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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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谷の上には~1

高い所はお好きですか?

山ギヤに狼避けのお守りを造った、露骨に狼避けだと角が立つだろうからカウベル風にした。ガランゴロン音がして、EUに加盟しない某山がち国家の様で素敵だろう。


お世話した後に首にぶら下げて貰う様にムースさんにお願をして、山ギヤ達のカウベル風のお守りを渡した、可愛いよねカウベル。出来ればチロリアンテープの様な可愛い物にぶら下げたかったが、今は時間が無いので荒縄の様なゴツイ紐に括り付けて渡した。・・・暇が出来たら造ろうチロリアン。


ムースさんが戻ってくるまでに、詩乃はお昼に食べるお弁当を作り、虎さんは武器などの点検をしていた。



「そんなわけですから、お昼の支度はお任せますね。」

と、若いお母さんにお願いしたら快く頷いてくれた、腰には小さなケモ耳ちゃんがへばりついている。彼女は料理が好きならしく、鹿の解体にも動揺することなく「美味しそう・・・。」と呟いていた猛者なのだ。何でも鉱山に居た頃から料理をしてみたくて、猫さん達にこっそり教わっていたらしい。美味しい料理を食べさせたいのは、お母さんの本能だって言っていた、彼女の旦那さんと子供は幸せ者だね。

詩乃は自分で調理をするが、それは美味しい物を食べたいからであって、他の人が美味しい物を作ってくれるのなら、喜んで台所を明け渡すタイプだ。

趣味のパワーストーンのアクセサリー造りとか、部屋のリホームとか・・・やりたいことは山ほどあるのだから。


取り敢えず、今の一番の関心事は<温泉の源泉を探そう>だろう。この世界に来てから、温泉とは随分と離れてしまっていた。入りたいよ~温泉・・・ただのお風呂とはまた違う趣があるんだよね、お湯もお肌すべすべで美肌の味方だし。

詩乃の脳内にはすでに大浴場が広がっており、ナミナミとお湯をたたえた湯船と、サウナ・岩盤浴の施設なども完備されていた。う~~ん、露天風呂も外せないよね。

風呂上がりに牛乳も飲みたいが、山ギヤさんはミルクを出さないので無理なのだ。ベビーでも生まれれば、ミルクも出るのかな?・・・来年連れて帰るのが大変になりそうだから、それはあきらめた方が良さそうだね。楽しい妄想にブツブツ呟いていたら、虎さんに不気味がられた・・・酷いね、君達にこの世の楽園を具現化してあげようと言うのに。



ムースさんが戻って来たので、案内してもらって壁へと向かう・・・かなり高いよね、この壁大丈夫かな?まぁ、高い所は嫌いじゃぁのだが。

ムースさんは本当に心配性でロープを取り出すと、詩乃の腰に巻き付け紐の端を握った。これじゃぁお散歩ワンコみたいだね、多少の不満は感じたが、それで護衛の2人が安心するなら良しとしよう、私ってば心が広いのだ。こっちだと言ってムースさんが紐を引っ張るので「ワン」と言って後に続いた、虎さんが「お前にはプライドと言うものが無いのか?」と聞いて来たが、食べられない物と大事な趣味以外の物は、基本的にはどうでもいい。


そり立つ谷の壁に、うっすらと道が見える・・・正確に言うと、壁に少~~しばかりの凹みが、道の様に続いているだけだ。ネズミさんの歩く道なら整備されていると思うよ?これは道では無くてスジだ。前言撤回します<下の廊下>の方が、よっぽど整備されています・・・整備をしている何とか電力様、有難うございます~~。これは文明の道とは言い難い。

「どうする?行くのを諦めるか。高度が出ればもっと怖くなるぞ。」

ムゥ、虎さんのイケズ。怖さと温泉だったら温泉が勝るんでぃ!日本人の温泉好きを舐めるなよ!!


と言う訳で、登り始めて50分余り・・・一応道らしきスジを辿りながら、岩にへばり付くように登ってきました・・頂上付近まで。しかし何だって最後にオーバーハングなど、造るかなぁ・・・頭上にネズミ返しの様に岩が出っ張り、先に行くのを邪魔している。ワザとか?ワザとなのか??

虎さんは上の様子を見てくると言って、身軽に懸垂をかましスルスルと登って行った。なんか凄いね?


暇なので下を見て見る・・・ほう、獣人がまるでゴミのようだ。アリンコみたいに動いている、此方を見上げて驚いているようだ、手を振ったら小さい子が喜んで振り替えしてくれた。可愛いね。

今度は上を見上げて、遠くに見える高い山々・・・パガイさんが言うには3000メートル級だというが、その雄姿を眺める。日本人だからね・・・あそこに神様がおらっしゃる様な気がする、それだけ神々しい雰囲気を持つ絶景なのだ。夏なのに頂上に白い雪が見える、この辺が水が豊かなのはあの山々の恩恵だろう。白く煙を吐いている山もある、水蒸気・・・?火山だろうか、温泉が有るのだから、火山があるのも不思議ではないが。願わくば噴火などしないで、大人しく眠って居て欲しいものだ。


そんな事を考えていたら、虎さんが安全宣言を出してロープを垂らして来た。腕の力だけでは心もとないので、股の間に通して消防のレスキュー隊員風にする。またしてもムースさんに奇異な目で見られたが、安全第一だもの見た目はこだわらない。

