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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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ピカピカの1年生

学生時代に戻りたいですか・・・断る!

飛行部隊と言っても、此処は新人の訓練所だそうで、軍と言うよりやはり学校の雰囲気が強く残っている。


ビューティーさんは見慣れない衣装を並べ始めた、何でも此処の制服だと言う。

新しい制服!・・・残念なことにセーラー服では無くて、軍服なのだが・・・思えば高校進学は出来なかったので、大人びたセーラー服は着てはみたかったのだ。

中坊の時の制服は全国一律の、面白みも無い襟無しブレザーだったからね。


・・・軍服ねぇ~。


式典用の金ぴかのモール付ではない、普通の制服だそうだが十分派手である。

王妃様の緋色の軍服には負けるだろうがな、絶対派手なキンキラキンを着ていたに違いないよ。雰囲気としてはナポレオン時代くらいの感じだろうか?やたらとボタンが有って面倒臭そうだ。ブーツは膝上まであるニーハイみたいな感じだし、何故わざわざ腰にリボンのごときヒラヒラを付けねばならないのか?邪魔だろう・・普通。

腰に剣?何故空軍が剣を装備するのか、空中戦でもするのかい?


ビューティーさんが並べ立てた備品?の数々を見ているうちに・・・ウンザリしてきて我慢が出来ない。

剣?いやいやいや・・・此処は刀でしょう?

数ある名刀を我慢して、なんで異人さん仕様の剣を持たなきゃいけないのだ。

「剣は私物を使用してもよこざんすか?」


ビューティーさんは片眉を僅かに上げたが、確認しておきますと言ってくれた。


とりあえず部隊内は軽装でOKと言う事なので、シャツにベスト・ズボンとショートブーツで完成だ。何で色を白にするのかね?汚れが落ちんし、シミが目立つだろうがぁ。全身真っ白で、白壁の前に立ったら保護色になりそうだ。何でも白は新人の色らしい、死に装束みたいだな・・・縁起でもないけどさ。

髪は軍人らしくお下げにして(でも女心で、ちょっと可愛くフンワリ編んだ。)背中に垂らして赤いリボンで結んだ。モルちゃんの首にも同じリボンを蝶結びで飾る、可愛いねぃ・・フフフお揃いだね。


鏡に全身を映してチェックする、ズボンとか・・・此処の世界の女性では(特に貴族では)有りえない恰好なんだろうな。まぁ、旅に出てからず~~っとズボンで、トデリ以来スカートは履いていないがな、今更気にする気にもなれない。

軽装の事は先に言って欲しかったけどさぁ・・・安心したよ、毎日コスプレしていたんじゃぁ休まらない。リアルオス〇ル様なんて(あくまで衣装だ、衣装。)ガラじゃ無いもの。



着替え終わって昼食を取る為に食堂へと向かう、勿論モルちゃんは詩乃の頭の定位置だ。何でもドラゴン騎乗者は特別待遇との事で、専用の食堂が綺麗な景色が見える所に有るそうだ。

そんなに偉いのかね?ドラゴン持ちの人って。

ビューティーさんは、他に有る職員食堂を使うと言うので、詩乃もそっちの方が良いと言ったのだが。

「なりません、絆を結んだ主としてのご自覚をお持ちください。」と、

軽くいなされて専用食堂に突っ込まれてしまった。



食堂に入った途端、注目して来る目・目・目・・・アッシは転校生かい?

『転校生が来るたび、男子か女子かと姦しかったね~~若かったあの頃。』

視線はモルちゃんに行き・・詩乃に向かい・・モルちゃん戻る。これこれ何往復する気だぇ?年少の者はカクカク頭が振れている、地味に面白い・・・。こんな郷土玩具が有ったよね?赤い牛さんの。


しかし此処ハイジャイの飛行部隊は、流石に貴族が多い為か、中坊では無いので静かなものだった。でも、視線は感じるし・・あぁぁあぁ~~ノイズだよ・・久々のノイズ。

このところ平民達と暮らして来たから、すっかりご無沙汰な感じだが、貴族は相変わらず魔力を垂れ流すノイジーな奴らだった。

そう言えば大佐のノイズは感じなかったな・・・出来る男はサイレントか?


