になった女性だからね有能なのだろう。

せいぜいこき使われろチベットスナギツネ、いい気味だ・・・。

何だかお似合いの2人だが?春でも来るのか?そうなのか????


まぁ、イタリアの金持ち的な休暇の取り方(長期休暇・小学生の夏休み的なアレ)で、のんびりと過ごしていた訳であるよ。



クイニョンの露天風呂で気持ち良く歌を唸っていたら

「ノンビリし過ぎだ、いつまでサボっている、待っている方の身になれ!!」

痺れを切らしたラチャ先生が、上空から乱入して来た・・・・助平・・。


のぞき見ばかりされている詩乃さん、今回は腹筋バキバキだぜぃ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