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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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独立空軍部隊~1   

独立空軍部隊編・・・スタートです。

独立空軍部隊・・名前は大層だが、隊員は若干6名である。


異世界人の詩乃と獣人のニーゴさん、ハイジャイ同期の下位の貴族のメンバーから、食いしん坊のムウワ・耳尖がりのエフル・事情通のシェルワが平隊員。

(詩乃は同じ部隊に配属となって、初めて彼らの名前を覚えた。)

それから伯爵位を持ちながらただ一人、見事に絆を結んだポウワ伯爵が責任者の隊長(曹長)で全員だ。


挿絵(By みてみん)


詩乃と同時期にハイジャイに居た訓練生で、ドラゴンと絆を結べたのは僅か4名であった。この処の最小記録で、軍関係者は絶望の悲鳴を上げていた。

今回は、異世界人の詩乃と獣人のニーゴさんが居た為なのか?差別感情などの貴族の嫌らしいところがマルっと引き出されて、ドラゴン達に大いに嫌われてしまったらしい。反省しろと言われたが、反省すべきはどちらなのか?それが解らない様じゃぁ・・・先は暗いと思うよ?


もともと絆を結ぶと言う事は・・かなり難しい事なのだ、普通の人間にとっては。

彼方の世界でもよく

『私と仕事と、どちらが大事なの!!』

とか、ハニーに叫ばれて困るダーリンが居るかと思うが。

・・・比べようもない事だと思うよ?仕事が無ければ稼げ無いんだから、ハニーの喜ぶ夢のネズミ園にも行けないし、夜景の綺麗な小洒落たレストランで食事も出来ないだろうしさぁ・・・。毎回毎回、牛丼とかカレーを食べさせていたら、今度は文句を言うに決まっている。

・・・そんな理不尽な詰問を・・・する方が間違っていると・・思うよ?


でもねぇ・・・ドラゴンと絆を結ぶと言う事は、それに近い事が求められるのだ。


ドラゴンと、それ(人によって異なる・金・地位・家族・恋人等々)と、どっちが大事なの!!』


みたいな事がシバシバ起こるらしいのだ。

幼いドラゴン程その傾向が強いから騎乗者は大体晩婚である、ドラゴンが自分のハニーを見つけてから、騎獣者が(ようやっと、すでに干物状態・・・この世界では20代後半か?)結婚と言うケースが多いそうだ。

・・・結構我儘で嫉妬深いのだドラゴン様は。

情が深い故か、気に入った人間には喜んで力を貸してくれるが、しっかりと相応の対価(愛情?友情?友愛?)を要求して来るので厄介なのである。

そんな訳だから、ハイジャイの貧乏仲間の能面さんは、嫁取りに意識を向けた為に絆を結べなかった。


ドラゴンの方でも基準があるようで、


絆・・・いつも一緒(生涯を含む)お互いの気持ちを感じ合え、会話が可能。

友・・・用事が有れば手伝ってあげても良いかな?会話は不可、アイコンタクトくらいなら許してあげる。

知・・・気が向けば手伝ってあげよ~かな~?他のドラゴンの頼みなら、手伝ってあげない事も無いけどさぁ。面倒臭いけどね。仕方ないね。


みたいな感じになっている。


能面さんを含む、下位の貴族メンバーの残りは全員<友>クラス。

今はハイジャイに残って、改めてお友達から始めましょう・・をしている。

<友>でも空は飛べるし、隊員として遇されるので給料は良いし、食堂の飯は美味いしで結構満足しているそうなのだ。能面さんは実家に仕送りしたり、彼女さんにプレゼントできる身の上になって大層喜んでいる。舞踏会で出会ったドラゴン好きの彼女さんと、良い感じにお付き合いが進んでいて、彼女の社交界デビューにはエスコートを務めていた。

衣装は貸衣装だったけどね・・・詩乃が提案して、パガイさんに王都で貸衣装屋さんを開かせたのだ。クラスも下位の貴族御用達から、平民の上から下までと幅広く品揃えしているから、結構話題を呼んで繁盛しているらしいよ?江戸時代にもそんな貸衣装屋さんが有ったそうだから、そのくらいの発展状況なんだろう。

彼女にはオマケ様からつまみ細工の髪飾りを贈らせてもらった、彼女は失神しかねないほど驚いて喜んでくれたと言う・・・久々に手芸をして楽しかったし、喜ばれると凄く嬉しいねぇ。

