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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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ズルは恥だが役に立つ~3

お読みいただき有難う御座います。

<カササギ?>の数字が増えていて嬉しいです。


また座学ですよ・・・どうして食事の後に座学を持って来るかな?


小学生の頃の・・・3~4間目にプールで目一杯遊んで、給食をたらふく食べ、5時間目で天敵の算数?そんな感じだ。

眠いよ・・筋トレの疲れが今頃になって出て来たのか、眠くて眠くてたまらない。

王家の歴史なんか興味は無いし、~~王の血筋がどうのこうのと言われても、だから何?って感じだ。貴族には大事な勉強なのだろうが、詩乃にはおよそ関係の無いどうでも良い情報だ。王様よ、奥さんをとっかえひっかえするのはよしなせぃ。

早く終わらないかな・・・。

数学の時間を思い出すような、不毛感に苛まれる拷問の様な2時間だった。


やっと授業が終わり、生あくびを噛み殺す詩乃に、馬鹿にした様にアサイー(もう呼び捨てだ)が嫌味を言う為にワザワザとやって来た。マメな奴だねぃ。


「お前の様な下賤な者には、関係の無い話だったな。」

相手にする気も起きないのだが、無視していると不敬だと言われるし・・・鬱陶しい事この上ない。何なんだよぉこの坊ちゃんは。

「飛行部隊隊員になる以上、この程度の知識は必要不可欠な教養だ、故に隊員は貴族である事が求められるのだ。解るか?その事実をカラッポの頭に入れ、身の処し方を考える事だ。」

自慢げに語る所悪いんだが・・・。


「そうでやすかぃ?しかし爵位や身分は所詮人間の作り出したもの、ドラゴン達には関係の無い話でござんしょう?」

「なっ!」

「ご忠告いたしやす、ドラゴンは人間の身分の良し悪しなんざぁ気にもしやせんぜ、そんな事は人間の都合だぁ。ドラゴンには関わり合いの無い話なんでさぁ、伯爵家のお坊ちゃんだからと言って、ドラゴンに特別扱いされるなどとはユメユメ思い召さるな。」

「貴様!無礼だぞ。」

「アッシは王都の外で、商人と仲良くして、喜んで協力しているドラゴンを何頭も見てきましたが・・・。ドラゴン達は別に、貴族様だけを選んで絆を結んでいる訳ではござんせんよ?」

「平民共がドラゴンを誑かして盗んでいるのだ!ドラゴンは昔から貴族のモノ、ドラゴンの所有は貴族である証だ!」


話が通じない・・・宇宙人と話している様だ。


「アサイー様、ドラゴンと絆を結びたいと本気でお考えなら・・・ドラゴンに好かれる人間になる事です。此処には良い前例の方々いるでしょう?すでに絆を結んでいる先輩の隊員達でも良い、ニーゴさんでも良い。彼らが持っている良い所を参考にして、ドラゴンの視線で考える事です。人間の物差しで測って<良い自分>でいても、彼らの琴線には触れやしません。」


詩乃の真摯な忠告にアサイーは憤慨して、詩乃の席を蹴とばして去って行った。


『救いようがないな・・・どんだけお坊ちゃんなのだろうか。』


しかし何人かの高位の貴族は、詩乃の言葉に深く考え込んでいるようだった。

下位貴族の面々も、頷きながらニーゴさんを見つめている・・・。

・・・居心地が悪そうなニーゴさん、ごめんね?でも本当の事だからさぁ。

詩乃は別に高位の貴族の子息に恨みなど無いし、ご希望通りに絆が結べる事が出来れば、それはそれで目出度い事だと思っている・・・素直に忠告を聞いてくれれば良いが。



ドラゴンに好かれる人間か・・・魂の煌きが好きだと言っていたなぁ。

詩乃がトデリから出て王妃領に入ってから、常に身近にドラゴンがいた・・・プウ師範の黒さんやラチャ先生の薄緑、6男のスモーキーちゃん・パガイさんのタンザナイトさん、飛行船を引っ張る大勢のドラゴン達。ドラゴンがそんなに特別な存在だとは思わなかったんだけどな?みんなモルちゃんにも親切で、気の良いドラゴンが多かったし。

むしろ絆を結んでいる、人間サイドの方が厄介な奴らだろう?

