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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
28/126

クイニョンにて~3

異文化交流は難しい。

意外な事だったが、商人のクイニョン入りはあっさりと許可が出された。


何でもドラゴンに乗って来るって所が良かったらしい、狼族はドラゴンを崇拝していると聞いていたが本当だったようだ。・・・人間に使役されて、飛行船もどきを引っ張っている姿を見たらどう思うだろうか?まぁ、詩乃が知ったこっや無いが。

王妃がドラゴンのトンスラ飛行学校を運営している事は、彼らには秘密にしておいた方が良さそうだね(笑)。


魔術具を使い6男に連絡をする、これは商売用に6男から特別に持たされたもので、王太子達(政治)の影響は排除された秘密のモノだ。ボコール商会・・・ランケシ王国の陰でコソコソ、何をやらかしているのだろうか?統治者より商人達の影響力が強くなる、そんな時代が近づいて来ているような気がするね。ランケシ王国の夜明けは近いぜよ?この世界の竜馬はいつ現れるのだろうか?楽しみな事だ。


連絡の結果、明朝なるべく早めに6男自らクイニョンにやって来るそうだ、新規の商売相手にやる気満々だねぇ、買えるのは詩乃と虎さんが倒した肉ギャースだけどさ。対抗馬?噛ませ犬?商人側が一つの商会では不味いので、気の毒な様だがパガイさんにも来てもらう事にする。その提案は6男にも了承された、彼はこの機会に獣人達に商売のノウハウを教え込むつもりの様だ。脳筋の単細胞で、面子ばかり重視する獣人相手に何処まで出来るか、6男のお手並み拝見と言った所だ。

パガイさんへの連絡は、6男からしてもらうようお願いした。魔力の節約だ、(ボコール公爵子息に言われたら断れまいよ。)・・・省エネは何処の世界でも大事なんです!・・・人間建前は大事なのだ。



さて、如何にか肉ギャースを売る算段も付いた事だし、夕方になって来たので今夜の宿を調達しなくてはなるまい。

詩乃はそう思い立って、周りを見渡したが・・・。歓迎する・・・と言った割には、獣人達は遠くで壁の様に連なり、詩乃を観察するばかりで宿を提供しようなどと言い出すつもりは無い様だ。まぁ、仕方が無いか?大岩も破壊したし、詩乃の事が怖い感じも(面子の為に、死んでも言わなそうだが。)するのだろう。



詩乃はテントを胴巻の中から取り出すと、広場の端っこの方に設営し始めた。もうさんざんやった、慣れた作業である。フンフンフン~~~鼻歌も漏れる。

『夕飯は何にしようかな?』

フロートの中にあった、肉を熟成させる魔術具などは、そのままお持ち頂いたので現在肉の手持ちが無い。胴巻の中には非常食用のハムやベーコンがあるが・・・。面倒だから簡単にパスタでも作って食べればいいか?ゴソゴソと鍋を出してアクアマリンから熱湯を出す、乾燥パスタを入れてしばらく茹でれば麺は完成~だ。風を使ってザルに麺を上げ、チャッチャッと湯切りをする。茹でた後の熱湯に、手製のミートソースの瓶詰めを沈めてしばらく温める。アツアツの麺に、温めた瓶詰のミートソースを絡めれば出来上がりだ。美味げだね~~。フフン。

「虎さんも食べやすかぃ?美味いよ。」

誘いながら皿に分け、粉チーズをパッパと振りかける。

「いただこう。」

虎さんと詩乃は2人で、ギャラリー達に囲まれながら夕食を食べた。

気分はアイドル?何たってア・イ・ドル。


ミートソース・スパは美味しかった。



    ****



テントの中の寝袋は、唯一の個人のスペースで詩乃の楽園だ。お布団大好き、包まれ感のある寝袋も又良し!

