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聖女の条件  作者: 杜若 白花
第五章 帝立アリアルト魔法高等教育学校 2
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 底が抜ける様に、ストンとまた光の膜から堕ちて行く。



 相変わらず走馬灯の様だと思いながら、光の膜を幾度も通り過ぎ、目的地らしい光の膜の中に墜ちて行った。



 目の前には、エドとフェル。

 数日前の寮の食堂での会話だろうと当たりを付ける。



 あの時は、リーナとユーディが教官の一人に呼び出されていたから、エドが寮の前まで迎えに来てくれたのだったと思い出す。

 ……寮の出口までは侍女達が一緒だったのもついでに思い出す。



 私に対する対応は病院から戻った後、更に過保護且つ厳重になってしまったのだ。

 大変申し訳ないのだが、それが当然のこととされているのもあり、どうにか折り合いをつけている。




「何だか貴族で魔力が低かったり、素行に問題ある連中の旗頭みたいな感じらしいよ、あの皇女擬き」


 フリードとギルも教官の一人と話があるとかで居ない上、アンドとシュー達まで席を外す事になり、食事はこの三人だけになったからだろう。

 エドが忌々しそうにこの頃の彼女の状況を言葉にした。


「あの、皇女擬き、というのは、そのですね、不味いのでは……失礼だし、相手に悪い、と思います」


 エドが皇女擬きと言ったのなら、誰かは瞬時に分かってしまう。

 彼が皇族に対して不敬な真似をするはずが無いから、その範囲外であり該当するのは第三皇子の娘であるエリザベートだけだ。



 ただ、私には心配をかけまいとして情報規制されている事も多くなっていると自覚はしていたから、エドが態々、フリードがいないタイミングで私に告げるという事は何か深い意味があるのだろう。


「あの、旗頭って?」


 言葉の意味は分かるけれど、彼女に関わる事がいかに危険か判別できないというのは、貴族の子女としては大いに失格だと思うのだが……

 ――――ああ、だから問題のある貴族の子供達、なのだろう。


「擬きで十分だと思うけど。うん、ルディアス殿下もフリードリヒ殿下も、基本的に差別しないだろ? どんなに貴族や士爵として落ちこぼれだろうと、ね。それで、普段周りが冷たいのに優しくされて、まあ、お二人を特別視? みたいな感じな連中がさ、容易に近付きやすい皇女擬きの周りに集合、って感じ……――――今はフリードリヒ殿下だけだけど」


 一瞬表情を暗いものに変えたエドを見て、話を逸らす様にフェルが言葉を紡ぐ。


「エルザも近付きやすいと思いますが」


 エドはお道化た表情に瞬時に変えて、フェルへと返答する。


「あ、エルザはほら、お二人の花嫁候補だから、嫉妬の対象。だってさ、四大公爵家筆頭の令嬢にして、魔力無し。しかも幻獣が皇族しか選ばない最上位のドラゴンでこれも特別と隙が無い。その上更にこの容姿。加えて皇族にしか出ないって言われてる髪の色と瞳の色だよ。虐げられてると思い込んでるお嬢様方に、敬遠、という名の妬み嫉みされる事間違いなし」


 さも当然と言う風なエドに、私が目を白黒させていると、


「エルザは皇族の血が濃い筆頭大公爵家の長女ですしおかしくは無いのでは? それに魔力無しは、寿命の事や生活面含め大変だと思いますが」


 フェルが不思議そうに首を傾げながら言うのだが、エドは侮蔑も明らかに


「そういう諸々含めデメリットは見えない訳だ。自分達が劣っている所だけ、抽出、共有、と。流石は貴族落第の方々だと感心するね」



 ああ、そうだ、この話の後、エドが説明してくれた事を思い出すと胸が刺された様に痛かったのを思い出す。



 ルーもフリードも、一人で学校内から出るのが苦手だったらしいのだ。

 エドに二人が疲れたようにもらしたそうなのだが、何気なく、それこそ何気なく見るとはなしに視線をやっただけで、多数の女性に黄色い悲鳴をキャーキャー上げて騒がれるから、らしい。



 それに校外だからこそ、二人共容姿が目立たない様に魔法で調整されているのにも関わらず、なのだ。

 ――――だからこそ、失神したり精神に異常をきたす人がいないのだろうと、エドが尤もな調子で言うものだから、容姿があまりにも良すぎるというのも立派な凶器なのだと胸に刻む。



 学校内の場合、ルーもフリードも皇族だと、それも皇位継承候補なのだと知られているけれど、学校外だとそうではないのだ。



 皇族や貴族、それから士爵の画像や映像は規制が厳しくて、勝手に撮影しただけでもかなり重い罰則がある。

 それなのに流通までさせたら、それはそれは大変な事になってしまうのだ。



 常に監視していて、見つかれば調べて相手を必ず特定するという。

 前世で言うところのパソコン的な物やタブレット、スマホを始め、持ち物は総ざらいされてしまうのだとか。



 だからだろう、帝国人は知り合い以外は勝手に画像、映像は撮らない。

 それに加えて未成年の皇族の画像映像は公式の物でも出回っていないのだから、二人が皇族だと知らないのだろう。



 とは言うものの、ルーはどうみても真紅の瞳だから、皇族だと分かりそうなものだが……

 其れでだと思うけれど、ルーは遠巻きにされるだけだったが、フリードは声をかけられたりまでするみたいだ。



 一応、学生の内は皇族ではあっても一人の学生、的な建前はあるらしいからだろう、他の年代よりは気安い印象らしいけれど、皇族や貴族は絶対という認識であり、士爵も歴然と上の人というのが平民の人達には常識で、敷居はおそろしく高いらしい。



 ただ、思春期ゆえか年齢的な無鉄砲さと傍若無人さで、気安く話しかける人がかなりの数、学園都市にはいるという。

 そういう人達の大半は大人になってから多大な黒歴史になるらしい。



 常識的に考えたら、不況をかった場合それはそれは大変な事になるもの……



 法律的にも皇族、貴族の権利は恐ろしく強い。

 次いで士爵に騎士。



 皇族、貴族、子爵、騎士に危害を加えたら、それはとてもとても重い罰則があるのだ。

 平民が訴えられたら、絶対に勝てない。



 だからだろうけれど、基本的に皇族、貴族、士爵、騎士は自分を厳しく律する事が求められる。

 いざとなったら権利は主張するが、普段からむやみやたらに使っていたら単に平民を虐げるだけだから。



 それでも平民には特に貴族はどうしようもなく怖いけれど敬う存在であるらしい。

 皇族などというモノは、決して手の届かない雲の上、という感覚だという。



 ……――――酷い我儘なのはわかっているけれど、それでもルディアスの口から直接色々聞きたかったという思いは、どうしてか消えてはくれないのだ……

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