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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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カポエの街~3

柴犬は可愛いですね~~。うちの子はビーグルでしたが。

 馬車の扉が乱暴に開けられると・・用心棒なのだろうか?

ガチムチマッチョの男共が揃いも揃って見物にでも来たのか、不埒に笑いながら此方を不躾な目で眺めまわす様子が見えた。どいつもこいつも、脂下がって鼻の下を伸ばしていながらネズミを甚振る猫のような嗜虐的な目をしている。ドSかぃ!

不愉快極まりない、こっち見んな、フンッだっ。


 突然、薄暗い裏口のエントランスに強い光が輝き、男達の目が眩んだ。

詩乃が<ライト>の投光器バージョンを放ったのだ(魔力が少ないから一瞬だったけど)それでも効果は有った様で「目が~目が~~っ」と騒ぐ用心棒達。

詩乃は男達が怯んだところをすかさず、風で足元を掬い盛大にひっくり返した。


「痛ってえ!!」「げっ」「ぎゃふん」


後頭部を強かに打ったようだ上手く行ったね・・喧嘩は勢いと先制パンチ、お兄の教訓は異世界でこそ生きています、元地元では生かしようが無かったね。

この技は青い森のほとりの村の<チビ達>に教わったモノのだ、重い敵ほど上手くひっくり返すと自重で頭を強く打つらしい、かなりの威力のようだ。

『チビ、ありがとね』

あの子達は弱く少ない魔力で大きな物を倒す知恵に長けていた、それこそ森のほとりで生きる平民達の息残る為の生活の知恵だ。


「軽いオツムだ、たいして打っちゃいねぇだろうさ。それとも何かい?その小さな脳味噌が端っこの方にでも偏っちまったんかぇ?」


こいつ!用心棒達は目を剥いて、生意気な女に襲い掛かろうと身構えた。

その瞬間に魔力を放ち、手のひらを向けて気勢を削ぐ。


「やめておきな、あんた達のような慮外者にはこの黒目・黒髪の意味が解っちゃいねぇようだねぇ。此処には異世界の聖女様の事が嫌いな連中が、五万といるんだろぅ?今日一番の売れ筋商品に怪我でもさせちゃぁ、あんた達の首が飛ぶよ?それでも良いなら掛かって来ねぃ」


何の事だと訝しむ男達、脳筋こいつら達には聖女様伝説は浸透していない様だ。

騒ぎを聞きつけたのか侍従のお仕着せを来た初老の男が駆け込んで来た、男たちを縫う様に前に進み出て詩乃の姿を見て愕然としている。


「こう見えてアッシは聖女様の使いをしている者なのさぁ、館の主にご注進して来てはどうだぇ?面白い玩具が入荷して来たとさぁ。

おっと、待ちねぇ。商品の女の子達がお疲れだ、くたびれた品など売れんだろうよ。食事と湯あみ、新しい服も用意してくんな。それから無粋な男は近づけんな不愉快なんだよ・・解るだろぅ?」


そう言うと侍従に軽く魔力を当てる・・まぁ、B級の魔力などたかが知れてはいるが、此処に入る者は魔力は総じて強くない。

筋肉で商売をしている脳筋ばかりな様だ、多少の魔力でもビビッてくれそうだ、有難うよ。まだ逡巡していて動かない初老の侍従に、背中を向けTVのCMばりに髪をサラサラ~っと払って見せてやる。綺麗だと思うよ?顔は向けていないし黒髪が光を映して輝いたはずだ。

この辺りでは髪の手入れに時間を割く暇も、専用の洗髪用品も無いのだろう。

初老の侍従は納得した様に、他の使用人に指示を出すと館の中に消えて行った。


待つこと数分、用心棒達とメンチを切っていたらメイド達が迎えに来た。


「お嬢様、遅くなりまして・・此方へどうぞ」


何だか疲れたような、生気の乏しい影の薄い感じの人だ。


「皆も一緒じゃ無けりゃぁ駄目だ、駄目ならアッシは此処を一歩も動かねぇ」


解ったと言う様に軽く頷くと、メイド達は馬車の中で固唾を飲んで震えていた子達を誘導し館の中に入る様に案内を始めた。詩乃も女の子の団体の横でガードしつつ、男達にらみを利かせながら館の中に入っていく。


