虹
恋愛小説ではありません。あくまで恋愛もどきだと思うので、注意してご覧下さい。
彼女と出会ったのは三年前。僕が小学校六年生の時だった。
ほとんどの人がわくわくするであろうクラス替え。僕は憂鬱だった。
どうせ、皆僕を避けるだろう。誰も僕に関わろうとしないだろう。今までがそうだった。だからといってこちらから話しかけても、ぎこちない笑顔で対応された。
この学校で、僕は結構有名な人物だったから仕方ないと思う。いじめ、という程でもないが、僕にとってはとても辛いものだった。
僕が教室に入った途端、シン……と空気の流れが無くなるのも、毎年同じことだった。
ただ一つだけ、以前までと違うところがあった。
「あれ、君のこと見たことない。もしかして初めて同じクラスになった?」
驚いた。まさか話しかけるなんて今更思ってもいなかった。
話しかけてきた子は、セミロングの髪を下ろし、目がぱっちりしている、おそらく可愛い部類に入る女の子だった。
その子の言う通り、確かにこんな子は見たことが無かった。初対面と見て間違いないだろう。
それに加え、僕に話しかけたということは、そこそこの知名度を持つ僕のことを知らないのだろう。
「うん、初めまして」
「あ、やっぱり初めましてだったね。私、七姫彩。よろしくね」
「……一色ハク。よろしく」
これが彼女との最初の出会いだった。
それからというもの、彼女は何かと僕に構った。友達の制止があったにも関わらず、飽きもせず構い続けていた。
最初は同情して近付いたのではないかと疑ったが、すぐに違うと気付いた。僕も彼女との絡みは楽しいと思っていたので、変に突っぱねることはしなかった。
そんな彼女を見て、彼女の友達は黙っていられなかったのだろう。流石に僕本人には何も言ってこなかったが、ついに彼女にはっきりと言った。
「アヤ。もう一色に関わるの、止めよ?」
「そうだよ。アヤも知ってるでしょ、アイツ可笑しいの。何で構うワケ?」
偶然聞いてしまった会話。きゅっ、と心臓が掴まれたように締め付けられたが、慣れていたので大したことはなかった。だが、その場から動くことは出来なかった。
「何でって……」
「これ以上、一色に関わらないで。じゃないと絶交だよ」
「そうだよ。二度と口きいてやらないんだからね」
散々だ。僕に関わるだけで絶交なんて言われるのか。
それはいくら彼女だって堪えるはずだ。さっさと分かったと言って僕から離れていくのだろう。それでいいと思う。僕も同じ立場だったらそうしていると言えるからだ。
彼女は友達に言った。
「そう。いいよ、それで」
「…………は?」
「だから、絶交する。それでいいよ」
は?はこっちの台詞だ。
彼女は何を言っている。絶交?それでいい?何を、何を言っている。
彼女の友達より、僕の方がはるかに動揺していた。