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純白の姫  作者: こころ
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第7話

こんにちは!メノウです!今日は泣きかけましたがセーフです!

それでは、本編へどうぞ!後書きでは重大発表です!

暗い闇が私の人生みちを分からなくする。

だけど、進まなきゃいけない。

立ち止まってはいけない。

何処を見ても、歩き続けても、闇一面なんだから。

寂しい…淋しい……。

そんな感情はもうとっくの昔に捨てた。

寂しい。淋しい。悲しい。怖い。恐い。苦しい。辛い。寒い。冷たい。消えたい。

そんな感情も捨てたつもりだった。

なのに、昨日の今日でこんなにも揺れ動く心。

捨てた感情がよみがえるくらいに私の心は限界だった。

暗い闇に光が差し込んでくる。

届くだろうか。あの光に。

私の希望、望み、勇気を少しのせた手のひらが。


どのくらい経ったか分からない。

でも、怪盗の温かい手が私の頭を撫でてくれていることは分かる。

10年ぶりだ。こんなに泣いたのは。

たしかこの城に連れて行かれる時だった。

「助けて」と言ってもみんな、あの方を恐れて遠ざかっていく。

それがとても苦しくて泣いた。

だけどその後、あの方が契約を持ちかけてきた。

それに合意してからは1度も泣いていなかった。

逃げられないと当時の私は悟ったのだ。


「レース!手錠は外せるか?」

「オパール、俺を誰だと思ってるの~?出来るに決まってるっしょ!」

オパールと呼ばれた、朝に会った怪盗が私の身体から手を離す。

何だろう。さっきまで温かかったのにすごく寒い。

抱きしめてくれていたからかな。

でも、心臓を掴まれたみたいに胸が痛い。何で?

そんなことを考えていると、甘い香りが鼻をかすめる。

顔を上げると、青い髪をした男の人が立っていた。


「白い髪に劣らず、綺麗な顔をしてるね。今日、終わったらお茶でもしない?」

夜中にティータイムを楽しむのだろうか、この人は。

首を傾げる私。

すると、レースと呼ばれた怪盗は目を丸くして驚いている様子だったが、すぐに苦笑いに変わる。

「口説いたつもりだったのにな~。オパール、もしかしてさ~サファイアちゃん…恋愛経験無しとかないよね?」

「まぁ…そのようだな」

いまいち2人の話についていけない。

私の話をしているようだが、私には遠い話のような気がする。


「はい、出来た」

それは唐突に発せられた。

つい先ほどまで、楽しく談話していたのだ。

レースさんが手錠をゆっくり取る。

思わず自分の手首をさすった。

鉄で覆われていたため冷たくなっていたが、たしかに自分の手首だった。

だから私は問いたくなった。答えて欲しかった。

「オッ…オパー…ッル…さん」

私の声は泣いたせいもあってかひどくかすれ、か細くなっていた。

「どうした?」

それでも優しい声で返事をしてくれる。

「わったし…自由っに…なれ…た?」

掠れていても、か細くても、言いたい言葉。

そして……

「あぁ…サファイア、あんたは自由だ」

一番聞きたかった言葉を優しい微笑みで言ってくれるオパールさん。


「サファイア!!!!」

大きな声がホールに響く。

あぁ…あの方がまた、私を縛るんだ。

自由になったのに…自由になれたのに……。

自由になった手が自然と肩を抱こうとする。

殻に閉じこもった方がいいんだ。

また暗い孤独な闇に…

「お前にこの子の名前を呼ぶ資格はない!」

抱こうとした両手を握られる。

「クォーツ!お前が集めた確かな情報でそこにいる偽の王の度肝を抜いてやれ」


「は~い、わっかりました~!」

なんとも元気な男の子が可愛らしい声で返事をする。

そして、あの方の前に立つとにっこりと笑い、

「誘拐・麻薬密売・意味もなく処刑など、これ以外にもお前はたくさんの犯罪を犯してきた。その中にはお前がしてきた処刑も入ってるよ。今頃、お前の犯罪の関係者が警察に捕まってるんじゃないかな?それにちゃ~んと証拠もあるからとぼけたって無駄だよ?さぁ…ど~する?」

