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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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冬の生活~2

完成、ダンジョンハウス!!

昨晩はやけに冷えると思ったが・・・廊下に出て二重窓を開いて外を覗いてみたら、なんと一面雪景色になっていた。もう雪は止んでいるから、まだ根雪になる事は無いだろうが。


「寒いはずだねぃ、モルちゃんは平気でヤスか?・・大丈夫?」

モルちゃんにポンチョでも作ろうと思ったが、ドラゴンは暑さ寒さに強いそうで、お断りされてしまった。卵の時にはかなり寒がりだったはずなのになぁ、不思議な生き物だあ~ぁねぃ。


室内は温水暖房システムがあるから、薄ら寒い気持ちがするだけで本当に寒い事は無いのだが、草系の部屋にモルちゃんと2人きりなのでどうしても室温が低いように感じられる。

虎さんとムースさんは今頃どうしているかな?まだ探索を続けているのかな?

虎さんのモフモフの身体は見ているだけで暖かくなる優れモノだ、あの大きな体の2人が草系の部屋にいると、確かに室温は上がっていたようだ。


早く帰ってくればいいのになぁ・・・。


雪が降ったら探索も出来ないだろうし、今日で5日目だから早めに帰ってくるかもしれない・・・そんな事を考える。それにしても、服を2人にプレゼントしておいてよかったよ。虎さんは自前のモフが有るから薄手の迷彩服だが、ムースさんの方は雪国仕様でフィンランドの兵隊さんの様にモフモフにしてある。凍える事は無いだろう・・・多分。帽子に角が出る穴も作ったしね。詩乃が心配していても始まらないか・・・。



それにしてもだ、温水暖房システムが始動して3日も経たない内に雪が降ったのだ、工事は本当にギリギリセーフで完成したと言って良いだろう。

スルトゥの街の出向組は昨日の飛行船で皆引き揚げて行った、彼らも温泉を大層気に入っていた様なので、是非リピーターになって欲しいモノである。

冬虫夏草が見つからず、あのままグズグズしていたら今頃どうなっていただろう・・・考えただけでもゾッとする、鹿兎さんのお陰だな。合掌。


そうそう、温泉施設は5日前に完成をみていた・・・が、詩乃の構想よりかなり小さく、1回に入れる人数は10人程度で・・・ショボッ・・・洗い場を入れて6帖程の広さかな・・・ショボ~~ッ。

詩乃的にはかなり不満な出来なのだが、女衆の皆さんには好評を博して、機織りの疲れが取れるとか、肩こりが治るとか、美肌に良いと・・・とても喜ばれていた。温泉の素晴らしさをご理解いただけて、いち日本人としても嬉しい限りだ。


でもさぁ、問題が起きた・・・抜け毛・・・だ。


フルフェイスの人達が入ると、どうしても毛が抜けて排水溝が詰まる・・・だから集めたんだよ抜け毛を。良く洗った抜け毛を、短く切って・漉き込んで・叩いて叩いて、フエルトの様な毛布を作った。

5日間で毛布が一枚出来た・・・驚異的だよね。


この毛布、子供衆のチビ達に大好評で<お母さんの匂いがする>と、チビっ子ホイホイとなっている。完成した保育園で、お昼寝の時には争奪戦になるらしい。一枚の毛布にチビ達が放射状に入り込み、皆で仲良くお昼寝しているそうだ。ちなみにお父さんの抜け毛の毛布も有るのだが、其方は余り人気が無いようだ。メシマズでも思い出すのかな?


そうなんです、詩乃プロデュースの保育園も無事出来上がり大変に喜ばれました。

うるさ方のジジイ共まで褒めてくれた。主に天井のドラゴンの絵がお気に入りらしい、ジジイ共は寝っ転がってドラゴンの絵を鑑賞していたので、燥ぎ回ったチビ共に踏まれていた(笑)。

アスレチックも秘密基地も男女共に大人気で、ブランコで天井近くまでスイングしたり、縄梯子でクモと捕まった獲物ゴッコ(なんじゃそりゃぁ)をしたり。

御ままごとで、どこぞの家庭の秘密が暴露されたりと、見ていて中々に面白かった。壁の絵の動物や植物も、先生役のお母さんが(持ち回り)注意書きを毎日1回は読み聞かせをして、お勉強しているそうだ。