誘拐された子供達を、無事に送り届けると言う大仕事を終わらせて、詩乃は久々に緊張を解いて眠っていた。ZZZZZZ・・・・。

それなのに、テントの外からホトホトと叩く無粋な音で目を覚ます。

1度寝たら朝まで起きない・・ラチャ先生とプウ師範には、そう思われているようだが、それは誤解だ違うのだ。防衛力に特化した、あの2人といたから熟睡できたのであって、この3週間の旅の間は絶えず緊張していて、神経はピリピリと起きている状態だったのだ。大事な豆ちゃん達をお連れするのだ、名誉隊長がノホホンとしてはいられまいよ。

あの2人の数少ない良い所は安眠できる所だった、しみじみ回想する詩乃である。


「何でヤスかぃ~~。眠いんですが~~。」

よろよろと、這い出す様にテントから出る。・・・テントを叩いたのは虎さんだった、そうして虎さんの後ろに居たのは?

「夜分にスイマセン、お礼が遅くなり申し訳ありません。ラリィを助けて頂き有難うございました、ラリィの父親でシャウと申します。」

はあ、わざわざこんな真夜中にご丁寧に・・・。

眠くて考えが追い付かない詩乃に、虎さんが解説してくれた。


誘拐事件を起こしたのは人間なのだから、たとえ救出して送り届けて来たとしても、悪いのは人間側だから狼族としては感謝してはいけないそうなのだ。

長が昼間の受け取りの際に、感謝の言葉を口にしたのは、詩乃が聖女様と同じ異世界人だからこそであって、この世界の人間では無いから・・・大目に見たそうなのだ。異例の族長の感謝の言葉に、狼一族一同は大変に驚いたらしい。

「はぁ、そうですか。」

他に言いようは無いだろう・・・別に飛び切り感謝して欲しい訳でもないし、豆ちゃんが喜んでいたから詩乃的にはもう十分だ。なのに虎さんは、深刻そうに鼻に皺を寄せて怒ったような顔でいる・・?


「お願いがあります、私達家族がクイニョンから出るのを手助けして下さいませんか。」

はぃ?今日戻ったばかりですよね?万歳の大団円では無かったんかい?




お父さんのシャウさんが言う事には、豆・・・ラリィちゃんは、人間に誘拐される不始末を犯し、人間に穢された、獣人の誇りを失った不出来な娘と言うポジションなんだそうだ。

『はぁ~~?まめ・・ラリィちゃんはまだ4歳だぞ?何言ってくれてんだ!』

「ふざけた事を言ってくれるな、アッシはねぃ!女の子達には誰にも、指1本触れさちチャァいないんだ。何処のどいつだ、そんないちゃもんを付ける奴は!!ぶっ飛ばしてやる!!」

静かにしろ、激高する詩乃の口を虎さんが慌てて塞ぎ、暴れる身体を後ろから拘束する・・・手が大きいんで・・・鼻まで塞がって・・・フガフガ。苦しむ詩乃に慌てて虎さんが手をずらす・・・口は塞いだままなんですね?

「狼族の娘達は、一族の誇りを失わない為に・・・誘拐などされた場合には、自害する様に躾けられています。ラリィはまだ幼かったので、その様な話は言い聞かせてはいませんでしたが・・。」

ム~~~ム~~~ム~~~。ジタバタ。

怒っている詩乃が、何やら叫んでいる。虎さん手を外さないでグッジョブだ。

「このままクイニョンに居続けると、いずれラリィの悪い噂が・・・あの子の耳に入ってしまう。勿論冤罪だし、死ぬような事は思い止まる様に説得しますが・・・年頃になっても、あの子と縁を結びたいと望む若者は出てこないでしょう。」

キ~~~ム~~~キ~~~。ジタバタ。

「私達はあの子が攫われた時に、探す猶予も与えて貰えなかった。今度は最愛の娘が、同族たちの心無い言葉に苦しめられるのを、ただ黙って見ていなければならないのでしょうか・・・。そんな事になるくらいなら、このクイニョンを捨てます。親子3人で、静かに穏やかに暮らせる土地を探します。その為には何でもします。お願いします・・・手を貸して下さい。聖女様の御使いのオマケ様。」

