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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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サムディン侯爵の舞踏会~2

異世界の合コンは大掛かり・・・クスッ( *´艸`)

それは大変に荘厳な風景でした。


ドラゴン様が次々に舞い降りて来て、騎乗者を降ろすとまた直ぐに飛び上がって行きます。一連の動きが流れる様に、まるで舞い踊っているかの様に綺麗で無駄のない動作なので、貴婦人たちはホウッ~~と感嘆のため息を漏らしています。

ドラゴン様初め、飛行兵の皆様は本当に凛々しくいらして、メイドさん達が騒ぎ憧れるのも無理からぬ事だと思いました。


「青の軍服は絆を結んでいる正規の飛行兵、白は訓練生達よ、狙い目は白ね。

青は既婚者がほとんどだもの、それにね・・何故だかドラゴン様は高位の貴族がお嫌いな様よ。青はほとんど下位の貴族なはずよ。」

「まぁ、そうなの?王太子様は白い大きなドラゴン様に乗っていると聞いたことが有るけれど。」

「王族は特別なんでしょう、第1王子様は雅な方だから、ドラゴン様の騎乗者になる気は無かったらしいけど。高位の貴族も後継ぎの長男には騎乗者を進めないらしいわ、空を飛ぶなんて危ないし、戦になったら真っ先に出征ですものね。だから絆を結んでいない今しか、高位の御子息との交流できないのよ。」


彼方こちらで<騎乗者の君>の噂話が姦しく飛び交います、皆考えている事(下心)は同じな様です。

それよりも私はオマケ様の事が気になりました、舞踏会ですものドレスで来るのかしら・・まさか、軍服?ドラゴン様にドレスで乗れるのかしら?

エスコートはどなたなのかしら。

両親が感謝している事を伝えたいな、・・・そんな気持ちもありました。


     「何だ・・・あれは・・・。」


何方かが呟きました、その先に見えたお姿は・・・。




     *****



舞踏会の3日前、詩乃の部屋でビューティーさんは酷くジレていた。

このところ詩乃が態度悪く、ビューティーさんを無視しているからだ。


「シーノン様、王妃様より舞踏会でお召になるようにとドレスが届きましたよ。お直しの必要もあるかと思いますので、一度試着なさって頂けますか?」


恐るおそる話しかけて来るビューティーさん。


そりゃそうだ、詩乃の手には菊一文字則宗が握られているのだから。

日本刀の青みがかった刀身を見るのは怖かろう?<空の魔石>で造ったから手入れの必要も無いのだが、TVで見た耳かきに付いている<ポンポン・梵天だったっけ?>のデカいの?みたいのを造って、手入れの真似コスプレに忙しい今日この頃の詩乃なのだ。ごちゃごちゃ五月蠅く言われて煩わしい時には、ブスッと黙り込んで道具の手入れでもしていればいい・・これは詩乃のお爺ちゃんやお父さんが良くやっていた説教の封じ手なのである。

このところ詩乃は菊一文字則宗を手に、難しい顔をして沈思黙考を貫きビューティーさんをガン無視している。説教などノウサンキューだぜぃ。

いかにビューティーさんでも、馬鹿デカイ肉切包丁を手に、不機嫌を前面に押し出した相手には説教は出来ないらしい。

詩乃は某泥棒の五〇衛門を意識して、刀を手に黙って返事もしない・・・内心調子に乗っているのだ。

『今宵の菊様は、切れ味が違うぞよ・・・。ちゃって。』


「素晴らしいお品です、ご覧くださいませ。」


ビューティーさんは腹を括ったのか、箱からドレスを引きずり出した・・・裾が長いからズルズルだ、お引きずりか?。白のドレスが不思議な事に、光を受けると虹色に輝いて見える・・・この糸は見た事が有るな。


『魔虫の糸で織った生地だ・・・この刺繍は・・・。』


何種類もの青い糸で小さく沢山のバララの花が刺繍されている、この刺繍糸はクイニョンで詩乃が<空の魔石>で染めた魔虫が作った魔糸のものだ。

クイニョンで布はまだ織れないだろうから、他の狼族の街で生産された物だろう。

刺繍は何処でしたのかな?狼さん達はまだこんなに上手く無いだろうから、スルトゥでやったのかな?チベットスナギツネめ、稼いでいるな・・・まぁその儲けがクイニョンやスルトゥに還元されれば文句も無いが・・・あぁ温泉入りたいなぁ。


この貴重で高価な布のお披露目を何で此処(サムディン領&詩乃)でするかな?