「舐めんじゃぁねえぞ、このボンクラども」


・・だんだんと品が悪くなる詩乃、関わる連中は選ばないと。





 館の中は子爵様の館より華美に整えられてはいたが、基本設計は同じ様で何よりだ様った、知らない館に入った気がしない。


『子爵様は使っていない部屋を閉鎖して省エネに励んでいたからなぁ。

本来ならホールや客室がもっと有ったはずだし、地下牢や抜け道も有ったはずだ。

そういえばホールは冠婚葬祭に使われていて、リーやアンの結婚式はホールで行われていたっけ。ホールの真ん中に舞台があって、そこまで結婚する2人がバージンロードよろしく歩くのだ。その花道にトデリの人達が集まり、花弁を撒いたり頬にキスを送ったりして囃し立てる、詩乃は可愛く包まれたクッキーを撒いたりした。新婦に片思いしていた敗者の男からのキスを阻止して、無事に舞台にたどり着くミッションが新郎の初仕事だったりする(笑)。幸せそうな友達の顔を思いだす、友人2人はバージンロードで私はオークションロードかぁ?』


むむぅ・・奴隷のオークションは、異世界のお約束その4だったね。

着々とお約束をクリアしていく感じだよ・・トホホ。多分商品の売買・オークションはホールで行われるのだろう、たしかホール天井が円形で、外に向かって尖がっていた。音の響が良くて・・そんな事を考えていたら案内され部屋に着いた。



 案内された部屋は小ホールくらいの広さで、すでに数十人の女性が入っていた。乳飲み子を抱えている年若いお母さんまで居る・・特殊な趣味の輩に需要が有るのだろうか?けしからん、これは許せん!ギルティだ。


メイド達の首にチョーカーって言うよりは首輪と言った方が相応しい様なブッが付けられている、嫌な感じがビンビンする・・魔力も感じられるしいったい何なんだろう?不思議に思った詩乃は<空の魔石>を手に取り、後ろからそっと近づくと首輪にひっ付け「解除」と命じてみた。

その途端首輪はハラリと外れ、メイドは床にヘタリ込んでしまった。


「と・とれ・・た。隷属の首輪が・・」


後は涙・涙で声にならない・・・。

彼女は3年前(合法の頃だ)此処でオークションに賭けられ売れ残ったのだと言う、売れ残った者はこの館でメイドや下働きに従事する事となるが、それはそれは酷い仕打ちを受けるのだと。隷属の首輪の故に逆らう事も出来ず、辛くても命を絶つ事さえも出来ない。憔悴して使い物にならなくなった者は、魔獣狩りのイベントの時に囮として森に放されると言う。彼女はもう限界に近く、今度のイベントで囮として駆り出されると覚悟していたそうだ。


『むむむぅ~~~!何たる非道!許すまじ!!ギルティイ!』


隷属の首輪にはごく弱い魔石(平民には十分な脅威だが)が使われていた、詩乃は片っ端から隷属の首輪を外して行きメイド達を解放していった。

魔石に耐性がある獣人さんにお願いして、首輪から魔石を外して貰う。

解放されたメイド達には魔石を外した首輪をつけて貰って、誤魔化しながら隷属されている同僚を一人でも多く、悪の片棒を担いでいる一般の使用人に見つからない様にしながら此処まで連れてくる事を頼んだ。この際だ出来るだけ多くの者を助け出して、脱出劇に協力してもらいたい。

