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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
121/126

爺ちゃんの村

貧乏は最強のダイエット・・・(/ω\)。

「やっほー、来たよーー!!」


王都での面倒臭い行事が終わり、やっと自由の身になれたぞ、やっふぅ。


色々と引き留められたのだが(貴族の大多数は王都に生息しているからね。)振り切っての脱出だ、お仕事がありますから・・この一言で、だいたいの貴族は押し黙る。働いていないモノねぇ・・・あんたら、たまには自分の領地に顔を出して内情でも見てくれば良いのにさぁ。

何が<穢れの地>は不快だ・・だよ、その<穢れた土地>から収穫されている農産物を食べているのは何処のどいつだってんだ・・・このまま貴族連中が動かないと、没落していくのも目の前だと思うんだがなぁ?別にいいけど。



『やはり王都は水が合わない・・・・。』


やっと念願の移動日です・・・お爺ちゃんの村の近くまで、ターさんにモルちゃん諸共転移して貰い、ようやく来る事が出来ましたよ。

王宮で聖女様のオマケとして離宮に住んで(居候して)いた詩乃の暗黒時代、癒しとなってくれた<庭師のお爺ちゃん>の故郷の村にだ。


<マグデンス>の先遣隊からは、魔獣の被害いが多く、目玉になる様な特産品も無い為に苦戦するだろうとの報告があったのだが。

今回は公爵の直轄領な為に、古文書など・・資料になりそうな書類が地元には無く、此処の土地柄のヒントも見つけられない様で(最も、あの公爵様のご先祖が、真面目に記録など付けている気などしないのだが?)流石のシャルワも困っているそうだ。

彼は今、村の古老達から聞き取り調査をしているそうだが、弱った老人から亡くなってしまっている為、その作業もはかばかしくない様だ。


とにかく魔獣の数を減らそうと、日々魔獣狩り活動に精を出し、蛋白質の供給に余念が無いらしい。勿論復興費用にする為に、傷は少なめに、素材を大切に狩っているのだが・・・その相手が<鬼狼>とか言う狼のデカ物で頭が良く知恵が回る為に苦労をしているそうだ。


上空から<お爺ちゃんの村>を眺める、確かに住居の跡は有るが、魔獣に蹂躙されたらしく廃墟の跡があるのみで人影がない・・・なんでも、大岩をくり抜いた<避難所>で村人は生活しているのだそうだ。

人口密度が高く、一度風邪などの感染症が流行ると、免疫力も落ちている為か、瞬く間に感染が広がって・・・儚くなる村人も多く出たそうだ。


健康面の環境を整え、皆に元気になって貰いたい・・・まずは、美味しいご飯かな?次に清潔で安心できる寝床・・掃除洗濯の衛生面も啓蒙しなくては。

モルちゃんが上空を旋回しているのを見たドラゴン達が、鬱陶しくも寄って来た・・・あんたら仕事の途中だろう?しっしっ!!美ドラゴンに変化したモルちゃんに心を奪われ、誰も詩乃の声を聞いちゃぁいない・・・色ボケドラゴンめ。控えおろう!モル姫様の御成りだぞぉ!!

ドラゴン達が空で舞い踊るので、なんだなんだと村人達が湧いて出て来た、そこここから湧いて出て来た。<避難所>を中心に地下通路が掘られているって聞いていたけれど、モグラさんの住処みたいだね・・・弱い者は地下に潜るのがお約束なのかな?



「遅くなって御免ねぇ~、いやぁ~~色々大変だったよ貴族生活ってさ。」


シ~ノンが魔術師長と結婚したと聞いていた隊員達は、これからどうシ~ノンと付き合っていけば良いのかと(だって高位貴族の奥方様だし?)、密かに悩んでいたのだが・・・シ~ノンの余りの変化の無さに膝カックンの思いをした。


「あははは・・・家のお母さんが言ってたよ、結婚ぐらいじゃあ人は変わらないってさ。(ちなみに結婚したからと言って、幸せになるとは限らないのはネットの掲示板を読めばわかる事だ。)

