おはよう世界
ぼやけた視界の片隅で、白と黒のまだら模様が舞っていた。はたはたと、どこか頼りない軌道を描きながら上下に、左右に忙しなく動いている。
「…冷た…い?」
白黒の動きを目で追いながらしばらくして、自分の身体が横たわっている事にやっと気づいた。
呆れる事に、凍えて震えている事も。
小刻みに揺れる右手に弱々しく力を込めて、上げてみる。
最初に感じたのは、重さ。次に感じたのは動きづらさ。
少しずつ慎重に動かして、まずは目頭をこする。
「…みず?」
ぼやけたままの視界をどうにかしようとして、こすればこするほど視界は悪くなる。
どうやら視界のみならず頭の中もぼやけていたようで、自分の顔半分、右側が水中にいる事に気づいたのはもうしばらく後のことだった。
「えっと」
時間をかけて上半身をおこし、今度は両目をこする。まつげに纏わりついた水滴をある程度払いのけて、今度は顔全体を両手で洗うように拭った。
幾分さっぱりした心持ちで顔を上げると、額から水滴が伝い目にかかる。
一瞬雨でも降ってるのかと思ったが、よく考えなくても先程まで右半分は水中にいたのだ。髪が濡れてるだけである。
両手で額から髪を持ち上げ、後頭部までかきあげると思っていたより多くの水がうなじを流れていき、ぶるりと身体が反応した。
「ひあぁっ」
冷たさに情けない声を上げ、身体を押さえるように抱きしめる。
そうでなくても凍えているようだ。なにせいまだに下半身は水中にいる。
まだまだ頭のぼんやりは晴れていなかった。
慌てて立ち上がり、地面の固さを確認しながら周りを見渡す。
「なんだここ」
色で答えると緑である。緑・緑・緑時々黒。
森であった。
見渡す限りの木々。その中で、今立っているここは大きく開けている。その開けた空間には周囲の緑を映すなみなみとした水で溢れていた。
つまりは湖。まごうことなき静かな湖畔の森であるが別にカッコウは鳴いていない。
一切の揺らぎも無い水面は、鏡のように周囲の風景を写していて、やはり深くて暗い緑が視界を優しく包んでいる。
もう一度髪をかきあげて、その勢いのまま空を探してみた。
見つからない。というよりは見えない。
見えてる限りが全て緑だった。異常な光景だ。樹木の先端が見えない。
まるで高層ビルのような高さの木々だ。首を回して後方も見る。
変わらない。そこにはやっぱり緑があった。
「……なにここ」
一人ごちる。クエスチョンしか浮かばない。
恐る恐る足元を確かめながら、水面から離れて岸へと上がると一番近い木に身体を預ける。
太い。恐ろしく太い。
あらかじめ周囲を見ていて森だと認識していなかったらただの壁だと勘違いしていただろう。ゴツゴツとした表皮は岩と思えるほど固く、かといって植物らしい弾力がある。
「ハックション!」
預けた身体を離し、両手でペタペタと木の感触を確かめながら感心しているとふいに襲ったくしゃみの勢いで額を木にぶつけた。
「いっ!ったいっ!」
クリーンヒットした額をさすりながら、服が濡れている事を思い出す。どうりで寒いわけだとまたもぼんやりしながら、身につけた服を脱ぐ。
学生服だ。上は学ラン。インナーはTシャツ。下も学生服。その中はトランクス派だった。
『クスクス…ハダカンボ…クスクス』
「…え」
濡れたシャツを絞って手頃な枝に干していた時だ。突然耳に甲高い声が飛び込んできた。周りの木々で反響されたそれは、エコーがかかり湖に響く。
「……だ、誰かいるんすか?」
返事は無い。ただの屍も無い。
「……や、やだなー。恥ずかしいとこ見られちゃったなー。どーもすみませーん」
返事は無い。