「行きます!!」

掛け声一発、足を突っ張りながら岩壁を登っていく・・・あれだね、持って無いから良く解らないが<玉ヒュン>てやつだね。足の間から下界の様子が見えて、怖いの怖くないの・・・ヒュンヒュンしながらドッコイショと登っていく・・・下りはどうするか?そんなことは考えたくは無いのだ・・今はな。


どうにかこうにか登り切って、ゼーハー言いながら固く結んだロープを解いていたら、解き終らない内にムースさんが登って来た。何でも腕の力だけで、懸垂状態でぶら下がりながら登って来たらしい。角は引っ掛かりませんでした?思わず聞いちゃったよ・・・大丈夫だったって。良かったね。


登り切ってホッとしていたら、川の流れるせせらぎの様な水音が聞こえて来た。この水は何処からくるのだろう、不思議に思って周囲を見渡すと・・・ギニア高地みたいな密林が茂っている場所が開けていた。かなり広い様だ、登るのは大変だが何故に此処に住まなかったのか?不思議な事では有る。

テーブル上の大地が谷を挟んで、ところどころに立ち並んでいる。中にはテーブルが重なり合って、階段状の山を形成しているモノもある。大昔にどんな地殻変動が有ったら、こんな台地が出来上がるのか・・摩訶不思議なことだ。


ギャーギャーと鳴く鳥の声が多いので、此処は鳥たちの宿営地なのかもしれない。鳥のフンの匂いなのか、温泉に含まれる成分の匂いなのか判らないが・・・面妖な匂いが漂っている。

しばらく進むと、ダンジョンハウスの真ん中に流れ落ちる滝を見つけた、スケールとしては華厳の滝の様な感じだ、この先に湖でもあるのかな?近づいて水に触ってみる・・・日向水くらいには温かい。さて源泉は何処だ?探そうと立ち上がろうとした時、虎さんが「伏せて結界を張れ」と指示を出して来た。大きなバナナの葉の様な物に3人で隠れながら、結界を張った・・・。ついでに目くらましの魔術具を展開する(これはラチャ先生の私物だ、待っていけと偉そうに貸してくれたのだ。)何か騒ぎながら、森をバキバキ折って近づいて来るものがいる。草食系の魔獣を追っているのか、肉ギャースの集団が迫って来る。追われているのは角ウサギより大きい、鹿兎だ(ウサギと鹿が程よく融合しているような魔獣なのだ。)目の前でブラッティカーニバルの開催は、激しくご遠慮願いたい・・・。顛末を見ない様に虎さんが。目を押さえて懐に抱き込んでくれた・・あぁ、HELL&HEAVEN。

「あっ!」

2人が押し殺したような声を上げた、追い詰められた詩兎は滝にダイブしてしまったという。肉ギャースは獲物を惜しそうに、滝つぼを覗いていたが・・・やがて諦めたのか去って行った。


滝の近くに寄って、恐るおそる下を覗き込んでみる・・・鹿兎の姿は見えなかった。

「ちょっと・・助かるのは無理そうでやすねぃ。」

なるほどこんな事が有るから、肉ギャースが降りてこられない様に、谷の道をオーバーハングにしてあったのか。どのくらい捕食動物がいるのか・・・源泉引く工事も大変そうだね。目くらましの魔術具を展開しながら、源泉を捜し歩く。しばらく探検していると、森が開け荒涼とした大地が見えてきた。歩くこと数十分、大涌谷の様に思わず卵を漬けたくなるような、ボコボコ沸き立つ源泉が見つかった。硫黄臭い様な独特の匂いはない、単純泉かな?かなり熱そうだが、谷間で引いていく内に冷めるだろう。お風呂の位置と調理室の位置は考えなくっちゃね・・・。流石に源泉の周りは荒涼とした風景が広がっているので、捕食動物が近づく事は少なそうだ高めの柵でも作って魔獣避けのお守りでも置いておけば大丈夫かな?


「疲れたので、この辺でお弁当にしましょうかい。」

そういうと詩乃はお弁当の肉パンを取り出した、ボコール公爵領都・スランの肉パンには負けるが、王都の肉パンよりも美味しいと思うよ?熟成の魔術具で生ハムを量産したのだ、手持ちのクリームチーズと野菜・生ハムのバケットサンドはかなりいい出来だと自負している・・・どうでぃ?美味かろう?


美味しくパクついていると、何処からか・・・か細い声が聞こえてくる。何だろう?幼い子供のようだ・・そう虎さんに言ったが、虎さんのムースさんにも聞こえないらしい。空耳かな・・・?

こんなところに誰かいるとは思えないし・・・。



「た・す・・・け・てぇ・・・。」

確かに聞こえた!!誰かいるのか!?


詩乃は耳では無くて、頭の中に響いて来たのに気づかなかった。

「誰~~、何処にいるの?」

大きな声で呼ばわっても、風が吹き抜ける音がするばかり・・・もしかして・・・幽霊?


「たす・・けぇ・・て、詩乃・・・。」

名前が知られているのに驚いた、トデリの住人でもいるのかな・・・まさか。


詩乃は護衛2人に不審に思われながら、荒涼とした岩石砂漠の様な地形を探し回った。

「ここ・・いる・・・・ここ・・。」

声がする岩のくぼみ、かなり深いが・・・そこを覗き込んだら、ラグビーボウル位の卵がコロンと転がっていた。




「貴方は・・・卵ちゃん?」


続々新キャラ登場か?

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