これで毒キノコを採る危険は減るだろう、良かった良かった。


しかし思わぬ出来事も発生した、詩乃手作りの愛らしい縫いぐるみ達の末路だ。


狼の世界には縫いぐるみを愛でる文化が無かったのか、草系の動物ばかり作ったのが不味かったのか?狩りの練習に使われてしまったのだ。みんなして集まり囲み、ボコして引っ張りまわす・・・あぁ無情。

此処にムースさんが居ないで本当に良かった・・・。

ボロボロになった縫いぐるみを自慢げに見せに来るが・・・これを褒めろと言うのか?頑張って作ったんだぞ~~~(涙)。

赤ちゃん狼の縫いぐるみは流石にボコされなかったが、2歳児くらいのチビが縫いぐるみに覆いかぶさって首筋に噛みつきマウンテングしていた・・・。

まったく、狼って奴は・・・(遠い目)。


ドラゴン様の縫いぐるみだけは、恐れ多いとの事で長様の会議室に飾ってある。

・・・解せぬ。




岩盤浴と言うか・・・床暖房の様に暖かいフロァーは作られた。景色のいい最上階で(北側だが)日当たりは悪いが、晴れた日には山々の絶景が拝める最高のロケーションだ。

主に暇なジジイ共が昔を懐かしんで、尻を暖めながら日がな一日話をしている。麻雀でもあればいいのだろうが、詩乃はルールを知らないし・・・異世界で今更リバースなど広める気にはなれない。


ジジイ共の機嫌が悪くなると面倒なので、兆候が表れると詩乃とモルちゃんに出動要請が来る。手仕事部屋で、この前染めた糸でレース編み等を見習い前の女の子達に教えていると、使いパシリの若いのが申し訳なさそうに呼びに来るのだ。

ドラゴン様を拝めれば機嫌が直ると言う訳だ、詩乃は此処でもオマケである。


今日も今日とて呼び出され、いい加減ウンザリしていた時だ。

そのジジイ共の胸元に見事な細工の飾りが下がっているのを発見した、なんでも先祖の牙を譲り受け、彫刻を施しお守りのペンダントにするらしい。

かなり緻密な彫り物だ・・・ほら、よく有るじゃん?象牙にこれでもかと彫刻を施した置物が、お大臣ちの邸宅とかに飾ってある奴だ。ジジイ共はあれを作ると良いと思うよ?


「この彫刻を施してあれば、カッコ良いので高く売れるんじゃぁないかな?」


牙の彫刻の文様には色々な意味が有るそうで、魔除けや幸運のお守り・勇気の印など、狼族の文化が現れていて興味深い。中2病の平民の兄ちゃんとかに受けそうだ、カッコいいので詩乃も欲しくなるくらいだ。


褒めて褒めて、褒め倒しておいて・・・おもむろに胴巻の中から肉ギャースの爪や牙を取り出す。クイニョンに来る途中に襲われて、爆発させて粉々にしてしまった肉ギャースさん達のモノである。流石に硬い爪や牙などは原型を留めていたので、何かの役に立つかな?と拾っておいたのだ。

爪で6センチ位は有るかな?凶悪そうな一品だ。オニキスの様に暗黒の黒で、空にかざすと冷たく光る。

肉ギャースの爪や牙はジジイ共のやる気を刺激した様で、床暖房の上に布を広げて小刀を出し、細工仕事を始めた。指先に神経が集まると、自然と口は閉まる。

ジジイ共の昔話と説教は封印され、各方面に大変に喜ばれた。


    ****


そんなこんなをしている内に、7日が過ぎ虎さんとムースさんが帰還してきた。

山ギヤの背中に沢山の荷物を積んで、お仕事を完璧にこなして来た様だ。

流石出来る男達である。


「お帰りなさい、お疲れ様でした。雪が降って寒かったでしょう?」

虎さんのムースさんも、獣体の出身地は北の方だそうで、このくらいの雪は大丈夫との事だった。

谷に居ついていたパガイさんは、沢山のサンプルに大喜びで、すぐに査定に入ると言って荷物を受け取っていた。6男と同じ匂いを感じるね・・・興味の有る物にはマッシグラである。



「虎さん、ムースさん。お留守の間に温泉が完成しやした。ちょいと小さい所が玉に瑕でヤスが、でもお湯は一級品の源泉かけ流しだぃ。冷えた体を温めに、是非入って下せぃ。」

詩乃は自慢げにそう言って、案内するべく虎さんの袖を引いた。


「いらん。」


・・・手を払われた・・・え?


