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第7話  

 ダリルはガナンとシャロンと別れてから魔石の換金をしに受付に向かった。


「すいません、魔石の換金したいのですが…」


「分かりました。では、換金したい魔石をこの箱の中に入れてください」


 ダリルは言われた通りに自分の持っている魔石を差し出された箱の中に入れた。魔石を箱の中に入れたことを確認した職員は、何やら手元にあるものを操作し始めた。職員が手元のものを操作するのと連動して箱の中に入れた魔石が箱の中に吸い込まれていった。


「えっと…これはどういう仕組みなのか聞いてもいいですか?」


 そのあまりにも不可解な消え方にさすがに気になって好奇心を抑えられなかったダリルはつい質問してしまった。


「ああ、これですか…。実は私もよく分かっていないんですよね。どうやらギルド所有の倉庫の中に移動させているらしいんですけど、その倉庫の場所も分かってないし、実際に見たことがあるわけでもないのでよく分からないんです。」


「そう…ですか。」


 職員の答えにやはり納得のできない思いを抱きながら、この職員にあたっても何の意味もないと自らに言い聞かせ、それ以上の追及をしないことにする。しかし、ダリルは先ほどの魔石が消えるときに箱の近くで不自然な魔力の揺らぎをとらえていた。もしかしたら自分の新たな魔法のインスピレーションになるかもしてないと、次来るときはもっと注意して見てみようと考えているあたり言い聞かせられているのかどうかは微妙なところだが。


(それにしてもギルドには製作方法の分からない物が多すぎないか?)


 あまりにも現代の技術では再現できない物をギルドが多数所持していることに違和感を覚えたが、だから何だという考えに行き着いたため、考えないことにした。こちらに害があるわけでもないし、どちらかといえば利益となっているために文句を言う必要を感じなかったためだ。


「あ、合計が出ました。ゴブリンの魔石が3つ、ケイブバットの魔石が8つで銅貨15枚です。」


 ゴブリンを3匹、ケイブバットを8匹倒しても、ダリルが泊まっている宿屋の一泊分にもならなかった。これは少々まずいと思いつつもけがをしては元も子もないと思いなおすことにしてダリルは少々少ない報酬を受け取った。

 明日から積極的に魔物を倒しに行くかとダリルが考えていると、どうやら仮登録が終わった様子のガナンとシャロンがこちらに向かって歩いてきたのに気が付いた。


「仮登録できましたか?」


「ああ、できたはできたんだが、まさかシャロンと一緒に潜れないとは思ってなくてな。まあどれは仕方がなかったんだが迷宮に何を持っていけばいいのか分からなくてな。潜ったことのあって話しやすいダリルにちょっとアドバイスをしてもらおうかと思ってな。」


「アドバイスですか?別にかまいませんが参考になるか分かりませんよ?」


 ダリルの戦い方はまず職業というところからして異質だ。おそらくガナンとは戦い方が全く違うため、何のアドバイスにもならないのだは無いかと危惧しての言葉だったが特に問題はないようだった。


「別に大丈夫だ。何から何まで教えてもらおうってわけじゃあねえ。ただやっぱり現場の雰囲気っていうものは大事だというのが経験則だからな。それを知りたいってわけだ。」


「なるほど、確かにそのような考え方もあるな。それにしても『現場の雰囲気を知りたい』って貴族でもやってるのか?」


 この時ダリルは冗談のつもりでこの言葉を放っていた。まずダリル自体が貴族という存在がどのようなものか分かっていない。そして、ほんの少しだけ知っていた知識から考えて貴族が探究者などやることはないだろうという考えがあったからだ。


「え、あ、い、いやっ、その。」


 しかし、ガナンの反応は明らかにおかしかった。

 顔は青ざめており視線はあちこちとさまよっていた。明らかに何かがある反応に逆にダリルは焦っていた。


(ヤバいな…これは地雷を踏んだか?)


 ダリルはこれ以上地雷を踏むのを恐れて、ガナンは自分が挙動不審になってしまったことで自らが貴族であると白状したようなものだということに気が付いてお互いに何も話すことができなくなってしまっていた。そんな二人に救いの手は意外な場所から上がった。


「にぃ、まだ?シャロ早く宿で寝たい。」


 二人が急に無言となって進まなくなったのが不満ですと言わんばかりの様子でこちらをせかしてくるシャロン。

 ダリルは初めて聞いた声に一瞬誰の声かが分からなかったが、ガナンの近くから声が聞こえてきたことからシャロンだと気が付いた。

 なお、声の主に気が付いた後ダリルは「え?この子話せたの?」などと考えている。しかし、それはガナンの方も同じらしく、シャロンが喋ったことを驚いている様子だった。

 ダリルはこれを有耶無耶にするチャンスだと考え、まくしたてるようにして言葉を紡いて行った。


「そ、そうだよな。じゃあとりあえず簡単に迷宮内のことと俺が感じたことを言っていくぞ。まだ2階層までしか言ってないから奥のことまでは分からないが、1階層はゴブリンしか出てこなかったな。あと俺が感じたことは少し迷宮内が暗いことかな。迷宮内は洞窟のような状態になっていて一応光源はあるんだけど、夜目が聞く職業か種族でないときついと思う。」


 このことは職業補正、種族特性と呼ばれるものである。

 職業補正として有名なところを挙げると、弓士などの遠距離から攻撃する職業の人は普通の人よりも多少目が良かったりし、近接攻撃をする職業の人は多少力が強かったりする。

 種族特性の有名なものは、獣人族は全体的に五感が鋭かったり、竜人族が興奮したりすると体中に鱗が現れたりするなどのことが挙げられる。

 また、これらは決してメリットだけがあるわけではない。その職業や種族に応じたデメリットが存在しているのである。しかし、職業によるデメリットはその職業にあった行動をしている限り致命的なものにはなりにくいため、問題ではない。しかし、種族特性のほうはこの致命的な問題になりうる場合が出てくる。獣人族は五感が強すぎることが災いして強烈なにおいを発する場所などに行ってしまった場合、体調不良になることもしばしばあったりし、竜人族の場合、興奮して体中に鱗が現れると普段よりも多くのエネルギーを使うようになってしまう。


「あとは…そうだな、地面がかなりデコボコしていたからそれに足を取られない王に注意したほうがいいと思ったかな。」



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