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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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ズルは恥だが役に立つ~2

いじめ・・・駄目!絶対!!

大佐と言う肩書の人は、すべからくサドなのだろうか?

はたまた、しゅ〇ぞうサン系の熱い血潮が流れているのか・・・つまるところ、バンダル大佐はそんな感じのお人だった。


ほら、よくアメリカの軍隊映画なんかでは、新兵さん達を怒鳴りまくっている、おっかない鬼軍曹?みたいな人が登場するけれど。

ハイジャイはあんな感じでは無い・・・一応貴族の御子息様・御一行を迎えているからなのか、ある程度の配慮はされているようで、慇懃無礼で強制するよ?みたいな感じだなのだ。

怒鳴られたりはしないが、その分魔力で威圧されるようだ。

大佐に睨まれて震えあがっているのはそのせいだろう、決して大佐の氷の瞳が冷たい訳では無いに違いない。


筋肉に関しては容赦がなく、決められたプランはキッチリこなす(こなさせる)のを、求めて来そうなので厄介だ。飛行部隊の隊員は、全員同じ練度が求められるそうで、其処には身分の差も男女の別も無いらしい。

居残り訓練とか有るのかなぁ・・・嫌だなぁ。

詩乃はこれでもか弱い女性なので、男共とタメを張れるわけは無いだろう?

ギブミーハンデだ!ハンデをプリーズ!!


しかし容赦なく大佐は筋トレを始めた、鞭をしならせながら叫ぶ。


「腕立て伏せ、100回!始め!」


一瞬耳を疑った・・・100回だぁ?

中坊の部活かいな・・・。軍隊だろう、此処は・・・?


詩乃の家の近所の消防署の消防士さん達なんか、もっとキリキリと筋トレしていたぞ?消防署の前を通るたびに、筋トレしている姿が見られたものだ、頼もしいマッチョ達なのである。

お兄だって朝晩の筋トレは欠かさず(インフルエンザに罹ろうが、ノロで下痢ピーになろうが)していたし、腕立てだって毎回300回はやっていた、よく負荷をかけてくれと言われて、腕立て伏せをする背中に正座していたものだ、重さが丁度良かったらしい。(ウララちゃんを抱いて正座すると、少し重いと文句を言っていた・・・色々と我儘なマッチョの卵だったな。)


詩乃は腕立てをかなりキッチリ(鼻が地面に着きそうになるくらいにだ)とこなしつつ、辺りのボンボンを見回して・・・驚いた。

皆さま必死な形相で汗を滴らせ、ほんの僅か肘を曲げる程度の腕立てをしている。


『アカン奴だろう・・・これは。』


此処にお兄はじめ、道場の脳筋どもが現れたら指導という愛の鞭が入るだろう。

脳筋ばかりに囲まれて育ち、異世界では体力勝負の生活をしていた詩乃から見ると・・・。甘い!激甘過ぎるぜ飛行部隊・新兵!!


51・・52・・53・・54・・・・・


回数が進むにつれ、ドサッと地面に伏す音が聞こえてくる、何人も脱落している様だ。情け無い・・情け無いぞ~~お貴族様ぁ~~。

ドサッ・・・。屍が増え続けている様だ。

最後の100回まで腕立てを続けられたのは、詩乃とニーゴさん、その他数人の下級貴族の面々だけだった、日頃の(貧乏)生活の賜物だろう。


その後・・・腹筋運動や背筋・スクワットとメニューは続いたが、ダンベルを持つ訳でも無いし、手足に重りを付ける訳でもないので正直拍子抜けした思いだった。


鍛錬が終わった後には、死屍累々の有様だったが・・・しかし、貴族たるもの!地面に伏すような見っとも無い真似は出来ないらしい。ボンボン達は侍従さんにイスを持って来させて座っていた、御達者カーに座っている公園の爺婆みたいだね。

彼らは肩で息をして、顔面蒼白になりながら侍従さん達にお世話されている、冷たい飲み物などをサービスされている様で羨ましい・・・。


『水なら出せるけど・・・此処って魔力禁止なのかな?ボンボン達は貴族相応の魔力があるのに、筋トレの補助に魔力を使っていなかったからなぁ。まぁ、今日は大人しくしていて、明日から蜂蜜レモン水でも作って持って来よう。』

そんな事を考えながら、グランドを出て食堂へ歩いて行った。


    ****


「オマケの嬢ちゃん、ちょっと待ちな。」

途中で、下位の貧乏そうな貴族に声を掛けられた。


「風呂に入って汗を流して、着替えてからでないと食堂に入れないぞ。」

何でも食堂の入り口にはセンサーの様な魔術具が付いていて、清潔が確認されないとドアが開かず、物理的に締め出しを食うらしい。


何じゃぁそりゃぁ?