基準が解らん・・・どいつもこいつも、個性的で自己中で、オンリーワンな奴らばかりの様な気がするが。ドラゴンは変人が好きなのだろうか・・・?

イヤイヤ・・自分は変人では無いし・・と、詩乃は<はぁ?>とあちらこちらから突っ込みが入りそうな事を思っていた。


   ****


そうしてとうとうやってきました、恐怖の時間・・・剣の鍛錬だ。


目立たぬ様に端の方で見学していると、フルアーマーでガッチョガッチョと歩いている高位の貴族たちが居る、どこぞの錬金術師の弟さんが大量発生したようだ。

重そうで動きにくそうに見えるが、魔術具で出来ているアーマーなので、見た目より軽くて動きやすいらしい。補助に沢山魔石を付けているので、何気に派手で神話系格闘漫画のアニメ版の様である。

魔剣に自分の魔力を集中させると、アーマーの結界などの防衛面に力を回せないそうで、その補助を魔術具と魔石に頼っているそうだ。例によって魔石の色は濁った、プラスチック製のお子様ビーズの様だが。

自慢げにしているが、こう言っちゃ悪いが・・つまるところ、押し出す事しか考えていない、攻守のバランスが悪い戦士って事だろう?


『それにしても、みんな張り切っている為か・・・ノイズが酷いね。』


一人一人のノイズは小さく弱いが、数が集まると結構な騒音だ。

『教室の自習時間みたいだな・・・装備を使ってこれか、対抗策を考えて来て良かったよ。』

詩乃の耳に付いているイヤリングは、貴族のノイズに対抗するように、ノイズと反対の音波を出す事で音を打ち消す様になっている・・・TVの高速道路の騒音対策で見た、何とか教授の研究を参考にしたモノだ。


剣やアーマーは、自前の物を使いたいと事前に頼んでおいたので、詩乃の今の姿は他の皆とかなり違い異質感が満載だ。騎士服の上に着ている作務衣のような上着は黒で<パワーストーンのオニキスで出来ている>、刀を差している帯は昔トデリで使っていた真田紐の赤白の縞々だ。脛と腕にはやはり<オニキス>で造った、手甲と脚絆が付いている。これには早く動けるように、こっそりと<ドーピング>の力を付けてある。

イメージとしては「くノ一」かな?額には鉢金を巻いて、髪は高い位置でポニーテールにしてある。刀をもったら総髪・・・ポニテでしょう?


「妙なかっこだな、とてもじゃないが騎士には見えない。」

お高そうな装備に身を包んだ、高位の貴族が話しかけて来た、この人は・・・食事の後、お片付けをしていた内の一人だな。モブっぽいが。


「アッシの世界では、戦う人間は色々な種類がいましてねぃ・・・アッシにはこの感じが合うと思いやしてね。重量級ではなく、軽量級の速さがウリのトリックスターを目指しやす。」

嫌・・・出来れば、荒事なんかせずに微笑んで座って居たいのだが?


「防衛を軽視していると、痛い目に遭うぞ?此処の連中は手加減などしない、お前は目障りな存在なのだ、もう少し自覚せよ。」

それだけ言うと去って行った・・親切さんなんだろうか?できれば<此処の連中>の方に、レディに対する心構えを自覚させてほしいものだが?


フルアーマーなど邪魔なだけで、スピード特化の自分には不要な装備なのだ、厳密に言うと純粋なスピード特化では無いのだが・・・傍から見るとそう見えるかもしれない・・なっ?・・という作戦だ。




装備を付けたまま素振りや、木に藁を巻き付けた人型の人形に打ち込みをする、人形相手でもいい気持ちはしない。肉ギャースとは戦ったが、あれは自己防衛で此方から仕掛けた訳では無い。

闘うなんて本当は嫌いだ、皆を守る為に戦っただけなのだ。

・・・それなのにだ。


「シーノン、最初だから私が実力を見てやる、それで入る組を決めてやろう。」

出たよ・・・大佐。


大佐は軽装備だ、腕と手に小手のような覆いをしているだけである。まぁ、詩乃ごときの相手にはそれで十分と言う事か・・・そうだよね。


大佐と向き合い騎士の礼をして、詩乃は腰からスラリと刀を抜いた・・・菊一文字則宗・・・幕末の病弱美少年剣士の刀である。虎さんが鬼の副長の刀<和泉守兼定>・・・詩乃が弟弟子の刀で<菊一文字則宗>・・・良いじゃないか!!誠の道を進むぞぇ!


