表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
73/126

独立空軍部隊~3

詩乃さん・・・荒事に馴染んできました( *´艸`)。

今日も今日とて~~空のうえ~~。


今日は天気が良く遠くまで良く見渡せる、凪いだ海上にはパラパラと数隻の商船が浮かんでいる。軍は守りやすい様に、固まって航行するようにと要請しているそうだが、秋の積み荷は穀物はじめ食べ物が多い。鮮度の関係でどうしても早く運びたくて無理をしてしまう、収穫物は内陸からどんどん港に運びこまれて来るので、倉庫が満杯になってしまうなど、船が揃うのを待ってはいられない事情がある様だ。

今年は悪天候が続き、大陸の方は食糧不足が懸念されているらしい。

幸いにもランケシ王国は、近くに流れる温暖な海流のお陰で、内陸よりは被害が少なく援助ができる偉そうな立場となっていた。


「恩は売れる時に、高値で売っておくものよ?」


王妃様の一言で、ランケシの商人(ほぼザンボアンガ系)は海賊が出る危険な海へと出港していく訳である。人助けは良い事だし、帰りにはそれぞれの国から特産品を安く買って(恩をチラつかせて、買いたたいて。)こられるのだから、良い事だと思うよ?・・・たぶんね。

問題はその品々をかすめ取ろうと虎視眈々と狙う、不届き者の馬鹿野郎が出没する事だ。海賊たちの被害はランケシ以外にも出ているらしく、警備の為の他国の軍船もチラホラと見えている。これは・・・旗を覚えるのも大変だ。


詩乃は<空の魔石>を、近くを進む船のマストの先に振れている旗に向けた。

トップマストにはためく旗は国旗だ、何処の所属か解るようにと、掲げる事を義務付けられている。

途端に不機嫌そうな男の声が流れる、事情通のシェルワの低く小さな声だ。彼は何だかボソボソと話す、不機嫌がデフォルトだが誰も気にもしていない。


「赤に白の対角に交差した線は、デクトェ公国・単なる隣国。」


覚えきれないからね、事情通の知識をライブラリーにして<空の魔石>に吹き込んでおいたのだ。お役立ちの便利グッズだ、隊のメンバーにも配ったが、例によって理系のオツムが邪魔をしたのか、事情通本人は上手く作動できなかった。

・・・怒っていたねぃ、自分の知識なんだから要らないと思うけどさぁ。


「ニーゴさん、ご近所の国だってさ。お愛想の一つもしておくかぃ?」

「お愛想・・・何をする気だ?」

「ドラゴン様を拝めれば、人はそれだけで嬉しいモノなのさ。ニーゴさんのゴールディさんは金色だからねぃ、有難さが桁外れさぁ拝む人もいるんじゃないかぃ?」


今日はモルちゃんはお疲れ休みなのでニーゴさんとタンデムだ、傍には食いしん坊のムウアも飛んでいる。緩い弧を描いて船に接近する、船足が早いスクーナータイプの船だ、荷物はそれほど運べないだろうが生鮮食品には良いだろう。

甲板の上に佇む数人の男達、苦虫をかみつぶしたような顔付きで此方を睨み付けている。

     ほぇ?

グルッと回って最接近・・・今度は高いマストの先の方に近づいて行く・・・帆を操る数人の男達が此方を見ている。


「変だねぃ?」

どうも様子がシックリとこないなぁ。


「どうした、何が引っ掛かるのだ。」

「甲板にいた奴らは、とっとと失せやがれ・・・って顔で睨んでいたけれど、マストに居た船員達は縋る様な顔付きをしていた。」

「どう言う事だ?」


ニーゴさんは人間の顔色など読まないからね、此処は空気を読むのに長けた、日本人の詩乃のカンにお任せあれ。


「どう思う?ムウア。」

難しい顔で船を睨んでいた、ムウアにも声を掛ける。彼はああ見えて記憶力が良い、一度見た人の顔は忘れないと言う・・・絶対顔感・・とか言ったいたな。凄い特技だ、詩乃は未だに見分けが付かない、急に髭ズラになるのは良しなせぃ。


「間違いない、昨日俺達を攻撃した奴らだ。エフルを怪我させたのは、白のシャツに赤いスカーフのあの男だ、魔弾を連射するから気をつけろ。」


乗っ取りか・・・船長等のお偉方達を船底に閉じ込めて人質とし、船のクルーを使って自分の目的地まで航行させる海賊行為のひとつだ。とんでも発奮な行為だねぃ。


「ムウア、近くの軍船に知らせて連れて来て。船は此処で足止めしておくから、こいつらお縄にして引き渡してやろう。」


「おぉ~~勇ましいね~~。」

軽口を叩きながらムウアが飛び去って行った、青に黄色の波型のクロス・・・帝国にタメを張っている、なんたら王国の軍船に向かっていった様だ、引き渡すには最適な相手だろう。


