表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
30/126

詩乃の決断~1

狼さん達・・・(´・ω・`)です。

チベットスナギツネ!・・・詩乃は口を押さえて必死に笑いを堪える。

うん、好きだよスナギツネ・・・その日本人の様な醤油顔・・・疲れた新橋のリーマンの様な、醒めた目つきと雰囲気が!!


それなのに、詩乃の方を振り向いた時には、いつものバタ臭いパガイさんの顔に戻っていた。えぇ~~~。

「何がええぇ~~~だ。」

「パガイさんは、獣人顔の方が感じが良いでやすよ、元のスナギツネに戻りなんし。」

誰が狐だ、俺は狼だ・・・嫌だね、何だか身に危険を感じる。野生のパガイさんは、危険を感知する能力が高そうだ。

「ノンは毛皮好きで、スリスリして来るから気をつけろ。」

虎さんたら、そんな痴女紛いな事を・・・アッシは血が通っていない、温かくないモフモフなんぞは嫌いなんでぃ。モフに関してはうるさいぞ?


「それはそうと虎さん御免でやすぅ、肉ギャースの牡・・・勝手に売っちまいやした。あまつさえ、獣人達の教育費に当ててしまって・・・。虎さんの分はアッシの貯金から弁償しヤスんで、どうぞそれで御勘弁を。」

「その事なら気にしないで良い、ノンには刀やベルトを貰っているからな、それで相殺だ。」


何て良い虎なんでしょう~~~。惚れてしまうぅ!!

「何だ?見慣れ無い武器だと思ったら、ノンの世界の物か・・・切れ味が良さそうだな。なら俺にも何か造ってくれ。」

「商人が大刀引っ提げて、何を商うんですか?強盗でしょそれじゃぁ。」

ナラって何だよナラって・・・ただでさえ押しが強いのに・・・ブツブツブツ。



「草系の獣人は各村に行くとして、猫系はどうしヤス?ホテルの受付のお兄さんは確か猫さんでしたが、働き口はスルトゥに有りヤスかぃ?」

猫系はサービス業に向くそうだ、水商売に行っちゃうのも猫系が多いそう・・・まぁ、本ニャンが良いと言うならやぶさかではないが。

体の小さい猫系は、もともと鉱山労働に従事していなくて、地方の貧乏貴族の使用人をしていた者が多いと言う。人間を雇うより人件費が安いから(食事代とか雑費だけだし)だったそうだ、解放後はそのまま務めていたり、領内の人間と結婚している者も多いと言う。

「人口が減って、どこも結婚相手が不足しているからな、耳の形や尻尾なんざぁ些細な事なんだろうよ。」

人手不足と貧乏・彼女や彼氏欲しーって気持ちは、種族を超えて共闘するべき敵のようだ。平民の世界の方が柔軟で、生き残りをかけて奮闘している・・・そんな形振り構わない姿が、貴族達には嫌悪され、穢れた地呼ばわりされる所以かもしれない。


それにしても・・・鉱山で纏まって暮らしていた獣人達が、一番遅れていると言うか、進みゆく時代に取り残されていると言うか・・・。取りこぼされて消え去ることの無い様に、先の長い若者達から変化に対応して言って欲しいものだ。どこの世界・時代でも・・・変化を求め、実行して行くのは若者達なのだろうな。



散々ブツクサ言ってコキ下ろしていたが、パガイさんは獣人達からボロボロの毛皮を買ってやっていた。先立つ物が無ければ、クイニョンを出る事も出来ないだろう・・・そう言って。

こう見えてこのチベットスナギツネは優しい所も有るのだ・・・たぶん。

「さあ、これをどう化けさせる?こう言う事を考えるのは得意だろう?お前は。」

!こっちに丸投げかい?このチベットスナギツネ!!

襤褸雑巾の様になっている魔獣の毛皮・・・良い所を集めてパッチワークにでもするしかないだろうよ。チベットスナギツネは紙とペンを持って居たのでイラストを描いて説明する、色をグラデーションの様に並べて、白~灰色~黒と変化するコートでも作ったら素敵だろう?詩乃がそう話すと、マジマジとモモウ柄のコートを見られた、いいじゃないかモモウ柄・・・個性的でさぁ。

色々考えておくから、毛皮を綺麗にしておいておくんな・・・そう注文を付けて、パガイさんを送り返した。スルトゥ側の受け入れ態勢も、整えておかなくてはならないだろう。頑張れチベットスナギツネ、恩は売れるし人材も手に入る。どうせただのボランティア活動では無いのだろうよ。


チベットスナギツネがドラゴンに乗って飛び去ると、怖い人間擬きの獣人が居なくなったので安心したのか、草系獣人達が寄って来て村の情報を聞きたがった。スルトゥを通過した時にも、村へどうだと勧誘されたそうだが、狼族が人間を毛嫌いしていて、村人と草系達が近づく事を許さなかったそうだ。

何気に束縛がキツイね、狼族は・・・縄張りを犯される感じなのかな?


