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B級聖女漫遊記  作者: さん☆のりこ
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復興顧問のお仕事~4

ビューティーさん、絶好調・・・(*´▽`*)。

ランケシ王国に、厳しい冬がやって来た。


王都は既に雪が根雪となっていて、王宮を砂糖菓子の様相に変えていたし、最北に近いトデリでは港が結氷し陸の孤島となっていた。

しかし最南端の地である伯爵領は、朝晩息が白くなるくらいで、そう大変な事も無く、今日も元気に工事に励んでいるのだった。

工事は順調に進んでいる・・・重機ドラゴンが大量投入されている為だ。

モルちゃん目当てに伯爵領を訪れる(半分はハイジャイからのエスケープ組)彼らが、ちょっと良い所を見せたくて工事に協力してくれるからだ。無理やり同伴させられてきた騎乗者も、来たからには<手伝えよ>の無言の圧力に屈し、魔力も強めな為に良い仕事をしてくれている。

ドラゴンが増え続けている為、トンスラからもお世話係が多数駆け付け。ラセンさんは一息ついて過労死から免れたのであった・・・結構ブラックだよねこの業界も。

ハイジャイで詩乃達と同期だった能面さんもやって来て、主に畑を手伝ってくれた・・・彼女の領地の畑を手伝う事も多いそうで、慣れた作業だと笑っていた。彼らは今年は王宮には行かないらしい、一度行けば沢山だと彼女共々思ったそうだ・・・詩乃はこれから行くんだけどなぁ・・・そうなんだぁ気が重いや。


それにしても凄いねぇ・・美人の力って、モルちゃんを囲んでの鞘当てが傍迷惑のレベルである。体がデカいんだから、自重しろよお前ら・・・せっかく整えた畑が潰れるんだよ!しっしっ!クインニョンでも若い美人の狼娘達が来てから、劇的な変化が起こったが・・・良い事なのか、悪い事なのか定かでは無いが・・何か暑苦しい。


詩乃はしみじみと思う、美人じゃなくて良かったと・・・。

だって面倒臭いでは無いか、ベタベタと鬱陶しいし?気は使うし?

アッシには、1人でも手に余るんだけどなぁ・・誰とは言わんが。




・・・そうなのだ、見舞いに言って看病してから、ターニーさんが詩乃を呼び出す回数が増えているのだ。キツネエがドレスの調整をしたがっているとか、マナーの復習(復習も何も、何も習ってはおりませんがな。)とか、社交界の打ち合わせが必要だとか・・・・チョッと最近ウンザリ気味なのである。

まぁ、それもターニーさんの心使いの表れで、お屋敷に戻れば料理長の美味しい食事を頂けるし、お風呂にも入れるし?フッカフッカのベットで眠っるし・・・詩乃を休ませてやろうと思っての事なのだ。有難いは有難いのだが・・それでも1人だけ良い思いをするのは気が引ける。気を使って御土産にお菓子や肉の塊等を持ち帰ってはいるけれど、何だか女性陣から羨ましそうな目で見られている様で肩身が狭い感じがするのだ。



でも・・・それだけ重要なんだってさぁ、冬の社交界は。

詩乃の場合貴族でも無いし、社交デビュー何かしていないから、未知との遭遇な気分で<どんな小娘が、あの魔術師長を垂らし込んだのか>と興味津々なんだって・・・暇だな、王都の住む貴族共は。


だから隙を作らず付け込まれず、ターニーさんに恥をかかせる事の無い様に、最低限のマナーと常識が必要だって言われてしまって・・・失敗したかな・・この人選(今更チェンジも出来そうも無いが、親切にしてもらい過ぎて恩メーターが振り切れている。)

今は何故だかビューティーさんがマナーの先生として付けられている、ハイジャイの仇を伯爵領で取られている気分だ・・・・何故この人選だし?


そのビューティーさんはと言うと、朝~夕方まではパガイ商会の責任者(凄い)として、パガイさんの代理として貝魔石の買取や、パールモドキを作る為の施設の見積もりや、獣人達の待遇への補償交渉・・・などなど諸々任せられて張り切って大役を務めている。

何だかパガイ商会の女主人みたいな貫禄で、伯爵側もビビり気味だ。


その交渉相手・・・伯爵領の代表ってのが、女官長の妹の姪っ子だとかで。

これが細かい!ケチな数字に滅法五月蠅い女(女の子)で、文官上がりのビューティーさん相手に、丁々発止の攻防を繰り広げている・・・見ていて怖いくらいだ。商いは血の流れ無い戦争・・か・・名言だな。

しかしビューティーさんの機嫌が悪くなると、夕食後のマナー教室が手厳しくなるので、少しは遠慮して頂たいものである。


今日の会議ではもう決定!となりかけていたのに、またも些細な事を蒸し返され・・・怒り心頭のビューティーさんが席を立ちテーブルをひっくり返したので驚いた。


いきなりドーンだよドーン!!


