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聖女の条件  作者: 杜若 白花
第五章 帝立アリアルト魔法高等教育学校 2
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 どういう事かと首を傾げる私に、リーナは暗い笑みを浮かべながら教えてくれた。

 背筋が冷たくなるような表情を浮かべた彼女の姿を今まで見た事が無い。

 ……つまりそれだけの事態が起こっているという事実に戦慄する。


「あの時死んだ人達は……普通科の一年生。それも貴族と士爵家の子達だけ。圧倒的に少数派なのよ。しかも魔導騎士科や魔導医療科のエリートさん達にはただでさえ通常敵わない。だっていうのに一年生という……――――加えて何の因果か最上位の実力者ばっかりの攻略対象全員がエリザベート側っていう詰んでる状況ですよ。身分高いのも普通科より他の科の方が多いし……基本的に普通科にいる貴族令嬢で身分が高いのはエルザの側近候補だけというのは本当に助かったけど。実力者ぞろいだからね。本当に、こっちにエルザが居て良かった! それから謝らないと。ごめんね。土下座できるならしてる。心の底からごめん。エルザの名前を結構無断で使わせてもらってた。おかげであの時死んだ真面な人達をこの寮に匿う事が出来てるし、敵を寮から追い出せたよ」


 そこで一旦言葉を切ったリーナは、真剣そのものの表情で私を見つめる。

 私の肌が震える程の決意を感じられて、背筋が伸びる気がした。

 今までも必死に話を聴いて脳味噌に叩き込んでいたけれど、それ以上の気合を入れて集中する。


「本当にごめん。謝っても謝り足りないし、エルザのガラじゃないのも分かってる。でもエルザが目覚めたのは間違いなくあっち側に知られたはず。どうやら今のフリードリヒは前みたいにエルザをはっきりと見えないらしいけど、それでも絶対監視してる。だから寮に押しかけてくるのは必定。その時にエルザに矢面に立ってもらわないといけない。私達じゃアイツらからエルザも皆も……もう守れない」


 リーナは深く頭を下げた。

 それこそ綺麗な直角に。

 全身を震わせながら。

 怖くなるほどの決意を滲ませて。


「今のアイツらの前にエルザを本当は絶対に、絶対に絶対に立たせたくない。視線に晒したくも無い。だけど一度。一度だけでもエルザの口から直接言ってもらわないとどうしようもない。お願い。私もアーデルハイト様もベアトリス様もリオニー様もナディーン様もオティリエ様も側を絶対離れない。だから一度。一度で良いの。アイツらを牽制して欲しい。今まではエルザが目覚めていないからこそ側近としてどうにかできたけど、エルザが目覚めた以上はフリードリヒ相手にはエルザじゃないとダメなんだよ。他の大公爵家の連中も抑えらえない。間違いなく引き下がってはくれないのは分かってる。脚本は用意してあるの。どうか……どうかアイツらの前で演じて欲しい。この通りだから……!」


 私はリーナの話を聴きながら自体をようやく理解できたのだと思う。

 つまり……真面であるからこそ、一度死んだ人達は現在危機的状況なのだ。



 貴族と士爵家の子達だけなのも大きいだろう。

 その身分の人達であればこの年齢でも通常十分にエリザベートの言動は……受け付けない。



 エリザベートという少女は、どうやら自分に対する拒否や悪感情に非常に敏感だと以前お父様が仰っておられた。

 自分に対してそういう感情を向ける相手を、昔は散々皇帝陛下や第三皇子殿下に告げ口して罰を与えていたとも。

 その罰自体をエリザベートが相手によって指示していたらしいのだ。

 帝宮を追い出されるまでそれは続いていたらしい。



 どうやらそれを今度は閉じ込められたこの場所で再開したのだろう。

 ……どういう訳か能力も目覚めた様だし、それを惜しげもなく使っているのだ。



 帝宮で行われていたらしいエリザベートの罰の話は、私以外は常識レベルで貴族と士爵家には伝わっていたらしい。

 だからこそエリザベートへの嫌悪感はその身分では共通の物だという。



 であれば現在のエリザベートに危害を加えられるのは一度死んだ人達にとっては必然だ。

 もう魂に刻まれるレベルでエリザベートへの拒否が染みついているらしいのだから。



 能力はやはりこの学校に入学したから目覚めたのだろうか……?

 ゲームでは高校相当だったろう魔法学校の入学年齢より下だとしても、重要なのは魔法学校に入学したという事実だという事……?



 それは今は考えない。

 兎に角現在の危機を潜り抜けてから吟味だ。



 リーナの話を咀嚼し飲み込んだ私の脳味噌さんは、全力で駆動してくれたおかげですぐに行動に移るべきと結論を出す。


「分かったわ。脚本を頂戴。直ぐに覚える」


 これでも記憶力は良い方なのだ。

 皆を守れる方法は確かに私が先頭に立たなければどうしようもない。



 何せ相手は皇族だ。

 それも皇位を次に継ぐ候補の有力者。



 であれば私が切り札というのは最もだ。

 逆に私しか居ない。



 もしギュンターが真面であったとしてもだ。

 彼は能力を隠している関係上、どうしたってフリードリヒより身分で劣ってしまうのだ。



 私は普段自分の身分をひけらかしたりも利用したりもした事は無い。

 それでも自分の立場と権力いうモノはしっかりと理解しているのだ。



 ――――私ならば……フリードリヒでも確実に黙らせられる。

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