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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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プライベート・シ~ノン

お食事は美味しくいただきましょう( ^ω^ )

詩乃はニコニコと微笑み、今までの事を話しながら、美味しく食事を頂いていた。

ホントに美味しいのだ、素材が違うのだろうハイジャイはお金持ちそうだ。


「昨日の夕方まで、狼族さんのお引越先でアレコレとお手伝いをしていやしたが、突然無粋なお迎えが来やしてね、無理やりドラゴンに乗せられて・・・転寝して目が覚めたら・・此処に着いていたんでさぁ。本当にびっくりだよ。」

話ながらもお肉は食べる、冷めてしまったら料理人さんに申し訳が立たないもの。

しかし食事のマナーは、お婆ちゃんが五月蠅かったからね、無作法な事はしなよ?

モルちゃんも美味しそうにサラダを突いている、こちらはON座TABLEだが。


「チョットしたご縁が有りやしてね、狼族のコロニーにいる間、ずっと虎の獣人さんに護衛をお願いしておりました。半年近くご一緒していたから、急に別れる事になって、何だか寂しかったけど・・・こんな慣れない場所で、また虎さんに会えるなんて嬉しいでやす。」


「虎獣人を・・・護衛に?」

青少年は戸惑った様に喋った・・口に鋭い犬歯が見え、顔の造作は人間風だが、目が・・・目がアーモンド型でアイラインクッキリの、虎さん獣人特有の鋭い目をしている。金色の瞳が美しい、少女漫画の美少年に見えない事も無い・・銀色の髪には黒のメッシュが所々に入っている、戦隊ものならブルーの役どころかな?そんな雰囲気を持っている。


「その虎さんはとってもお強くてね、肉ギャースの突然変異のデカ物も、一人で倒してしまう程の腕利きでやした。これ程心強い味方はおりませんでしたねぃ。」

モルちゃんと目を合わせて

「ねぇ~~~っ」

と首を左右に傾ける、仲良しぶりと意気の合い方を周囲に見せつける。


・・・だってね、年長組の光った線が伸びていない人達が、モルちゃんを狙っているかの様に、静かに此方をガン見してくるんだもの・・・嫌なノイズを詩乃に向けて放っても来るのだ。凄く感じが悪い。

幼いドラゴンなら、上手い事騙くらかして・・・詩乃との絆を切らせて、自分のマイドラゴンにでも強奪でもしょうと言う算段なのだろうか?

此処は油断はできない場所の様だねぃ、モルちゃんにもお守りが必要だろうか。


「あぅ、一方的の話しなんぞして、ご無礼いたしやした。アッシはシ~ノンと申します、よろしくお願いいたしますね。」

笑顔全開で軽く頭を下げて、挨拶をする・・・握手は親しくならないとしないのが此方の世界の作法だ。ちなみにハグは一族同士とか、よっぽど親しい特別な間柄でなくてはまずしない。

だから虎さんと詩乃は、よほど親しくて特別なのだ、えへん!凄いだろう!

コテンと首を傾げながら、青少年を見つめていたら。


「ニーゴと言う、よろしく・・・。」

感情の見えない目で答えてくれた、うん!嬉しいね。

まずは知り合いを、1人Getだぜぇい。


お互い食事が終わったので、トレーをもって返却場所に向かう。他のテーブルは貴族様達の為か、年若いボンボンが多い為かはしらないが、皆食べた後は片付けもせず散らかしっぱなしだ。当然の様にそのまま食堂を出て行こうとしている、むしろ片付けをしている詩乃達を馬鹿にする様な雰囲気だ。


「自分の身の回りの事も碌に出来ない軍人って、遠征にでも出たらどうするのかな?まさか侍女や侍従を連れて行くつもりなのかいな・・・かっこ悪ぅ。」


馬鹿にしたように、小さな声でボソッと呟いてみる・・・詩乃にもビューティーさんが付いているけど、彼女は先生みたいなものだ、決して使用人などではないからね、むしろビシバシされそうで恐ろしい。


