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前世からの奇縁


 いくら魔法学院と言いつつも、高等学校と称している限りは『普通科目』も学ぶ。

最初の授業はホームルームで、そのあたりの内容を説明するところだった。


「この学校では、魔法・魔術と言った類を教える。ここに居る者も、それを期待しているはずだと思う」

 全校生徒は94人で、クラスが3つに分かれているのだと言う。

 かく言う私のクラスは『1年1組』と捻りも無い名称。

一組が34人で、それ以外の二組・三組が30人という構成となっている。

校門正面には五角形の校舎があって、五区画に分かれている。

一番校門に近い面が『二組』の入る校舎で、校門から見て左側が『一組』、右側が『三組』となっている。


 校門から最も遠い位置が、実技や音楽室、理科室などの実験設備が整っている。

三階建ての校舎の最上階は、数十メートルの高い天窓となっており、簡単な実技はそこで行うとの事だった。

 校舎全ては耐熱・耐衝撃性が高く簡単には壊れない設計で、軍事基地も真っ青なほどの重装甲が施された要塞のような場所だった。


「授業は6割は普通科目で、仮に卒業後に進学を目指す場合には、三年から普通特別進学クラスを選択する事も出来る。しかし、皆も魔法の楽しさを知れば、きっと違う進路も有るんじゃないかと思います」


 今まで校舎の説明から、授業カリキュラムの説明をしていた担任の先生の語調が変わった。

担任の名は宮守(みやもり)氷澄(きよすみ)という女性教師で、副担任が日野(ひの)和左(かずさ)という男性教師だった。

彼らは魔法・魔術科を教える教師らしく、普通科15名、魔法科6名の教師がこの学校に居るらしい。


「私は数年前まで、魔法なんて存在しないと考えていました。だけど、この世界には知らない事は多く、皆さんはこの日本という国で、常識が壊れる体験をすると思います」

 少し興奮気味に語る先生の様子は、悪い宗教にでも捕まった妄信者のように映った。


「科学が支配するこの世界で、魔法なんて台頭する事なんて、きっと無いのだと思います。しかし、古くから世界では『魔法』という存在は秘匿されて来ました。異端として、魔女狩りが行われた時代があると言いますが、それが再び表舞台に上がるのです」

 先生は熱くなりすぎたことを自覚したのか、一息区切る。


「合わなければ、転校や進学を選ぶのも良いでしょう。学校側としても、転校など上手く行かない場合には資金面でバックアップします。それでも、三年間を過ごした暁には、きっと世界初の公式な魔法使いとして、日本でも世界でも活躍できる人材となるでしょう」

 そう締めくくり、宮守先生の長い語りは終わりを告げた。


「あ、私の事は氷澄(きよすみ)先生って呼んでくださいね」

 そこでチャイムが鳴り、本来は三年間の展望みたいなものを語る時間のはずなのに、学校の説明と氷澄先生の熱弁で終わりを告げた。



----


「君はさっきの?」

 高瀬朝兎がホームルームの終了と共に、話しかけてきた。

「高瀬君も、一組だったんですね」

 既に気持ちの整理は付いていて、私はこの世界では高瀬朝兎と極力関わりを持たないことにした。

ただし、近くに居ると嫌でも感じてしまう、高瀬の魔力が前世の記憶を呼び覚ます。


 高瀬の魔力は特殊だった。

魔力は多くの人間や魔法使いによって性質は変わる事はなく、譲渡などが可能であるが、稀に強大な力を持つ存在や、前世での魔王や勇者のように特異な性質を持つ者が居る。

 魔王の魔力は『破壊』『負の感情』を喚起させる性質を持ち、禍々しい印象を周囲に与え、使う魔法は尽く威力が高かった。

ただの炎が、灰も残さない地獄の業火になるような凶悪さがあった。

 一方の勇者は『浄化』『正の感情』などを周囲に与え、その名に相応しい輝きと、負の魔力を持つ者への殺傷能力が高かった。

魔物や死霊、悪魔に対しても効果が高く、悪魔だった私もただの一撃で身動きが取れなくなるほどだった。


 高瀬朝兎の魔力は魔王の片鱗を感じさせるもので、魔力の量は私よりは少ないものの、私以外では一番高いと思える容量を持っていた。


「立花さん、改めてよろしくね」

 案外に高瀬朝兎というのは、女の子へ気軽に声を掛けるなど、社交的な性格をしているようだ。

この頃の子供は、尻込みして異性や同性でさえも、自分から声を掛けるのを躊躇う人が多いのに。

現に教室に居る他の30人弱も、そわそわと周囲を見回している人と、無関心に本や教科書を開く者、ぎこちない笑顔で話しかけている集団がちらほら居る程度だ。


「美奈、この人は?」

 きっかけを探しているのは、同じクラスだった綾目も同じようで、私達の会話に割り込んできた。

「俺?俺は高瀬朝兎。君の方は?」

 少し気障な仕草を心がけているのか、今生(こんじょう)の魔王様の事は……高瀬君の事は好きになれそうにない。

「高瀬君ね。私は未鏡綾目。綾目でいいよ」

「じゃあ、僕も朝兎で良いから。綾目さん、よろしくね」

「よろしく」

 他愛無い会話?をしつつも、私は次の授業の準備を始める。

「次の授業は魔法の授業だけど、皆は準備終わったの?」

「「あ」」

 私の言葉を皮切りに、高瀬君も綾目も自分の席に戻って行った。

そして集合場所の、天窓のある屋上へと急いで向かう。





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