表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
7/126

青い森のほとりの村~2

詩乃の言葉が、江戸っ子・花魁言葉に定着してきました。

「お前達いったい何の騒ぎだ!事と次第によっちゃぁ許さんぞ!仕置きしてやる覚悟はいいか!」


うわぁ~~。太って脂ぎったイチゴ鼻の親父がしゃしゃり出て来た。

子供達より小奇麗な格好をしているから、村の偉いさんに間違いはないだろうが・・こちとら食事中だって言うのに無粋な奴だね。

こんな時には大人のプウやラチャが応対するのが普通なのだろうが、ラチャは魔術以外は興味を示さない男だし、プウは何事も筋肉で解決しようとする脳筋だ。

さらに食事中は決して動こうとしないので頼りにはならない、誠に困った男達なのだ・・仕方が無い、此処は子供に見えるだろうが、この詩乃様がお相手するしかないだろう。



「これはこれは、お初にお目に掛かりやす。

アッシども旅の途中で魔獣に襲われ、難儀していた所を此処の子供達に助けられ大変に恩を受けやんした。お礼の一つもと考えて夕食を作らせて頂いたんでやすが。

え~~~と、村長様で間違いないでしょうかね?」


露骨に何だこのガキは・・って顔をしているが、プウもラチャも相手にしないので仕方が無いと思ったのだろう、詩乃に向かって文句を垂れて来た。

誰の許しを・・とか、魔獣をどうしてくれる・・とかね。


「いやぁ、村に青熊が出ているのに、子供らに任せて知らん存ぜぬの対応たぁ驚いたぁねぃ・・この村に立派な長がいるとはチョッとも思い浮かびませんでやした。失礼しましたねぃ」


嫌味が通じたのか、イチゴ鼻が真っ赤になってザクロ鼻になりそうだ。


「ふざけんな勝手に村に入りよって入村税を払いやがれ、水も使ったな水代も払え!薪代も青熊の始末代も全部だ!有り金すべて置いてさっさと出て行け」


何だか山賊みたいな事を言い出した、頭に血が上がっているのか、もともと残念な造りなのか。


「もう日が暮れやす、街道を歩くのは自殺行為でさぁ。

街道を歩く者が避難所にたどり着けない場合は、近くの村に緊急避難して良いと・・これは、王様のお達しでさぁ。王様の決まりを破ってアッシらを追い出して、騎士の詰め所にでも駆け込まれたら難儀するのはどっちでやんしょうね?」


「ふん、夜の街道を生きて抜けられる者などおらぬわ」


「そうでしょうかねぇ、どうお思いかい?プウさんや」


話を振られたプウさんは(断じて例の可愛いアレでは無い)のっそりと立ち上がり、2メートル10センチの上空から村長を睨み下ろした。

ジト目はなかなか迫力があるが、口の周りにカレーが付いている所が残念だ。


「な・なんだ・・脅す気か!こっちこそ騎士や兵士を呼んでもいいんだぞ!」


叫ぶな、唾が飛ぶ・・・イチゴ村長。


「そうしてくださりゃぁ、話が早いわ・・此方は別に構わんでやんすよ?」


くそぉ!覚えてろ!!・・村長は悪役のお約束を叫んで退場していった。

解りやすい悪役だね蜥蜴の尻尾感が半端ない、せっかく楽しく食事をしていたのに子供達の笑顔が固まってしまった・・イチゴ村長め!許さんぞ。

安心させるように子供達に声を掛ける。


「心配はいりやんせん、青熊は明日知り合いの商人に引き取ってもらうし、今日は魔力の強いラチャ先生がおりますからねぃ。魔獣も寄っちゃ来ませんやぃ。

安心して飯を食いなんし、お代わりは数人分しかござんせんよ誰が食べるかねぃ?

早い者勝ちでやんすよ?」


子供達はプウやラチャを見ると、安心したのか急いでまた食べ始めた。

ほらほら咽るほど掻き込まないの、背中をトントンしてやり目の前で水を出して飲ませてやる凄く驚く子供達。えへへ、すこ~し子供達に尊敬されたような気がする。ほら、私だって聖女様と同じ色なんだから、少しは良い所見せないとね。


『それにしても6男の奴、遅いな・・何しているんだろう?』


仕方が無いので取り敢えずの処置として、青熊と鬼ウサギはラチャに頼んで保存の魔術を掛けて貰う。だって売るには鮮度が大事だし!何たって自力で費用を稼がねばならないのだ、王妃様にも文句は言わせないよ。



村の外れにテントを立てさせてもらい、今夜はそこで休む事にした。

家の中にまで入ると、またイチゴ村長に入家税?とか取られそうだしね。

それにしても勝手に新たな税金作るなんて、何を考えているのだろう?


お前は国家か?


大人が一人も居ない、子供と老人だけの村・・・異常だよね。

・・・何が起きているのだろう?何でみんな、フツーに幸せに暮らせないのかな・・そんなことを思いながら、その日は眠りについた。



****



 昨晩は何やらガタガタと五月蠅くて眠りが浅かったような気がするが、詩乃は基本快食・快眠・快〇である。今日もいい天気だなぁ、畑日和だぁ。

むぅ、お腹がすいた。朝起きるともう腹ペコなのはどうしたことだろう?昔は朝食抜きで学校に行ったりもしていたが・・そうか、深夜までポテチを食べたり、カップ麺食べたりしていたものなぁ~。今は健康的な生活と言えなくも無いのか?有難くも無いけどさ。ポテチ食べたい、ギブミーカップ麺プリーズ!