悪魔が微笑んでいるような気がしてならない。

クォーツと呼ばれた男の子は固まってしまったあの方に笑顔を送っていた。


「子供の方は大丈夫なの?」

クォーツさんがこちらに来て首を傾げてる。

「あっの…子供っの…数…多いっか…ら1人っじゃ足り…ない……」

どうしよう。伝わってないかもしれない。

役に立ちたいのにこれじゃぁ何も…

「分かった。2人とも、アゲートを手伝ってこい!」

「「分かった!!」」

その後、2人は子ども達のいる部屋へ走っていった。

「つた…わった……」

「伝えたいって気持ちが俺に届いたからだよ。それにサファイアの言いたい事がなんとなく分かったしな」

あっ・・・名前で呼んでくれた。

あれ?名前を呼ばれただけなのに心がぽかぽかする。

なんか今日の私、おかしいな。


「あっそうだ。一応、護身用にこれ、持っとけ」

そう言って渡されたのは灰色のシンプルな短剣。

「まぁ、使い方はどうやったって構わない。だからって自分を刺すんじゃないぞ」

オパールさんにとても真剣に優しく見つめられる。

「私…は、子供たちを…置いて…死にません」

真剣な目で見つめ返す。

すると口角を上げて、「知ってる」と言われてしまった。

短剣はドレスの裾を破り、腰に巻き付けてどこに短剣を差す。


「んじゃ…お姫様、行きますか」

手のひらを差し出される。

「お姫様って…私は…町娘ですよ?」

首を傾げながら手のひらを置く。

と突然、腰を使っていない手で持ち上げられ自分に引き付けるという器用な技を披露したオパールさん。

ドキッとしたのは気のせい…じゃない。

手を私の腰から離し手を繋いでくれるオパールさん。

この人は私をなぜ、こんなにもドキドキさせてしまうんだろうか。


「この国にはもうすぐ王がいなくなる。だからその座を誰かに預けなければならない。幸い、あいつは結婚していない。ということは誰でもなれるという事」

ホールを出て冷たい床が足に伝わる廊下を歩いていく。

いつの間にか月が出ており、無数の星が瞬いている。

オパールさんは続けた。

「だが、権力であいつのように犯罪を犯す奴はこの国の損害に関わる。かといって、知識のない人が王になればそれも損害に関わる。サファイア、お前ならどうする?」

多分…オパールさんはもう答えを導き出してる。

だけどそれをあえて私にいうのは何か目的があるのだろう。

声も戻ってきた。深呼吸をする。


「この国のためにと一生懸命になってくれる人だと思います。さらに、政治の知識や国民の信頼を得ている人がこの国の王にふさわしいかと。それで…なぜ私にそんなことを?」

淡い光が窓から差し込み、私達を照らす。

「また…あんたを縛ってしまうかもしれない。それでも俺からの頼みを聞いてくれ。この国の王女になってほしい。あんたは犯罪を犯すことはないと確信している。それに、知識も豊富だ。国民の信頼は今後からとして城中の誰もがお前を認めている。だが、承諾しても断っても構わない。これは俺の我が儘な頼み事だ」

隣を見ると、俯いているオパールさんがいた。

答えはもう、出ている。


「顔を上げてください」

少し戸惑いながらもゆっくり顔を上げたオパールさん。

「私は誰かに必要とされたことがありません。気づかなかっただけかもしれませんがね。それでも、こんなに大きな頼み事をされたのは初めてです。国民の皆さんに受け入れてもらえるか分かりませんが、あなたの我が儘な頼み事、引き受けましょう。それに私、頼み事をされると断れない性格ですから」