甲板の上では高さが無い為、近くに軍船が居る事にまだ気が付いていない様だ。

逆にトップマストのロープの上に居る船員達は、期待の籠った瞳で此方を見つめて来る。

そりゃそうだ、このまま帝国の港まで行ったら奴隷の憂き目にあって、二度と祖国にも戻れず、家族にも会えなくなるかもしれない・・・いや、会えなくなるのだ、確定だ。


船の行く手を阻むように風上に移動し、進行方向の逆から帆に向かって風を吹かす。その昔、王宮の庭園で庭師のお爺ちゃんに習った、魔力を使った風起こしの技である。船足が遅くなって、停船しそうだ・・・ふふふ・・・海賊共が慌ててる。


「この世に悪が有る限り~~アッシの旅は終わらねぇ~~。何故かと聞かれりゃぁ答えやしょう。悪を滅せよと、命じた方は誰だっけ~~?聖なる光で世を照らしぃ、人々に生きる希望を授けるお方~~。」


久々に語ったけれど、案外覚えているモノだねぃ。

悦に入っていたのだけれど、ニーゴさんに五月蠅いって言われちゃった。


下で何だか騒いでいる、船の居住区から誰か出て来た様だ・・・アイツがボスか?

ボスと思わしき人物は、まだ幼さが残るほんの少年・・・ガキだった。

そんなこんなをしているうちに、王国の軍船が近づいて来た、高さの無い甲板上でも確認できたのか更に騒ぎが酷くなる。ガキは血の気が多いのか怒り狂って、詩乃達に向かって魔弾を撃ち込んで来た。魔力が強いのだろう、自信を持った渾身の一撃・・・が、虹色の膜のような何かに吸収され消えてしまった。


   プシュゥ・・・・。


成功したね~~、相手の魔弾を跳ね返せるのだから、吸収できてもいいじゃん?

そう思って造り上げたアイテムだ、吸収された魔弾は魔力の塊になって膜の中に包まれている。これ、魔石の代わりにならないかな?

ラチャ先生にでも売り付けるか・・・珍しがって買ってくれそうだ。


甲板の上のガキは渾身の一発が消えてしまったので、驚き・慌てて・怒り狂い・地団駄を踏むと、つるべ撃ちに魔弾を放った来た。昨日エフルが怪我した攻撃だな、同じ手でやられるもんか。

幕の中にどんどん溜まる魔弾、この人あんまり頭のいい方ではなさそうだね・・・お偉いさんのご子息ってもれなく地団駄を踏むのかな・・・ドン引き~~~。

魔力は強いがまだ体力が少ないのだろう、途中で息切れして来てハァハァしている・・弱い、弱いぞ!!狼族のガキンチョの方が無限体力でタフだった。


下を見ながらニラニラと笑い、船の周囲を飛んでいるドラゴンと騎乗者に怒りが抑えきれないのか、魔力が漏れ出してバチバチと音が鳴り出した。マストの上の船員が顔色を変える、彼らは平民なので魔力に弱い、このままでは気分が悪くなり最悪マストから転落してしまうだろう。


「手を出すな・・か、難しいね。」


此方が大人しくしているから、いい気になってやりたい放題しているのだ、アホの子は大人が躾けなきゃぁアカンでしょうに。

詩乃は膜に包まれている魔弾をひとつ取り出すと、船を傷つけない様に垂直に海に打ち込み、盛大な波しぶきを吹き上げてガキんちょ達に限定にぶっ掛けてやった。


      ドバッシャアァァァ~~~~


滝のような海水で息を付く暇が無いほどだ、海水の重みで立っていられない・・・敵の前で膝を付くなど武人の名折れ・・・。ガキンチョはかなり頑張っていたのだが、耐えきれず膝どころか体中水圧に負けてクッキーの様にぺちゃんこになっていた。鼻に海水が入ったのか、ゲホゲホ鼻水を流している。お付きの取り巻き達も、同様で水も滴る・・・良い男ではないな。


「この紋章が目に入らぬか!この紋章こそ、聞いて驚け見てひれ伏せよぅ!恐れ多くも有難くぅ、異世界からやって来た、愛と平和の使者こと<麗しの聖女様>の紋章だ!頭が高い、控えおろう!!」


驚いた様に顔を上げる<海賊>の面々たち、ドラゴンに乗っているから、ランケシ王国の兵士だと思っていたのだが<異界の聖女>の直属の兵士なのか?


「・・そういえば、見た事も無い軍服だ・・ランケシの空軍とは違う衣装だ。」


不味い相手に手を出した様だ・・・しかし、控えおろうと言われても、こちらも皇士を抱える身だ。おいそれと悪事を認める訳にもいかないし・・・魔弾は効かないが剣ならどうだ。

腕に覚えがある剣士が、結界を踏み台に此方に向かって大ジャンプをかまし、剣を真っすぐに詩乃に向けて飛び出して来た。


詩乃に剣が届く、僅かな距離・・・いつの間にか剣士の後ろに回っていた(ニーゴさんだって結界を踏み台に出来るのさ)ニーゴさんに、刀の柄の部分で脳天に一撃を食らい沈められていた、頭頂部にこんもりとタンコブが・・・メー〇ルの頭みたいだねぃ。彼は気絶して海に落ちて派手な水しぶきを上げたが、ビヨ~~~ンと詩乃が鞭を使って、一本釣りの様に釣り上げた。取ったぞ~~!!

