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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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新しい旅の仲間~1

旅が始まります、母を訪ねて新天地へ。

あの忌まわしい事件から1週間が過ぎ、旅の準備も万端整って、詩乃は意気揚々とトポテを出てモフモフの新天地に向けて出発した。


豆柴ちゃんをご家族の元へと返すため、獣人達が新しく賜った領地<クイニョン>まで行かねばならないのだ。これは重大なミッションである、人の手でかどわかされた獣人の子を無事に親元まで届ければ、相互間の齟齬も多少は改善できるかも知れない・・・と、王太子が語っていた。どうやら人間と獣人はなさぬ仲?の状態らしいのだ、御喋り出来るモフモフ?素敵ジャァないの!勿体ない話である。



<クイニョン>は、王国の東北部に有り、山がちな地形が険しく、魔獣の森も広がっている為に、誰も手を付けることなく放棄された土地らしい。

何だってそんな場所・・・と、思わないでもないが、それだけ獣人達の人間嫌いは深刻と言う事だそうだ。人間が近付く事の無い、安住の土地が欲しいと言う事で<クイニョン>に決まった経緯があるらしい。

顔を見るのも嫌と言う事か?嫌われたもので有る。

遥か昔にご先祖達が、連れ去られて来た祖国はもはや滅亡・消滅し、帰る国も無く頼るすべも持たない・・

なかなかシビアな境遇な皆様なのである。


獣人は個人の力は強いが、団体行動が苦手で集団戦となると遅れを取り、仲間割れが激しいそうなのだ(主に猫科、犬科は派閥争いとか、跡目争いが酷いらしい。)。魔石の耐性は強いが魔術は使えず、そんな事も人間の支配を受ける原因になったと言う。

他国では見栄えの良いライオン獣人を、代々近衛の部隊に付けて厚遇して来た国もあるそうだが。残念な事に此処ランケシ王国では、獣人を魔石鉱山の採掘に駆り出して冷遇してきたようだ。魔石鉱山が採掘し尽くして閉山になるに伴い、獣人の扱いをどうするかで社会問題になっていた。

そんな時に聖女様は人間と獣人の間を仲介し、中立の立場で話し合いを重ねさせ、双方からの言い分を考えながら和睦の道を探っていったと言う。

獣人達は王国からの身分保障と領地の譲渡で、何とか不満を飲み込んでくれたそうだ。

・・・聖女様も、中々ご苦労な事である。



そう言う事なら、<豆柴ちゃんを家族に返そう3千里>は、国家プロジェクトだよね?の、詩乃の一言で旅の出費は王太子から出る事に(事後承諾だが)なった。

今頃は多額の請求書を見てデコに青筋立てている事だろう、ツケはみんな王太子に回すよう6男に話しておいたから(笑)。気兼ね無く旅の準備を整えることが出来て何よりである、何たって豆柴ちゃんには、安全にかつ快適に過ごしてもらわなければならないもの。これは重大なミッションであろう?



以前には騎獣を買うのを嫌がった詩乃だったが、今や事情は違う・・・可愛い豆柴ちゃんを徒歩で長時間歩かせるような非獣道的な事が出来ようか?いいや出来まいよ。

そんな訳で、やれ騎獣が必要だとか・・獣車はフロートが良い等と言いたい放題の、やりたい放題で装備を整えた。やりすぎ注意?で少し不安にはなったが、6男が貴族が沢山処分されるから、そこから予算を引っ張って来るから大丈夫と請け合ってくれたので・・・多分大丈夫であろう。

6男の黒い笑顔が怖かった・・・のは、内緒の話である。


そんな訳で旅のメンバーは、隊長が虎さん・名誉隊長兼料理長が詩乃。

人間は詩乃だけである、その詩乃も<聖女様の御使い様>だぃ、えへん!

