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聖女の条件  作者: 杜若 白花
第三章 戸惑い
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31

 

 フリードとお休みと通信を終わり、どうやら突然放って置かれて膨れているらしいルチルを宥め、ベッドに横になる。

 なったのだが、いまいち眠りが遠い感じだ。



 今日知った色々な事が、昼寝した時はそうでもなかったのに、頭をグルグルと掻き乱し、眠れない。



 フリードやフェルとは話が出来た。

 他の攻略対象者とも話をしたい様な、怖い様な、複雑な気分だ。



 それでも、彼等と何か話したい、そう思うから、明日、連絡を取ろう。



 決めたら、眠気が襲ってきて、そのまま眠りについた。





 翌日の朝からルディがやってきた。

 何だか機嫌が悪い感じだ。


「どうしたの、ルー? 機嫌が悪いみたいだけれど」


 私が訊いたらルーは苦笑しつつ答えてくれた。


「そなたが、エリザベートに関わろうとしている様なのでな」


 ありゃ、早速ばれている。


「何故そんなに嫌がるの?」


「エリザベートは危険だ。視えぬからではない。不思議と本能が拒絶する。そなたも違和感は感じていたはずだが?」


 ルディは冷たさ全開で私に言うのだ。


「うん、それはそうだけれど、でも、フリードだって気にしてるし、私も気になる」


 相変わらず上手く言えないぁ。


「フリードリヒは、甘いからな。数多の悪性を見ながら人の善性を信じている。故にエリザベートにも寛容な愚か者なのだ」


 吐き捨てるようにルーは言うのだが、ちょっと反論がある。


「フリードは愚か者じゃないよ。優しくて真面目なだけだと思う」


 私が一生懸命ルーに言ったら


「言い方が悪かった。私には到底理解が出来ぬが、尊敬はしている。ただ、信じるが故に、フリードリヒは愚かともいえる」


「信じるから、愚かなの?」


 私が訊いたら、ルーは苦笑した。


「さてな。私の感想故、気にする必要はない。ただ、私とフリードリヒは違うという事だ」


 どうも私には難しい。


「――――それはそうと、エルザ、記憶持ちの転生者と話をしたようだな」


 あ、これも知られてしまったか。


「やっぱり知ってたの? 彼女が私と同じだって」


 ルーは呆れた様に私を見る。


「当然であろう。チューリンゲン侯爵家のカタリーナだったか。記憶があり、転生者という点では似ているか。エルザの様に特に良く見える訳ではないがな」


「え? そうなの? どうしてだろう」


 ルーは眉根を寄せた。


「知らぬ。エルザとは違う故、私もフリードリヒも、彼女を特に気にした事は無いが」


「ああ、フリードも知ってたんだ。って、私と違うの? どこが?」


 ルーは首を傾げる私に溜め息を吐き


「そういう意味ではない」


 ますます首を傾げた私を見やり、ルーは少し難しい顔になった。


「そなた、良くあの者の話を信じたな。私やフリードリヒはある程度真実だと分かっていたが、そなたには荒唐無稽であろうに」


「ああ、それはね、同じ日本語を話していたし、私に対してその嘘を言うメリットが何もないと思ったからね。私の立場を考えれば、どうにでも彼女を出来る訳だし」


 というか、嘘を言っていないと思ったから、素直に信じただけなんだけど。


「そなたは……」


 厳しい表情になったルー。

 どうやら早速内面がばれたらしい。



 うん、はなからルーにごまかしとか効かなかったよね。


「えっと、その、あのね。私、前世でもだけど、嘘を言っているかどうかとか、信用出来る人かどうかだとかは、何となく分かるの。今まで外れた事ないからね」


 えっへんと、胸を張る。


「……どうやらその様だな。特殊な才であろうよ。ただ、過信は禁物と頭に刻め。そなたは抜けていると自覚せよ」


 冷徹にずばっと言うルーに落ち込む。


「過信しないようにするけれど、でも、分かるものは分かるのよ。不思議とこう、確信できるというか……。抜けているのは分かっているけれど、自分ではどうしようもないというか、難しいというか……」


 私が自分なりに思った事を言ったら、ルーは優しい顔になった。


「知っている。故にそなたを守るのは私だと思っている。……私にも相談せよ。二人より三人であろうよ」


「フリードは良いの? 同じ様に知っているのなら、一緒に考えたら良いと思うよ」


 私の言葉にルーが渋い顔になった。


「エリザベートの件がある。フリードリヒはアレをどうも過大評価し過ぎるきらいがある。簡単に言えば、フリードリヒは身内に特に甘い。故にエリザベートや第三皇子であるゲオルグ殿下が関わる限り、フリードリヒは当てにはならぬ公算が高い」


「なんだかフリードが仲間外れみたいで、納得がいかない」


 私が抗議したら、ルーは苦笑した。


「ならば、私やフリードリヒは何か問題が発生した時のみ相談せよ。それならば問題あるまい」


「つまり、いつもはリーナと一緒に考えて、それでも解決できなさそうなら、ルーとフリードに相談するって事にしたら良いのね?」


 私なりに出て来た答えはこれだった。


「ああ、それで構わぬ。フリードリヒには私から話しておく」


 ルーが表情を和ませながら言った言葉に肯いた。


「ありがとう、ルー。リーナには私から言っておくね」


 すぐさまリーナに連絡を取ろうとした私を見て、ルーは苦笑しつつ溜め息を吐いていた。



 あ、そうだ! ルーに訊いておこう。


「ねえ、ルー、彼女と私、死んだ時期が十年位違うのに、私と今同い年なのは、何故かな?」


 ルーは思案気な顔になったが、教えてくれた。


「それか。世界によっては時間の流れが違うなど良くあるらしいとカイザーが言っていたな。後は世界に介入出来るモノならば、その世界の強度や管理次第で、時間軸への干渉出来る範囲が違うとも」


「そうなんだ。なら、死亡時期が十年位離れていても、今同い年でもおかしくはないのかな」


 私が納得したら、ルーは温かい目で見ているのを感じた。


「どうしたの?」


「いや、ただ、エルザと年が近いのは有り難いと思っただけだ」


 ああ、それは分かるかもしれない。


「うん、私も皆と年が近くて嬉しいよ。やっぱり年齢が離れていると、ちょっと距離を感じるもの」


「そういう事ではないのだがな。まあ、良い」


 ルーは苦笑しつつまた溜め息を吐いた。



「ねえ、ルー、私が赤ちゃんの幻獣と誓約を交わした事、怒ってる?」


 おずおずと、ずっと気にしている事を訊いてみた。


「その事は、現状を鑑みるに、受け入れるしか、あるまいな」


  途切れ途切れ、噛み締める様に、ルーは言う。


「ありがとう、ルー」


「エルザに何かある事が、堪えられぬ。……だがそれを理由にそなたを傷つけたのでは、本末転倒であるのは、解っている。私は、そなたの事になると、冷静ではいられぬのだ。我ながら、呆れてはいるのだがな……」


 深い苦悩を滲ませながらそう言うルーに、私が出来る事ってなんだろう。


「ルー、心配してくれて、ありがとう。成るべく何もない様に、頑張るよ」


 うん、皆が無事で在る様に、これから頑張るのだ。



 しかし、あまりルーやフリードに迷惑をかけたくはないのだが、無理というか、彼等から関わってきそうな気配が濃厚だ。

 有り難いが、申し訳なく思ってしまう。

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