『久々にノイズ避けのパワーストーンを、服に仕込まなきゃならないのか。』

面倒だなぁ・・・などと思いながら、セルフサービスなのか?食券が要るのかと辺りを見回す。どうやらカウンターで受け取る様だ、(特別待遇と言っても軍隊だね。)並んでいる人の後ろに付いた。


厨房を覗くと調理人さんが大勢で働いていた、テキパキと無駄のないデキル仕事人の動きだ。かっこいいねぇ~~。昼間からステーキなのか、ジュゥジュゥと音を立てて焼いている・・・良い匂いだ。

詩乃の番になってトレーを受け取るが、グフゥ・・。


「すいませんねぃ、とっても美味しそうなんですけど、大きすぎて食べきれそうも有りやんせん。半分で結構なんで切って下さいませんかィ?」

御残しは駄目駄目だ、勿体ないし綺麗に残せば他の人が食べれるだろう?食いしん坊さんとかがさぁ。サービスしてくれている人と、モルちゃんが食べる果物とかについて話をしていたら声が聞こえた。



「食い切れないなら残せばいいだろう、全く・・みっともない真似をする・・・これだから下賤な者は。」

まだ声変わりもしていない、幼さが残る少年の声だった。


思わずサービスの人と顔を見合わせてしまったよ、下賤だってさ・・・食べ物を大事にする事がみっともない真似だって?

ふざけんな!勿体ないは世界で通用する単語ワードなんだぞ!

突如として詩乃の中に、昭和一桁の曾ばあちゃんが降りて来た・・・曾ばあちゃんは、戦前戦後の混乱期を生き抜いて来た、焼け跡派なんだよ!


ユックリと振り返った詩乃は、聖女のオマケ様バージョンの微笑みで言い放った。

「食べ物を粗末にするのが貴族の証なら、アッシは貴族になど、なりたくありゃんせんねぃ。勿体ないお化けに祟られやすからね。」


詩乃より背は高いが明らかに年少の、甘やかされている感じがプンプンのノイジーなガキが、偉そうにふんぞり返って座っていた。

「私はムアンシン家のアサイーだ。」

さいですか、だから何だぃ?

首を傾げてみる詩乃に、デコに青筋を立てて歯ぎしりしている。あんまりすると歯が擦り減るぞ?友達のひとみチャンは寝ていて歯ぎしりしすぎて歯を折ったんだ。


詩乃は一歩ガキに近づくと

「私の国では・・・食事の前にはこうやって手を合わせて、自分の命を犠牲にして食料となり、私達を生かしてくれる、生き物達に<あなたの命を頂きます>と感謝をしながら・・・【いただきます】・・と挨拶するんでさぁ。」


詩乃はガキに<いただきます>の礼をして見せた。


「ムアンシン家のアサイー様?貴方は貴方の為に犠牲となり、貴方の血や肉となった、命達にどのように報いるおつもりで?」

命や犠牲と言った単語に、ドキマギし少しばかり青くなりながら、それでもアサイーとか言うガキは偉そうに言った。

「知れた事よ、私はドラゴンの主となり空軍に入って、この国の為に戦うのだ!!それで十分だろう!」


ふ~~~ん、そうなんだぁ?


