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3 - 不干渉な彼は、葛藤する。

短めです。

ゴロリ。



……あー。



ゴロリ。



……ねみー。



ゴロリゴロリ。



………やっぱり眠くねー。




ニーナが部屋を出ていってから、1日と半分が経った。



そろそろ日が落ち始める頃だ。



俺はずっと研究室にこもっていた。



今は二つのソファをくっつけた簡易ベッドに寝そべっている。



このソファsはここに泊まることを見越して持ち込んだ物で、クッションと合わせると高級ダブルベッドと同じくらいのスペックを発揮する。




いつもは至福の時として過ごすソファの上でも、俺の心は晴れない。





最低だ、俺は……



いや、そんなことは分かってる。



分かってるからこそ、彼女にそれを伝えたつもりだった。



軽蔑し、罵倒されることも、殴られることも、部屋ごと木端微塵にされる覚悟もあった。



例え彼女を傷つける結果になっても、そうすることが最善だと判断した。



そしで彼女が俺との関係をキッパリ絶ってくれれば面倒事は終わり、いつもの平穏が戻ってくると思っていた。





しかし、それはどうやら大きな間違いであったようだ。



彼女は俺を罵倒することも、手を上げることも無かった。




俺は、最後に見せた彼女の瞳を見るまで気付けなかったのだ。



彼女が、どれだけ俺に期待・・していたのかを(・・・・・・・)



あの磨かれた瑠璃のような瞳には、はっきりと縋るような色が見えていた。




それは、過去にも向けられたことのある目。


そして、俺が過去に向けていただろう目だった。




あれほどに純真で行動的に見えた彼女は、会ったばかりの俺にさえ期待してしまう程の重い”何か”を抱えていたのだ。




それでも、彼女が俺に失望して普段の生活に戻るのなら問題は無かった。



俺の後悔と”痛み”―――ニーナにとっても―――が一つ増えるだけ、で終わるはずだったのに――――――




――――――ニーナが、動かないのだ。





今、彼女がいるのは研究棟よりさらに東にある森の中。



学園領のギリギリ端に、ニーナは留まり続けている。




俺がニーナを補足できているのは、彼女の魔力の”色”を感知する魔術を使っているから。



魔術についての説明は細かくはしないが、噛み砕いて言うと彼女に俺の魔力で出来た紐を括りつけてる感じだ。




そんな訳で彼女の動きを探っている訳なのだが、その場から全く動く気配が無い。




彼女が動き出すまでは研究室にいようと思い、そのまま今に至った。




部屋には食糧があるものの、いっさい手を付けなかった。



ニーナもきっと同じ状態だろう。



俺がお手洗いに行ったときに何とも言えない気持ちが生まれ、嘆息した。




ちょうど1日経ったくらいから、ニーナを助けに行くべきかずっと考えていた。



しかし、彼女を傷つけた張本人の俺が掛ける言葉なんてあるのだろうか。




それでも部屋を出て行く儚い後姿を思い出す度、彼女を見捨てるという選択肢は消えて行った。




ニーナが動き出すのが先か、俺が動き出すのが先か。


まるで我慢比べをしているみたいだな。




もう何度か分からないほど寝返りを繰り返した。


胸に刺さった棘が自分を苛み続けるのを感じながら。


そして日が完全に落ちてしまった頃、俺はようやく決断する。



ニーナを迎えに部屋を出た。



決め手の理由は「悩むのも面倒」という半ば諦めの情けないものだったが、最低なりに動いてやろうという決意もあった。






木々をかき分けて進んだ先、そこには―――――――




小さな、それでいてどこか神秘的に湧き出す泉。




俺も知らなかったその泉の前で伏せるように眠っているニーナが、月明かりに反射して光の粒子を振りまくその光景は、俺の目には1枚の絵画のように映っていた。




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