第1話〜awakening〜
ほの暗い病室のような部屋の真ん中で僕は目を覚ました。
頭がぼーっとする。まだ夢から覚めてない感じだ。起き上がろうとしたが動けない。どうやら首や手足に枷が着けられてるらしい。冷たい金属の感触がする。
状況が飲み込めずに混乱してる僕に部屋の隅にでもいたのか、白衣を纏った人が4、5人寄り添ってきた。
「おはよう。気分はどうかね?どうやら自分がどのような状況に在るのか理解出来ないようだな。 ここはとある実験施設でね。様々な人体実験を行っている。君は近くの山で倒れているところを拾われてね。瀕死の重傷だったのだよ。
早急にここへ運び込まれたのだが、何しろ怪我が酷くてね。正直、手遅れだったよ」
一人の白髪の科学者が苦々しげに顔をしかめながら語った。
「僕はどうなったんですか・・・・?」
状況が十分に把握できない今、自分と置かれている立場が知りたかった。
白髪の男は再び口を開いた。
「さっきも言った通り、君は手遅れの重傷で我々では君を生かすのは不可能だった。そこでこの石の使用を試みた訳だ」
そう言うと懐から拳程の深紅の結晶を取り出した。
「これはこの数年間に発見されたばかりの石でね。一種のエネルギーの結晶体なのだよ。扱い方によって電力や火力はもちろん風力や原子力にも使える。全く素晴らしいとは思わんかね?
さらにこの石は意思を持つようでね。心電図で見ると熱や寒さへの反応も石によって違う。
実はこの石を君の体内に移植したところ、一日足らずで怪我が完治したのだよ。どうかね?体に異常は感じられかね?」
いかにも興味津々といった表情で男は訪ねた。身体を拘束されてる以外に身体に異常は診られない。ただ男の話がイマイチ信用できない。
今の自分が石によって生かされてる?正直馬鹿げた話だが何も情報のない今、その話を信じる他なかった。
それから幾月か経っただろうか。結局半信半疑で日常を過ごした今、回りの人たちの様子を見る以上、あながち嘘ではないようだ。僕と同じような被験者は無数にいて、僕は今彼等と共に過ごしている。
彼等も何らかの理由により石を移植されたらしく、よく情報を頂いている。
どうやら石が不思議な効力を持っているのは間違いないらしく、ここにいる人たちは力を求めたり、何らかの理由により来ざるを選なかったらしい。
そして、ここの科学者たちの目的は被験者たちによる兵の設立らしく、石の移植を受けた僕とてその目的のための実験体に過ぎなかった。