朝食を作ろうと、村の共同の竈に向かう途中に変な物を見つけた。


「人間団子?」


夜中のガタガタの発生源なのか、人相の極悪なおっさんが数人のされて団子状に固められている、これはプウとラチャの愛の共同作業だねぇ。

まぁ、性格はアレでも、少しは頼りになるのかもしれない防衛面に特化だけど。


団子は気にしないで朝食の作業を始める、村人たちはまだ眠っているようだ、トデリの習慣の早朝起きはここでも健在のようだ。

火を熾して昨日のスープを暖める、風を使って骨についている僅かな肉も取り除いていく、ついでに骨も折っておく。こうしますとね骨の髄がスープに出て来てコクが増しますのよ奥様、灰汁を取る為に屑野菜も投入する、昨日の残りの〇ネージュの皮とかで構わない。灰汁が出てきたら掬って、ついでに骨折した骨も取り出していく、風を使っての選別だ魔力もこんな時は便利で良いよね。

良い匂いに気がついたのか子供達が竈の傍に寄って来た、半分目が塞がっているのに食欲は全開のようだ、お腹がグ~~グ~~鳴っている。


「おはよう、今日も好い天気になりそうだねぃ」


ウンとかハイとか言っているが、心ここにあらずで目はスープに釘づけだ。

そのうち敏い一人が人間団子に気が付いた、驚き過ぎて髪が逆立っている。


「うわぁ、こいつら!!」「げえぇ!!」「村長の用心棒だ!」


うへぇ、村長が用心棒を雇って何してんだ?益々胡散臭いイチゴ鼻だ。


「昨夜プウさんとラチャ先生が始末したんでしょうねぃ、人相の悪そうなおっさん達だが、村長とはどんな関係なんだぇ?」


子供らは次々と訴えてきた。

去年伯爵様とか言う偉い人のお達しで、代官様と言う感じの悪い奴が突然村にやって来たのだと言う。その代官様が大人達に命令して、この村に新しい村長を無理やり置いていったらしい。それが昨夜のイチゴ村長だ、村長は村に居座ると勝手な事をやりだした。

税金を上げたり労働に駆り出したり、勿論村人は抗議もしたし抵抗もしたのだが・・村長は用心棒を雇って居た為に敵わなかったのだそうだ。

税金が上がり生活が苦しくなり払えない村人が出てくると、今度は法外な口利き料を取って出稼ぎを斡旋して来たそうだ。


「父ちゃんは何処かに連れて行かれて全然帰って来ないし、初めは来ていた仕送りも届かなくなったんだ。オレ、父ちゃんが怪我や病気でもしたんじゃないかって・・凄く心配で・・」


フ~~~ム、これは悪質だわ。


「母ちゃん達はどうしやした?やっぱり連れ出されたんかぃ?」


「母ちゃんたちは村長の家や代官の屋敷で働いている、でも全然返してもらえなくて・・オレ達子供は爺さんや婆さんを手伝って、頑張って畑をやっているけど・・まだ小さいから・・駄目なんだ。麦が取れないとまた税が払えなくなって、金を払えと責められるだろうし・・」


チビはそう言うと心配そうに姉ちゃんの方を見た。

・・・うん、田舎には珍しいくらいの美少女だね。

イチゴ村長め、今度は美少女を差し出せと?これはイケない、許せない。

美少女は地域の宝、この厳しくも生きにくい異世界のオアシスだ保護しなければ!

特別天然記念物にして絶滅危惧種に認定して・・・。


そんな事を決意しながら、乾燥野菜と御存じ小麦粉団子を投入する。

異世界すいとんの出来上がり~、空の鍋をガンガン叩いてお知らせをする。


「ごはんで~き~た~よ~~お椀持っておいで~~」


プウとラチャも起きて来た、寝不足なせいなのか顔がいつにも増して怖く殺伐としている、さすがの子供達も近寄りがたい様だ。腹が満ちれば人相も少しは良くなるだろう、仕方が無いので特別に先によそってやった。猫舌のプウはすぐには食べられないだろうがね・・・ぷーぅクスクス。

そんな中、チビが風を使って自宅からお椀を浮かせて持ってやって来た。

一日で凄い進歩だね~、ラチャ先生の目にも留まった様で「ウム」とか言って頷いていた。なんだかんだ言って熱心に学んで出来のいい弟子は可愛いのだろう、ラチャの人間性の改善はこの辺から攻めた方が良いのではあるまいか?


打ち合わせを兼ねて3人で朝食を取る、詩乃はさっき子供達から聞きこんだ村長の話を伝えた。


「あの6男がさっさと来ないのも気になりますのさ、何か調べて掴んでいるに違いありやんせん。しばらくこの村に逗留して様子を見ましょうねぃ」


異存はないと頷く二人。


「そこででやすが、お二人にゃぁ、やってもらい事がござんすよ」





 こうしてラチャ先生の実践・暮らしに役立つ初歩の魔術教室と。

プウ師範には、元畑・現荒れ地の掘り起こし・・あれだ、昆虫魔獣の時にやった<どっこいしょ~~>だ作業をしてもらう事にした。



私?私は女の子達を集めて秘密の作業だ、女の秘密だからね見ちゃだめだよ。

次回、悪代官と対決か?!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