「何ででヤスか?温泉ですよ?」

身体は冷えていないし、汗もかいていないから大丈夫だと断られる。引き留めようとしても、サッサと草系の部屋に向かおうとして、詩乃の話を聞いてもくれない。


・・・・・ダアアアアアァァァァァ~~~~~・・・・・。

涙が溢れた、虎さんが・・トラさ・・・温泉・・・入らない・・・いうた。


王宮でもこんなに泣いた事は無かったのだが、涙が止まらず源泉かけ流し状態だ、涙を止めようとするがウグッウグッと喉が鳴るだけで止まらない。

パガイさんが呆れて、何でお前は泣いているんだとため息を吐く。

「だってだって、虎さんが温泉を要らんって・・・温泉の事を。温泉良いのに、疲労回復に筋肉痛の緩和・・食欲増進・・・。温泉は~~お・ん・せ・んは、尊いものなのに~~~。虎さんが、入ってくれない~~~。」

涙を流しつつ、温泉の素晴らしさをアピールする。日本人だからね、温泉を貶されては黙っちゃいられない!温泉は正義だ!ジャスティスだ!


パガイさんはウンザリしたように

「獣人は鼻が人間より利くのだ、狼達が入った湯には当然匂いが付くだろう?そんなところに狼族以外の獣人が入りたがるはずが無いだろう?」

ダメ出しをされる・・・当然の様にムースさんが頷いている。

むぅ・・・スルトゥの街の出向組の人達は入ったよ?

「ザンボアンガ出身の者は、色々混ざり有って暮らしているからな、多少の事は気にしないが・・。」

そう言うと、パガイさんは虎さんとムースさんをチラリと見た。

「では、今から男風呂に行って、きっちり掃除しやす!お湯も全部抜いて溜め直しやす!!それでも駄目でやすか?匂いますか??嫌ですか?」

「何でそこまでするんだ、お前は・・・。」

呆れ果てるパガイさん。

「外で寒い思いをして働いて来た、虎さんとムースさんにぃ温泉に浸かって身も心も温まって欲しいんだよぉ~。温泉だぁよう~~。」

グズグズ泣きながら訴える、温泉は日本の心、我が故郷のおもてなしスピリット!



仕方が無さそうに、ため息をついてムースさんが頷いてくれた!よし!!

詩乃は期待を込めたキラキラした目で、虎さんを見つめる・・・みつめる。

「1回だけだぞ・・・。」

苦虫を百匹噛み潰した様な顔で虎さんが唸る。


勝った!!


「では、さっそく掃除に向かいやす。掃除が出来ましたら草系の部屋まで、モルちゃんに伝えに行ってもらいやすから。しばしの間お待ち下せぃ。」

破顔一笑、詩乃は勢いよく走り出した。



「あいつの故郷では、温泉は大事なモノらしい。この7日間・・あいつはずっとあんたらの事を気にかけ、心配し続けていた。温泉はあいつなりの心尽くしなのだろう、迷惑だろうが受けてやってはくれないか。」

有難迷惑・・・を体現したような女だな、虎さんがそう呟いた。


2時間後、モルちゃんに案内されたやって来た温泉は・・・。


綺麗に掃除されていて、狼共の匂いは無かったし・・・お湯は暖かで確かに気持ちが良かった。カポーンと桶の音が高い天井に響く。

「とうとう実現したのか、出来るとは思わなかったがな。」虎さんが呟く。

風呂など貴族階級の物だと思っていたし、必要性も感じてはいなかったが。

「始めの頃から、随分と執着していたからな、人間の一念とは恐ろしいものだ。」

ムースさんは顔を手で擦り、腕を広げて首を振った・・・良い湯だ。

体の大きい2人で湯船は一杯だ、お湯の中で虎さんが気持ち良さげに尻尾を振る。



「お背中流しましょうか~~?」

侵入して来た詩乃を、ムースさんが真っ赤になって放り出すまで・・・後20秒。



いい湯だな~~、これから雪見風呂の季節ですねぃ。

雪見風呂、入った事は有りませんが・・・台風の豪雨の中、露天風呂に入った事は有ります。←バカ

近くの川が濁流になっていて、マッパで流されたらどうしようと思いました( *´艸`)。


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