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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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ハイジャイってなんじゃい?

飛行部隊編・・スタートです。

ドラゴンは夕暮れから真夜中まで延々と飛び続け、地面に降り立ったのは早朝と言って良い時間だった。


「うぅ~~~疲れた・・・。」


固まった体をストレッチで解していたら、嘘を付くな・・・とラチャ先生から突っ込みが入った。

「そなた獣人達に向かって大騒ぎした後、静かになったと思ったらすぐに船を漕ぎ始め、事もあろうに偉大なる魔術師長の私を、無礼にも安楽椅子代わりにして爆睡していたではないか。」


あれぇ?そうだっけ?・・・懐に入っていたモルちゃんと顔を見合わせる。


「覚えてないし~~~。」

「緩み切った顔と涎の痕をどうにかしろ。」

いきなりラチャ先生に洗浄の魔術を使って顔を洗われた・・・うわっぷ・・。


「それはそれは、大変なご無礼をいたしまして、あいすいません。」

「まったくだ。」

それからラチャ先生は、詩乃の懐に収まっているモルちゃんをシミジミと見て

「主とドラゴンは似ると言うが、呑気な所が・・・そっくりだな。」

・・・精々しっかりとやる事だと呟いた。


何だか嫌な感じだね、しっかりとやるのは、詩乃だろうか?はたまたモルちゃんなのだろうか?


   ****


なんでも此処はハイジャイと言う名の場所で、サムディン侯爵領だと言う。


ふ~~ん?当然の様に固有名詞が出て来るが、悪いが地理も歴史も勉強していない、そっちは聖女様が担当だったからな。

ハイジャイがどうした?大層な所なのか?

何だか何もない静かな所の様だが?原っぱが有って、体育館のようなデカイ蒲鉾型の格納庫の様な建物が見える・・・格納庫???


頭上に影が差して何事かと驚いたが、数頭のドラゴンが悠々と飛んで通り過ぎて行くところだった。まだ若いドラゴンなのか、ラチャ先生やプウ師範のドラゴンよりも小さいように見える。乗せているのも一人だし、まだ若い少年くらいの人物達が飛行士?のようだ。


「何だか、めちゃくちゃ嫌な予感がするんだけど・・・。」


何が悲しくて二十歳も過ぎて、自活もしていたのに学校なんかに戻らなくちゃぁならないのか?詩乃は小学校も中学校も好きだったが、それは友達がいたからであって、勉強自体は別にそれほど・・・興味が有ったとは言えなかった。

好きな教科も有ったが(主に文系・芸術系だな)、そんなに全部が得意とか、好きな訳は無いだろう?普通は・・・。

白状します、理系はカラッキシでしたぁ~~数学は天敵だし、元素記号なんてはなから放棄していました・・・私の人生に係らないで~~。

英語?日本から出ませんから!!お構いなく。

召喚されて離宮に閉じ込められてから、勉強とか机上でする事は、手芸以外一切放棄して今に至るので、ノートの取り方も忘れちゃった・・てへぺろ。

何とか逃げられないだろうか、冗談はよしこさんだ。


呆然と辺りを眺めて脱出経路を探していたら、プウ師範が偉そうに教えてくれた。


此処はドラゴン飛行部隊、サムディン侯爵が創設した空軍だと言う。

ドラゴンと絆を結び所有するに至った者は、一定の基礎講習の受講と飛行部隊に所属し訓練する事が義務になるそうなのだ。


聞いてないし・・・そんな事・・・。


空軍の歴史は長く創立200年と言う。

モルちゃんをチラ見すると、ブンブンと顔を振っているので知らなかったのだろう・・・。前世の記憶が火山の噴火の景色と言っていたからな、それとも途中の記憶がスッポ抜けているのか?

とにかく2人揃って真っ青だ・・軍だとぉ?脳筋の巣窟か!!

クイニョンから離れて、規則だとか伝統だとか、小五月蠅い体育会系と縁が切れた思っていたら・・・濃縮還元されたような場所に連れて来られたでござる。


「悪いがアッシは気が小さく、空気を読むのが得意な、協調性の有る温和な日本人でヤスから。空軍さんですか?・・・そちらが望むような、攻撃的な性格ではありやせんし、チキンな小物でござんすよ?」

「お前の自己評価には、反論の余地が多分にあるが・・・。ドラゴンを所有していたら、避けられない事だと思って諦めるのだな。」

「やだぁぃ」


何でも基礎講習を終えても、1年に何度か呼び出されて訓練は続くらしい。ラチャ先生も魔術師長としの激務の傍ら、訓練に参加しているそうだ。

「へぇ?案外アクティブなんですねぇ。そういえば鳥とか狩って来てましたもんねぇ、料理の方はサッパリでしたけど。」

王宮にずっといると、窮屈なので年に数回の訓練は良い気分転換になるそうだ。

そりゃよこざんしたねぃ。


そうこうしているうちに、向こうからお迎えが来た、騎乗動物が2頭走って来る。

「此処は場所柄、貴族の子弟が多い。聖女様のご改革の後、軍の中は原則身分の上下は無い事になっているが・・・無い事も無い。」


どっちやねん?