普通は聖女様にさせるだろう王宮でさぁ・・・詩乃の評価が随分と上がっているのだろうか、イヤイヤたぶんモルちゃんを得た事が大きいのだろう。

忘れ去られていた詩乃の存在を、今更オープンにして何を企んでいる?

・・・・腹黒王妃め。


ドレスを睨んだままブスくれている詩乃に、ビューティーさんが更に駄目押しをして来た、彼女はすっかり調子を取り戻した様だ。


「当日のドラゴンの騎乗はタンデムで、エスコートはバンダル・サムディン大佐と決定しておりますが、シーノン様は・・・その意味を、お判り頂けておりますでしょうか?」


はぁ?


「お解り頂けませんか?バンダル大佐は独身でいらっしゃいます、そう言う事です。ドラゴンを預かるハイジャイの責任者ですから、大変良いご縁ではないかと思いますよ?王妃様もお認めになっておられますし、私も謹んでお喜び申し上げます。」


へっ?


「幼いドラゴンを気遣う周囲のドラゴンの様子を鑑みて、お二人はこのハイジャイに必要な人物と判断された様ですね。次男とはいえ侯爵家の一員、大変な玉の輿だと思いますよ?」


はぁ~~~ぁ?


「バンダル大佐は貫禄がありますから、年上に見られがちですが御年34歳の御若さです。まぁ少しシーノン様とは・・・年は離れていますが。ロリコンと爺選ではロリコンの方が恥ずかしいでしょうに・・・バンダル大佐も御気の毒な事。」


詩乃がガン無視しているので、ビューティーさんもだんだんと毒舌になって来た。


「よその誰とも知らない貴族に嫁ぐより、此処ならモルガナイト様とも一緒にいられますし、良いご縁ではないかと言っているのですよ!仕方が無いではありませんか、貴族でなければドラゴンは所有出来ないと国法で決まっているのですから。」




「失せろ。」


詩乃は刀をことさらに見せつけて、ビューティーさんを部屋から追い出した。


『モルちゃんの怒りに、ドラゴン達が反応したのがマズかったのかな~~。

モルちゃんを使って、他のドラゴンを操るとでも邪推されているのか、あの脳筋サド男の大佐が考えそうな事だよ。まったくもう。』


それにしても・・・詩乃を囲い込むのに、わざわざ嫁にしょうなんざぁ~恐れ入り谷の鬼子母神だねぃ。王妃の発案なのかな?・・・バンダル大佐が真正のロリコン(ロリじゃぁないけど)とは思えないし。


【モルちゃん?聞こえる?あのさぁ、バンダル大佐のドラゴンさんに、大佐の事を聞いてもらえる?どんな人なのかとか、私生活はどうなのか・・・とかさぁ。】



暫くして

【詩乃ちゃん、あのね・・・バンダル大佐は非公式にだけど、A級平民の奥さんと3人の可愛いお子さんがいるって。凄く仲の良い家族なんだって・・・。】

酷くすまなそうに、モルちゃんが答えて来た。


      = 舐められたもんだねぃ、ふざけんな =


詩乃はドレスを睨むと、菊一文字則宗で一刀の下に切り裂いた。



    *****



噂のオマケ様の登場に、貴族達は凍り付きました・・・なんと黒い大きなドラゴンを女性ながらも単独で操り、エスコートも無しにスルリとドラゴンの鞍から舞い降りた・・・そのお姿に。


女性がドラゴンを操るなど前代未聞な事と、半信半疑な貴族もおりましたが。

本当に女性が騎乗者になれたのだ・・・と皆、思い知りました。

中立派のサムディン侯爵の空軍に、聖女様のオマケ様が在籍すると言う事は、空軍が聖女派・王太子派の傘下に下ると言う事なのでしょうか?