清浄の魔術具など持てず、また使うための魔力を惜しむ下位の貴族達は、食事を取るたび・・・1日3回、風呂と洗濯に(着替えだってそんなに無いんだから)明け暮れなければならず、何のためにハイジャイに来たのかと心が折れそうになるらしい。地味にキツイね、そりゃぁ。

清潔を保つのは良い事だが、センサーの感度を少し鈍くしないと、下位の貴族は過労死しそうだね?


仕方が無い・・・。

詩乃は離れて歩くニーゴさんに、おいでおいでと手招をし、そこいらにいる下位貴族のみんなも集めて、清浄の魔術具を作動させた。一人も大勢でも消費魔力はそんなに変わりがない、味方を作るのには良い機会だしね。


=一瞬で綺麗になりましたとさ、さぁ!ご飯を食べに行きましょう!=


下位の貴族も、ニーゴさんも喜んでくれたので満足だ・・・虎さんは嫌がったものね・・・清浄の魔術。コピーを持たせたけど、使ってくれているかな?離れてまだ・・1日だけど。


「昨日のステーキは絶品でしたねぃ、今日のお昼は何だろう?楽しみだねぃ。」

「今日も量が多かったら、俺が半分食べてやるよ?」


食いしん坊そうな、栗色の髪の男が声を掛けて来る。


「あんまり太ると、ドラゴンが重たがって乗せてくれやせんぜぃ?」

えええええ~~~~!!あんまり大げさに驚くので、皆声を上げて笑った。


    ****


無事にセンサーの関門を突破して、一番にやった来ました~食堂へ。


「良い匂い~~。わぁモモウのシチューだぁ。」


脛かテールか?コトコトと煮込まれ、ブラウンソースに包まれている・・・見ているだけで涎が出そうな一品だ!煮込み料理は簡単そうだけど、下ごしらえが大事となる、手間暇が掛かっていそうなシチューだ。


「何日前から煮込んでいるんですか、時短魔術では無いのでしょう?」


時短魔術は便利だけど、味の深みと言うか?コクがやっぱり違うのだ・・・料理は手間と愛情を掛けるほど味わい深くなるって言うけれど・・本当にそうだと思う。

調理人さんは、下位の貴族が一番最初に、雁首揃えて食堂にやって来たので(いつもは風呂に入って、ギリギリの遅さだったから)驚いた様だったが、3日前から煮込んでいるんだと自慢げに教えてくれた。


「今日は外が寒かったから、温かい料理が嬉しいね~~。」

食いしん坊クンの目はもう釘付けだ、肉だ!その大きな肉を!!俺の皿に入れてくれ~~~~~~心の声が聞こえるね。五月蠅いよ。


『寒い?これでか・・・?クイニョンが雪の中だったから麻痺していたけど、寒いんだ・・これで。此処は随分と南の暖かい土地らしい。』


皆大人しく並んで料理を受け取る、下位の貴族の中では、身分などを五月蠅く言う事は無い様だ。男爵と子爵で争っても、不毛なだけなのだろう。

トデリの子爵様は随分と頑張ったから、領地の経済力から言ったら伯爵と同等だろうか・・。まぁ身分って、財力だけでは無いらしい、総合的は評価なんだろうけど・・さぁ?


詩乃の番になって調理人さんが、量を減らすかどうかと聞いて来たが・・・キラキラした目で見つめて来る下位の貴族の御子息たちの眼圧に負けて・・・普通の量で・・とお願いをした。




「みんな公平に分けるからね、ニーゴさんもこっちに来て。」


ちょっと強引に、ニーゴさんも誘う・・・君はシチューの誘惑に勝てるかね?

少しばかり迷って様だが、ニーゴさんも同じテーブルに着いた、文句を言う奴もいない・・・良い感じ?7人分のシチュー皿に公平に、詩乃の半量を分けていく・・・トポテは2個ずつ、お肉は1個ずつ、何気にこれでは、餌付けのようだね?

