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聖女の条件  作者: 杜若 白花
第四章 帝立アリアルト魔法学校
189/348

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 お弁当箱の専門店に到着し、色々見て回っている。

 ルーのお弁当箱は、外側が黒漆で、中が赤い漆の弁当箱にしようかと悩み中。


「ねえ、フリード。男の子って沢山食べる印象なのだけれど、ルーも沢山食べるのかな……?」


 私の問いに、フリードは思案顔。


「そうだな……確かに食べるかもしれぬ。この大きさであれば、大丈夫ではないか?」


 フリードが手にしたのは、色合いは私が良いと思っていた、黒と赤の漆塗りの物で、二段構成のちょっと大きめのお弁当箱。


「ああ、下にご飯とかパンとか詰めたら良いかな……これって、値は張るけれど、空間収納になっているものだよね。普通の物と違って、見た目と同じだけの容量で、詰めても普通の空間収納みたいに消えないで、普通のお弁当箱みたいに見えるけれど、空間収納ではあるから、詰めたての状態のまま保存できるっていうお弁当箱だね。うん、色合いもルーに合うし、これにしよう」


 私が肯いていたら、フリードも肯く。


「そうだな。ルディアスに良さそうだと思う。ならば、ルディアスの分は、これで良いか」


 私は、一緒に並べてある、同じシリーズのスープジャーも手に取る。


「これも一緒にしようと思うの。あのね、私、一汁三菜に、お漬物かピクルス、もしくは副菜にするかはケースバイケースのサラダっていうのが、食事として良いと思っていて、だから、スープジャーは必須かなと」


 フリードは心配そうに


「確かに何か汁物があれば嬉しいとは思う。だが、大変ではないか?」


「そう? 味噌汁の場合だと、旨味と栄養面から、煮干しと昆布、入れる場合は入れるかつお節を、細かく砕いて粉状にして、それを水から煮出したらそれで出汁は完成するし、他の鶏ガラとか野菜でとる出汁は、前もって作り置きしておけば良いし、ポタージュ類なら、野菜は煮るだけに煮ちゃって作り置きして、詰める時に牛乳か豆乳入れて、塩コショウとかで味を整えれば良いだけだから、それ程難しくもないし……」


 フリードは不思議そうに


「そういうものか?」


 私は力強く肯く。


「そういうものよ。大体、手間暇かかると言う点なら、デミグラスとか、ダブルコンソメとかの方がかかるしね。あれは何日にも渡る作業だから。それでも自家製は、自分好みに出来るし、ダブルコンソメとか病気の時に直接飲んでも、ベースに使っても、栄養たっぷりだから元気になる気がするしで、とても好きね。作るのは大変でも、それはそれで私は作るのも飲むのも好きよ。それに、パストラミとか、ベーコンみたいな保存食も手作りしようかなと」


 フリードは目を丸くしている。


「エルザはそれ等も手作りするのか? 機会があれば、エルザが作ったデミグラスを使った料理や、ダブルコンソメも飲んでみたいとは思う。ああ、寮に大型の獣も大丈夫な解体場と、大型の燻製室もあったか。 それも楽しみだ」


 フリードの言葉に、嬉しくなる。


「本当? 嬉しいな。素人の趣味みたいなものだから、プロにはとても敵わないけれど、それでも喜んでもらえたら良いなって思う。時間がある時じゃないと難しいから、連休とか、長期休暇中じゃないと難しいかもしれないわ。それでも良い……?」


 私の言葉に、フリードは嬉しそうに微笑む。


「ああ、それで構わない。ありがとう、エルザ。楽しみにしている」


 そう言われると、心がポカポカとする。

 前世から、なるべく全て手作りにするのが趣味だったのだ。

 喜んでもらえるなんて、本当に嬉しい。



 季節になったら、ラッキョウ漬けや梅干しとかも作ろうかな……

 ああ、やっぱり季節のジャム、これは作ろう。

 花の砂糖漬けとかも良いな。花の砂糖漬け食べると甘くて良い香りがして、好きなのだ。

 お茶のお供に最適だとも思う。


「あ、フリードのお弁当箱、どうしようか。良いなって思うの、ある?」


 照れ隠しに、足早に歩きながら、店内を見回す。


「そうだな……」


 フリードは、ルーに選んだもの周辺を見ている。

 その辺りの物は、どれも高級品ではあるが、どれも良さそうな一品ばかりだ。



 フリードも、シンプルな物が好きなのだが、どこかにワンポイントがある物が特に好きだった気がした。

 金蒔絵か螺鈿の、ちょっとした飾りがあったら良さそうだなぁと思い、それ等を重点的に私は見ていて、目に留まった品がある。


「あ、これはどう?」


 手に取ったのは、黒の漆器で、ワンポイントに螺鈿と沈銀の牡丹が描かれていて、シンプルで品がありながら華やかな感じが、フリードにピッタリに思える。


「……ふむ。良いな。これにしよう」


 フリードも気に入ってくれた様で、即決である。


「なら、同じシリーズのスープジャーも追加で。あ、私はお弁当箱、どうしようかな……」


 私までお弁当箱にするのもどうかとは思ったが、レストランでもお弁当を摂っても問題は無かったと思い出す。

 リーナと一緒にいつも昼食は摂っているが、私がお弁当でも良いかもしれない。


「これなどどうだ?」


 フリードが示してくれたのは、特殊な白い漆器に、桜の花弁が蒔絵で描かれた物だった。


「あ、良いかも! 桜、好きだし、白い漆器って面白いね。うん、これにする」


 私も即決である。

 可愛らしいし、蒔絵も素敵だ。

 大きさも、私には手ごろで二段重ね。

 これなら下にご飯類やパンやパスタも入れられるだろう。


「ならば、スープジャーも、だな」


 フリードが、同シリーズのスープジャーも手に取ってくれていた。


「あ、同じシリーズの箸も揃えた方が良いかな。それに、ちょっと小さめの容器も欲しいかな。それもルーの分と、フリードの分、そして私の分、っと」


 慌てて其々の箸と小さめの容器を持ってきて、この店での買い物は終了である。


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