悔しそうな顔をして、自分の席に戻り片付けをしてる子はまだ見込みがあるだろうが・・・無視して出て行った半数は駄目だろうな・・・まず、人として失格だ。


「ご馳走様でした、とっても美味しかったです。」


ニコニコしてお礼を言う、調理人さんが驚いたように振り返った。

予言しよう・・・これから先、詩乃には優先的に良い肉が供給されるであろう事を。正当に評価されれば人って頑張るそうだから・・・これはお母さんの持論だ。


「ご馳走様?」

「アッシの故郷の言葉で、食事を作る為に走り回って働いてくれた方々に、感謝の気持ちを込めた言葉なんですよ。調理人さんもその中の一人さぁ。」


「・・・異世界の言葉か・・・。」

納得している所悪いけど、日本の挨拶だから・・・外国はまた別だから。

別に詳しく解説しなくても良いか・・・誰も文句言って来る訳でも無いからね。


   ****


食事を終えて食堂を出ると、すでにビューティーさんが待機していた。

午後はハイジャイのオリエンテーリングをすると言う。


「じゃ、またね。食事付き合ってくれて有難うニーゴさん。」


詩乃は手を振って別れた、ニーゴさんは午後は鍛錬が有るそうだ、剣も振るうと言う・・・だから、なんで空軍で剣なのさ。


   ****


ビューティーさんは詩乃を案内しながら、先程の彼の事を話して来た。

「彼は虎獣人ですね、シーノン様と同じく話題の中心人物です。」

話題?不思議そうな顔をする詩乃に。

「ハイジャイの話題は常にドラゴンに関しての事です、この訓練所に入る前に、すでにドラゴンと絆を結んで来た方が二人います。シーノン様と・・・。」

「さっきの彼、ニーゴさんか。ふ~~ん?」


ドラゴンは魂の煌きが好きと言っていたしな・・・確かに彼のオ~ラは綺麗だった、寒色系で悲し気だったが、それよりも意志の強さとか、冷静さを感じさせる何かが有る様な気がする。虎さんやムースさんのオ~ラも綺麗だったけど、煌きって感じより身に就いていた精神の色って感じだったな・・・。ニーゴさんは、きっと何かを持っているに違いない。ドラゴンが引かれ、傍にいたくなる様な何かを。

その点、詩乃とモルちゃんは刷り込み見たいなもんだな、会ったその時から何時でも一緒!みたいな?


ハイジャイには、ドラゴンと絆を結びたい者が(貴族の子息に多いらしいが、一種のステータス何だろう。)事前に試験を受け一定の成績を取り、多数の推薦人を集めて初めてやって来られるらしい。かなりの狭き門なんだそうだ。

その面倒事をショートカットして、貴族でも無いのにハイジャイにやって来た話題の2人は、面白くも無いし・・むしろ不愉快な対象なのだろう。

別にこっちだって、好き好んで来たわけでも無いのだがなぁ。


大学みたいな(TVドラマで見た)階段状の講義室、過去の戦の記録ばかりが有る図書室、重たそうな武器が恐ろし気に有る武器庫に鍛錬の道場・・・あぁ~~華が無い。


今こそクイニョンの、独身彼女無しの若い衆の気持ちが良く解る、実用性だけでは息がつまるのだ。日々の暮らしには潤いが必要で・・・クイニョンの場合は綺麗な女の子達だったって訳だ。


詩乃はハイジャイの訓練生の中では紅一点なハズなのだが、残念な事に潤い成分が不足している為か、ご希望には沿えなかった様だ。周囲は困惑もしているが、不快感の方が強い様で、潤いどころか・・・静電気のパチパチ状態だ。

別にモテモテになりたい訳でも、逆ハーを狙っているつもりも無いが・・・。


『無視してくれれば、有難いんだけどな。』

触らぬ貴族に祟りなし・・・

『精々大人しくして・・・早いとこ脱出しよう。』

ついさっき、食堂でひと騒ぎ起こしたのは、詩乃の中ではノーカンの様だった。




建物の中を探索し終えて、次は蒲鉾型の格納庫型の居住区に入る、この大きな居住区はドラゴン仕様だな。馬鹿デカイ、羽田にあるジャンボの格納庫の様だ。

入り口の所に軍の軽装を着た、目つきの悪い、ひょろ長い男が立っていた。


「この先はドラゴン様の世界です、騎乗関係者のみしか入れません。」


部屋を整えながらお待ちしております・・・そういうと、ビューティーさんは格納庫前で去って行った。


さて、困った・・・貴族は位の低い者から、高い者に声を掛けるのはNGだったが・・・此処は軍隊だし?どうしたもんだか・・・。

TVで見たアメリカ映画の新人女性兵士の感じで行こうか?男に振られて自棄になった、軽い感じのお姉さんが、軍の訓練に馴染むにつれて強くなって行く話だった。・・・メイクの凄い主人公だったっけ。

良し!今からアッシはプライベート・シ~ノンだ。シ~ノン行きまぁす。


詩乃は背をビシッと伸ばし、踵を付けて45度に開き、肘を上げて(陸軍風だな)サッと敬礼をした。

「お呼びと伺い、参上いたしました。シーノンと申します。よろしくお願いいたします。」

モルちゃんもつられて、頭の上で首を伸ばして翼を曲げて敬礼していた・・・ノリが良いね。流石詩乃のモルちゃんだ。


「その恰好は何だ?此処の世界の軍人の礼は、左手をこう胸に当てるのだ。」

おぅ。某マッパのデカ物と闘う漫画のキャラみたいだね・・・最後まで読みたかったな、まだ連載しているのかしらん?結末はどうなったんだろう?そんなことを思いつつ、真似をしてビシッと決める。

・・・何事も、形から入るのだユトリはな。


「俺はバリィ曹長だ、此処の管理の責任者をしている。」

ブッ!!