爺ちゃんは何処かな?早く会いたいんだ・け・・けどぉ?」


詩乃の目の前に、嫌にやせこけた貧相な爺様が立ってニコニコと笑っている・・・まさか・・・。


      ダアアアアァァァァァァ~~~~~~~~


詩乃の涙腺が突然崩壊したので、周囲は困惑し焦りまくった。


「どうした姫さん、何を泣いているんだ?探していた元王宮の庭師の爺さんだぞ?会いたかったんだろう?」


シャルワが焦るのは珍しい、詩乃は爺様の手を握りしめると。


「お爺ちゃんは、こんなに痩せて骨と皮みたいな人じゃなかった・・・もっと、ガッチリしてて肌の艶も良かったよ。こんなにガリガリになっちゃって・・どんなに苦労をしたのだろう・・・うううううぅぅぅぅ~~~~。」


ポロポロと涙を零す詩乃・・姫さん・・お嬢・・・と周囲の人々も、しんみりとしていたが。・・・突然、危険物が爆発した


「ふざけんな、あの河馬公爵の糞野郎!!自分ばっかりデブデブに肥え太りやがって、許せない!!ぶっ飛ばしてやる!!」

「姫さん、抑えろ!」


詩乃の身体から魔力がバチバチと漏れ出して、平民は恐怖でパニックに陥りそうになった。一番怖い思いをしたのは、ほかならぬ<庭師の爺ちゃん>だろう、彼は詩乃にガッチリと手を握られていた為に、逃げる事も叶わず、硬直して詩乃を見つめてアウアウ言うのが精一杯だった。



「シノ、何をそう怒っているのだ。」

『うわぁぁぁぁあああぁぁぁぁ~~~、また現れたっ!!』


マグデンスの隊員達にドン引きされ、恐れられているこの人物・・・姫の旦那の魔術師長様だ。助けに来たのに、この言われよう・・・不憫でもあるが、詩乃(危険物)をこの世界に連れ込んだ張本人だ、責任は取ってもらいたい。

シ~ノンは突然現れた、魔術師長に連れ去られる様に消え去って・・・フッと戻って来た時には、平静な姿に戻ったいたのだが・・・本当に心臓に悪い・・お騒がせな夫婦だ。




「頼むから怒るな、怒って魔術師長を呼び寄せるな。」


隊員から、そんなお願いをされた詩乃・サマリンダ夫人なのでありました。


お爺ちゃんにはその後謝りまくり、息子さんやお嫁さん、可愛いお孫さん、彼女さん達を紹介して貰ったり・・まずまずの村デビューを果たせたかな?と思っていたのだが。

後からボソッと、あんな殺気が駄々洩れな<キレまくっている女>に逆らう奴などいない・・・そうニーゴさんに言われて凹んだ詩乃だったが・・・ニーゴさん、相変わらずイケズだねぃ。



    *****



数週間後・・・。

「やぁ、サマリンダ夫人御機嫌よう。新婚早々に仕事とは、新王も無粋な事だね。」


サマリンダ夫人と呼ばれて、詩乃はチョッと鼻に皺を寄せたが、面倒臭いのでスルーする事にした。6男をわざわざ呼び出したのは、例によって<冬虫夏草>の苗床になる魔獣を<仮死状態>で狩ったから、そのブツを売込みをする為だ。

何故だか<仮死状態>は詩乃にしか出来ない技で、オンリーワンなのは良いのだが・・・ちょっと寝覚めが悪いのも確かだった。特に今回は哺乳類・・角持ちデカワンコだったからね。


<マグデンス>の得た<素材>は、基本パガイ商会に流す取り決めなのだが、<仮死状態のブツ>は例外だ・・・(何故ならパガイ商会が買い取っても、<冬虫夏草>を作れないので、意味を成さないからだ。)6男との交渉は詩乃の役目となったいる。


「鬼狼の成獣の♂♀、幼獣の♂♀のセットなんだけれど、5億ガルで如何かな?」

「また吹っ掛けるねぇ・・・(苦笑い)。」

「オレウアイの様な卵で産まれる様な奴より、ほ乳類の<冬虫夏草>の方が、薬効は良いんだろう?高い買い物ではないと思うが。」


パガイさんの情報では、ボコール商会は<冬虫夏草>の生産で、巨万の富を得ていると言う。此処は是非富を再分配して欲しい所だ。


「領地の分・・その半金の2・5億ガルは、現金でなくても構わないんだ・・・むしろ、知識や種子などの復興に役立つ材料が望ましいな・・・あの河馬公爵に金を流したくは無いからね。」