「おーい…」
もう一度呼んでみる。やっぱり返事は無い。
聞き間違えたのかと頭を傾げる。
枝が揺れ、葉がこすれた音を勘違えたのかもしれない。
我ながら臆病だなと苦笑して、再びシャツを干そうと顔を戻すと枝に蝶が止まっていた。
綺麗な蝶だ。紋白蝶だろうか。あまり虫に詳しくないのでわからないが白と黒のまだら模様がとても綺麗だ。
今にして思えば、目覚めたときに視界を泳いでいたのはこの蝶かもしれない。家に戻ったら調べてみようと思った。
手早くシャツを枝にかけ、再び湖に目をやる。
「こんな場所、家の近くにあったかな」
周りは天辺すら見えない大樹林である。近所にあれば知らない訳がない。
「…ん?家の…近く…?」
はて、とまた頭を傾げる。
そもそも、自分はどこに住んでいただろうか。どこからここへ来たのかさっぱり思い出せない。
学生服のままということは学校帰りの筈である。では帰宅路からの寄り道であろうか。いや、もしかしたら登校中だったのかも知れない。
「学校?」
学校はどこだろうか。通っていたはずの学校が思い出せなかった。
「ていうか、俺。高校生…だよな。いや、中学だって学ランか。えっと…いくつだっけ俺…あれ?」
徐々に心臓が不安で脈動する。
「えっと、待って落ち着け落ち着け。深呼吸だ」
一度大きく息を吸い込んで、大きく吐いた。
「何だ何だ。ここは湖だ。どこか知らないけど森の湖だろ? これは木だ。なんの木か知らないけど木で間違いない。よし、大丈夫。ほらこの調子だ。この調子で…………………………え? えぇ!?」
頭を抱えながらうずくまり、一心不乱に記憶を辿る。
覚えていないわけが無いのだ。自分のことである。その身体、その心に刻み込んでいるはずだ。
「待てよ。待て待て待て待て待て待て!!」
急激に湧き上がる焦燥感を打ち消そうと、声を荒げながら立ち上がる。視界が歪んで見えるのはきっと精神に呼応してだろうか。
「待って、ほんとお願い!ちょっと待って!」
年齢は、知らない。
住所は、覚えていない。
誕生日は何月だったか。
血液型はなに型なのか。
親の年齢。なんて親不孝だろうか。まさか誕生日ごと忘れるなんて。
その前に、親の顔がわからない。
父はどんな顔か。
母はどう笑っていたか。
兄弟の有無は。
ペットとかもしかしたら。
祖父は存命か。
祖母は元気か。
何を忘れて、何を覚えているのか。
「嘘だよ。嘘嘘。は…はははは…俺だよ?だってほら俺じゃん…俺………おれ…は………おれ…………?」
そして唐突に、『彼』は追い詰められた。
「はは…………………はははは!あっはははは!はーはっはっはっはっは!」
その目を見開き天を仰ぎ、抱え込んだままの手に必要以上に力を込めて、不安を消し飛ばそうと喉を振り絞り、腹の中身を空にする勢いで、笑う。
「は、ははっ!ははははは!あっははは!」
逃避しかない。とっくに気づいている。
どんなに思い込んでもいずれそこにたどり着いてしまう。
本能で理解した。覚悟なしでは壊れてしまう。
縋れるものが何一つ無い。なぜならここは湖であり、森であり、一人であり、どうしようもなく知らない場所である。
「ははは!ははっ!」
壊れてしまう。すぐに表に出せば、その事実だけで立てなくなってしまう。
壊れてしまう。
『彼』の心が。
「ふっふふふふっ!あはっ!」
防衛本能だった。
無理矢理笑わせている。
自らを守るために笑わせているのだ。
今のその姿、トランクス一つの何も無い己を守るために、笑うことで時間を稼いでいる。
やがて精神に浴びせられる、無慈悲な一撃に耐える為の時間を。