平民達は魔石が大量にあると気分が悪くなるだろうから、外されたブツは胴巻の不思議ポケットにドンドンしまい込んでいった。


・・こうして夜中過ぎには、館の中に隷属の首輪を付けた奴隷は男女共に一人も居なくなっていた。我ながらグッ・ジョブッ!だ。



詩乃は作業の合間に、トントンと拳で壁を叩いて回っていた。

此処が小ホールだとしたら抜け道が有るはずなのだ(子爵様の館と同じ規格の建物ならばね)子爵様が館を案内してくれた時に自慢げに語っていたのだ。


【小ホールの壁には抜け道が在ってね、よくそれを使って街に遊びに行ったものさ。砦には大人しかいなくて退屈だったからね。ははは・・何処に在るのかは秘密だよ、いざと言う時の避難経路でも在るのだからね】


ヒントヒントと騒ぐ詩乃に、壁を叩いてごらん?とウインクしたのだ。

壁の向こう側が空洞なら、叩いた時の音が違って聞こえるのかもしれない。

うぅ~む、よく解らないなぁ・・絶対音感?何それ美味しいの詩乃である、捜索作業は難航していた。壁を叩いて回る詩乃を不思議に思ったのか、獣人の女の人が何をしているのかと声を掛けて来た。かくかくしかじかと説明する詩乃・・それならばと、耳の良い獣人さん達が協力して壁を叩く音に注意を払ってくれた。耳がピクピク動いて可愛らしい・・はぁ~、萌える。


『何処にも無いではないか・・・子爵め!謀ったか!』

グルルゥゥゥ~と唸る詩乃に、豆柴ちゃんが服を引っ張って来た。

途端に顔を和らげ猫なで声で「何かな~?どうしたぇ~?」と聞く詩乃に、豆柴ちゃんは一歩後ろに下がった・・気持ちは解る。


「ここ・・風・・音・・する」

「暖炉か、どれどれ?使われた形跡は無いが・・・?」


暖炉の奥の壁を押してもビクともしない・・いや・・?上州の忍者屋敷に行った時、からくり屋敷が有ったよね。発想の転換が大事なのだ、押してもダメなら引いて・・駄目か、左右の壁も・・違う。床も固い一枚石で出来ている・・スライド?違う・・上か!?

暖炉の天井を力一杯持ち上げると僅かだが動いた、抜け道は此処なのだろう。


「力が自慢の子は手伝ってくんねぇ、此処が抜け穴の入り口らしい」


可愛い顔をして側頭部に小さな角を生やした子が助太刀してくれた。


「グモモモゥゥゥ~~~」


気合一発持ちあがる天井部分・・ビンゴ!ここが抜け穴だ!

女の子は牛の獣人らしく可愛い顔に巨乳だった・・これは需要が有りそうだ。

外からの風なのかヒュウゥゥゥ~~と空気が流れているのが感じられる、これなら穴を潜っても酸欠で倒れる事も無さそうだ。


詩乃は<空の魔石>で、懐中電灯を量産し各自に持たせた。


「この外に抜ける道だが、森の中まで出てしまったら魔獣に襲われる危険が有る、ちょうど良いと思った所で助けを待っていておくれな。

いいかえ?静かにまとまって寝ていれば直ぐに明日になってよぅ、万事片付いて自由の身になるって寸法さぁ直ぐに。後はこのオマケ様に任せな」


力の強い成獣の獣人さんを先頭に、チビっ子や魔力無しを間に挟み魔力持ちを最後に着ける。隷属の首輪をつけた使用人も、くたびれて弱そうな者は避難させる。館に残って詩乃の手伝いをしてくれる者は、自分から志願した比較的若い者達だ。


「水や食べ物も持ったかえ?じゃぁ行きな、こっちの心配はいらねぇよ、何たって聖女様の御使い様だからね」


早くお行き、そう言うと詩乃はバチンと両目でウインクして抜け道の天井を閉めた。


牛獣人は巨乳・・・で萌えたそこのお兄さん廊下に出ようか?

ハムスター獣人が、頬袋にパワーストーン隠していたら超萌え。←バカ

次回反撃成るか、アクションは書けるか?ご期待下さい!

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