詩乃は整備半ばの耕作地を眺め、腕を組んで考え込んだ。


「昔、青い森のほとりの村に、<サツマイモ>を植えた事があったでしょう?・・・あんな風に、ボコールから農業指導者を派遣してもらい、此処の土地にあった作物を考えて指導して欲しいんだ。<マグデンス>は掘り起こすのは得意だけど、その辺の知識はサッパリ無いからねぇ。」


ハーフエルフのエフルは森の事には詳しいが、畑の作物となると<畑違い>との事で解らないらしい。


「公爵領は王都の近くだから、王都の台所・・・大事な補給基地になるでしょう?海を使わずに川を遡上出来れば、王国内のかなり奥まで物資を運ぶ事が可能だろうし。公爵領って昔は一大穀草地だったそうじゃないのさ、古老の爺ちゃんが言っていたよ。」


「それでは、あの公爵の力が強くなり過ぎる・・・。」


「領民の暮らしを立て直すのが<マグデンス>の仕事だ、その辺の貴族の事情は知らないよ・・・。ただねぇ・・あの河馬公爵・・・何か悪い病気だと思うよ?舞踏会で傍に居た時、何だか面妖な匂いを感じたもの・・・悪いが、そう長くはないと思う。

公爵家の中で身分に関係なく、見込みの有る前途有望そうな若者がいたら<復興顧問>の権限で引き抜き、公爵家側の代表として此処の作業に係らせ、こちら側に取り込んで行ったらどうだろうか?

その彼らが公爵家の中を実効支配出来たら、一番お手軽でコスパの良い<乗っ取り>になると思うんだけどねぇ。プウなんて<復興顧問>のくせして、一度もこの現場に来ていないからね、そのぐらいの働きをしてくれても良いだろう?・・・軍の中から探しても良いしさぁ。」


「そうだねぇ・・・噂ではあの公爵は、随分と長い間体調が悪いらしいからね・・・匂いか・・・良く気が付いたね、流石<名誉狼族>って言うところかな。その件は持ち帰って、新王も含めて検討してみるよ、少し時間が掛かると思って欲しい。指導者の件は、帰ったら早急に検討して人員を送ろう、農業と川の整備の為の土木工事関係の指導者で良いよね。」


「有難う、やっぱりボコール様は頼りになる(6男とは言っていない、ここ重要。)ねぇ。ついでに学問所でも開設したら?<知恵のボコール>って、領地のキャッチコピーにはピッタリだと思うけど?学閥は、貴族の地縁・血縁を超えた・・・自由な派閥になるでしょう?」


君は全く・・・そう言い残すと6男は<鬼狼>のお宝と共に姿を消した。



     *****



公爵家からは定期的に査察が入ったが、嫌々やって来た感が満載の小物が多く、ガタガタぬかす様な輩には<魔獣>の前へとお連れすれば、縮上がって(どこがだ?・・どこかだ!)チビリながら逃げ帰って行くので、それ程の邪魔にはならなかった。一度、王宮の舞踏会で詩乃に対して無礼を働いたなんちゃら男爵が来たが、詩乃の顔を見た途端、回れ右して逃げ帰って行ったので、みんなして大笑いしたものだった。

(舞踏会の顛末・その他は、シャルワによって面白可笑しく脚色され領民に伝えられていた・・娯楽も無いからね、良いんじゃぁないかな?皆喜んで公爵のヘボ話を聞いている、公爵家の威厳もクソも有ったものじゃないねぇ。)


・・・むしろ邪魔をしてくれるのは・・・ターさんだった。


現場に入ったら、規則正しく休みなど取れる筈が無いのだが。


「シノ、今日は休みだろう?其方は働き過ぎだ(自分の事を棚に上げて。)」


とか言って連れ帰ろうとするのだ・・・邪魔くさくて仕方が無い。


「畑の再生工事が押しているんですよ、アッシだけ休む訳には行かないでしょうが。」


そう言うと、裏切者のマグデンスの隊員達が

「どーぞ、どーぞ。」

と、手を前に押し出しながらターさんに言うのでムカついてしまう。


それでも詩乃が作業を終わらせないでいると、何やら魔術を展開して<あっ>という間に、畑を再生してしまうので・・これまた誠に面白く無い。

・・・どうなんだろうねぇ・・・こう言うの・・・やる気が無くならないか心配だ。鍬で土をぇ苦労して掘り返していた所に、トラクターが来て<あっ>という間に片付けてしまったら・・・普通・・グレるよね?