そのままバンジージャンプの後の様に、ビヨ~~ンビヨ~~ンと上下運動を繰り返しては海に漬けられ、散々っぱら海水を飲み込んだ後、ペイッと放り投げられた。甲板に落下した彼は衝撃の痛さに、釣り上げられたカツオの様にビタンビタン暴れていた・・・活きが良いね。豊洲に出荷したいぐらいだぃ。


そうこうしている内に軍船が到着して、船の真横に横付けされる。大きい軍船だ、略奪されたスクーナーより1段分喫水が高い。海兵隊の兵士がズラリと船縁に並び、剣をいつでも抜ける様に構えている。人数が違い過ぎるね、初めから勝負は決まったも同然だ。

ガキンチョは悔しそうに歯ぎしりしていたが、こうなったらどうにも出来ない。睨み付けていた顔がだんだんと下を向いて、もう敵を見る元気も無いようだ。

目下げられると弱くなるのは、人間も猫も同じみたいだの。


「どこぞの貴公子とお見受けしますが、お名前を賜りたい。」


軍船の船長はジェントルな様で、詩乃の様に無慈悲な恥をかかせまいと気遣っているようだ。貴公子ね?顔でも知っているのかな・・・随分と丁寧な対応だこと。


この船の船長は無事に船底の監禁室から解放され、船員と互いの無事を抱き合って喜んでいる。良いシーンだ、たとえ髭ズラの熊親父同士だとしても。


「こいつらは昨日も近海で略奪行為を働いていた、コイツだ俺のバディを魔弾で攻撃し怪我を負わせたのは。」

怒りに震えるムウア、彼が怒った所を始めて見た。名指しされた白シャツの赤スカーフ男は、馬鹿にして様に鼻で笑った。

「あのような攻撃もかわせない様では、ランケシの空軍部隊も質が落ちた様だな。」


バディを馬鹿にされて、温和なムウアもさらに頭に来たようだ。手を出そうとして、ニーゴさんに止められている。

「どうした、殴って来いよ意気地なしが。」

挑発してランケシ王国を、面倒事に引きずり込むつもりなのだろうか?

なんだかなぁ、こいつらも蜥蜴の尻尾切の命運か?連行された他国の牢獄の中で、非業の死でも遂げれば開戦の口実が出来てお役目完了なのだろうか。腐った奴が背後にいる様だ、腹黒さでは王妃様に勝るとも劣らない感じだねぃ。


「ねぇ、これなんだと思う?」

詩乃が<空の魔石>のアイテムを取り出した、透明な小さな光る石に見える、魔力の欠片も見つからない。

「そんなガラクタが何だっていうのか、魔石が少ないランケシの屑石だろう。」

ふぅ~~ん、帝国にはまだ魔石が多いのか。


詩乃はニヤッと笑うと、空に浮かぶ雲を背景に、今までの一部始終を映して見せた。

あれだ・・・ガキンチョが地団太を踏んで、魔弾で攻撃してきたシーン、滝の様に降る海水にクッキーの様に無様に押しつぶされたところ・・・1本釣りをされた場面では、関係者一同笑いの渦が起きた。


「この石・・ど~しようかな~~。雲は流れるからね、君の雄姿を映したまま世界中の空に遠征すると思うよ?先に攻撃して来たのはあんた達で、海賊行為を犯したのもあんた達だ。証人は世界中の人間だ、どうする?あんた、素直に海賊としてお縄に付くか・・・帝国の一員を名乗って恥をさらすか。好きにすると良い、アンタが決める事だ。」

唖然として雲を見つめる海賊たち・・・特にガキンチョはかっこ悪いところが大写しにされて、顔を真っ赤にして屈辱に震えている。


映像の魔術具などまだこの世界には無かったのだろう、それ故に確かな証拠も作れず、強い者の言いがかりが横行し横車を押してこれたのだろう。

何でも証拠を残しておかないとね、イジメも海賊行為も、痴話げんかもDVも変わらない。

海賊で裁かれれば絞首刑、帝国の一員を名乗れば祖国から良くて追放、悪くて刺客が送られるだろう。同情はしないよ?彼らに殺され傷つけられ、財産を奪われ奴隷にされた人がごまんといるのだから。


軍船の船長は、彼ら海賊たちに魔力の使えない腕輪を付けさせ、拘束すると船底の監禁室に連行していった。商船は証人として裁判に臨むため、まず王国に向かい、それから彼らの祖国に戻るそうだ。


証拠の映像はいずれランケシ王国の魔術部から各国に送るだろうから、そう言い残すと詩乃達はミッションクリアとばかり飛び去って行った。

船員たちの感謝の声と、軍人たちの歓声を背に・・・日が傾いて来た海上をトンスラに向かって。


   「これにて、成敗完了~~~。」「五月蠅い」



ニーゴさん、アンタ本当にイケズだねぃ。


6人のメンバー・・・ハッ!・・・これは戦隊もののポーズが出来るのでは!

詩乃さん密かに考えています、ピンクは詩乃で・・・黄色は誰にする?( ^ω^ )

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