「そうですか、ムアンシン家のアサイー様。ドラゴンに選ばれると良いですね?」

「!」


詩乃の言葉に驚いたのか、アサイーは口をパクパクさせている・・・。

アサイーとか言うガキンチョだけでは無く、年少者は皆息を飲んで詩乃を見つめていた。ハイジャイに来て講習を受けさえすれば、ドラゴンが手に入ると安易に思っていたのに違いない。


残念でした~~、ガキンチョは何にも解っちゃいなかった・・・。あんた達が選ぶんじゃぁ無くて、ドラゴン様があんた達を選ぶんだよ。




ハイジャイに来て、この食堂に入って解った事がある。

ドラゴンと絆で結ばれて、信頼関係が出来ると・・・何だか光る不思議な線でお互いが繋がる様なのだ。


この食堂にいる年長者のほとんどの人物にの頭には、光る線がクルクルと絡みつきどこかへと伸びているのが見える・・・多分格納庫の何処かにいるマイドラゴンと繋がっているのだろう。

詩乃とモルちゃんは近くに居すぎるせいか、オ~ラの様な光のフワフワの中に埋没している。


『何だってこんなものが、突然見える様になったのかねぃ?』


年少の者は・・多分単なる候補生なのだろう、彼らの頭からは光る糸は見当たらない。勿論ムアンシン家のアサイー様の頭は、何の輝きも見えない・・・ただの帽子置き場だ。


「どう言う事だ!私は何も聞いてないぞ!」

流石にショックだったのか、年少者が騒ぎ出す・・・糸持ちの年長者は、余計な事を言いやがってと詩乃を睨んでいた。


「そうですか、聞いていないのなら・・・知らないで良い情報だったのでしょう。詳しくは後程、担当の指導者にでもお聞きなんし。お食事の途中です、貴族で軍人を目指すのなら、騒ぐ事などはせずに最後までお食べなんし。」

詩乃はトレーを受け取ると、サッサと席を探して離れて行った。


『オオゥ、焼き立てのステーキ、しかもモモウのヒレ肉だぁ、お初にお目にかかります。塩コショウのみで焼いているが、だが、其処が良い!良い肉に小細工は不要。』


早く食べたいと思うのだが、微妙に籍が空いていない・・・3人掛けの真ん中が空いていたり、奥の壁寄りが空いていたり。行こうかな?と思うと、拒否なのかノイズが大きくなる・・・感じ悪~~ぅ。

早くしないとステーキが冷めてしまうではないか、出来立てが一番美味しいし、美味しいうちに頂くのが作ってくれた人に対する礼儀だろうさぁ・・・その点、お兄は優秀だった。食事だと呼べば10秒でダイニングにやって来ていた。ウララちゃんと同じくらい早かった。


むぅ~~ぅと、不機嫌そうに口を尖らせ詩乃が食堂内を見渡すと、皆視線を外す・・・けっ!お前さんの隣など、頼まれても行くもんかぁ。ケツコマには用はないぜ!

もう、部屋に持って帰って食べようかなぁ・・・と考えていた時にだった。

おぅ?何だかポッカリと、島の様に空いているテーブルが有るではないですか。

やった!詩乃は喜び勇んで其処に近づくと、ただ一人座っているお人に機嫌よく声を掛けた。


「すいません、此処宜しいですか?」


宜しいも何も、すでに座っているのだが。

返事も待たず、座った詩乃はお手拭きで(ナプキンかな?)手を拭くと、早速にナイフとフォークを持って肉を切り出した。

「おおぅ、柔らかい・・・和牛様も真っ青だ。」

視線はガッチリと肉を掴んで離さない、一口サイズに切り分けて、パクリと頬張り咀嚼する・・・美味し!

こんなにうまい肉は、ボコール公爵領のスランでお呼ばれした以来だ。


「モルちゃん、このお肉凄く柔らかで美味しいよ、食べてみなんし~~。」

上機嫌で切り分けて、モルちゃんに食べさせようと見たら、モルちゃんは黙って前をガン見している。

はて?


奇妙な沈黙と、周りの静けさを(さっきまでガヤガヤしていたのに)不思議に思って、詩乃がモルちゃんの視線先を見ると・・・其処には驚いたような顔をした、懐かしい(昨日別れたばかりだが)虎耳を持つ獣人の青少年が座っていた。


「虎さん!」


今度の虎さんは青年気味の少年?で、ケモ耳と尻尾さんです。

虎さんの黄色いシマシマ尻尾可愛いねぃ・・・(#^.^#)

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