そんな心配をしたのだが、すでに疲労困憊の領民達は只々有難がり

<ささっ、シ~ノン様。旦那様がお待ちかねですよ、ゆっくり休んで来て下さい。>とか言うので有った。<シ~ノン様、この前頂いたお菓子、スンゴク美味しかったです。>なんて涙が滲んだ目で子供達に言われると、もう降参するしかない・・・。

ちなみにモルちゃんは現場に居残りである、ダーリンズがいるから心配しないで・・との事だが。美女は良いねぇ・・・貫禄が有ってさ。

詩乃だけが何も変わっちゃいない、ある意味自分を貫き通している。



ランパールのお屋敷に戻って、ゆっくりお風呂に浸かり(極楽極楽)、美味しいディナーを頂き・・夫婦の語らいの時間?・・イヤイヤそんなモノは無く<空の魔石>の共同研究である。甘い時間など無いのさ、うち等にはさぁ。

現場の奴らは邪推しているだろうが、相手はあの<空前絶後の頓珍漢の魔術師様>だぞ?異世界の知識を詩乃から引き出そうと質問の嵐だ・・・だから、理系は無理だと言うのに(涙)。


そうして寝不足で(休みは週休2日では無い・・・10日に1日のブラックさだ。)怠い体に癒しの魔術を掛けられて、メイドさんからお土産のセットを受け取り(選んでいるのはメイド長だ、一度8番目のチョイス(8ちゃんなりの心使いだとは思うが)が彼女にバレて、8ちゃんの品物はランパール並びにシ~ノン様の品位を落とすからとチョイス係から外された。

・・・焚書坑儒の刑にもあった様だ・・・この世界で、腐ったお嬢さんをするのは、それなりの覚悟がいる様だ。そんな事では、8ちゃんはヘコタレ無いとは思うがな~ぁ?



    *****


お土産を抱えて、<爺村>に帰ったら天敵男がやって来ていた。


「責任者が現場を離れて休みか、お気楽なものだな。]


おならのプウめ開口一番これかよ、バックに何やら軍服を着た一団を従えている。


「復興顧問と言いながら、この2カ月、一度も顔も見せなかったあんたに言われる筋合いは無いやね。冷やかしかぃ、けえれけえれ!!」


高位の貴族の喧嘩腰のやり取りに、巻き込まれてはタマランと<マグデンス>の面々や領民は、サッサと持ち場に散って行った。まだ軽い手伝いしか出来ない子供達と、老人達が恐々と此方を伺っているので<お土産>をその場に残して場所を移動する事にした。

瞬間移動でプウは兎も角、残りの軍服たちは付いてこれるかな?と思ったが、なかなか優秀な人材の様で、詩乃達より少し離れた距離だったが転移して来た。





向かった先はこの辺では一番高い山の頂上だ、見晴らしがよく海も川も見え、工事の進捗状況が見て取れる。畑は粗方片付いたし、今は<農業指導員>の指導の元、荒れ地でも育つ<ソバン>の種を撒く算段をしている。

魔獣との境界線には、南の地より木材が少なかったので(燃料に使ったらしい)、魔術具の結界を施しながら植林を進めている。魔獣が嫌う<ギス>の木で、大きく育てば(数十年後で、お爺ちゃんの孫世代が恩恵を受けるのだろうが。)林業として稼ぐ事も出来るらしい。

川を逆流して荷物を運ぶ道を作る為、川の両岸に<マウ>が引っ張れるような歩道を整備している最中だ。川幅の狭い所は下る船とぶつからない様に、所どころ退避するスペースも作る予定なのだ。


「お前が言い出したのだろう、公爵家の血を引き・・・貴族の身代わりになれる男達だ。軍部に入れられている者達だが、そこそこ魔力も強いし有能だと思うぞ。」


「彼らを引き抜いた意図は、もうレクチャー済みなのかな?」


「何故俺が話さないといけない、お前の発案だろう・・発案者が説明するべきだ。」


尤もらしい事を言っているが・・・プウさんよ。

後ろに並んでいる軍人上りの男達、仄暗いオ~ラに包まれて・・・なんか、みんな超好戦的なんですけど。女に指図されるのがお嫌いかな?


丸投げしやがったな・・・許すまじ、おならのプウめ!



新キャラ登場の予感?いえいえモブさんです。

・・・ダラダラと、長くなってしまって・・着地点が見つからない・・・とほほ。

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