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聖女の条件  作者: 杜若 白花
第一章 目覚め
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26

 お父様は今夜も帰って来れないみたい。

 ルーと二人の夕食になった。



 サーモンマリネとアボカドのコンソメジュレカクテルは色が綺麗だし、カクテルグラスに盛り付けられていてスプーンで食べた。

 アクセントのエシャロットの食感が良い感じ。



 豚肉と野菜のテリーヌと帆立のテリーヌの盛り合わせは、野菜が秩序良く並べられていて、色鮮やかだ。

 帆立のテリーヌの薄い肌色とのコントラストが綺麗。



 新鮮な黒ムツが入ったからとお刺身に。

 とても濃厚で美味しい。



 秋野菜のカポナータも、夏野菜の物と違った食材で新鮮な驚きがある。



  サツマイモのポタージュスープは甘くて美味しい。

  私は基本的に苦いや辛いや甘酸っぱいが苦手だ。

  甘いなら甘いで良い。

 基本的にベリー系はあまり得意ではないのです。

 


 虎魚のはす蒸しは、白身魚に蓮根とか卵白とか混ぜた物を乗せた蒸し物だ。

 とろりと掛かった琥珀色の餡が食欲をそそる。

 蕪でやる事が前世では多かったけれど、今の旬の蓮根になったみたいだ。



 松茸の土瓶蒸しは鱧と松茸が良い感じ。

 銀杏は結構好きだったりする。

 スープがとても美味しい。

 松茸はシャキシャキなのが良いと思う。



 黒ムツと秋野菜の天ぷらは、サクッとしているし濃厚だしで美味しい。



 口直しのレモンのソルベが口をさっぱりさせる。



 ローストビーフの付け合わせはヨークシャープディングかな。

 うん、この組合せは良く作った。

 お肉に合ってお腹も膨れて良いんだよね。

 プディングとは言っているけれど、プリンのようなものではなくて、もっちりふっくらした質感の物だ。

  ローストビーフのソースをかけて一緒に食べるととても合うから好きなのだ。

  その上この世界に来てから、いつも肉はジューシーで柔らかいので嬉しい。



  ご飯は鯛の炊き込みご飯。

  竈で炊いているのかな。

 お焦げとかあるし、ふっくら炊けたご飯と鯛が美味しい。

  あまり使用人が使っている場所とかは、入室したら駄目と言われた。

  私が料理するのなら、私専用の場所になる。

 そこで色々授業は受けているのだ。

  だから家の料理人が調理しているところは見た事が無い。

 その為、竈があるかは分からないのだが。

 

 

 白味噌の味噌汁も付いて来た。

 具はジャガイモを潰して小麦粉を混ぜ、餅状にした物を蒸してから揚げたものだ。

  うん、美味しいね。

 具はもちもちしつつ、カリッともしている。

  お汁は甘めで私好みだ。

 