この世界では剣は片手で持つ物で、剣道の様に両手で刀を構える詩乃のスタイルは奇妙に写った様だ。笑い声が起こった、馬鹿にしたような胸糞が悪くなるノイズを伴いながら。


『剣道はやった事が無い、竹刀や木刀はお爺ちゃんの物を触った事が有るけれど。』

・・・ただ、時代劇の殺陣ゴッコは・・・家庭内のブームでかなり遊んでいた。プラスチックの刀で、踊るように殺陣ゴッコをしたものだ・・・爺婆と、小学生低学年の頃の思い出だ。


「行くぞっ!」

気合一発、大佐が突っ込んでくる・・・無防備に立ち尽くす詩乃に、大佐の剣が当たりそうになる・・・しかし、ほんの僅かな間で詩乃は攻撃をかわした。

ほんの数センチの間隔で、剣をかわす詩乃に周囲は驚きの声を上げた。


「ほぅ、なかなかやるな・・・。」

ニヤリと嬉しそうに笑う大佐、サド心全開の様だ。

大佐はさらに剣のスピードを上げ、追い詰める様に突きを繰り出すが、スルリヌルリと詩乃は除け続ける、大佐の突きは当りも掠りもしない。

・・・そりゃそうだ。


【詩乃の騎士服や体全体には、体から3センチの離れた空間に、防衛に特化された結界が張り回らされている。攻撃は結界に弾かれているのだ。反撃はしない・・・結界ズルがバレると後々面倒だし。】


相手の剣が当たりそうになると、その圧力で・・・水流に押されるごみの様に、体が勝手に流され動く様になっている、それが間一髪の間合いで避けているように見えるだけなのだ。決して余裕があってやっている事では無い、むしろ大佐の剣の圧力に押されて、木の葉の様にクルクル舞い躍って目が回る。


「逃げているだけでは敵には勝てないぞ、打ち込んで来い!」

『無茶言うオッサンだねぃ。』


詩乃はバックステップを踏みつつ、菊一文字を大佐に向け

「薙刀」と叫んだ。

途端に両手で持っていた束巻から目貫・縁の部分がビヨーンと伸びて、大刀が薙刀に変化し、大佐の頬の横を掠めて髪を少し切った。


そうして刀を返し、大佐の頬に棟の部分を押し当てる。

睨みあう事しばし・・・。

「ほぅ、変わった魔剣だな・・・。剣自体を変化させる魔剣は始めて見た、異世界の魔術か?」

奇襲攻撃は1度しか成功しないが、その1度のインパクトは大事だろう?


「よし、シーノンは星組に入れ。乱取りを始める、構え!!」

星組ってなにさ?背中に羽をしょって、大きな階段を煌びやかに下りて来る麗しの男装の麗人達の組か?

十分な説明も無く、グループ事に入り乱れてのチャンバラが始まった。


「これが乱取り?滅茶苦茶じゃん!」


1対1で対戦している組は稀で、1対4とか変則的な組み合わせが多い。これではリンチの様ではないか。

食堂でニーゴさんに、同情的な目が集まっていたのはこの事か!呆然としていると、詩乃に向かって攻撃を仕掛けて来たアーマー達がいる。一人に向かって大勢で卑怯だぞ!躍るようにクルクルと逃げ回りながら、いつしか詩乃は追い詰められて行った。


「くっ!」


菊一文字を薙刀バージョンにして、近づけない様に牽制する・・・囲まれたらヤバい。

こいつら・・・まとめて爆破してやろうか!人に憎悪感じたのは初めてだ。


その時だ・・・詩乃の背中が不意に暖かく、何かのオ~ラに包まれたように感じた。


「何!」

「前に集中しろ!」


いつの間にか、詩乃の背中にニーゴさんが付いていて、背中合わせに敵に対面していた。

『有難い・・・背中は任した。』

「あいつらを叩きのめして、身の程を教えてやれ!ドラゴンは我々貴族のモノだ!!」


絆組 VS 貴族の乱闘が始まった。


甲冑はカッコいいけど、とても一人では着られませんね。

着付けのサイトを見て、詩乃に着せるのを諦めました。

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