・・・ザワザワと貴族達が話し合っています。


更に驚いたのが・・・その見た事も無い意匠の衣装です。

異世界のお衣装何でしょうか?不思議な感じなお衣装なのですが、何より・・・男性の衣装なのか女性の衣装なのか分かりません、どちらにも見える不思議なお衣装なのです。


「何を考えているのか・・・。」


恰幅の良い渋い男性が呟きました・・・。

大変です!あの方は確かサムディン侯爵様です、私がお屋敷に到着した時に、ご挨拶をさせて頂き、お顔を拝見いたしましたから間違え有りません。

・・・と、言う事はこの一連のハプニングは、侯爵家の知らなかったドッキリなのでしょうか?


オマケ様の上半身を覆う上着は、直線的ですっぽりと被った様な不思議な意匠です、袖も広く垂れ下がっており、袖口の白い生地には青いリボンが波線のように付けられています。

肩の部分は何故か切れ込みがあり、下に着込んだ青いお衣装が見えています。

下半身の部分はまた不可解です・・・あれはスカートなのでしょうか?それともズボン??ヒダの有るゆったりとした、まるでスカートを二つ身に着けているような・・・そんな感じの衣装なのです。

やはりズボンなのでしょうか?分かりません、真っ青な夏の空のようなお色です。

・・・良く見ると同色で、沢山の小さなバララの花が刺繍されており、大変に手が掛かったお衣装であることが解ります。

髪は・・・成人は過ぎたお歳と聞いておりましたが結い上げる事も無く、頭の高い位置で綺麗な水色の細い紐でリボンの様に縛り、黒い御髪をマウの尻尾の様に下げています。

歩くたびに黒い艶やかな髪と紐の房飾りが揺れて、大変にきれいです・・・が・・・この髪形も見た事がありません、やはり男性か女性か・・・解りかねる中性的な雰囲気を醸し出しています。

お顔はお化粧はしている様ですが、此方の女性の様にクドクは無く、切れ長に入れられたアイラインと、ごく自然な感じで頬と目じりにほんのり紅を差されている様です。口紅は・・・自然なオマケ様の本来のお色のような、ごく薄い紅が差されており大変に美しく仕上がっています。

聖女様もそうだと伺っていますが、異世界のお方はみな薄化粧なのですね。

良い事だと思います、化粧品は高価ですし・・・何よりも厚塗は、皮膚呼吸が出来ないようで息苦しいのですもの。




小さな情報を膨らませて、邪推もうそうしながら考えるのが貴族の常ですが。

私のような者にはオマケ様のご心中など解りかねますが、ご表情が・・・自信に溢れた力強いその眼差しが。貴族の常識など軽く超えて、気にもせずに<ブッと飛ばしてやったぜ>みたいな態度に見えて小気味い感じがいたします、私が平民に近い貴族の為でしょうか?


「何なのよ、あの衣装は・・・非常識だわ。」


セリィが憤慨しています、男女の別を厳しく躾けられ、スカートを脱いでズボンを履くなど考えられないのが此処の世界の女性ですからね、

・・・・異世界では違うのでしょうか?

魔術具の光を受けてキラキラと、虹色に輝くその生地は何で出来ているのでしょうか?

私などには、苦しく感じられるほどの魔力を宿している様です・・不思議な生地です。


「魔布だ・・・高価な魔布をあのように惜しげもなく使うとは。バックに聖女や王太子が付いているという噂は本当だったのか、しかし・・・何で今頃になって・・・。」

   

    オオォオォ~~ッ・・・。


貴族達・・・いいえ、それ以外も、此処にいる人間はすべて驚いた事でしょう。

ドラゴン様が、仔馬ぐらいの大きさのドラゴン様が、オマケ様の傍に寄り添いエスコートするかの様に歩きだしました。

なんと!そのまま舞踏会のホールに入って来ます。

絆が結ばれているという噂は本当だった様です、オマケ様はドラゴン様の肩に軽く手を掛け、見つめる貴族達に動じる様子も無くホールを進んで行きます。大海原を進む船の様に、白波の如く貴族達を左右にかき分け、道を譲らせて真っすぐに上座に向かって進んで行きます。




「凄!かっけー!!」


思わず漏れた私の言葉を、後に続く訓練生の方にクスリと笑われてしまいました。

恥ずかしい・・・やっちゃった・・・御免、父ちゃん母ちゃん婿取りは失敗だぁ。


詩乃の衣装は誰のコスプレでしょうか?(#^.^#)

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