だから途中で村に残る選択をした、野牛さんとモーちゃんのカップルの話をした、2人は旅を共にする中で恋が芽生えたのだから恋愛結婚と言っていいだろう。最初の薬草の村で、段々畑を作る作業で手間賃を稼ぎながら自分の畑を整備していく予定だ。空き家を貸してもらって、ラブラブ新婚さん状態だと思うよ?確認していないけどさぁ。モーちゃんの話に、草系の皆はとても惹かれた様だ。


クイニョンには草系家族が6組、夫婦と子供がいる家庭もあって全員で16名だ。独身はあの山ギヤを預かってくれた、大きなムース角のお兄さんだけだった・・・人間顔に角が付いているので、せ〇と君みたいだ、腰巻着てるし・・地味にツボにはまる。

今日はチベットスナギツネといい、せ〇と君といい・・・詩乃を笑わしにかかっているのだろうか。みな若い家族が多くて、お兄さんに年回りが合う娘っ子がいない所が辛いね。スルトゥに行けば、彼女も出来るかな?


草系の皆は、明日一緒に詩乃とスルトゥに戻りたいと決意している様なので、昨晩作った特製のお守りを渡す。人間避け+狼避けの特注品である。魔獣避けまで付けると、大きさが拳ぐらいになって邪魔な事この上ない。魔獣避けは、フロートとかに付けた方が良いだろう。それにしても大人数だな?どのくらい長いキャラバンになるのか。全員で歩いて帰るのか?子供は歩けるのか???

まぁ、明日の朝にまたチベットスナギツネが来るそうなので、何か考えているだろう・・・逆丸投げだ。


草系が引っ越し荷物(たいして無いそうだが)を纏めると言って去って行ったら、今度は(大)がやって来た。クイニョンに向かう旅の時はブッキラ棒で愛想がよくなかった子だが、家族とも会えて気持ちが落ち着いたのか、雰囲気が丸くなったような気がする。(大)も人間に捕まった狼だから、ポジション的には辛い立場だったのだろうか?旅の間はその事も有ってピリピリしていたのかも知れないね。

(大)はせっかく家族にあえたのに、スルトゥに戻って兵士の見習いをしたいのだと言う。この前肉ギャースに襲われた時は、凄く怖くて動けなかったそうだ。それなのに体の小さなノンさんが(お前からノンさんに昇格していた)肉ギャースを倒し、追いかけて結界を超えたので大層驚いたらしい。

『あれだ、欲に目がくらんで、銭を追いかけてヘタを打った時の話だ。』

冷静に対処し、見た事も無い技で肉ギャースを倒すのを見て、自分の未熟さを痛感したそうだ。基礎をきっちり勉強して、皆を守れる兵士になりたいと言う。そんな気持ちを家族に話したら、親父さんも此処に居たら今は辛いだろう、立派になって戻って来いと励ましてくれたそうだ。

そう言う事なら異存は無い、出来れば親御さんの委任状の一つも欲しい所だが、この世界に委任状や保証人何て有るのかな?



猫さん達はやはり全員退去組、山の中の生活は僻僻しているそうだ。彼らは鉱山で食堂を任されたり、人間の雑用を引き受けていた侍従的な仕事をしていたそうだ。以前から狼族たちから、俺達が働いているから食べて行けるんだと、恩着せがましく言われていたらしい・・・それにも、もうウンザリしていたらしい。


・・・こうしてみると評判が悪い狼族だが、魔石を掘る事でランケシ王国に貢献して来た事は間違えは無い。長い間王族を、貴族社会を魔術を支えた来た功労者達だ。落盤事故で命を落とした狼さんも多いと言う、サービス業や畑仕事も大事だが、それで命を落とす事はまず無いもんね。

・・・きっと心の奥深くには、思う様に言葉にできない色々な想いが有るのだろう・・・口ベタだって言われていたもんな。


なんかね・・・詩乃のお爺ちゃんに似ているんだ。長く生きているくせに、上手く気持ちを出せない所とか・・・お婆ちゃんやお母さんにやり込められて、口をつぐんでブスッとしてしまう所とか。頑固一徹でコミ障で要領が悪くて、でも自分の仕事にはプライドを持って真摯に打ち込んでいた・・・大工の棟梁だったお爺ちゃん。ウララちゃんの犬小屋を作ってくれたのもお爺ちゃんだったなぁ、夏は風通しが良い様に、でも蚊に喰われ無いようにと網戸を付けてくれたり、掃除がしやすい様に色々工夫をしてくれた。ウララの名前のプレートを、宇羅羅って墨痕鮮やかにヒノキの板に書いて、入り口の上に貼り付けてあったっけ(笑)。偏屈だけど悪い人では無かったし、礼儀の成ってないヤンキーとはガチで喧嘩する様な(ハッ!!お兄の脳筋は、爺ちゃんの隔世遺伝だったのか!)元気な爺ちゃんだったけど、小さな子とか詩乃には凄く優しかった。




このままこの谷を去っていいのか・・・聖女様の御使いとして・・・。

〇トはいないけど、姫〇様として頑張ってみても良いかな?


絵的には絶対風車が欲しいよね・・・詩乃の思いは、そんな拘りからかもしれない。

ってか、それじゃぁ狼族は全然関係ないじゃん!(笑)


詩乃はお爺ちゃん、大好きでした・・・職人肌の一家でしたね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