プウ師範は王太子の仕事が多忙過ぎて、ボヤキが多いので補助に回っているし(聖女様の所へ早く帰りたくて我儘言っているに違いない。)ラチャ先生は、己を欺いた憎い魔術の解明の為、寝食を忘れて没頭しているので、使いモノに成らないのだ。でも、護衛には虎さんが居るので問題ない。


獣人メンバーが可愛い豆柴ちゃん・チビ猫ちゃん・猫ちゃん・牛獣人のモーちゃん、此処までが女の子。(フルフェイスは豆柴ちゃんだけで、他の子はケモ耳ちゃんの尻尾・角付きだ。)

それから狼獣人の男の子(寡黙であんまりしゃべらない)3人と野牛獣人の男の人(モーちゃんに気が有りそうだ。)人数が多いから、何かと大変そうだね。これからクイニョンまで、順調に行って3週間の旅だ。仲良く行きたいものですね。


基本女の子組はフロートで移動、夜もフロートの中で眠る。

フロートは2台、(ほら色々物入りだし、慰謝料替わりの日用品も買い込んだからね。)フロートを引く騎獣は各2頭で4頭・・・山道に強く、使い勝手が良い、汎用性が高いとの事で、山羊を馬位に巨大化させた様な山ギヤを購入(♀&♂)した。名前は付けていない、付けるとサヨナラの時に辛いからね。多分みんな、クイニョンで良い働きをしてくれるだろう。

野郎どもは野宿、移動は騎獣2頭(ギャースみたいな感じの、爬虫類っぽいが草食の子)に乗るが、半分の人数は走るんだって。疲れそうだけど、その方が楽だって言っていた・・・・ホンマかいな?



猫ちゃん達は虎さんに全幅の信頼を寄せていて、もうゴロニャンのラブラブ状態?スリスリベタベタ、見ていて恥ずかしい感じ?なのだ・・・狼少年3人組には刺激が強いみたい。困った様な羨ましい様な顔で、赤くなっていて面白い。(彼らもフルフェィスだったり、ケモ耳だったり。これも個性何だって。)

でもさぁ、仕方が無いと思うよ?頼れる存在は虎さんだけだろうし?不安の裏返し何だと思う。


本当は詩乃も一緒にスリスリしたいけど、此処はグッと我慢して豆柴ちゃんの信頼をGetする事に力を入れている。クイニョンに着くまでに仲良くなれるといいなぁ、そんな緩い感じのスタイルで名誉隊長を務めている。何たってみんな人間に誘拐されたりして、酷い目に合って来たんだから、簡単に仲良く何て出来ないよね?だから我慢、我慢だ。


でも、詩乃には秘策が有る!どこでも、誰でも、いつでも通じる奥の手が!

<胃袋を掴め>作戦!思えばトデリでも胃袋を掴んで、無理やり街の衆に入り込んだ様なものだったし。<美味しいは正義>これは何処の世界でも通用する定説なんです。


    ****


今日も今日とて、美味しいご飯を作りましょう。

みんな食事は人間と同じもので大丈夫との事で助かりますわ、牛獣人のモーちゃんも角が生えててケモ耳と尻尾が有るだけで、見かけは普通の人みたい。ミルクもチーズもOKとの事で、料理の幅が広がって助かりますわ。

一昨日に虎さんが狩って来てくれた鹿肉でもローストしようかね、熟成させる魔術具に入れておいた鹿肉を引っ張り出す。半分は手製の<醤油風調味料>と酒・砂糖・生姜で煮込んで、牛丼ならぬ鹿丼で、ご飯にぶっかけて頂こうか?玉ねぎも食べられるそうなので大丈夫だろう。圧力鍋ならぬ時短魔法で煮込み料理も任せなさい。


フンフンフン~~~いい気分で料理を作っていたら、匂いに誘われたのか狼少年3人組が寄って来た。

「今日は肉丼だよ、この辺には無い調味料なんだけれど、どうだぇ?大丈夫そうかねぃ?」

お椀に少しだけよそって匂いを嗅がせてみる。

詩乃の料理は味に馴染みの無い物が多い為か、どうしても変な感じがするのか敬遠されがちなのだ。単純な焼肉(塩のみ)とか、肉を茹でてマッシュした野菜と・・・みたいな方が売れやすい。ムぅ、料理人としては沽券にかかわる事態だ、日本食のプライドがこの事態を許せない。・・・御残しは駄目駄目だ。