すると、オパールさんがこれでもかと目を見開いて私を見つめる。

「……笑った」

それは無意識に出た独り言のように小さくぽつりと呟かれた。

「私も思いました。まだ私でも笑えるんだって自分でも驚いてます。フフッ」

少し声を出し笑うとオパールさんも微笑み返してくれた。


「あの…私からも我が儘な頼み事、いいですか?」

ひとしきり笑ったあと、勇気を出して言ってみる。

「俺に出来ることなら何でもいいよ」

繋いだ手に力がこもる。

オパールさんもぎゅっと握ってくれる。

「怪盗のお仕事…何年かかっても構いません。だから…絶対に生きてこの国に戻ってきてくれますか?本当に何年かかっても構いません。だから……」

本当に我が儘な頼み事だと自分でも思う。

迷惑に思っているかもしれない。

それでも彼に伝えなければ後悔する。

「だから私をまた、盗んでくれませんか!」


少しの沈黙が流れる。

聞こえるのは私達の足音と外のざわめき。

やっぱりダメだったかな。

視線を床に落とし俯く。

「……そりゃぁもちろん、盗むに決まってるだろ?」

声に驚いて隣を見ると悪戯が成功した子供のような笑顔があった。

だから、怒ってしまうのは仕方のないことだ。

「ほら…もう城の入り口だぞ。機嫌直せって」

前を見ると何度も見たけど、開けて出たことがない扉があった。

「ここから出ると多分、警察が来てるから俺は逃げなきゃならない。お前は一旦、警察に保護してもらえ。警察の方にはお前のこれからのことについて、話をしてある」


「あの…もしかして警察と同盟組んでたりはしてませんよね?」

「もうすぐ、アゲート達が来る頃だと思うが…っと噂をすれば来たな」

私の言葉を無視して、後方を見つめる。

つられて後方を見ると元気な子ども達と歩く、3人の王子がいた。

「あっ!サファイアお姉ちゃん!おはよう!」

「おはよう…ごめんね、こんな時間に起こしちゃって」

「ぜ~んぜんっ!」

「平気平気!」

「このお兄ちゃん達がここから出られるって言うから起きれた」

嬉しそうにニコニコと笑う子ども達。

この子達のためにも私は…


「サファイア!!!!」

大きな声が入り口に響く。

子ども達が王子達の後ろで怯えている。

あの方だ。あのままずっと固まったままだと思っていたのに。

「サファイア…お前はわしのものだ。そうだろ?さぁ、わしの所へ来い」

「お前っ!」

「待って…」

今にも飛びかかりそうなオパールさんを止める。

「私が合図をしたら扉を開けてください。それから、あの方を捕らえよと警察に。私は大丈夫ですから」

心配そうなオパールさんに微笑む。

そして1歩、踏み出した。


「そうだ。さぁわしの所へ」

あと数メートルの所で私は止まる。深呼吸を1つして、

「お言葉ですが私はあなたの元へは戻りません。私はもう、あなたには縛られません。あなたが欲しいのは私のこの髪でしょう?それなら……」

腰に差していた短剣を右手に持ち、自分の髪を左手に持つ。

少しだけあの方が青ざめたようだったがもう遅い。

「オパールさん!扉を開けてください!」

そんなに私には力はないけれどよく切れる短剣だったんだろう。

私の長く白い髪はあっさりと切れてしまった。

「この髪、差し上げましょう!」

もう、この人は怖くなんかない。

そう思ってあの方に、元私の髪を投げた。


「警察だ!おう、オパール!……分かった。エメラルド王を先に捕らえよ!」

警察が入ってくる。

そうだ。言い忘れていたことがあった。

そうして警察の行く方向とは逆の入り口に走る。

「オパールさん!王子様方!」

入り口に行き、外を見る。

彼らは止まってこちらを見ていた。

大事なことを言い忘れていた。

大きく息を吸って……


「助けてくれてありがとうございました!!!」

自分でも分かるくらいの満面の笑みを彼らに向ける。

「ちゃっかりキャッツアイは盗んだし」

アゲートさんは言う。

「サファイアちゃんの笑顔は見れたし~」

レースさんは言う。

「王の犯罪も暴いちゃったし」

クォーツさんは言う。

そして……

「我が儘な頼み事もお互いにしたしな」

オパールさんが言う。

「約束ですよ!!待ってますから!!!!」

「あぁ!また、会おう!!」


そう言い残していった彼らの後ろ姿を見えなくなるまで見つめた。

あなた方が戻ってくる頃には良い国にきっとしてみせます。

そんな思いを胸に宿らせて見つめる。

でも本当はオパールさんしか見てなかったけど……

今日の私はやっぱりおかしいんだと思う。



次回が最終話となります!(たぶんらしいですが)

感謝の文などは最終話で作者本人からだそうです!

※作者からのおまけ

 ~彼らのその後~

「なぁオパール、約束ってなんだ?」

「それ、俺も気になってた~」

「僕も僕も~!」

「「「約束って何!!!」」」

「お前らなんかに教えるか。絶対、からかうだろ」

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