惜しい、色々と惜しい・・・バリィだと、某タオルの生産地の有名キャラクターになっちゃう。詩乃は可愛い黄色いキャラが好きで、ポーチや小物を持っていた。


「何が可笑しい?ふざけた奴だな・・・まぁ良い。これからドラゴンに合わせてやる、ドラゴンは絆の無い者とは慣れ合わない。むやみに近づくと危険だと言う事を覚えておけ、中では私語は厳禁だ質問は後で受ける。」

「サー・イエッサー!」

「馬鹿者、大きな声を出すな。」

怒られちゃったよ・・・。


格納庫の中は仕切りが出来ていて、個体ごとに分けられている様だ、大きさにより陣地は随分と違う。仕切りの上にキャットウォークの様に、板が渡されていて歩けるようになっている。背中とかブラシをかけるのに使うのかな?床には藁が引き詰められていて、魔術具でも使っているのか清潔そうで、藁は良い匂いがしていた。モモウが喜んで食べそうだ。


真ん中当たりの上席に、落ち着いた感じの長老風のドラゴンが居た。

『白いドラゴン・・・王太子のドラゴンだ。こいつも王太子に似て、俺様な奴なのかな?』

【王太子が、苦労を掛けている様で、済まないな・・・。】

およ?


白ドラゴンの言葉をモルちゃんが通訳してくれる、なんでも王太子はおチビの頃からドラゴンに憧れていたらしく、オツムの出来は良かった様なので早々にテストをクリアし、意気揚々とハイジャイに来て・・・撃沈したらしい。10歳の頃と言うから早い方だ、お付きのプウ師範と何度もハイジャイを訪れては、ドラゴンに振られまくって・・・。グズグズと泣きながら・・・。


『どおして、どおおして、私では駄目なのおぉぉぉぉぉ~~~。』


と振られた熟女の様に泣き縋って・・・根負けした、白さんが引き受けたと言う。

「ブヒョッ!」笑いを堪える為に変な声が出た。

ちなみにプウ師範のオニキス・・・黒さんだが、白さんの舎弟の為、こちらも仕方が無く白さんとの同行を引き受けたらしい。

別にプウ師範を気に入っている訳ではないそうだ、2人とも魂の輝き的にはイマイチらしいが、此処の所、聖女様の影響で良い感じになってきているとの事だ。

ドラゴンさん・・・育成モードになっているよ。

『お疲れ様ですねぃ、お体お大事になさっておくんなせぃ。』


モルちゃんを経由して喋っている事を、バリィ曹長は気が付いていないらしい。

白さんを見上げて、モルちゃんとキュウキュウ話しているのを不思議そうに聞いている。ドラゴンと慣れ親しむにも、段階があるようだ・・・。

彼は騎乗者では無いのかな?頭の上に光る線も無いし。

【彼は騎乗者では無い、誰とも絆は結んでいない。ドラゴン好きでな、世話だけでもしたいとハイジャイに残った変わり者よ。】

バリィ曹長は候補者としてハイジャイに来て、夢破れた後にも、ドラゴンの傍に残るドラゴンラブの人らしい。悪い人では無いよね、今も細かく注意を払ってお世話の具合をチェックしているもの。


・・・それにしても、絆を結ぶのに泣き落としが有効とは思わなかった。

【何度も来られたら、五月蠅くて敵わんからな。】

何度も来れるのは、王子様特権だった様だ・・・職権乱用だよ。



白さんに別れを告げて、今度は小さめの格納庫に入る。

若いまだ絆を結んでいないドラゴン達がいる場所だった、全部で20頭くらいだろうか?若いだけあって好奇心旺盛で、モルちゃんにちょっかいを掛けて来る。

まだ遊びたい盛りの様だな、訓練とか規則が窮屈だと文句を言ってくる。

此処に来る人間は嫌な奴ばかりだから、自由に出かけられる様な歳になったら、自分から絆を結びたい人間を探しに飛んで行きたいんだそうだ。

へぇ?そう言う事も出来るんだ。・・・パガイさんがそのケースかもね?


最後に既に絆が結ばれているドラゴンさんのお部屋だ、こちらは落ち着いた感じで悠然と寛いでいる。もういい大人なんだね。

モルちゃん主体に挨拶をして回る、カポエの貴族の館の出入りの時に見かけたドラさんもいる。騎士団の人と絆が有るのかな?

皆さん友好的でモルちゃんを任せても大丈夫そうだ・・・モルちゃんもね、ドラゴン的な教養?って言うのを勉強しないといけないそうですよ?大変だね~~。


ふと見かけたドラさんの、絆の光る線に・・・青いオ~ラが被って見えた。

「ニーゴさんの色だ。」

詩乃の声に振り返ったドラゴンは、ニーゴさんの瞳と同じ金色をしていた。


友達出来るかな?

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