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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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新しいミッション~1

高い所はお好きですか?

夕食も食べないで、一晩屍の様に眠っていた様だ。


ムゥ・・・不覚。以前インフルエンザで40度の高熱を出した時でも、背油たっぷり豚骨ラーメン醤油味カップを完食した詩乃なのに。弱くなったものだ・・年かな?

そんなことを考えていたら、グ~~~~っとお腹が鳴ってムースさんに笑われた。

腹時計で目を覚まされたのは初めてだ、そう虎さんにも言われた、おっきな手で頭をポンポンされる。

食欲があるなら大丈夫だな?なんてムースさんにも言われて・・・どうやら2人に心配をかけていた様だ、御免なさい、それからありがとね。

卵ちゃんは一晩虎さんが温めていてくれた様で、虎さんの懐の中から<詩乃ちゃ~ん。>って呼んで来た。卵ちゃんにも心配かけていた様だ、御免ねメンタル弱くてさぁ。虎さんから受け取り、卵ちゃんにスリスリ頬を摺り寄せる(柔らかい殻だから、低反発のクッションみたいで気持ち良いんだよね。)。<詩乃ちゃん元気になった?> もちろんさぁ!元気元気のコンコンチキでさぁ。



朝ごはんの支度をしようと外に出ると、景色が一変していて驚いた。7隻もの飛行船が谷に降り立って、資材をどんどん運び出していく。専門の調理人もいるのか、簡易竈を広げて朝食の準備に余念がない様だ。何か凄いね、これが大人の本気って奴だね・・・詩乃のして来た事など、子供のお遊びの様だ。


「おい、ノン。これにダンジョンハウスの立体図を展開してくれ。」

パガイさんがスナギツネバージョンで話しかけて来た。

ブッ!・・・・思わず堪える、笑いのツボ。正面から見るのはやめてほしい。

「何だお前、こっちの顔の方が好みなんだろう?忙しいんだ、早くしてくれ。」

パガイさんが指定して来た石・・いや、岩か・・は結構大きなものだった。あれか?工事の進捗状況が一目でわかるようにディスプレイして、やる気を引き出す建設現場でおなじみな奴か。解ったとばかりに胴巻の中から<空の魔石>を取り出すと、岩に向かって<3Dマッピング>と唱える。

「悪いが毎日夕方には、工事が進んだところを新たに付け加えて欲しい。どこまで進んだか可視化をするのは、やる気の元だからな。」

解ったと頷く詩乃・・・周りを見るとパガイさんの料理人の所へ、狼族の調理担当の希望者が集まり教えを乞うている。あの性根の座った、食いしん坊の若いお母さん狼さんもいた、楽しそうに目をキラキラさせている(笑)。


「パガイさん、アッシは此処ではもう特に役に立つ事も無さそうなんで、出来れば別行動をとりたいんでヤスが。」

何を始める気だと、怪しんだジト目でパガイさんが見て来る・・ブッ・・だから、スナギツネの顔でジト目とか・・・ほんと無理ですから勘弁して。

「この辺の周りの地図を作っておいた方が、来年以降便利に使えると思うんですよ。何か資源でも埋まっていれば見つけたいし、危険な場所や魔獣のいる場所・・・頭数なんかも調べておくと良いかな?資源は乱獲したら枯渇するからねぃ。後は何かありませんかね、調べておくと良い事は。」

「お前が其処までしてやる事は無いぞ?存外お人よしだな・・・。」

まぁ、一冬此処で暮らす約束はした事だし、暇をブッこいていても仕方が無い。



新しい長様にも相談したところ、虎さんとムースさんの護衛の他に、狼族からも護衛を一人付けたいと言う。狼族は地図以外にも匂いなどの五感を使って、地形など覚え込むらしい。これから住むのは彼らだし、一人でも良く知ったいる者がいるのは良い事だろう。