そして必ず訪れる残酷な現実に打ちのめされないよう、準備を始めている。
湖畔の岸辺、緑の中で。
やがて現実は逃げる彼を捕らえてしまう。
ゆっくりと、だが必ず。
逃げる事は、許されて、いない。
「違うって!嫌だなほら、あはっ!あはは!」
必死な表情で笑う『彼』を、木々達だけが静かに見ている。
「ははは…は…」
暫くの間、湖に笑いがこだまし、急に止む。
精神と肉体、全身を使った拒否反応に体力を奪われ、『彼』は膝からたたむように崩れ落ちた。
その手を地面につけて、視線は一転に釘付けになる。
半笑いを浮かべる表情に玉のような汗が浮かび、笑いすぎて疲れた体は、肩で息するように揺れている。
問いただす。それは、己に。
「は……俺ってば、誰だっけ」
そう呟くと意識を失った己なき迷い子は、静かな湖畔の森の影に横たわるのだった。
「ダイジョブ?」
「ダイジョバナイ?」
「ツネル?」
「ヒキチギル?」
「カミチギル?」
「何か怖い事言ってる!?」
勢いよく起きた。耳に聞こえた不穏な単語が能天直撃、セガ○ターン。意識をグワシグワシと揺さぶり起こしたのだ。
土下寝の姿勢だった。
器用なものである。ネコであったらごめん寝とかいわれる体勢である。
そこから上体だけを起こしたので、只今腹筋がエクストリームスポーツ。要するにツっている。
「あっ!あーっ!ごめん!ごめんなさい!」
なぜ人は身体がツると、謝りたくなるのだろうか。謝れば許されるのだろうか。
「クスクス。起きた?」
「ケラケラ。起きた」
「なんであやまってるの?クスクス」
「水の人。オハヨウ?ケラケラ」
「水から来た人。オモシロイ。クスクス」
しばらく痛みに謝って、のたうち回っていたらまた声がした。
自然と流れていた涙を拭い、もう負けないと誓うと顔をあげて声の主を探す。
誰もいない。
悪寒が走る。
「あのー。もしもーし…だれかいますかー」
『彼』は臆病者の中では勇敢な方だったらしく、確認として返事を求めてみた。勇気ある者だとまず最初は喧嘩を売るかもしれない。
「モシモシ?モシモシってなぁに?」
「草原にいたやつ?」
「あれってウシウシじゃない?」
「ヨダレいっぱいで汚いよね」
「誰もいないけど羽妖精たちならいるよ?」
それは牛ではなくて?と突っ込みながらもやはり姿は見えない。
かん高い声からして、5人。
それも子供であろう声だ。隠れているのだろうか。しかし声はすぐそこから聞こえる。
「探してる?」
「水から来た人、羽妖精知らないの?」
「水から来たのに?」
「エレ・アミュから生まれたのに?」
「エレ・アミュから生まれたら、妖精知らないの?」
「ちょ、ちょっとまって。あなた達どこにいるんすか?」
近い。声は確かにすぐそばから聞こえている。『彼』は慌てて周囲を見回す。
ふと、シャツが干されている枝に目が止まった。
そこそこに太い枝の先端に蝶が止まっている。さっきもいた蝶だ。
だけど今は5匹。いる。白と黒。赤と黒。青と白。黄色と黒。緑と白。
数は合う。いやしかし。そんな馬鹿な。
恐る恐る近づく。本気で恐れているのでかなり遅い。
すり足で歩く。そういえば、服を脱いだ後にもう一度スニーカーを履いていた。ハイカットのスニーカーで水を吸ってかなり重いが、石や木の枝が多くて痛かったのでもう一度履いた。
あまりの恐怖に意識がスニーカーに逸れていた。
もう蝶は目の前だが、よくよく考えると近づく必要がなかったと気づく。
飛んで火に入る夏の虫だ。 夏かどうかはわからないし、虫はあっちだが。
「見つけた?僕たちが羽妖精だよ?」
「わかった?僕たちは偉大なるタム様と、森の香りと風に加護された妖精」