異世界でもいたんだ☆の父ちゃん・・あの細い腕で良くひっくり返せたね。

会議室の全員が固まって(婆も)、フリーズ状態になったのだが・・・まぁその修羅場?はオ~イがマァマァと収めたんだが。

会議はいったん解散となり、各自休憩となって散った訳だが・・・。


その後詩乃は、オ~イと姪っ娘の会話を聞き耳ダ〇ボで盗聴していた。

オ~イはなかなか聞き上手で、上手く彼女の不満と不安を聞き出していた。

どうしても若いからと舐められたくなくて、早く誇れる結果を残したくて・・・功を焦った姪っ娘さんの言葉に、諭す様に話をしている。





「そんなに欲張ってもしょうがないだろう?相手の事情も考慮しないと、一人勝ちを狙っても事は上手く運ばないぞ?」

「オ~イ兄さんは甘いんだよ!貝魔石は伯爵領で採れたんだから権利は此方に有るでしょう、彼らは手間賃を取り過ぎだよ。海に潜って拾うだけじゃない。」

「お前、この季節に海に潜ったことが有るのか?冷たいんだぞ~~海は、体が冷えると上手く動けなくなるし、一歩間違うと死ぬぞ?いくら此処が南の地で、獣人達に毛皮が有ると言っても決して楽な仕事では無い。波が荒れれば攫われる危険も、海の魔獣に襲われる危険も有るんだ、それを解ってお前は喋っているのか?」


姪っ娘は膨れて(たぶん)返事をしない・・・。


「彼らと友好関係になって、信頼が築けなければこの試みは失敗に終わる。貝魔石は彼らにしか扱えないし・・・海は此処だけじゃ無い、養殖のノウハウさえ有れば何処でもできる事業なんだぞ?此処から撤退されたらどうなる、また魔貝が増えれてくれば元の木阿弥じゃ無いのか?」

「相手は獣人じゃない!人に従うのが筋でしょ?」

「彼らはいずれポアフが引き抜いていくだろう、そうなれば立派な領民で、俺達と同等の権利が保障されるはずだ・・・王都の常識は此処では通用しないんだ。

ドラゴン部隊にしても、ポアフにしても・・・只の好意でこの地に居る訳では無いぞ?王宮の・王妃様の命令だからいるんだ・・・その王妃はザンボアンガ出身の姫君だ・・・意味解るな?」


・・・それでも納得いかない様に、姪っ娘が吠えた。


「それでは伯爵領に何の旨味も無いじゃない!!」

「そうかぁ?復興資金の素・・大金で引き取られて行ったオレウアイを倒したのは俺達ではない、ドラゴン部隊だ・・その大金をポンっと此方に寄越したんだぜ?普通では有り得ない話だ。倉庫業や人材派遣の仕事を提案して来たのも彼らだ、港は彼らの御蔭で復旧に向かっているし・・・何より、領民に笑顔が増えた・・明日に希望を持っている顔をしているじゃぁ無いか。お前や俺では出来なかった事だぜ?旨味も何も、美味しい所だらけだ。」


・・・・・ここまで言われて、姪っ娘はポロポロ涙をこぼし出した。


「泣くな泣くな、お前は良くやっている。まだ仕事は始まったばかりだ、焦るな、目先の利益に迷うな。此処の本業はこれからやる倉庫業だぜ・・・細かい管理が必要な仕事だ。お前に向いている感じだろう?期待しているんだ俺はなぁ~~。」

ウグウグ泣く声と、ヨシヨシぽんぽんと背中を叩く音がする・・・オ~イの属性はお兄ちゃんか?家のお兄にぽんぽんなどされた覚えは無いがなぁ。




「・・・だそうです。」


盗聴は趣味悪いけど、彼を知り己を知れば百戦あやうからず・・・と言うからねぃ。パガイ商会も結構な投資をする訳だから、損は出来ない・・そういう事だ。


「あの姪は、王都の商家の三人姉妹の真ん中で・・・上下を美人で挟まれて、少しばかり拗ねているのよ。此処で1発実力を見せ付けて親兄弟・周囲を見返してやりたいとか、功を焦っているんでしょうねぇ・・・面倒臭い事。<このあたしにタメを張ろうなんて100年早いのよ、甘々のお嬢ちゃん。>」

「おっ?酸いも甘いも嚙み分けて来た、熟女が余裕の発言ですねぃ・・・まぁ、育てる気持ちで接してやっては下さらんかねぃ。」

「・・・何です、その爺むさい言葉は。(誰が熟女じゃぁ)」

「それにしても、突然のDVには驚きやした・・机バーーーンなんて。」

「あれは商人の間でやる意思表示で<これが最後通牒、これ以上は話をしない>って肉体言語なのよ。パガイさんがやるのを見ていたから、一度やってみたかったの・・ホホホホ・・・・。」