この頃じゃぁ荒事が多すぎて、キャラが変わってしまったみたいで、自分でも怖い感じだったから、自分を見失わない為にもたまには手芸をしなくっちゃ・・と、思う。



他の高位の貴族は<知>までも届かず全滅だった、ただ何人かの貴公子は、自ら休学?を申し出てきた。

1年間、自らの魔力を封印して平民として王領で働いて、またハイジャイに出直して来たいそうだ・・・詩乃がアサイー様に言った助言を覚えていたらしい。

貴族としては有りえない事・・・そこまでしてでも、どうしても騎乗者になりたい彼らの熱意は、確実にドラゴン達の琴線に触れた様で【1年後を楽しみにしている・・。】とか(通訳モル&詩乃)言われていた。

頑張って良い貴族になって貰いたいものである、ドラゴン達も応援しているぞ!!


ちなみに王太子と白さんは・・軽い<友>関係・・白さん育成モード。

プウ師範と黒さんは・・・・・<知>な関係、白さんに頼まれたから・・だそうである。

王太子は大切な者が増えて(嫁とか子だとか仕事とか国とか?)、ドラゴンとはますます疎遠な関係になりそうだし、プウ師範に至っては顔も忘れられていそうな感じだ。

前世の記憶まで持つドラゴンは、不要な記憶はサッサと消去するそうなので、たまにはご機嫌窺いをしないとヤバいと思うな・・・プウ師範。

ラチャ先生の薄緑ちゃんは熟女ドラゴンさんなので、ラチャ先生の危なっかしい繊細なところ(はぃ?)を気に入っているそうだ。あの子の傍には私が付いていてあげないと・・・とか言っていて・・・そうなのか?・・・と思うのだが、本人たちが良いのならそれはそれで結構な事であろう。

あの3人の内で、忙しいであろう中、マメにハイジャイに顔を出していたのはラチャ先だ。人間を相手にするとコミ障なので緊張して(相手が)辛いモノが有るようだが、ドラゴンぐらいがちょうど良い話し相手なのだろう。嘘とか、おべんちゃらとか言わないドラゴンは、ラチャ先生にとっては解りやすい良き隣人で有るに違いない。ハイジャイに居るラチャ先生からは安らぎのオ~ラが見える・・・ますます婚期が遅れそうな気もするがな?案外素朴な獣人さんと、良いご縁が結ばれそうな気がするが・・・気の毒なので提案はしない、勿論気の毒なのは獣人の彼女の方だ。


    ****


まぁ、そんな訳で。

責任者のバンダル大佐をはじめ、サムディン侯爵にとっては大変に頭の痛い結果となったのだが・・・弾かれた彼らからは、ドラゴンにとって魂の輝きが感じられないそうだから。

・・・仕方ないね?


ただ一人の高位の貴族であるポウワ伯爵は、幼い頃に魔獣の侵攻があり、領地も領民も無くした肩書だけのお貴族様なのでホボ平民(いや若干、平民より貧乏かもしれない。)と言った有様だ。

メンバー達は・・高位の貴族のお偉方にとってみたら、大事なドラゴンを横取りしていった、憎い平民モドキ達なのである。

数少ない利点としては・・・失っても惜しくも無い命の持ち主達(うるさいバックがいない者達)なので、危険な任務に就かせて、使い捨ての部隊を作るのにはモッテコイの人材だったって事だ。


・・・まぁ、そう言った理由から<独立空軍部隊>は誕生したのである。


独立空軍部隊の本拠地は、王妃領ランパールの近くの<トンスラ・ドラゴン飛行学校>の中に有る。ドラゴンを休ませ保護する施設が、ハイジャイとトンスラにしかない為だからだ。

これではまるで<独立空軍部隊>が王妃預かりの部隊の様に見えると、サムディン侯爵からは厳重な抗議が有ったのだが、お偉いドラゴン様であるモルちゃんが嫌がったのだから仕方が無い。


「アタチの詩乃ちゃんに、襲い掛かってくるような男の傍には居たくない!の!」


だそうで・・・。

確かに大佐は詩乃に剣を向けて脅して来たが(花婿候補がする事か?)、何故だか不思議な事にだが、異世界人の小娘の返り討ちに会い、貴重な窓ガラスを破壊して放り出される羽目になっていたのだ・・が・ね。

被害は(心的外傷も含む)大佐の方が確実に大きいと思うぞ?