「できればムースさんや虎さんと、上手くやれる者をお願いしヤスねぃ。作業の間中、ケンつくな嫌な雰囲気で過ごすのは御免なんで。」

そういうと新長様・・・(銀色狼なので・・銀狼か・・・そのままだな、銀さんでいいか。)は、了解したと爽やかに笑った。


    *****


「そんなわけで~我々ご近所探検隊は、新しい大地を調べるべく結成されましたぁ。メンバーはご存知、必殺仕事人で何時でも冷静な隊長の虎さん。怪力で動植物に詳しいムースさん。名誉隊長で料理人の詩乃(ムードメーカーでもあるよ。)懐に卵ちゃん<よろしくお願いいたします~>か・・・可愛い。それから銀さんの推薦で、元魔石鉱山の地形調査と安全管理担当の・・・。」

「はじめまして、トクと言います・・・狼と犬のハーフです。よろしくお願い致します。」


・・・どう見ても柴犬だった、白い麿眉が有るフルフェイス。


何でもトクさんは、体が小さいので鉱山の隙間に入り込んで、調査を担当していたそうで・・・まぁ、腕に覚えは無いのだけれど(そこで照れるか?)、その分危険を察知するのが早いそうなのだ。それにしても、狼族と付き合ってかなり立つが、これほど腰が低い者には初めて会った。体が小さいせいか?犬とのハーフがそうさせるのか?それでも愛嬌のあるくりくりした目に、別段暗い影は見えないのは、鉱山で確かな仕事をしてきたプライドがあるせいだろう。いいよね、職人肌の仕事人!!すんなりと2人の護衛とも馴染んでしまったようだ。


「本日は~住居の谷の上の、テーブル大地を探検したいと思います。すでに肉ギャースがいる事は確認されていますので~、安全の為にぃ、魔獣避けと結界のディフェンスコンビのお守りを配りやす。それぞれ好きな色をお取りくだせい・・・虎さんは黄色で?保護色か?ムースさんは緑、良いですね草系にピッタリだ。トクさんは黒、瞳の色に合っていていい感じでやすよ?」

名誉隊長でヤスからねい、隊員の安全には気を使うんでさぁ。えっ?卵ちゃんも欲しい?え~~~と、何処につければいいのやら・・・仕方が無いのでシール式にペタッと貼ったが。痒くはないですかぃ?そう大丈夫?それは良かった。

「では、本日は名誉隊長の詩乃と卵ちゃんは、ドラゴンのタンザナイトさんが~谷の上まで運んで下さるそうなので~隊員の皆さまは自力で谷の上まで上がって下さいませ。宜しいですか?では行動を始め!」


意外な事だが素直に例の谷スジの道を登っていく隊員達、詩乃に人徳が出来たのか?はたまたワラワラ五月蠅い谷が嫌なのか・・・まぁ、素直に言う事を聞いて頂けて結構な事である。


下から見ていても<玉ヒュン>モノの道を、スルスルとあっという間に登っていく隊員たち。この前あんなに時間が掛かったのは、ひとえに詩乃が足手纏いだったのか・・・反省・・・。やっぱり虎さんがいっち早いね、ピッケルの様な爪は有利だものね。ムースさんは腕力にモノを言わせて、トクさんは軽い体を素早く動かして小さなピッチでスイスイ進んで行く・・・凄いねぇ・・・カンフー映画と、ジブリアニメは体力勝負だと思っていたが、異世界もそうだった様だ。5分も経たない内に全員が谷の上に登り切った、上がって来いと合図を寄越している。

「すいませんがタンザナイトさん、よろしくお願い致しますねぃ。」

パガイさんのマイドラゴン、タンザナイトさんの背に乗せて貰って上空に舞い上がる。上昇気流でも有るのか、エレベーターの様にスイ~~~ッと登っていく・・・下っ腹がヒュンとした。

あっという間に無事谷の頂上に上がり、お礼を言ってタンザナイトさんから降りる。その時、頭の中にフッと話しかけられた。


【お前さんは、いつまでその子を、卵のままにしておくつもりだい?】

<・・・・・!!!>

「え?」


どう言う意味か聞こうとしたが、その前にタンザナイトさんは飛び立って行ってしまった。

「卵ちゃん・・?]