『肉体言語ねぇ・・パガイさん何しとんの?』


「ところでシ~ノン様、ダンスは大丈夫なんですか?舞踏会に出席すれば、最低限1曲は踊らなければなりませんよ。最初は王族が踊るから2~3曲後になりますが。」

「この前呼び出された時に、ターニーさんと練習して来た。何とビックリ、このアッシより下手糞で驚いたんだ・・・足を踏まれまくって頭来たから投げ飛ばしちゃった。今頃何か秘策の魔術具を作ってたりして?」


『大人しく投げ飛ばされたのかしら・・・あの人・・意外とマゾ?』



     *****



その後詩乃は玄関の目立つところ(壁)に、墨痕鮮やかに<共存共栄>と書くと、結界で封印した・・・みんなの知らない字だからね、上手いのか下手な字なのか・・そんな事は解るまいよ。


「シ~ノンの騎士様、これはなんですか?何だか不思議な形~~。」

「これ字?なんて書いて有るんでしゅか?」


物珍しい事が大好きな子供達が寄って来た、大人も何だなんだと集まって来る。


「これはなぁ、聖女様の世界の文字で<きょーぞんきょーうえぃ~い>と書いて有るんだ。」


え、なに?うえぃ~~??


「この意味はな、お互いに喧嘩することなく、一緒に助け合い、栄えて・・・ご飯をいっぱい食べられる様になろうぜ!・・・って意味さ。どうでぃ?いいだろう~~。」

「うん!みんなでご飯いっぱい食べる!」

「喧嘩しないよ!仲良しだよ!!」


獣人の子と人の子が肩を組んで燥いでいる、大人も微笑ましそうに見ていた。

貝魔石を取り除いた功績が大きいんだな、きっと・・・最初の獣人さん達は確実に根付いてきているようだ。しかしあれから難民船が数十組来たのだが、獣人の人達はパガイ商会が面倒を見ている・・・なかなか交り合う事は難しい様だ。此処があのスルトゥの様な、何でも有りな場所になれれば良いのだが。


詩乃の書いた前衛的な習字を、婆やオ~イ、姪っ娘、領民や冒険者達は揃って感慨深げに眺めていた。



そうしてその後、婆は一足早く冬の社交界に旅立って行った。

社交デビューする事も無く、裏方に徹して来た婆の初の晴れ舞台である。

若い頃は貴族の社交や舞踏会に、憧れや嫉妬・諦めの気持ちと・・色々と思う処も有っただろう。今はすべて達観して、しゃんと背筋を伸ばし堂々とした伯爵ぶりを見せている。

婆の任務は<人材派遣業>の、受け入れ先の開拓とパールモドキのお披露目・売り込みである。パールは年齢を問わないからね、冠婚葬祭何でもOKだしぃ?


詩乃は女官長個人に社交界に臨むはなむけにと、2連の長いネックレスや髪留め・耳飾りや指輪を贈っていた。薄い虹色に光るパールは、皺だらけだが色白の婆女官長に良く似合っている。


「この歳で、着飾って社交界に出るとは思いもしませんでしたよ。」

「よくお似合いですよ、メイサ殿・・王都に旅立って行ったあの日の貴方を思い出します。天の乙女が空に帰ってしまった様な心地がしたものです。」


『婆は幼児だったポアフ隊長の初恋の人だったようだ、昔は綺麗で優しかったのだろう・・・それなりになぁ。』


婆のエスコートはポアフ隊長・・伯爵だ、パールの売り込みも有るからね。

彼は現場を一時離れ、営業する為に社交界へと向かう・・・タンデムで ON ざ ドラゴン。ランパールまで向かって、それからは魔術陣で行くと言う。肝の据わった婆は、ドラゴンをも怖がらなかった・・・空を飛ぶなど、冥途の良い土産になると喜んでいる。

オ~イは領地から出ると、木っ端微塵にされると恐れているので留守番だ。


「ターニーさんは、そんな事しないと思うけど?」


そう言ったらフルフルと震えていたんだけど・・・そうかなぁ?



【パール・・・真珠】

強い保護力が有り、持ち主をトラブルや災難から守ってくれると言う。

悪霊からも持ち主を守り、邪気を祓うと言われている・・・魑魅魍魎が巣くうと言われている王宮に向かう婆にはピッタリな石(正確に言うと石じゃないけど、細けぇ事は良いんだよぉ。)だろう。

婆の社交が愉しいモノに成るように、心から願った詩乃だった。


パールは金縛りに効くと言う事ですが・・・金縛りにあった事がない。

多分霊感も無い・・・きっと隣にいても気が付かない自信が有ります。

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