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聖女の条件  作者: 杜若 白花
序章
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 この頃ようやく、両親の名前と国の名前を覚えた。



 この国は【アンドラング帝国】というのだそう。

 そして、【幻獣と妖精の同盟者】と自分達を称する。



 お父様は、ハインリヒ・アギロ・シュヴァルツブルク。

 お母様は、テレジア・アデラ・アールヴヘイム・シュヴァルツブルク。

 そして私は、エルザ・シュヴァルツブルク。



 【アールヴヘイム】というのはお母様の実家である【アールヴヘイム王国】の王族の姓だそうだ。

 皇族や王族は結婚しても、前の姓を今の姓の前に入れるのだとか。

 お母様、王族なんだ……

 確かに、一つ一つの所作は完璧で、優美で気品あふれているから違和感がないけれど。



 幻獣や妖精を得たら、名前が変わると言われた。

 名と家名の間に、幻獣か妖精の名前が入る事になるのだとか。

 平民も名の後に幻獣か妖精の名を付けて、同じくその後に姓が付いたものが名前になるという。



【幻獣と妖精の同盟者】とは大昔に皇帝の祖となる人と幻獣達との間に結ばれた盟約によるものらしい。

 詳しくはもっと大きくなってからと言われたので、良くはわからない。



 しかし、貴族か――――



 その上、帝国の筆頭大公爵家だという。

 前世では公爵って貴族の一番上だったよね? こちらでもどうやらそうみたいだし。

 それの筆頭って何? 貴族の一番上って事でしょうか……



 大丈夫かな、私……

 まあ、元々責任感は強い方だと思うし、貴族として生まれたからには役割はしっかり果たす所存です。

 がんばろう、成るように成る、と言い聞かせた。



 貴族の家という事は、政略結婚をする事になるのかもしれないと覚悟しておこう。

 家の皆は大好きだから、迷惑になったり恥をかかせないようにしないと。

 力になれるのなら、何処に嫁がされても文句はない。



 だいたい、本来生まれるはずの子の代わりなのかもしれないのだから、好き勝手するとか選択肢に無いのだ。

 元々、他人に迷惑をかけるのも、身勝手に振る舞うのも苦手で好きじゃない。

 家の顔に泥を塗る様な真似は絶対にしない様に気を付けよう。





 それから、毎日の人もいるし、一般的には週に一回か月に1回、神殿か家の祠か神棚にお参りするのだという。

 祠や神棚は毎日水を取り替え掃除をし、食事を捧げる。

 神々や精霊には拝謝の気持ちを忘れてはいけないと言われた。



 神々はこの世界を見守っていて、精霊は全ての生き物以外に宿っているとは驚きだ。

 生き物は精霊の加護や影響を受けると聞いた。



 感謝されれば神々や精霊だって嬉しいという。

 精霊の加護を受けるとその魔法属性が使いやすい上、強力になるそうだ。





 前世では大切な人たちに大切にされたけれど、その恩を返すことも出来ずに死んだのが後悔だ。

 今度は大切な人たちを守りたいし何か役に立ちたいと考えている。

 やっぱり、大切な人たちの笑顔を見たいよね。

 何が出来るかはわからないが、今世でも笑顔でいようと、そう決めた。

 後、感謝を常に忘れずに!







 姿見の大きな鏡の前で、侍女さんたちによる最終チェックを受けつつ、今世の容姿について思う。



 全体的な雰囲気は前世のままだ。



 瞳はお母様譲りで大きめだが、お母様の様に垂れ目で甘めな容貌というわけでもなく、つり上がるわけでもない様子は、お父様と似ている、というか前世の私と同じだな。

 母親が甘めな容貌なのも前世と一緒だ。

 鼻は小さくもなく大きくもなく、丸いわけでも尖がっていわけでもなく、整っているとは思う。



 唇は、お母様に似たというか、前世と同じというか、厚くもなく薄くもなくといったところか。

 形も悪くないと思うが……自己評価だし正確にはわからない。



 今世のお母様も華奢で小柄でたおやかな美女だ。

 前世の母と同じに。

 今世もまた私は小柄なのだろうか……

 背がスラリと高くて、足も長くて美脚な、スタイルが良いモデル体系とか憧れのままかな……



 いや、お父様は背が高くて足が長いけれど、脆弱な感じのしない、良く鍛えられた細マッチョな美男さんだから、まだ希望はある。

 あると信じたいが、あったら良いな程度だな、どう見ても……

 前世でも父親は背が高くてモデルみたいだったが、私は身長とか全く似なかったから……



 お母様は前世の母や私に似ているから、結果的に私も前世とそう変わらない容姿となりそうだ。

 そんな予感をヒシヒシと感じている。

 髪の色や瞳の色は違うのだけれど。



 髪は前世と同じ長いサラサラストレートで、色は前世の黒と違い、淡い金色。

 春の日差しが差し込んだ様な温かい色の髪だと、お父様はご満悦だ。

 今世の瞳は天色(あまいろ)だ。

 この瞳の色も、お父様より鮮やかな青だからか、家族一同、似合う似合うと大合唱だ。



 前世とそう変わらない容姿って事はまたイジメられるのかな……

 お前みたいな奴はこっちに来るな、とか、あっちへ行け、とか言われたり、遠巻きにされてヒソヒソ言われたり、無視されたり、何故かいじめられたもの。

 何か気に障る様な事を言ったりしたのだろうか……

 それとも自分で思っているより、私って醜いのかな……

 本当に心当たりがないのが怖い。



 どういうわけか初対面の人も多いのだが、殆どの人が私を見ると固まった。

 凝視される事もしばしば。

 外見が嫌悪感を抱くほど醜いという事はないと思いたいけれど、自己判断だから正確にはわからないしなあ。

 姿形には自信がまるでない。

 うう、嫌われないように愛想振りまくっていうのも趣味じゃないのだ……

 それでも友達になってくれる人もいたし、成るように成る! の精神で行くしかないよねと心を奮い立たせた。





「淡い桜色のドレスが良くお似合いですわ。これなら皇子殿下とお会いしても失礼には当たりません。大丈夫です」


 そう言う侍女さんたちの声でこれからの事を思い、憂鬱になる。



 帝都の屋敷に移るまでと、移った後、本当に忙しかった。

 それというのも、私達が帝都に移ったら、皇子殿下が帝都の屋敷をご訪問になる、というのは前々から決まっていたから、らしい。



 お父様の母親である祖母が、皇帝陛下の妹君で皇女殿下だとかで、皇帝陛下のご子息である第一皇子殿下と、お父様は従兄弟同士になるのだという。

 その上、お父様とその第一皇子殿下は、兄弟のように仲が良いのだそうだ。



 それで、お父様は私が生まれてから主に領地にいて、中々会えなかったから会いたいし、娘である私にも是非会いたいと。

 そこで本来なら私達が帝宮にご挨拶にうかがうところ、私がまだ小さいから、第一皇子殿下御自らが会いに行く方が良いだろう、と。

 その第一皇子殿下には息子が一人いるのだけれど、せっかくだから連れてくる、という次第。



 これは結構大変な事、らしい。

 どうもこの国では皇帝陛下や皇族はとてもとても神聖視されている上に崇拝されていて、神様に会うんじゃないかという感じみたいで、余計に身を引き締めた。



 良い人だといいな。 

 お父様の従兄弟だし大丈夫だろうと言い聞かせる。

 大人の男の人は苦手だから、余計に緊張する。

 でもでき得る限り頑張ろう。


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