けれどもモルちゃんにしてみたら、そう言う問題では無いらしい。

それがハイジャイを出奔してトンスラに居座った訳である、決して貴族達が噂しているような深慮遠謀が有ったわけでは無い。無責任な噂は尾ひれがついて、どんな風に改悪されて広がって行くのか・・・王妃様が悪者になっているらしい。まぁ、ネットも無いから、丸無視していれば此方は痛くも痒くも無いのだが。



    *****



「ただいま~~ぁ。」


今日も海のパトロールを終えて無事帰還することが出来た、海の上を飛ぶと潮風でベトベトになってショッパイ感じになる。早くお風呂に入りたい処だが、まずは飛んでくれたモルちゃんのお世話が先決だ。

トンスラでは騎獣者がドラゴンのお世話をする、それがハイジャイとの大きな違いだろう。

大事なマイ・ドラゴンを他の人の手に委ねるなんてあり得ない!詩乃の心情では、お世話するのは当たり前の事なのだが、高位の貴族が多かったハイジャイでは違うらしい。

お世話専用の職員が居て、騎獣者がアレコレする事は無いんだそうだ。専用の職員さんもバリィ曹長みたいに熱心な人もいたが、全体的には怖いのか腰が引けてて感じが悪かった。

言葉が通じる絆持ちの方が、的確に要望に応えてお世話できるのに・・・それを自ら放棄するなんて、摩訶不思議な事だと思う。

1日の感想を言いあったり、反省会をしてみたり・・・楽しい時間なんだけどな。

そんな待遇を押し付けているから、ドラゴン達がトンスラの方が良いと口々に言うのだ(モルちゃん情報)。トンスラに移籍希望のドラゴンが多数いるらしい、ハイジャイが消滅しない事を節に祈ろう。


「モルちゃん、疲れたでしょう?お風呂に行くよ~~。」


トンスラにはシャワー式だがドラゴンを洗う施設が有る、それから3日前には詩乃が提案した半身浴の施設も出来た上がった。競馬のサラブレッドがお風呂に入って、気持ち良さげにしているのをTVで見た記憶が有ったから、トンスラでも出来ないかな?と、王妃様に提案してみたのだ。

気前が良かったよ?王妃様・・・。

そりゃそうだ・・・何たって今、海賊の被害を受けているのは、ほとんどがザンボアンガ系の海運業なのだから。王妃様の船も危ない訳だし?船の安全を守っている、ドラゴンの健康に投資するのは当然の事でしょう。


モルちゃんは若いドラゴンだから、体も小さいし・・そんなに遠くまではまだ飛べない、疲れが溜まらない様にケアをする必要がある。


「マッサージ、モミモミモミモミ、マッサージ~~~。」


詩乃は優しい手つきで筋肉に添って優しく揉み解す、洋風なエステな感じのマッサージだね。骨格や筋肉の付き方が解らないから、ハードな整体的な事はまだ出来ない。お兄は道場で骨接ぎ的な事を学んでいたし、何故だか詩乃に実践させていたから、人間相手なら少しはポキポキできると思うのだが・・・此方では男性の身体を弄繰り回すなど痴女扱いで・・・整体の夜明けは遠い感じだ。


モルちゃんは柔らかい、弾力のある良い筋肉をしている、アスリートみたいだね。

翼の被膜にも血管が見えるから、優しくなで擦り、リンパ的なモノを流す様にする。

気持ちが良いのか、モルちゃんはウトウトし始める・・・可愛いねぃ。

そんな時は、詩乃の懐で眠っていた幼い頃と変わらない。

適当な所で切り上げて、寒くない様にタオルで拭き上げ、お肌の保護に香りの良いクリームを塗り込む、薄いピンクの鱗が輝いてツヤツヤだ。むふぅ。


ふんふんふん~~~鼻歌が出る。

休日に車を磨いている世のお父さん達は、こんな気持ちなのだろうか?自慢の愛車をピカピカにして、見てくれこのカッコいい我が愛車を!てなもんで有る。

詩乃の家は皆が乗れる様にワンボックスカーだった、休みに良くお父さんが磨いていたっけな。


モルちゃんと2人になれる、この夕方のお世話の時間は、一日の無事を実感する安らぎのひと時だ・・・何故なら・・・。


「詩乃ちゃん、今日はエフルが怪我だって。」


かなりの確率で、怪我を負って帰還してくる隊員がいるからだ。


詩乃さん・・・シングルの道、マッシグラですかね?

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