「エレ・アミュから生まれた水の人。初めまして友達」
「偉大なるエレ・アミュの子。歓迎するよ水の人」
「あたしたちの遠い兄弟。仲良くしてね。気持ちの良い青い水と風の精霊さん?」
声はまた近くなり、蝶達が一斉に『彼』の周りを舞いだした。
よく見ると蝶達の羽から彼らの色と同じ光が舞っている。
森の空気と湖の匂い、そして木々からこもれる日の光に彩られ、舞台装置の上で踊るように蝶達は飛ぶ。
厳かに、そして楽しげに。
綺麗で。
綺麗で。
死ぬほど綺麗で。
心が奪われそうになる。
だから一言言いたかった。
「水の人はやめて。ちょっと違うし。俺たぶん未成年だし」
『彼』は細かい男だった。
「記憶?」
「無いの?」
「だって生まれたばかりじゃない」
「あたし見たのよ。生まれるところ」
「そういえば、生まれたばかりなのに服を持ってる」
最初は恐る恐る、だがだんだんと親しく。
というよりは馴れ馴れしく遠慮なくなっていった『彼』に、羽妖精達は答える。
羽妖精達も湖の近くの樹木の上で生まれたらしく、軽い歓迎会みたいな空気になっていた。
「いや、まぁ本当に生まれたばかりっていうなら、記憶なくても当然なんだろうけどさ。」
違うと思うのだ。なぜなら知識がある。
日本という場所の知識が大体だが、生活や物の名称、作法や礼儀。
そういった人が生きる上で身につく知識が、『彼』にはあった。
ここが日本かどうかはわからないが、羽妖精達とは言葉が通じている。言語は間違いなく日本語だろう。
『彼』の知る程度ではあるが、学生が単身母国を離れる事情も無くは無い。
だが『彼』は日本語以外は単語と文法のみの片言英語しか知らない。
日本以外に住んでいたとは思えない。
実は怖くて、まだ彼らにもこの場所の事を尋ねていなかった。
羽妖精達に相談した事により、それなりの落ち着きを取り戻した。
一人だとそのまま発狂していたかもしれないが、羽妖精達はすごく親身に話してくれる。
未だ不安は大きく、焦りも抑えきれないが、ギリギリのところで『彼』は踏み止まっていた。
「そうだね。僕たちと違って生まれた時から喋れるのは、なんかズルいもの」
「僕たちいっぱい勉強したもの。タム様に怒られながら」
「あら、あたしは怒られなかったわ。タム様優しいわ」
「私もかな。あなた達はすぐに逃げて遊びに行くからよ」
「僕も、あんまり怒られてないよ」
少しばかり話をしてわかった事だが、彼らにも性別があるようだ。白と青が女の子。赤と黄と緑が男の子。その中で赤と黄は中々の腕白のようだ。
「あはは。勉強って大変だもんな」
羽妖精達の柔らかな空気に充てられて、『彼』の表情には幾分かの明るさが出てくる。
「あの服も、あなたのなのよね」
白の女の子が話す。
彼女達は喋る時に薄っすらと光るのでわかりやすい。
「そうだな。あんま自信無いけど、たぶん俺のだと思う」
立ち上がり、枝に干していた学ランやシャツを手に取る。
水を吸って重くなった学ラン。
「もしかしたら他に何かあるんじゃない?服にいっぱい袋が付いてたもの」
「寝てる間に色々見てたのね。私達を呼ぶのが遅かったのもきっとそのせいだわ」
「時々ずるいんだよな」
「そういうとこあるよね」
「みんな、や、やめようよ。あんまり言うの」
白が青に突っ込まれ、赤と黄が追い打ちをかけ、緑が止める。
だんだん羽妖精達の性格を把握してきていた。
みんなに追い詰められた白が可愛らしく逆ギレをし、周りがなだめている様子を見ながら、立ち上がって服を干してある枝に近づくと、『彼』は学ランのポケットを探る。
