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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
32/126

ダンジョンハウス~1

何という事でありましょう・・・。

パガイさんの飛行船を見送り、谷には静寂が戻って来た。


残っているメンバーは年寄りと、ガチムチおっさん&おっかさん。若者の残り半数・小さな子供のいる若夫婦、それに見習い前の子供達だ。バランスが悪い人口構成だね、とにかく一人も死なせず冬を乗り越えるのが目標かな?


「それでオマケの娘よ、其方は我らに何をしてくれると言うのか?」

長様が訊ねて来た、そうだね・・・まずは、ダンジョンハウスの不便な点でも解消していこうか?詩乃は住宅のリホームやインテリアの改造をするTV番組が大好きで、DIY女子的な事も手を出していたのだった。

何たって棟梁を務めた爺の孫娘だからね、自室のリホームだけでは物足らず、リビングやダイニングまで手を伸ばして家族に疎まれたものだった。何気に評判が悪かったのだ、エスニック調の装飾は・・・。あれか?骨董市で手に入れたアフリカのお面が怖かったのか?ウララちゃんに見せたら小屋に避難していたっけ(笑)。


「この谷の洞窟住宅に住んで、どのくらい経ちやすか?住んでいて不便を感じた事も有りやしょう?不便を無くしていく方法を考えて行きたいと思いやす。家の事は奥さん達の領分でがしょう?奥さん達に話を聞いてもよこざんスカ?」

長様が口を開く前に、長様の奥さんと思しき恰幅の良い狼さんが前に進み出て来た、不満は沢山あるらしい。長様はウンザリとした顔で(多分フルフェイスだから解らんが、尻尾がダラント垂れ下がっていた。)お前に任せると丸投げして来た。どこの世界も家の事となると、熱くなるのは奥さん達だよね。

「では、アッシは聞き取り調査をしますんで。虎さんはガチムチさんたちを指導して、狩りの仕方を伝授してくれますかぃ?ムースさんは山ギヤと畑をお願いしヤス。食べ物が無くちゃ生きて行きゃせんから、見習いの小さな子を手伝わせて、畑仕事のやり方を教えてやって下さい。よろしくお願いしますね。」

長様を通り越して指示を出してしまったが、奥様達からの文句から離れられると思ったのだろう、寛容に頷いていた。


    ****


わくわくダンジョンハウスに初潜入だ、あちこちに階段や部屋が有り迷路のようだ・・・楽しい・・が。

「暗いでやすねぇ~~狼族は夜目が効くので?」

聞いてみるとそんなことは無いらしい、ケモ耳さん達は人間と変わりない様だ。油で明かりを採っているが、獣脂なので臭いそうだ。鼻が利くなら辛いだろう。


〇明るく、換気の為の風の道を考える。


ふむふむ、かなり広い広間的な場所も有る。

「食事の支度は、各家庭ごとにしていますか?それとも、皆で一緒に取るやり方ですか?」

鉱山で一緒に暮らしていたのだから、社食的に食堂の様な所で食べていたことも考えられる。

「今はみんなで交代に如何にか作っているの、鉱山の時には猫が作っていたから、私達は食べるだけだったわ。男たちの掘って来た魔石を、純度ごとに梱包して発送するのが仕事だったから。」

・・・もしかして、今凄く困っていませんか、採って来た獲物とか捌いて熟成とか出来てます?


これは料理人を養成して、一括で食事を作った方が良いかもしれない、食料の管理も出来るしね。


〇厨房と料理素材の備蓄倉庫、大食堂にテーブルとイス。


「洞窟の中は何だか暖かいですね、周りの石が温かいのかな?何で暖かいか解りますか。」


ここの洞窟住宅は、今はいない先住民が開発したようで、詳しい事は解らないが壁の間に暖かい水を通してあるようだ。壁に耳を当てると水音がするそうだ。凄いね、天然の床暖房か。・・・これは使えそうだ。

温水が流れているなら、此処は是非温泉を作りたいじゃぁないの!


〇源泉の調査、ダンジョンの中の水の通り道の調査。

〇温水の利用法・・・温泉、床暖、温泉卵・・・スチーム料理。

温泉には岩盤浴みたいに、体を温めて疲れを取れるところを作れば・・・湯治場として営業できるかも知れない。仕事の少ない冬場に、良い収入になるだろう・・・まずはスルトゥの人達を呼び込みたい。

狼さんにサービス業?う~~ん、難しいね。


「今は、奥さん達はどんな仕事を?」

畑の草むしりとか、山に茸を採りに行ったりとか・・・。

「茸は毒を持つ奴もありやすが、ちゃんと判別できるんで?」

・・・数日間に全員で、腹ピーになって大変だったと言う。人死にが出なくて何よりだった。

「来年にはムース角の青年も、此処を出て行くでしょう。今のうちに農作業を教えてもらって下さいね。」


〇クイニョンだけの特産品の開発・・・か。

湿度は有るし、茸の栽培何かどうだろうか?原木におが屑に茸の菌を混ぜた菌床を、トンカチで叩いて植えこむんだったっけ?昔、食費を浮かせたいと奮闘していた時に、密林で茸の栽培キットを買った事が有ったのだ、何だかビッチリ茸が生えて来てキモ可愛い感じだったが。



まずダンジョンハウスの全体像を知る為に、測量と言うか3Dの地図を作らせて貰いたい。奥様にお願いして、長様を説得してもらう事にした。


・・・それにしても、ダンジョンハウスを作った先住民はどうやってこんな広い洞窟を作ったのか?もしかしてここは、水の枯れた鍾乳洞の後なのだろうか?天井に鍾乳石もあるし、床には石筍がある。これをリホームすると言う事は、世界自然遺産の環境破壊なのではあるまいか?・・・まあぁ、良いか?そんな観念はこの世界には無いし、暮らしやすくするのが顧客の要望だし?