「甘い・・・。」

「味付けに砂糖が入っているからねぃ、そんなに気になるかい?この味は聖女様の故郷ではなじみの味なのさぁ。」

6男が何処からか大豆を手に入れて来たんで、貰って実験的に醤油や味噌を作ってみたのだ。熟成させる時間を時短魔術ですべて賄っているので、何だか味が浅いと言うか・・詩乃的には微妙な出来なのだが。

「聖女様・・・。」

聖女様は獣人を奴隷状態から解放したり、今回の話し合いでも話ベタの獣人の意向を良く汲み取って、有利に話を運んでくれたりしたので人気が高い。世間知らずの狼少年3人組でも知っている程に認知されている、同胞としても鼻が高いね、えへんだ。

「もうすぐ夕飯だ、皆を呼んで来ておくれなぁ?」

頷く事もなく無表情に去って行く・・・ふっ、君たち尻尾が激しく揺れてるよ?気持ちを隠す事は、顔は出来ても尻尾には無理らしい、尻尾は正直!・・・詩乃は心の帳面にそう書き込んだ。


虎さんや野牛獣人の人は、今の時間は騎獣の世話をしている。騎獣の餌はあらかじめドラゴン空輸サービスに、避難所ごとに運んでもらっているので楽ちんだ。餌は詩乃が<空の魔石>で封印して有るので盗まれないし、新鮮な物なので喜んで食べている様だ。山ギヤは野牛獣人さんが、ギャースは虎さんが面倒を見ている。

・・・やはり山ギヤは虎さんの事が本能的に無理らしい。虎さんが傍を通っただけで、毛がブアァッと逆立って、目がキョドキョド動いている・・・怖いのだろう。

『クイニョンに着いたら、慰謝料替わりに役立ててもらおうと思って、山に強い騎獣を選んだのに、これは無理そうだな。』

怖い思いをしながら生きるのは可哀想だ・・・どうしたものだかねぃ。



食事は数少ない和やかな時間だ、とんがった雰囲気が丸くなる。やはり<美味しいは正義>なのだ。

虎さんをはじめ、猫`Sはひと塊に固まって食事を取っている、モーちゃんは野牛獣人の彼と一緒だ。狼少年達は3人組揃って尻尾フリフリ食べている。豆柴ちゃんは詩乃の隣だ、美味しいのか尻尾が揺れてる、安心もしているようだ表情が柔らかい。

こうして獣人を見ていると、どうしても獣種ごとのコミュニティーができるようだ。まぁ向こうの世界の人間もそうだったからねぃ、一概に悪い事では無いのだろう。



「お代わりも有りやすよぅ、如何でしょうかぃ?」

狼少年3人組が一斉に皿を出そうとしたが、一番体の大きい子が先に皿を出して残りの2人は引っ込めた。犬的な序列も有る様だ、此処でみんな平等に!な~んて言ったら、かえって混乱するんだろうなぁ・・・このままでは、詩乃的には余り良い気持ちはしないが。

「虎さん如何で?」

「うん、少し貰おうか。」

「野牛のお兄さんは如何で?」

虎さんの次に野牛さんに言葉を掛けたので、狼少年の(大)は面白くなさそうにしていた。序列的には自分だったつもりなのか?野牛さんの方が強いと思うよ?

狼少年達には大・中・小と少しづつ減らしてお代わりを出してあげた。(大)は犬的な気持ちが納得したのか、背中の毛が膨らんでいたのが戻っていた。


難しいな・・・獣人で一括りにしたら、余り幸せになれない種族もいそうだ。獣人はどのくらい種族がいるのだろう、クイニョンは大丈夫なんだろうか?

人間が強大な魔術で押さえつけて来たのも、強い力が全ての獣人には、面白くは無いが納得のいく事だったのかもしれない。


騎獣達の今後も含めて、考える事の多い旅の前半だった。


ワンコの序列って、面倒ですよね~~~。

家のビーグルは最下層に甘んじていました、家族がみんな脳筋だったので( `ー´)ノ。

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