右ポケット、何もなし。左ポケット、これはなんだろうか。飴だった。胸ポケット。特に無し。内ポケット3箇所も入っていない。
次は学生ズボン。持って解る。重みがあった。右後ろのポケットに財布が入っていた。それ以外のポケットは空。
「…財布だよな」
折りたたみ式の青い安物っぽい革製品だ。
これが名刺入れだったら色々と謎は深まるが、開けてみるとちゃんと財布だった。
紙幣が2枚。2千円。
硬化が12枚。
100円玉が5枚に10円玉が6枚。1円玉が1枚。2561円。
微妙な額であった。
カード類はたった一枚。小銭入れの後ろのスリットに入っていた。
「…なんか、怖いな」
確かめるのが怖かった。確認していない以上、このカードは『彼』の希望だ。取り出して、トレーディングカードの類だったらたぶん立ち直れない。
「頼むぞ」
望むのは保健証。学生だと思われる『彼』が持つのは、おそらく可能性としては低いはずだ。
歴とした身分証である。親がいるのなら、親が保管すべきものだ。
同じ理由でキャッシュカードも無いだろう。学生が本人の口座を持ち歩くなんて、日本でも少数だと思われる。
なので、一番可能性が高くてしかも効果が期待できる、この場合は身分をある程度知れる物といえば、やはり学生証。
「それはなあに?」
緑の男の子が肩に止まり聞いてきた。
好奇心が高いのだろう。だけど他の蝶より控えめなのだから、苦労していそうである。
続いて他の羽妖精がハタハタと両肩に止まり、同じように聞いてくる。
「なんだろう?」
「綺麗な青ね」
「獣の皮かしら」
「教えて!教えて!」
まだ出会って2時間ほどだが、お互い偉く懐いたものだと『彼』は苦笑した。
「あー、えっと。財布だ。あの、お金ってわかる?」
「タム様に聞いた事あるわ。人族が使うものね。丸い金ピカのヤツ」
青の清楚な感じの女の子が言った。
「僕も聞いた事ある!」
赤の子は元気いっぱいだ。
「えっと。物で交換すると重たいし場所を取るから、同じ価値の小さな物で代わりにするんだよね」
頭の良さそうな喋り方をするのは黄の男の子。
「そうそう。たぶんそれで合ってる。いや、だったかな。自信ないな…。まぁいいや。そのお金を入れる袋が、財布。んでこの平たい硬いのが、もしかしたら俺の名前とか書いてあるヤツなんだけど…。書いてなかったらと思うと怖くてさ…」
正直に言える。なぜなら張るべき見栄すらも忘れているのだ。
今あるのは不安と恐怖と、肩に止まる5つの安心だけなのだから。
「大丈夫よ友達。あたし達文字は勉強してないからわかんないけど、書いてなかったらタム様のところに行って、この森の精霊になればいいのよ。あたし達と一緒に。きっと毎日楽しいわ。だって友達。あなたからは気持ちのいい水の匂いと、爽やかな風の音がするもの」
白の強気な女の子はそう答えた。彼女達に表情はないが、なぜだか素敵な笑顔の女の子がそこにいるようだ。それが今はとてもありがたい。
「あはは、そん時はよろしくな。さて行くか」
これだけの強い言葉を受けて、もはや尻込みなんてしてられない。覚悟だ。今度は自己防衛のための発狂ではない。
自らが、前に進むために必要な、覚悟を決めなければ。
大げさに息を吸い、大げさに吐く。心臓はもはや楽器のごとくビートを刻んでいる。さっさとやらないとDJが皿を回してしまう。そうなったら今夜はパーリナィである。ご機嫌なパーリーピーポーを相手にするには、センスが足らない。
意を決してスリットに指を入れた。スローモーションのように滑らせる。
沖縄県立□□高校 2-B 都城 要
濡れてふやけて読めない箇所があるが、その学生証にはそう書かれていた。