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補給

 夜になった、どれくらいの距離を進んだのかは既に分からなくなっている。

 早朝の予期せぬ戦闘と、道中ペースを上げたことで距離感が分からなくなってしまった。

 方角だけはこまめに見ているので問題はない。


 今は道端で寝っころがって食事をとっている最中だが時計はまもなく日付が変わる事を示している。

 補給の時間だ。


 足元からもこもこと土が盛り上がり、木箱が生えてきた。

 異様な光景だが、蓋を壊して中身を確認する。

 フラッシュグレネードが1つ、スモークグレネードが二つ、食料と水、それと場違いなものが1つ入っていた。

 日本刀、いやそれにしてはだいぶ短い。

 少し長めのナイフ程度の長さしかない。


「……なんだっけ」


 依然知り合った日本人が必死に語っていたのを覚えている。

 だがその内容はうろ覚えだ。

 忍者がどうこう、侍がどうこうと語っていたはずだ。

 酒の席だったから会話が弾んでいたのだろう。

 私としては非常に退屈だったが、適度な相槌のせいで勘違いされたのだろうか。


 まあ何かに使えるだろうから持っておこう。

 腰に取り付けたナイフのホルスターを外して鞄に詰め込んで、代わりにベルトに短い日本刀を差した。


 食料は米軍のレーション、はっきり言って嫌いだ。

 脂っこくて味が濃くてどうしても好きになれない。


「おにぎりが食べたい」


 酒の席で知り合った彼は何度か日本食をふるまってくれた。

 その中でも手軽に作れて持ち運びも容易なおにぎりは私の大好物の一つだ。

 味もシンプルなのがいい。

 焼いた魚をほぐした物や、具抜きの塩味だけの奴が最高だ。

 味噌汁は、最初泥水かと思ったが飲んでみると悪くない味だったな。

 そう思ったところで梱包材をこれでもかと詰め込んだ補給物資の確認が終了した。

 結局のところ他には何も入っていなかった。


「明日はおにぎりを」


 思わず箱に向かってそう言っていた。

 すぐに無駄な事と思い直してタバコを吸って虫よけを行う。

 そして微睡に任せて眠りに落ちた。



 朝の目覚めは悪くなかった。

 寝起きの良い方ではないが、5時間の睡眠をとったことで体の調子も良かった。


「確認よし」


 装備や服装、進行方向確認、索敵を済ませて進む。

 道すがら携帯食料をかじって朝食を済ませつつポケットから煙草を取り出す。

 残り5本、鞄にあと二箱、少々心もとないが節約すればしばらくは持つ。

 元来ヘビースモーカーではないのでその辺りの心配はしていない。


「今夜の補給で入っていればうれしいんだがな……」


 そう言いながらタバコをポケットに戻して腰の日本刀を引き抜く。

 やはり短い。

 剣として使う物ではないのだろう。

 おそらくはナイフのような近接戦闘での武器、肉の剥ぎ取りようでもないはずだ。

 目算だが手首から肘くらいまでの長さだろうか。


 鞘から抜くと刃紋だったか、きれいに波打った文様がある。

 切れ味もよさそうだ。

 昨日の連中の来ていた甲冑、あの程度なら関節を貫くくらいはたやすいだろう。

 けれど少し、華奢すぎないだろうか。

 扱い方によっては折れてしまいそうだ。


 そうなったらそうなったで惜しくはないが、私のような素人でも見事な出来栄えと分かる物だ。

 いざとなったら売ってしまうのも悪くはないだろう。

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