午前中はハウスの中をあちこちウロウロして、間取りを考えた・・・<空の魔石>を握りしめながら。



  ****



昼時になったので、食事を作っている場所に連れて行ってもらった。汚い台所は駄目駄目でやすよ?覚悟して行ったが、最悪だった・・・煙を逃がす穴も無い所で煮炊きしたらしい。こんな所で調理したら酸欠で倒れちゃうし、匂いが籠って大変だ!雨が降ったり雪が降ったらダメだが、温かい今は外で調理するしか無いだろう。骨とか羽根とか散らかっていて不潔な事この上ない!許せませんぞ!




大鍋や食器、台所用品・その他いろいろ持って外に移動する、しばらくは外で調理だ。


石を持って来て貰って簡易の竈を複数設置する、大人数だからね大変だ。見習い前のチビちゃんに(そう言っても詩乃より体の大きい子はゴロゴロいるが・・・獣人の血が強いほど体は大きいみたいだ。)燃やせる様な枯れている小枝などを拾って来て貰う。火が無いとご飯が出来ないよ!そう言ったらダッシュで採りに行った(笑)。パガイさんの救援物資に雑穀が沢山有ったので、昼ご飯は丼物に決定だね、醤油は残り少ないのでハーブ焼肉・スパイシー丼にしようかな。肉を熟成させる魔道具から、旅の途中で虎さんが狩って来た鹿肉を取り出す。良い具合に熟成されて、何だか良い匂いがする?熟成の匂いだろうか・・・周りを取り囲んでいる、料理に興味が有りそうな女の人や・女の子に匂いを嗅がせて熟成を教え込む(偉そうに、自分も知らなかったくせに。)。水をどうしているかと聞いたら、かなり離れた湧水まで汲みに行っているらしい。其れは難儀だね~~。今日は取り敢えず、詩乃が水を出して雑穀を洗い鍋で炊くことにする。水に浸している間に、デカチビ達が枯れ枝を沢山拾って戻って来た。

『谷にも木はあるけど、煮炊きの燃料を考えないと禿山が出来てしまいそうだな。』

考えなきゃいけない事が沢山ありそうだ。

「いいかえ?ご飯を炊くときは始めチョロチョロ中パッパッ、赤子泣いても蓋取るな。」

曾婆ちゃんの教えが、こんな異世界の辺境で生きている。ご飯を炊きながら、熟成された肉を薄切りにしていく。手持ちの丸ネーギュとピマン、香り付けのニンニク擬き、と共に塩とハーブで焼いていく。そこに小母さんが「この茸は大丈夫だから」といって、エリンギみたいな大きな茸を持って来た。


詩乃は眉間に皺を寄せながら茸をまじまじ見ていたが、胴巻から便利グッズを取り出した。詩乃はスルトゥの<安らぎの宿ノア>で、料理長さんから野生の食材、茸とか山菜とかの見分け方を教わっていた。その時<空の魔石>を使って、こっそりライブラリーを作っておいたのだ。

その<空の魔石>を取り出して、茸に当てると「鑑定」と、呟いてみる・・・毒茸じゃん!!「激しく腹を下す」って書いて有るよ。


危ないので採って来た茸を全部出させて「鑑定」する・・・8割毒キノコだったorz・・・皆揃ってションボリだ。食べないで良かったね、猛毒注意もあったよ。

女性陣は残った食用の茸をしみじみと観察し・匂いを嗅ぎ・ちょびっと齧って覚え込んでいた、これなら茸採り名人になりそうだね。


改めて安全な茸も混ぜて焼いた、肉野菜炒めの良い香りが谷に流れる頃、大きな鹿を狩って虎さん達が戻って来た。傷は首の1か所だけで、虎さんが狩って来たのはバレバレだ。それでもガチムチさん達は、達成感が有ったのか満足そうに顔を輝かせていた。狩猟本能に目覚めたのかな?採り過ぎると、獲物がいなくなっちゃうよ・資源の保護は大事だし、魔獣の取り分まで犯すと谷が襲われる・・・トデリの人達は凄くその辺を気を使っていた。そんな事も教えなければならないが、年若い詩乃から素直に聞いてくれるかなぁ?

虎さんが血抜きはしてあると言うので、食後に解体教室だ・・・気の弱いのはリバースしそうだから、生徒は選ばないとね。


ご飯が良い具合に焚けたので、食器によそって炒めたブツをのせる、肉野菜炒め丼の完成だ!!配るのは可愛い女の子に任せて、疲れた詩乃は一休みする・・・皆嬉しそうに受け取って行く。豆ちゃんの祖父母の姿が無い様だ、見分けは余りつかんのだが・・・。気になったので、近くに居た小母さんに聞いてみると、何でも気落ちしてしまって部屋から出てこないそうだ。

『よく解らん、孫娘を殺すより、よほど良い解決方法だったと思うが?』

部屋まで食事を運んであげるようにお願いする、小母さんは解ったと請け負ってくれた。豆ちゃんの件では、女の人達はみんな憤りを感じていたそうだ・・・男達は何も解っていない・・・そんな風に呟いていた。



肉野菜炒め丼は大好評で、久しぶりに美味い物を食ったと泣いている若い子もいた。美味しいはやはり正義な様で、硬い表情だった爺様連中も穏やかな顔になった。



衣食住は大事だね・・・調理人になりたい人を募集したら、男女とも結構な人数が集まった。これなら幸先は良いかな?そう思ったのだが・・・食後の解体教室で・・・半分の人数が居なくなった。



肉は食う癖にさぁ。怒るよ?


鍾乳洞、夏は涼しく冬は暖かい・・・小さい頃は住んでみたかったです。


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