「一応聖女様のオマケである事は伝えて有るが、貴族の中にはいまだにアンチ聖女様派も数多く居る。」

・・・まぁ、気を付ける事だ。


どう気を付ければいいのさ!貴族の名前なんか知らないし。

言いたい事だけ喋ると、2人はサッサとドラゴン上の人となり飛び去って行った。

アイツら碌な事をしやがらねぃ、二度とそのツラを見せるな!

心の中で激しく悪態をついた、ケッケッケッ・・・だ。




騎乗動物が近づいて来た、草ギャースだ・・・迎えに来た人は職員か?職員も軍属で貴族なのだろうか?

詮索してもしょうがないし、聞いた所でいまさら如何なるもんでもないから(さして興味も無い事だし?)モルちゃんを頭に乗せて職員さんを待っていた。


「お前がシーノンだな、よく来た空軍へ。貴様は栄えあるハイジャイ飛行部隊の初の女性部隊員だ、栄誉に思って励むか良い。

幼いドラゴン殿ようこそ参られた、ハイジャイは貴方を歓迎し生活の保障をいたします。安心して滞在していただきたい。私の名はバンダル、サムディン侯爵の次男で此処の責任者の大佐だ。」

解っちゃいるが、露骨だね?どうやらここでも詩乃はオマケらしい。


・・・そうですか、軍と言ったら大佐だよね。職員さんでは無かったね。

お貴族様特有のパツ金に青い目だ、軍人だけあって筋肉マンの熱血系に見える。

・・・暑苦しい・・・しゅ〇ぞう系のようだ。


仕方が無いので、お出迎えに感謝して、よっこらしょ・・と草ギャースに乗る。

草ギャースは馬鹿にしたように首を伸ばして、詩乃の顔を覗き込んで来たので、賄賂に角砂糖を口の中にほおり込んだ・・・クイニョンの草ギャースは角砂糖が好きだったんだよね。首をポンポンして走るように促す、アッシと仲良くしていると良い事が有りやすぜ。

そんな様子を・・・大佐は黙って見ていた。


嫌な予感は須らく当たるようで、蒲鉾型の格納庫みたいのがドラゴンの居住区で、小さめの蒲鉾が人間の住処だった。詩乃は唯一の女性と言う事で、特別に個室を与えて貰えるそうだ。

有りがたくって涙が出ちゃう・・だって、女の子なんだもん。

鍵を渡されて昼食まで休むように指示された、できればずっと休みたい。


部屋について鍵を開けると・・・其処には何故か、赤毛で緑の目をしたクールビューティーさんが控えていた。・・・誰やねん?

モルちゃん共々、ボケっとビューティーさんを眺める、美人は良いね。

眼福ものだぁな。



「初めまして、シーノン様。私は王妃様より、ハイジャイを来訪するシーノン様のサポートをする様にと、派遣されました文官のルリヤと申します。どうぞよろしくお願い致します。」


王妃様・・・文官?サポート??聞きなれない役職にポカンとする。


「ハイジャイでは実技の他、机上の学習もありますから。貴族の子弟とのマナーも教える様に指示が出ております。」

そう言いながらビューティーさんはお茶を入れてくれた、所作が美しい・・・見とれる詩乃にクスっと笑うと。

「お茶の入れ方も勉強いたしまようね、貴族のお茶会では夫人がお茶を入れて持て成すのが、最高の接待ですから。」

『謹んでお断りいたします。』


一服した後は風呂に入るよう指示された、服の下には色々と隠し装備が有るから、他人に見せるのを躊躇っていたら、軍服に着替える時にまたお手伝いに伺いますと言って部屋から出て行った。

・・・凄い気配りだね、心が読めるのかな・・・と感心していたら。

「詩乃ちゃんは顔に出過ぎているから、誰でも分かっちゃうよ・・・」

ってモルちゃんに言われた。


モルちゃんと一緒にお風呂をアワアワと楽しんだが、やっぱり温泉には敵わないようで、お肌はツルツルピカピカとはならなかった。

狼爺達はともかく、温泉は絶品だったよなぁ~クイニョンは。絶景露天風呂・・・1回しか入れなかった・・・タダで見られた、気分がズズズンと下がって行く。

あいつら、人をこんな所に置き去りにしやがって!


『いやいやいや!潮時だったのだ・・・これで良かったんだ。

虎さんのあの嬉しそうな脱出っぷりを思い出すんだ、あのままズルズルとクイニョンに居続けたら、虎さんにトンスラが出来ちゃう所だったよ!!危なかったんだよ!』





今度は自分にトンスラが出来そうだ、ブートキャンプにようこそだな。

モルちゃんと2人で、深い深いため息をついた。


置き去りは酷いですよね・・・カムバ~~~ク(*´Д`)。


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