でも、卵ちゃんは沈黙したまま、何も答えてはくれない。


「どうした?何かあったのか。」

ムースさんに聞かれて、返事に困る・・・『仕方が無い、後でパガイさんにでも聞けばいいか。』何でもないと返事をして、詩乃は探検に向かった。



   ****


谷の上の滝の周りに有る森の中を歩き回り、危険な場所をチェックする、竪穴が所々開いているから(かなり深い穴もあった)危ないのだ。岩だらけの源泉近くを観察し、どのルートでお湯を流せば良いかを(トクさんが)考える、鉱山の調査と似ているそうで専門家らしく器具を使ってメモを書いていた。


途中でお昼の時間になったので、胴巻の中から本日のランチを取り出す。本日はお鍋で焚き込みご飯を炊いてみましたの、各自の食器によそって・・・仕上げに三つ葉みたいな香りのハーブを飾って出来上がり。どうぞ召し上がれ。今日の炊き込みご飯は、トデリの人達が贈ってくれた干物を戻して炊き込んでみました。海のモノは初めてかな?お口に合いまして?3人は海は知らないと言っていたが、魚は大丈夫な様で美味しいと言って食べてくれた。卵ちゃんは食べられないので可哀想・・・香りは解るかな?嗅いで見る?・・・良い匂い?生まれたら一緒に食べようね。食後はお茶とパウンドケーキを出した、虎さんは甘いものは苦手と言って食べなかった。なので虎さんの分は3人で分けて食べた、トクさんはこんな美味しい物初めて食べましたと喜んでくれた。


お昼の後も一日中歩き回った、かなり広いねテーブル大地・・・。TOKYOドーム何個分だ?<空の魔石>を掴み一歩を40センチとして換算する・・・異世界の伊能忠敬とお呼び下され。谷の反対側は緩やかな下り坂で、原生林と続いていた。肉ギャース達は此処から獲物を追って谷の方まで来たのだろう。

「この原生林も調べた方が良いんでヤスかねぃ・・・?」

見た感じあんまりにも広いので、ゲンナリする・・・くたびれた。


「ドラゴンだ。」

虎さんが指さす方に、ドラゴンが旋回しながら飛んでいた。見た事のないドラゴンだ、野生だろうか?

<詩乃ちゃんが遅いから、心配して飛んで来たんだって。乗って帰るように言っているよ?>

離れていてもドラゴン同士は意思の疎通ができる様だ、便利で良いね・・・ケータイ要らずだ。

「それは有難い事でヤスが、アッシはこれでも名誉隊長でやすからねぃ。隊員たちを置いて、手前だけ楽ちんに帰る訳にはいきやんせん。」

「いや、歩くのが絶望的に遅いから、先に帰ってくれた方が助かる。」

虎さんて、ほんとハッキリ言うよね。残りの2人もコクコク頷いていた。チッ!


ドラゴンに手を振って合図をし降下して来てもらう・・・始めて見る子で、パイライトみたいな柔らかい灰色の様な、乳白色の様な綺麗なドラゴンさんだった。お礼を言って乗せて貰う、もちろん卵ちゃんも一緒だ。3人の隊員達に見送られながら、ドラゴンは高い所から滑空するように空に飛び出すと、一度大きく羽ばたいて空高く舞い上った。


凄い!気持ちがいい!!


今日歩き回ったテーブル大地が一望に見える、壮観な風景だ・・・風が少し冷たいが、それさえも気持ちが良い。これがドラゴンの住まう場所・・・、そんな思いが頭の中に広がった。


此処こそが、卵ちゃんの世界・・・卵ちゃんも詩乃の懐の中でフルフルと喜んで震えている。


【お前さんは、いつまでその子を、卵のままにしておくつもりだい?】

タンザナイトさんの言葉がよみがえる。




夕焼け空の中、紫色に霞む山々と・・・賑わいを見せる谷を眺めながら、詩乃は何らかの決断を迫られて要る事を感じていた。詩乃の感情を卵ちゃんも感じているのだろう・・・黙って懐に収まっている。

二人の気持ちを思いやってか、お初のドラゴンさんは長いあいだ、空を巡って考える時間を作ってくれている様だった。



詩乃を乗せたドラガゴンが谷に降り立った時には、3人の隊員たちはすでに到着しており、夕飯を食べている最中だった・・・・どんだけ早いの?!


昔、パラセーリングをしたことがありますが・・・ヒュンヒュンで恐かったですな。

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