8人のテーブルに8人で座る、ちょうどいいね?皆揃って<いただきます>だ。

調理人さんが焼きたてのパンを、籠に沢山入れて持って来てくれた。

はぅ~~これは、幸せの香りだ・・・。



詩乃の多幸感がモルちゃんに届いたのか【モルも~~モルも~~】と頭の中で騒いでいる。【ビューティーさんに、食堂まで連れて行って貰うから、お肉取っておいて~~。】だってさ。



「それにしても、高位の貴族様の体力と筋力の無さには驚きやした・・・此処は軍でやしょう?良いんですかい、あれで・・・。」

「グランドは魔力も魔石も使えないように、魔術が掛けられているからな、生活のほとんどを魔力に依存している彼らにはキツイだろうさ。」


魔力は生まれ持っている力だから、増やす事は出来ないそうだ。

逆に体力など自身の生きる力が減ると、徐々に魔力の方も落ちて行くらしい。

お偉い魔術師長様の研究で、3年前に明らかになったそうだ。

お偉い魔術師長様は巷の魔力不足を憂慮して、貴族の体力作りを推奨し・・・グランドなど鍛錬する場所では、体力を使って魔力は使えないようにと、魔力妨害の魔術陣を編んで設置したのだそうだ。


・・・ラチャ先生・・・ナイス。


「いつもは魔力の強さを自慢して、大きな顔をしている奴らが、ヘトヘトになって這いずり回っているのを見るのは気分が良いぜ。」

けけけ・・・と緑色の短髪の少年が笑う・・・耳が尖っているからエルフの血でも入っているのかな?


下位の貴族は普段から、随分と不愉快な目に遭っている様だ、聖女様は軍の身分差を無くしたそうだが、そう簡単に因習は無くならないのだろう。


「だがな、嬢ちゃん・・・午後からの、剣の時間は気を付けろ。」

「剣では魔剣も使えるし、魔力で威圧する事も、魔術を使う事も許されている。怪我を負っても回復要員がいるから大丈夫だと、手加減されることも無い。

・・・一応、実力で組は分かれているがな。」

「お偉方の坊ちゃま達は、我を通すし・・やりたい放題だ。」

「早くドラゴンと絆が結べたのも・・・此処では良し悪しだな・・・。」


そう言うと下位の貴族達は、気の毒そうにニーゴさんを見つめた。

・・・何だか、すでに色々有った様だ。


けれどもニーゴさんの虎目がちな強い瞳には、一切の迷いも恐れも無い・・・。

そうだよね・・・迷うくらいなら、最初から絆など結ばなければ良いのだ。

ドラゴンは強制的に絆を結ぶ事などしないし・・・結ばされる事も無い。

王太子やプウ師範の件(例外的な事案だが)だって、多少は心が動いたから引き受けたんだろう。白さんも、歳を取って寛容になっていたのかもしれないし・・・。


「高位の貴族様達は、色々と考え違いをしている様でありんすねぃ。」


そのまま勘違いをし続けていれば、ドラゴンに選ばれる事はまずないだろう。

・・断言しても良い・・・。

育ちによる勘違いは、何歳ぐらいまでが許容範囲なのだろうか?今後の成長を期待して、丁寧に教え諭すべきなのだろうか・・・教官が。

詩乃はしないよ?そんな面倒な事・・・アホでいる事は自己責任だろう?



詩乃が沈思黙考していたら、後頭部にモルちゃんがぶつかって来た。

グフゥ・・・痛いでしぃ。


【詩乃ちゃん!モルを置いていくなんて酷い!!】


プンプンしているが、其処がまた可愛らしい。

周囲は元よりドラゴン好きな連中なのだ、目を輝かせてモルちゃんを眺めている。

どうでぃ、可愛いだろう?アッシのモルちゃんはよぅ。

チビドラゴンが加わって、ますます賑やかに笑い、楽し気に食事をする下位貴族達の様子を・・・不愉快そうに眺める、高位の貴族の面々がいる事を、感じて知っていて尚且つガン無視する、詩乃とニーゴさんと、下位貴族の面々だった。



『結構と腹が座っているよね?このメンバー。』

下位とはいえ、優秀だからこそハイジャイにいるのだろう。


『みんなの願いが叶って、絆が結ばれれば良いのに・・・。』

そう思いながら、食事を続ける詩乃だった。



圧力鍋は、この世界の時短魔術と言えるのだろうか?

トロトロ豚さんの角煮が食べたいですね( *´艸`)

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