ム~ンン、ム!!虎さんの手をピタピタ叩いて、放してもらうよう合図する。

虎さんは暴れないだろうなと、目で念押ししてくる。ウ~ウ~コクコクと頷く。

プハァア・・・ッ。何気に苦しかった。

「話は解りやした、合点承知の助だぁ。このオマケ様に任せておきな。」



・・・それから詩乃のテントに明りが灯り、夜明けまで消える事は無かった。


    ****


さて夜明け過ぎには、気の早いドラゴン達がやって来た。

6男のスモーキークオーツちゃんと、パガイさんのマイドラゴンだ(チッ、さすが元貴族、商人に身を窶していてもキメる所は抑えているね。)・・・深い青だから、タンザナイトちゃんと命名する。触らせてくれる子かな?詩乃はウキウキと両手を広げて2頭を出迎えた。


「ご苦労様、よく来てくれたねぃ~~。良い子良い子。」

スモーキーちゃんをナデナデしていたら、自分も!とばかりにタンザナイトちゃんが頭を摺り寄せ甘えてきた。あぁ、ツルツルヘブン!!ヨ~シィェシャァシャァシャァッ~~~、気分はムツ〇ロウさん。高速で撫で繰り回す。徹夜の疲れも吹き飛ぶよ。母さんは夜なべをしたんだよ、労わってオクレ。


俺達には労わりの言葉は無いのか?・・・アーアー聞こえませ~~ん。


そんな様子を笑いながら、6男が貢ぎ物を差し出して来た。

「お疲れさま、ノンさん。朝ごはんまだでしょう?美味しいバケットサンドを用意してきたよ。」

「ミルクたっぷりの紅茶もあるぞ?」


やけに詩乃の機嫌を取りに来るねぇ、はぁ・・そりゃぁそうだろう・・・。

「あんたら、こうなる事を承知でクイニョンに行かせやしたね?何を企んでいるんでさぁ。」

人聞きが悪い事を言わないで欲しいね、これでも上手く行く事を願っていたんだよ?そう言いながら6男は詩乃の口にバケットを突っ込んでくる。

「ひとまず、親子を再会させない訳にはいかんだろう?物事には順序ってモノがあるんだ。」

ほら、食え飲め・・・お前は腹が減ると機嫌が悪くなる奴だからな。

パガイさんに、詩乃の取り扱い説明書が有るようで腹立たしい。ムキーッ!

・・・パガイさんの言葉に、深く頷いている虎さんにまた腹が立った。



そんな4人の周囲を狼たちの壁が取り囲んでいた、ドラゴンを見に来たようだ。

魔獣を含めて、純粋な力だったらドラゴンはヒエラルキーのトップに君臨していてもおかしくない存在だろう。ただ彼らには知性が有るので、心を許した人間とは共存していくのに吝かではないらしい。心を許す基準が解らないが(プウ師範とかラチャ先生みたいな性格破綻者も所有しているし?)・・・ただ、力が強いだけでは彼らには認められないらしい。

そんなとこが神獣と言われる所以だそうだ、誇りは山より高いそうだぞ?


でもまぁ、此処に居る2頭は詩乃にべったりで、クルゥゥ・・・クルゥゥ・・と、甘える様に鳴いているが。よしよし角砂糖でも食べるかぇ?喉の下をカキカキすると喜ぶのは、ウララちゃんと一緒だね。


狼族の族長はじめ、お偉方はそんな楽し気な詩乃たちの様子を複雑そうな顔で見ていた。


詩乃は生き物は虫(テントウムシは除く)以外は、何でも大好きです。

勿論、鉱物パワーストーンは大・大・大好き(*´▽`*)。

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