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聖女の条件  作者: 杜若 白花
第四章 帝立アリアルト魔法学校
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二人の告白を聞いていて、これは名門貴族にとってはかなりの痛手であると分かってしまい、返す言葉を失ってしまう。


「それは大変ですわね……」


「ええ、我が家だったらと思いますと、心胆が冷えますわ……」


リーナと言えたのはこれ位だ。

これ以上は流石に申し訳ないと思う。

下手に何か言ったら傷口に塩を塗り込む事にしかならないのだから。


「我が家は三代ほど一族に血をいれませんでしたから、ある程度は納得ですの。わたくしか兄弟は一族の人間との婚姻をと一族の皆思っておりましたから。それがこの事態でしょう? わたくしの結婚相手は一族でも一番血が濃く、能力もある方という決定がなされたのです。弟達も一族の血が濃い方々との婚姻は決定事項ですわ。とはいえ、魔力は良かったのです。だと言いますのに一族の特徴が一つならばまだ良かったのですが、二つも外れるなど……」


ベアトリス様は言葉を続けられない程傷心していらっしゃった。

無理もないと思う。

一族の特徴が二つも外れるのは、相当の衝撃というか、異常事態と認識されるのが貴族や士爵家だ。

ベアトリス様も、きっと御兄弟の事を思っても御心痛なのだろうとも思う。

公爵家程の家柄だ。

特徴を二つも外した子達の立場が相当悪いのは想像できる。

ベアトリス様が御兄弟思いでよく話題に出していたのも知っているから、私も心が痛いと思ってしまう。


「わたくしの場合も三代一族の血を入れておりませんでしたけれど、魔力の容量以外は全て一族のモノではないという事態に陥りまして……両親も傷心しておりますの……周りとしましては、わたくしが一族の特徴がしっかり出たのですから、もう一人か二人子供を作って様子を見てみてはとの意見も出ておりますけれど、また特徴の無い子が生まれましたら事だという意見も根強いのですわ……元々わたくしは一族の方以外とも結婚してもという話もあったのですけれど、是が非でもわたくしには一族で最も血が濃く優秀な方をという事になりましたの。それは良いのです。良いのですけれど……」


アーデルハイト様も重々しく口を閉ざされた。

全ての特徴が出なかったという弟さんは心配でしかない。

きっと一族の風当りだってきついだろう……

アーデルハイト様の心痛だって相当なものだと思う。

ベアトリス様もたった一人の弟を大切になさっていらっしゃるのは、お話しされているから知っているのだ。

そうだとしても、一族の特徴が全くでなかった姉弟がいるというだけでも、その姉弟にも色々と降りかかってきてしまう。

結婚相手の事や自分の子供について等、色々背負わなくてはならないのだから、必要以上の不可がかかってしまうアーデルハイト様の事を思うと……


「わたくしの家も三代ほど一族の血が入っておりませんわ。幸いわたくしも弟も大丈夫でしたから、御心痛は想像するしかありませんが、大変ですわね……一族の結婚相手は、もうお決まりなのですか?」


リーナが心配そうに訊ねていたが、私も気になる。

一族以外の方と結婚する場合で、貴族が士爵や平民と結婚をと考える場合、その士爵や平民が一族の特徴の幻獣や魔法の型を持っているかどうかは重要視されるのだ。

それから外れるとまず結婚とはならなかったりする。

容姿については仕方がないという事で不問にされるのが救いと言えば救いだが、いくら魔力が強くても、一族の特徴と合致しない相手では結婚相手にならないのが貴族や士爵なのだ。

これが他の貴族であればそう問題にはならないのだが、やはり自分よりも身分が低い場合は一族の特徴と外れる相手は嫌厭されるのが常だという。


「ええ。結婚相手は幸いもう決まっておりますの。婚約も済ませましたわ。高位貴族に勝るとも劣らない十分な魔力と、一族の特徴を全てそろえた方で、幸いわたくしと年も二つ違いですし、寡黙ですけれど良い方なのですわ。ただ……」


そこで言葉を切ってしまうベアトリス様。


「わたくしも結婚相手は決まっておりますし、婚約も早々に済ませましたわ。魔力も公爵家の人間として何ら問題の無いものですし、一族の特徴も全てそろった方なのですわ。わたくしとも三つ違いの、真面目な良い方なのですけれど……」


アーデルハイト様も歯切れが悪い。

どうなさったのだろう……?


「何か問題がありますの? 性格も問題は無い方なのでしょう……?」


私が意を決して訊ねてみると、ベアトリス様とアーデルハイト様は顔を見合わせてから、溜め息を吐いた。


「幸運な事に、婚約者は一族内の貴族から選ぶことが出来ましたの。ですけれど、その、男爵家の方で、わたくしは気にしてはいないのですけれど、あちらの方が色々と気をつかっておられるらしくて……」


しょんぼりとベアトリス様は仰る。


「はい。わたくしも幸いな事に一族内の貴族から婚約者を選ぶことが出来ましたのよ。そうなのですけれど、あの、子爵家の方なのですわ。真面目な方なのです。それで、わたくしの方は気にしていないのですけれど、ギュンター様、ああ、婚約者の方ですけれど、その方に色々なさる方がいらっしゃるらしくて、わたくし、どうしたら良いかと……」


肩を落とされるアーデルハイト様。



リーナと二人顔を見合わせ、重い相談にどう答えたものかと思案顔になってしまった。

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