表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
13/126

カポエの街~2

都市伝説は・・・この世界にもあるようです。

 『なるほどねぇ、そう言う事か』


カポエの街に入った時、寂れた街だなとは思ったが、その他にも妙な違和感が有ったのだ。何て言うのだろうか、魔力はさして強くはなさそうだが凄く感じが悪い、薄暗い闇の波動?オ~ラ?が街全体を覆っている感じがしたのだ。

(中2病的表現で、恥ずかしいのだが)

中学の体育館裏のトイレのような、10時過ぎの駅前近くの裏通りの様な・・私、真面目っ子で~す、みたいな子には入りにくい危険注意な雰囲気?

そう、カポエの街はアウトローであったのでアロウ。きっと此処は地下ビジネス世界の中心地なのだ、白骨街道の十字路に商品が集まり・・そして各地に散らばって消えて行く。

商品は人間で(獣人も含む)人身売買の一大卸売りセンター街なのに違いない。


『なるほどねぇ、そう言う事ですか・・』

商品(人間)は色々な方法で集められて来るのだろう・・秘密裏に誘拐されて馬車で運ばれて来たり、代官に売られたり、親・兄弟に売られたり・・色々だ。中には護衛に裏切られて捨てられ、売られたりするような間抜けも・・。

護衛に去られる間抜け?・・・・・私かよ!!


つまり、私は覆面捜査官キリッよろしく、悪の組織の内部に入り込み、偵察をし情報を集めて旅の不仲間に知らせに行くのがお役目と言う事か?聞こえは何んだかカッコ良いが、何の説明も無くいきなり放り出されたら・・単なる餌?撒き餌も良い所だろうがよ?結局は囮だろ、お・と・り!!

まぁ、ご都合主義で餌(詩乃)は上手に捕まったし、秘密のアジトに潜入出来そうだが命の危険がまったく無い訳では無いだろう?ふざけんなよ!!


思いっきり怒って不穏な空気をまき散らしたせいか、はたまたそう言った<気>みたいなのに敏感なのか?獣人の子が泣きだしてしまった。


「ごめんごめん、恐かったかぃ?この姉ちゃんが悪かった」

怒ってないから・・君にはね。


この獣人の子はまだ幼くて4歳位だろうか?オイの所のチビと同じくらいに見える、可哀想に親元から引き離されてこんなところに一人どんなに心細いのだろう。

それにしても、獣人と人間は互いに忌避されるのだろうか?

奇麗に半分に分かれて、それぞれ隅の方に固まって震えている。

うん?何だって私ってば獣人さんの真ん中に陣取っているのだろう?

そうか!肌寒くて温もりを求めてモフモフににじり寄って行ったのだろう。


「怖がらせてすまねぇなぃ、アッシは何だか宿屋のベットに寝ていたはずなんだがねぃ?何だって此処にいるのかサッパリ解りゃぁせんのんや」


お尻が痛いだろう?姉ちゃんの膝の上へお出でなんし。

震えるチビちゃんに声を掛けてみる、まだ小さいんだから温もりが恋しかろう。どうしようとオズオズしていたが、詩乃が膝をポンポンと叩くとおっかなびっくり乗って来た。獣人さんって小さい頃はフルフェイスなんだね、犬獣人なのか狼獣人なのか解らないが豆柴みたいで大変に可愛らしい、ハートをズッキュ~ンと打ち抜かれてしまった。ス~ハァス~ハァ~久々のワンコの香り!好い!!

もう少し年長な様な猫獣人の子が羨ましそうに此方を見ている、隣をポンポンとしたらすっ飛んで来た、皆心細いのだろう小刻みに震えていて可哀想だ怖がらないようにそっと抱き寄せてやる。


「寝てて攫われるなら、何か一服盛られたんだろうよ。恐ろしい事をする宿屋だねぃ」

『まったく、あのミミズクのぎょろ目親父め、シチューは美味しかったのにな』


「私も宿で留守番している時に攫われました、家族は旅の準備の買い物に行っていたんです」

「あたし・・村の道を歩いていて、いきなり馬車に連れ込まれて・・」


獣人の子がギュッと抱き着いて来る、この二人の攫われて来た口なのだろう。


「難儀な事だったねぃ、でも人は売り買いしてはならないのさぁ。2年前に聖女様が御決めになったんだ、知っているかぇ?だから安心しねぇ。借金が有ろうが無かろうが、自分が好きでも無い所にゃぁ、行かないで良いって寸法さぁ」

「でも、お父様は私を売ったわ」


貴族の庶子のような女の子が、此方を睨み付けながら噛みついてきた。

この中では身ぎれいな貴族然とした少女だ(美少女と言わない所は御察し下され)A級平民との子供なのだろうか?魔力は有るが・・下の下位だろうか?お父様の期待に沿えなかった為か売られたようだ。


「子供を売るなどと、ふてえ了見だねぇ。あんたのトト様は騎士様に捕まり裁きを受けるだろうさ。ざまあみろてんでぃ。

良いかぇ必ず助けは来る・・。何としてもアッシがどうにかしやすからねぃ、自棄のヤンパチに成っちゃぁいけねえよぅ?取り敢えず悪の親玉の所まで行きやんしょう、臭い匂いは元から絶たねばいけやんせんからねぃ・・大人しく言う事を聞くふりをして悪い奴らを油断させるんだ・・出来るかぇ?」