 デザートは桃のアイスと生の桃。

 晩成種の桃だから、この季節でも名残で出回っているという。

 美味しそう。

 桃は大好物なのだ。

 とても嬉しい。

 それからマロンプリン。

 これも生クリームで飾られていて、美味しそう。

 基本的に私は甘党だと思う。

 甘すぎるのは却下だが。



 最後にお茶。

 緑茶にほうじ茶、紅茶かコーヒー等が選べて嬉しい。

 私は紅茶でルーはコーヒーだ。

 紅茶に砂糖を多め、ミルクは控えたのだが、甘目になってしまった。

 ルーはストレートだ。

 八歳なのに苦くないのかな。

 それとも苦みが良いのか。

 謎だ。



 お父様と食べていると分かるのだが、私の出される食事の量は少ない。

 身体に合っていて、残さずに食べられる。

 ルーには私より少し多めの料理が出されていた。

 ――――料理長、流石だ。



 それに料理はどれも食べやすくて助かっている。

 見た目が美しいのも料理には大事なのは分かるが、見た目にこだわり過ぎて食べずらいのもどうかと思う。

 なんというか、食べる人の事を考えていないのではないかと思えるのだ。



 ルーは黙々と食べていた。

 食べ物の好き嫌いとか無いのかな。 

 訊いてみたら特に何かが好きとか嫌いとか無いという。

 それはそれで、何を作ってプレゼントしたら良いか悩むな。



 貴族は手作りのプレゼントとかしないのだろうか。

 今度礼儀作法の先生に訊いてみよう。

 私、料理や裁縫等は得意なのである。

 運動は苦手だが。







 夕食を食べたら、少しルーとまったりクラシックっぽい音楽を聴きながらくつろいでから、侍女達にお風呂に入れられ、寝室に連行された。

 二人で部屋にいた時、ルーにディルクに感じた違和感を話しておいた。

 私じゃ良く分からないけれど、ルーなら何か分かりそうだし。



 本当はお父様に話した方が良いのかな。

 でもお父様とここ数日会えていない。

 攫われた日の翌日は、私もまだ混乱気味で、ディルクに感じた事をお父様に説明出来なかったからなぁ。

 単純に言うのが怖いのもある。

 拒絶されたらどうして良いか分からない。



 そんな事を考えつつホットミルク蜂蜜入りを飲み終え、もうちょっとルーと一緒に居たかったと思いながら、ベッドに上がり布団に入る。



 今日も今日とて絵本を片手にである。



 昼間、一時間弱熟睡出来てありがたかった。

 ルーには感謝だ。

 絵本を読んでいないと怖くて堪らない。

 音楽でも聞いていようと思うのだが、その隙に誰かが侵入して来たら気が付けない気がするから、保留。



 だが、明日は精神を集中させなければいけないかもしれない。

 寝た方が良いだろうと、絵本はベッドの横のサイドテーブルに置いて目を閉じた。





 どうしても(前世)の事とダブってしまう。

  あの時の怖かった感情が憑依した様で怖くて怖くて堪らない。

 

 

  あの時程恐ろしくはなかった、はずだ。

 大丈夫、大丈夫と言い聞かせているのに恐怖は後から後から沸いてくる。



  また、あの時みたいに取り返しの効かない状況じゃないし、勇は大丈夫だ。

  あぁ、勇は居ないんだった。



 彼には取り返しの効かない恩がある。

 返せないのが本当に申し訳ないのだ。

 迷惑ばかり掛けてごめんなさい。

 どう償ったら良いのか……そうだった、ここには居ないのだった。



 頭が恐怖で混乱している。

 駄目だ建設的な事が浮かばない。





 独りで暗闇の中にいると、また何処かに浚われてしまいそうで怖い。

 何処かに恐い人達が潜んでいるようで落ち着かないのだ。



 前世でも、事件の後に病院に居るのは怖かった。

 従兄弟が居てくれたから堪えられたのだ。



 殺された時も怖かった。

 もうじき病で死ぬはずだったが、相手の女は何故私を殺したのだろう。

 考えないようにしていた事だ。

 だってこちらの世界にいれば、元の世界の事はどうしようもない。



 それでも、あの時は痛くて、訳が分からなくて、皆に何も言えないのが悲しくて、千々に思考が乱れていた。

 女の悪鬼の様な表情を覚えている。

 あそこまで憎まれていたのに、理由がまるで分からない。



 思考は負の方向へと流れていく。



  やっぱり灯りを点けて本でも読んでいよう。

 布団に包まって震えてろくでもない事を考えているよりはましだろう、そう結論付けた時、扉がノックされた。

 

 

 思わず飛び上がってしまった。

 怯え過ぎだ。

 悪い人はノックとかしないはずだから、大丈夫、な、はず……


「誰?」


  恐る恐る訊いてみる。


  「ルディアスだ」


  そう声がしたから、驚いた。


 急いで起き上がる。

 

  「どうぞ」

 

  そう言ってはみたがどうしてルーが? こんな時間に?

  疑問が尽きないながら、ベッド横に立ってルーを迎えた。


「この様な時間に女性の部屋を訪ねるのは常識外れだが、どうやら震えている様なのでな。思わず来てしまった。すまぬ」


  申し訳なさそうな表情をしているのが何となく分かる。


「心配して来てくれたの?」


「ああ、見ようと思った訳では無いのだが……エルザ、大丈夫か?」


  ばつが悪そうにルーが言う。

  嬉しかった。

 無性に嬉しかったのだ。

 

  「眠れぬのならば、眠るまで側にいよう」

 

  そう言って、ベッドサイドに椅子を持ってきて座る。

 

  「ありがとう」

 

  素直に好意に甘えて、ベッドに横になった。

 




 側に居てくれるだけで嬉しいのだが、ルーが起きているのが気になった。

 ルーだってまだ子供なのだから、寝た方が良い。

 だから


「ベッドで一緒に寝たら?」


 そう言ったのだが、


「そういう訳にはいかぬ。女性と同じベッドは夫でなければ寝てはいけないという建前があるのだ」


 渋い顔で聞かない。

 ならばと


「一緒に寝て欲しい。お願い」


  本当は総合年齢は年上なのに我が儘を言ってみた。

 前世の従兄弟にもこの我が儘は言ったっけ。



 我が儘を言うのは勇気がいる。

 他人に迷惑を掛けるのは苦手だし、好きじゃない。



 だけど今回は、昔みたいにとても独りでは頑張れそうに無い。

 大体自分一人が寝ているとか落ち着かないし、悪い気がする。

 なので、思い切って言ってみたのだが……



 困惑顔のルーは、しばし黙考し、大きなため息を吐いた後、


  「……分かった」


  しぶしぶそう言って立ち上がった。



  ベッドはとても広いから二人で寝ても全然問題はない。

 

 

  恐る恐るベッドに入って来たルーは、諦めたように私の隣で横になった。

  吃驚しているルーには構わず、手を握り、抱き付く。


「おやすみなさい」


  驚愕しているルーを横目にそう言って目を閉じた。

 あ、やっぱりルーっていい匂いがする。

 触れても嫌な感じがしないし、心が落ち着いてポカポカと温かくなるから、抱き付いても安心だ。

 


 ルーの体温を感じたら安心して、あっという間に眠りに落ちていった。


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