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聖女の条件  作者: 杜若 白花
第四章 帝立アリアルト魔法学校
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 本日は入学式があった。

 これでようやく魔法学校に入学出来たわけである。



 帝立アリアルト魔法高等教育学校。

 基本的に魔法学校とかアリアルト魔法学校とか呼ばれている。



 まあ、正式名称、長いから。



 ここから、本当にゲームの本編が開始される訳だが、リーナが言うには、年齢がちょっと合わない、らしい。



 ゲーム本編の開始の時点では、いわゆる前世での高校入学の年齢だったから、満十四歳、という、この世界の魔法学校入学年齢に、彼女的には引っかかるらしい。



 つまり、この世界の学校に入学した時点から、ゲーム補正、とでもいうべきものが始まるのか、それとも年齢的に同じになったら補正が始まるのか、はたまたゲームと同じ補正的なモノは無いのか。

 それが分からない、との事だ。



 確かに、これは不安でもある。



 リーナが言うには、入学式で何人かの攻略対象とヒロインが出会うイベントがあるらしいのだが、彼女は既にそのイベントの詳しい事は何一つ覚えていないらしく、出会いイベントがあった、しか分からないとの事。

 イベントがあったのが、どの攻略対象かさえも分からないらしい。



 その事でしきりに謝られたのだが、私は仕方がないと思うのだ。

 だって何年も前にプレイしたゲームとか、普通に詳しい所なんて覚えていないだろう。

 まして、全く違う環境に放り込まれて、覚えるのに必死で、前世の事なんて考えている余裕なかったよ、私も。



 勿論、最初の内とか色々思い出して泣いたりもした。

 それでもこの世界で生きていかなくちゃいけないのだから、前世()ばかりみてはいられないのである。



 それでも私は暗闇が苦手な事とか、勇の事とか、前世の両親の事とか、色々考えたりは未だにするけれど。

 やっぱり、前世で大切だったモノは、過去の事とはいえ、簡単に忘れられるモノではない。



 だが、細かい事とかは月日が経てば割と曖昧になるのは否めない。

 リーナにしてみたら、十年以上前にプレイしたゲームを思い出してメモしたらしいので、それだけでも凄いと思うのだ。

 いくら好きだと言っても、記憶というのは割と曖昧になっていくものだと思うし。



 出会いイベントがあると言う事が分かっているのなら、エリザベートを見張れば良いとは思ったのだが、現状無理なのである。



 入学式の後には新入生歓迎の為の舞踏会が開かれるのだが、それは皇族、貴族、士爵、騎士の社交界デビューも兼ねているため、在校生を含め、速攻で捕獲、じゃなかった家からの侍女達に拉致、だな、うん。

 されて寮の部屋で準備なのである。



 寮に入るのも貴族や士爵は当日という仕様だ。

 準備や片付けは執事や侍女達の仕事で、まず寮に付いたら寮の規則や説明を受けて、部屋の説明をしてもらい、一息付いたら舞踏会の準備なのである。



 余談だが、帝立の魔法学校で舞踏会があるから、他の学校も真似て、高等教育学校の入学式の後には舞踏会が開催されるらしい。

 やっぱり社交界デビュー的なモノなのだとか。

 だから、入学式と卒業式の前には、着付けやセットやメイクもしてくれる貸衣装店は人気だとの事だ。

 卒業式にも舞踏会が開催されるらしく、その前後にドレス専門店やら美容院やらも盛況との話を聞いた。



 貴族や士爵家でないのなら、裕福でなければ侍女がいないのだから、貸衣装店や美容室とかが人気になるのも納得できる。



 一息の時に軽い昼食を摂る訳だが、食べたら風呂に入れられ、磨き上げられるので、ちょっとどころではなく疲れる。

 というか、現在進行形で息も絶え絶えなのだが……



 侍女達は、私をピカピカに磨き上げるべく血道を上げる事を以前からしているので、慣れてはいる。

 いるが、前世でもエステ関係とか美容関連とか興味も関心もなかったから、ちょっと窮屈ではある。



 一歳年上で、魔法学校の在校生でもあるカーラに、エリザベートの見張りを頼もうかとも思って、相談したのだが、


「エリザベート嬢は、恩赦されたとはいえ元罪人なのですから、平民ならともかく貴族であるエルザ様は関わらない方が良いかと……。何があるか分かりませんし……」


 そう言われて、確かに、と納得した。



 勿論、疎外されるエリザベートは可哀想だと思う。

 だから何かしたい、と感情面は言うのだが、私の場合、立場がそれを許さない。



 この国では、犯罪者は極々少数である。

 だからこそ、罪人に対しての罰は前世とは比較にならない程重い。



 特に皇族、貴族、士爵、次いで騎士に対して犯した罪は、とても重罪になる。



 それ故、皇族も貴族も士爵も勿論騎士も、己を厳しく律する事が求められるのだ。



 ただ横暴に振る舞うのなら、それはただの恐怖の対象にしか成り得ない。

 そう成らない為に、自分に厳しくなければ成らないのだが、それだけではなく、皇族や貴族、士爵に対してと一応騎士に危害を加える等の、何らかの罪を犯した場合、その犯罪者には今後一切皇族や貴族、士爵、一応騎士は関わってはいけないし、罪を犯した方も関わる事を許されないのである。

 大抵は極刑になるし、まず放免にはならないから、本来は出会う事も無いので気にしなくても良いらしいのだが、エリザベートは何故か生きている上に恩赦された、というのがとても異常な事、らしい。



 そんな危険物には関わってはいけない、というのは、分かる。



 後々、本当に何が起こるか分からない、というのは、カーラに相談した後お父様からもそれとなく言われているのだ。

 警戒して当然である。



 リーナとも相談していたのだが、現状関わってはいけない彼女よりも、攻略対象者の方を見張っていたら良いのでは、との意見で一致している。

 だが、見張るにしても人数が足りないのである。



 二人で話し合った結果、エリザベートが誰狙いか分かってから動くのはどうか、という事になったので、それとなく様子を窺いつつ、観察するが、周囲には気付かれないように、との事で話はまとまった。



 舞踏会で何か分かるかもしれないのだが、準備している今現在で、既に私のライフポイントはかなり削られている為、エリザベート対策が何か取れるか、甚だ疑問である……


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