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聖女の条件  作者: 杜若 白花
第四章 帝立アリアルト魔法学校
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『エルザ? どうしたんだい? 顔色が悪いし震えているじゃないか。わたしが話過ぎて疲れてしまったのかい? ごめんよ……エルザがおもわしくないのは知っていたのに……』


 申し訳なさそうにしながら優しく心配してくれるアギロに、抑えきれていなかった自分に忸怩たるものを感じつつ、彼には申し訳なくて慌てて声をかける。


「大丈夫よ。ビックリする話だったから一生懸命覚えなきゃって思って緊張してしまっただけ……あの、アギロも異物の完全消去とか、世界の外に出したりだとかした事はあるの……?」


 恐る恐る後半訊いた私にホッとしつつ優しく微笑むアギロ。


『そうかい? 大丈夫なら良いのだけれど……エルザは無茶をするから、エルザの大丈夫はあまり当てには出来ないのだけれどね。それでも話した方が良いと思うから話すけれど……そうだね、無い訳じゃないよ。

 ただわたしはかなり上位で強いからあまり仕事は回ってこないかな。それでも長く生きているから経験は若い子より豊富だよ。だいたいにおいて、本来わたし達がしなくてはならない事も一緒にやってくれる存在が居るから、ここ数千年はわたしは楽になったと思っているよ』


 アギロに心配をかけているのは申し訳ないけれど、それでも話してくれる事に感謝しながら、やっぱり私の大丈夫には信頼は無いらしいと苦笑が漏れる。

 数千年だとか言われると途方もなくて想像もできないけれど、気になる事は訊いてみようと何とか言葉を絞り出す。


「あの、本来、幻獣達がしなくてはならない事も一緒にって、どういう事? それに数千年って……?」


 アギロは優しく肯くと私を温かく見詰める。


『魔獣の駆除とかかな。魔獣は世界の澱だから、あれの駆除もわたし達の仕事の内。世界だって生きているんだからそれぞれ個体差みたいなのがあるから色々だけれど、それでもどの世界も排泄物みたいなものは出るんだよ。それが凝ってこの世界では魔獣になったりする。だから殺したり浄化して世界に還元すると、綺麗になって世界にとってとても良い循環が起きるんだ。だから澱は殺したり浄化して綺麗にするのが鉄則。放置したら溜まって世界が弱るか最悪壊れてしまう。ただ、普通の存在では魔獣の存在強度より下だから攻撃が通らないんだ。ほら、下の存在の攻撃は上の存在に効かないって習ったろう?あれは存在強度が違うから、攻撃が通らないって事なんだよ。これはどこでも同じ。”世界”が違っても、”堕ちたモノ”や”狭間のモノ”、そして”創造主” ”造物主”でもね。だからわたし達幻獣の仕事の一つなんだけど。幻獣は神々には劣るけれどそれでも”堕ちたモノ”や”狭間のモノ”の対策も兼ねて創られているから存在強度はとても高いんだよ。それから魔獣や令獣を倒せるアンドラング帝国の人間やアールヴヘイム王国の人間も、他の大陸の人間より存在強度が高いっていう事だね。次に高いのがレムリア王国の人間。それで最後が名無しの大陸。アンドラング帝国の人達でも皇族が一番存在強度が平均して高いよ。次が四大公爵家、高位貴族と続いていく感じかな。アールヴヘイム王国やレムリア王国も一緒。名無しの方は知らないかな。それでね、アンドラング帝国の人達が協力してくれるようになったのが数千年前からだからね。それで数千年。わたしは来た時から知っているからなんだか感慨深いね。魔獣の駆除だけでも一緒にやってくれるのは本当に助かるんだ。わたし達が関わらなくてもきちんと処理してくれるのも本当にありがたいよ。この星は特に澱が溜まる所だからね。ここさえ綺麗にしていてくれたなら、世界の他の場所はとても楽なんだよ。世界中を隅から隅まで綺麗にしないと世界は大変な事になってしまうからね。他の星系や銀河まで出張とかするのだけど、その回数もこの星を重点的にすると減るんだよ。それでわたし達幻獣がこの星を住処にしているんだけれど。だからわたし達が関われない時にも綺麗にしてくれて、本当にアンドラング帝国の人達には感謝しかないんだ』


 一気に流し込まれた情報量に目を白黒させつつなんとか咀嚼し頭に叩き込む。

 どうやらアギロは私の体調を慮っているらしいけれど、それでも話す事が沢山あるのだろう。

 日頃とても感謝しているらしいのは表情と口調で察せられる。



 あれ? アギロって来た時から知っているって言った……?


「あのね、アギロ。アギロはアンドラング帝国に後々なる人達が最初にこの大陸に来た時から生きているの……?」


 どぎまぎしながら訊いてみると、アギロは楽し気な表情になりながら


『そうだよ。わたしはね、幻獣の王に次いで長生きなんだ。だからあの時、二番目に強かったシュヴァルツブルク家の祖の人間を選んだんだよ。若い幻獣や力の無い幻獣は無理だけれど、わたしなら他の世界にも行けるし、他の世界の存在を連れても来れるんだよ。勿論そんな事はしないけれどね。よそ様に迷惑を掛ける訳にはいかないから』


「……迷惑……」


 思わず呟いた私の言葉に肯くアギロ。


『そう、迷惑だよ。迷惑で不愉快な事だ。考えてごらん、他所の家に勝手に入ったらその家の住人にどんな対応を取られても仕方が無いだろう? 当たり前な事だけれど無断侵入は嫌がられるのはどこでも誰でも一緒。それにその家のペットとか家具や観葉植物等ある物を勝手に持ってきちゃダメだろう。ペットがわたしと一緒に行きたいと言っても、家の住人に断りなく持っていったらやっぱり犯罪でダメな事だ。だからそんな事はわたしはしない』


 成程で尤もで納得できるのだけれど、けれど……

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