そのリボンを解きたい
濡れ烏なんて揶揄されるような、黒に近い濃紺のセーターに膝下丈のスカート、それにタイツといういかにもな制服を纏った鏡の中の自分を、彼女は忌々し気に睨んだ。
飾りといえば、セーターに情け程度に付いた学園のエンブレムの刺繍と、セーターの下に着たシャツの襟で結ぶ、紐みたいなリボンぐらい。
これだって、大して可愛くない。年を通してこんな調子なのだ。せめて夏は、色ぐらい明るくなればいいものを。
今時こんな制服着てる女子高生なんて、と更に溜め息を漏らした。
しかしいくら待ったところでこの制服が変わる訳もなく、彼女は仕方無しに鞄を手に取る。
そこで丁度ノックがされ、ふんわりした亜麻色の頭部がひょこっと覗き込んだ。
「おはよう」
「おはよ」
彼女は、このおさなじみの姿を上から下まで見た。祖先のどこかに外国人の血が混じっているという、地毛そのままのふわふわした明るい色の髪はやや長めで耳に掛かっている。ちらりと見えるそこにはじゃらじゃらとピアスが付いていて、彼女にはその耳に最早いくつの穴が開いているのか分からない。
彼女の制服とは違う青っぽい紺のブレザーは今日は着ておらず、代わりに大きめのベージュのセーターに灰色のスラックスは腰で履かれて、いかにも今っぽい高校生そのものだ。
「なに?」
じろじろと見られて、思わず彼は彼女に尋ねた。
一瞬言葉に詰まった彼女は、言葉を選ぶように目を伏せる。
そうして影を作るその睫毛は、彼の同級生とは違って化粧っ気は無いが、意外と長い。どこか禁欲的ですらある姿と相まって、思わず彼は目を逸らした。
「あんたの学校は、女子の制服も可愛いよね」
「えっ?」
あたしんとこの制服全然可愛くないんだもん、とスカートの裾を摘んで言う。
そういうのの下を想像したり脱がしたりするのが男は好きなんだよとか口走りそうになって、寸での所で彼は堪えた。
「スカートだってもっと短くしたいのに、少し折っただけで聖書の書き取りとかさせられんの」
「でも僕はそれ、似合ってて可愛いと思うよ」
乱れてるともっと可愛いだろうけど、という言葉は飲み込みつつ、不埒な気持ちを悟られないように、彼は彼女ににっこりと笑いかけた。
ちゃらい男の子と普通な女の子