パニックになって、てんでんバラバラに逃げられちゃぁ収集が付かなくなる。

此処に居るのは13人か、多いな・・・果たして敵のアジトには、どれだけの人間が詰め込まれているのだろうか・・考えも付かない。


どうも今は森の中を走っているようだ、夜の森を抜けるとは根性の有る事をしてくれる。馬車に魔力が感じられるから、魔獣避けの魔術具を搭載しているのかもしれない。こんなにも潤沢に魔石を使えるのは、貴族が絡んでいるに違いない。

平民が魔力の強い貴族に睨まれたら、嫌でも命の危険を感じて従うしか他ないだろう。鬼畜の所業と言えるだろう。


『・・どうしたものだか・・』

詩乃は懐をゴソゴソとあさり<空の魔石>を取り出した。


王妃様にお願い(泣き落とし)し、四次元ポ〇ット的な胴巻を作って貰っていたのだ。もうこれ以上大事な物を無くしたくはない、常に身近に置いておきたいのだ・・と願い、旅立つ事への見返りに要求したのだ。胴巻は銀ロンの謹製で、多額の魔石と魔力が掛かっているそうだが、その割にわずか四畳半一間位の収納空間である・・ショボイ。詩乃の苦労の割には・・ショボイ。

その中には詩乃の大事な物が入れてある、トデリの衣装とか、オイがくれた貝殻のネックレスとか、元地元で着ていた服だとか。もちろん<空の魔石>はトン単位で入っている。


「いいかぇ、良くごらんな・・・石が変わるよ」


パァッと光って、13個のオニキスが造り上げられた。


「聖女様を信じられるかぇ?この黒い石はアッシが聖女様から作り方を教わった守り石だ、これはなぁ貴族の魔力から平民を守ってくれるんだよ。

獣人には貴族の魔力は効かないだろうが、大勢に囲まれたら難儀な事だ。

そんな時でも、あんた達を守ってくれる有難い石なんだえ。

悪い奴に取られちゃ叶わないから、下着の中とか髪の中でもいい見つからないように隠すんだ。出来るかぇ?どうする?石など気持ち悪いかぃ?受け取るかどうか自分で決めなせぇ」


いきなり変な事を言われて混乱する女の子達(一部熟女)、オニキスは黒い石だから守り石と言っても禍々しい感じもするのかもしれない。


「黒い石・・あなたの目の色、髪の色も黒ね。私知っているわ、聖女様と同じ色よね、聖女様の御使いのオマケ様って貴方の事なの?」


御使いのオマケ様って・・何だかエライ言われ様だが・・。


「解った頂きます。どうせ誰も助けに来ちゃくれないんだもの、この際何だっていいわ、ヘンテコリンだろうがチンチクリンだろうが」


一人受け取ると、それぞれ工夫を凝らして隠し始めた。

チビちゃんは懐から小さな巾着袋を取り出して見せて来た、中に狼の物だろうか?犬歯が入っている。お爺ちゃんの犬歯だそうで、無くなった時に抜かれて(痛そう)近親者にお守りとして与えれれると言う。


「一緒に入れておおき、爺ちゃんもチビちゃんをお守り下さるだろう」


    ****


 馬車が進むにつれ魔力の気配が強くなって行き、魔力を持たない平民の子達は具合が悪くなって来た。おそらくワザとやっているのだろう、心を折り絶望させ支配するために。・・外道めが!


「いいかい皆、魔力の弱い者、幼い者を真ん中にして団子のようにまとまるんだ。その方が石の守りが効きやすいからね」


そう指示を出すと詩乃は1本のお下げにしていた髪を解き、洗浄の魔術で洗い、リンス(自分の保護成分の油脂)し、温風で綺麗に伸ばした。

『うん!TVのCMみたいに綺麗になったね』

いつもは隠す様に下げているL的な前髪も、横に流して目をはっきりと出す。

『おそらく此処に集まる様な連中は昔の既得権益にしがみ付いている反聖女様のグループだろうよ、この際だ、思いっきり叩く為にも優秀な囮になってやろうじゃぁ~ないの』


馬車はどこかの屋敷に入って行ったようだ、舗装されている道になったみたいで馬車の揺れ方が変わったのだ。舗装された道を走る事数十分、かなり広い敷地のようだ・・まさか、カポエの代官屋敷ではないだろうな?御代官自ら悪の道に手を染めているなんて・・いや?規模は小さいが、悪代官は先日も御用になったばかりではないか・・十分にあり得る事だ。


馬車が止まり、静寂の中待つこと数分間・・ついに護送馬車の扉が開けられた。

暗い魔の森の中に建てられた頑丈そうな館・・なるほど、これでは少々騒ぎが起きても周囲に悟られる事は無いのだろう。

<監禁の館>  そんな名がピッタリだ。


『ふ~ん?重厚な造りの砦の様な館か・・。

うん?どこかで見たような造作ではないか?そうだ!トデリの子爵様の館に似ているんだ。なるほどねぇ、貧乏な領地ではオリジナリティーを追及する贅沢な建造物など叶うはずも無く、不公平が無い様に同じ規格の建物を量産したのに違いない。

何だか鉄道の駅みたいだね・・何処でも同じで変わり映えの無い。

・・改築は有りえるが、柱の数とか重要な部分は同じはずだ」



詩乃は思わずほくそ笑んだ・・トデリで館巡りのガイドをしてくれた子爵様。

あなたは陰のヒーローです。


詩乃の反撃なるか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